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国立大の格差拡大 化学系研究費2倍→4倍

2009年4月18日

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 強いところはより強く、弱いところはより弱く――。法人化された国立大学で「格差」が広がっている。日本化学会(会員数約3万2千人)が調べたところ、旧帝大など一部の有力大と地方大で、化学系の教員1人あたりの教育研究費の差が、この5年間で約2倍から4倍近くに拡大していた。地方大は金額自体、5年間で約2割減っていた。

 文部科学省は04年度の法人化とともに「護送船団方式」を見直し、より魅力的な研究計画を出すところ、より実績があるところに多く資金を配分するようになった。化学系の格差拡大は国立大全体の縮図といえ、当初からあった「弱肉強食」の不安は現実になってきている。地方大の教授らは「机や棚も買えない」「機器が古びて研究ができない」と悲鳴を上げている。

 日本化学会は大学、企業の研究者らで構成。調査は全国の大学・大学院の化学科・化学専攻など242を対象に実施し、95の学科・専攻が回答した。この中から、東大、京大、北海道大といった旧7帝大に東京工業、筑波、広島を加えた国立の有力10大学と、旧2期校など地方国立大30校・公立大2校のグループを取り出した。

 それによると、教授、准教授ら教員1人あたりの教育研究費の平均は、有力大グループは法人化前年度の03年度に1240万円だったのが、08年度は5割強増えて1910万円に。一方、地方大グループは03年度の640万円から08年度は510万円と約2割減少した。両グループの格差は、03年度の1.94倍から08年度は3.75倍に拡大した。

 教育研究費の内訳は、▽国の運営費交付金▽国の科学研究費補助金(科研費)▽その他の公的資金▽企業との共同研究などで得る産学連携資金――の四つ。運営費交付金以外の三つは一律配分ではなく競争によって選ばれたところが得られる資金(競争的資金)だ。有力大グループが得た産学連携資金やその他の公的資金はこの5年間で2倍強に増えたのに対し、地方大は24〜15%減っている。

 文科省は近年、「各大学の特色が出るように」と競争的資金を増やしてきた。さらに、件数を絞って1件当たりの額を多くしたプロジェクトも増やしている。この結果、もともと研究者の層が厚く、体制が充実している有力大がいっそう資金を集める傾向が強まった。

 「稼げない」大学のよりどころが運営費交付金で、教育研究の基盤として学生数などに応じて配分されるが、これについても財政再建策の一環で毎年1%ずつ減らされている。まさに「弱り目にたたり目」の状態だ。

 資金配分の問題に詳しい竹内淳・早稲田大教授は「米国ではトップ大学の10分の1以上の研究費を得ている大学は80校余りあるが、日本では13校しかない」とすそ野の狭さを指摘する。「科学技術創造立国を目指す日本の課題は一線級の研究環境にある大学を増やし、国全体の研究力を上げること。それなのに、最近の流れはそれに逆行している」

 文科省の永山賀久・国立大学法人支援課長は「競争的資金はそれぞれの大学が力に応じて獲得していると考えている。教育研究を支える基盤的経費の確保に努めたい」と言う。(杉本潔)

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