2011年1月24日13時6分
【シカゴ=田中光】米国で実施されている薬物注射による死刑が当面、滞る可能性が出てきた。米国唯一のメーカーであるイリノイ州の製薬会社ホスピラが、ほとんどの死刑執行で使われている麻酔薬の一種「チオペンタールナトリウム」の製造から撤退すると発表したからだ。
米国で死刑制度がある35州のほとんどの州で、3種の薬物が使われており、そのうちチオペンタールは意識を無くす作用がある。
ホスピラなどによると、同社は製造トラブルのため2009年から国内でチオペンタールの製造を中止。イタリアの工場に製造拠点を移そうとしたが、死刑を廃止しているイタリア当局が、薬物が死刑執行で使われないことを条件にしてきたという。医療現場で需要が落ちていることもあり、同社は製造を断念することにしたという。
元々、昨年秋から品不足だったために、カリフォルニア州などで死刑執行の延期を余儀なくされている。また、在庫があるテキサス州でも使用期限は今年3月まで。チオペンタールに代わる薬物でも可能だが、各州で執行を規定する州法を改正する必要がある。州によっては議会での審議に時間がかかる可能性も指摘されている。