特集・学級崩壊


 

授業不能 北海道のある教師の日誌から

発火 4年生に進級 転校生で「秩序」崩れた

 そして、子どもたちは四年生になった。

 4月26日 成長!躍進! 大人への入り口

 「せんせっ」と訴えてくる子が減り、黒板に書いた字が違うと「違うよ」と声があがる。先生は「大人への入り口にいる」と見た。

 5月2日 タバコ15人

 タバコとライターを見つけ、みんなに「吸ったことある人」と尋ねた。三十二人中十五人もいた。

 5月24日 ワープロのふたに「○○のバカ」。

 教室に置いていたワープロに、白いチョークで先生の名前が○○と呼び捨てで書き殴ってあった。

 7月10日 「スズキ、バカ」「サリン・イトウ」

 スズキ君、イトウ君が悪口の応酬をした紙が落ちていた。落ち着いたように見えていても、悪口や無視、仲間はずしは続いていた。

 二学期。

 転校生がやってきた。アンリちゃんという。

 授業中、教室から出て行く。あぐらをかく。おしゃべりをする。学習用具を机の上に出さない。

 アンリちゃんは先生が築きあげた「学校の秩序」を次々と崩していった。

 9月6日 授業技術が役に立たない。敗戦。

 研究授業で、子どもたちは先生の揚げ足とりに終始した。変だ、と感じた。

 9月13日 ボール遊びやりたい 29人

 先生は子どもが遊べるようにと教室にけん玉やキーボードを持ってきていた。ボールもその一つだった。

 子どもたちが朝の自習の前に投げ合って、先輩教師に「けじめが必要だ」としかられたのは六月だった。とりあえずボール遊びを中止させ、教師と話したが、納得してもらえない。

 この日、復活して、と決議が上がってきたが、見送った。男の子のなかには、先生を「くそおやじ」と呼ぶ子もでてきた。

 9月19日 そうじサボタージュ

 掃除をやっているのは、五、六人だけ。以前は十分ほどでできていたのが、二十分以上たっても終わらない。注意しても「一生懸命やってるさ」という言葉が返ってくるだけだ。

 子どもに権限を移してはどうか、と話し合いの司会をゆだねた。アドバイスすると、「口出ししないで下さい」と言われた。

 このころ、暴れん坊の男子と活発な女子のグループが結びついて「反先生集団」になり、そこにアンリちゃんも加わって一大勢力になっていた。

 アンリちゃんは注意すると、家に帰ってしまう。

 少しずつ慣れさせようとすると、周りの子から「アンリちゃんだけ、差別だ」という声が起こった。

 子どもたちは注意を受けると「オレばっかり、差別だ」と反論した。

 9月28日 悪口言わないのムリ 29人

 「悪口を言わないようにできる人」と尋ねると、手を挙げたのは、三十二人中たった三人。「言わないよう努力できる人」と聞き直すと、やっと十九人が挙手した。

 10月2日 朝の会で歌っているの2、3人。

 10月3日 ユカリちゃんの姿勢を直すと、周りの子から「先生、いやらしい」。

 子どもと教師がやりとりするふだんの授業は、テレビ番組やタレントのことをしゃべる声やメモ回しで成り立たない。プリントの作業学習が中心になった。

 10月20日 メガネとレンズ飛ぶ。

 話を聞けないタクヤ君を別室に引っ張っていこうとすると、抵抗され、メガネが飛ぶ。クラスは「タクヤ、やれ、やれ」と騒然となった。

 10月24日 いい子の反乱

 「反先生集団」に、先生支持派の子たちが加わり、クラスの三分の一以上が言うことを聞かなくなった。

<11月15日付朝日新聞朝刊より>

 


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