特集・学級崩壊


 

授業不能 北海道のある教師の日誌から

爆発 教室は無法地帯 ついに保護者に説明

 授業中、教室を勝手に出ていく。本を読む。たたき合い、足をかけ合う。教室は無法地帯になっていた。

 10月25日 不用品持参が多い。

 子どもたちが申告したのはミニ四駆、ゲーム、ヘアスプレー、ジュース、ビデオ、ブロマイド……。

 11月9日 メモの山

 「死んだ方がましだ」「いままでなかよくしたからってあまくみるなよ」。互いをののしる言葉をノートに書き、授業中に回す。

 11月13日 顔をたたかれる。

 「やれっ、やれっ」という仲間のはやし声に乗って先生をたたいたのは、タクヤ君とマサル君だ。めがねが飛び、先生はカッとなって突き飛ばしてしまった。

 周りから声がした。「暴力教師」「ダメだって言ったのに、暴力ふるった」

 どうしてたたかれたのか、先生は記憶していない。「もう、担任はできません」と管理職に言った。

 11月18日 合唱コンクール

 練習ができていない。ほかの学級の歌が聴けない。

 九月から、親に説明したいと管理職に許可を求めたが、早すぎると止められていた。それが、大会を見た親から「どうしたんですか」と学校に電話が次々入り、話せるようになった。

 11月20日 学級崩壊・非常事態宣言

 職員会議で初めて報告。「私が子どもの急激な変化に対応できなかったからです」。話し終えて、やがて悲しくなった。

 教室に帰ると、机の上に怪獣の絵のついた六枚のメモ用紙が置いてあった。「子どもと子どもでかいけつしたいんだよ、おだつ(調子にのる)な」「あやまれ、あやまれ、あやまれ」と殴り書きしていた。

 11月21日 「先生がいい先生になったらがんばる」

 サトル君に注意すると返ってきた言葉だ。ほかの子には「五年になって先生が代われば」とも言われた。

 12月6日 保護者懇談会

 「お母さんたちにみんなの様子を話すから」と言うと、教室は「えーっ」と騒然となった。「復しゅうしようとしてる」

 先生は経過と見解を書き、管理職の筆の入ったプリントを、この日の懇談会と十九日夜に開いた臨時父母会で読み上げた。「原因は、担任の指導力が低下したことにあります」

 「どうして早く言ってくれなかったんですか」と質問が出た。横に「言うのは待った方が」と言い続けた管理職がいる。「申し訳ございません」とだけ言って頭を下げた。

 救いは「もう少しだから先生がんばって」という親からの声だった。「ルールを守るように話していただきたい」と協力を頼んだ。

 国語と算数の時間、ほかの先生にも教室に入ってもらうようになった。

 12月13日 ユカリのメモが机に置いてある。

 「本当にすみませんでした。先生にはんこうしたりして。でも、やめられないと思いますが、ゆるして下さい」。みんなの手前、やめられないのだ。

 12月14日 先生のどこに反発したか 差別する―14人 無視する―9人

 決まった人ばかり注意―5人

 逃げたらダメだと子どもたちに自分の悪いところを尋ねた結果だ。

 この日返した算数のテストの平均点は、四月より三十点下がっていた。

 12月19日 しねしね○○のバカ

 昼休み、先生死ね、と黒板に書いてあった。

 この日の午後の緊急父母会を境に、私語や立ち歩きは終息していく。

 この子たちが警察の世話になったことは皆無だった。親も我が子の学校での様子に気づいていない。

 「家庭や塾で『いい子』を装っていて、学校は息抜きの場だった。だから、親に知られてあわてたのではないか」と先生は思った。

<11月15日付朝日新聞朝刊より>

 


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