ASCII BACK NUMBER ARCHIVE 月刊アスキー 1998年9号
特集2
ワープロと日本語IMEが,新次元に突入!?


一太郎9とATOK12のすべて

純国産日本語ワープロ「一太郎」が,約1年半ぶりにメジャーバージョンアップを果たし,「一太郎9」として9月下旬に登場する。変換効率をさらに高めた新次元IME「ATOK12」(SuperATOK)の搭載,ユーザーの操作をナビゲートする新インターフェイスの提案など,その変貌ぶりには驚くばかり。そこで今回の特集では,ジャストシステムの開発のキーマンに徹底取材を敢行し,その変容の全貌にいち早く迫ってみよう。その変化の内容は,ライバル・ワープロ「Microsoft Word 98」のユーザーも,要注目である。特集後半(第2部)では,Windows98
発売にあわせてあまた登場してきた,Windows98環境を快適化するツール群を一挙に紹介,導入お勧め度を★の数で判定してみよう。第1部,2部ともに,Windows98利用者には絶対に価値ある情報であると,自負する。(工藤)

脚注:
※なお,一太郎9&ATOK12の画面は,開発途上版のもので,
一部デザインなどが変更される可能性もある。


 一太郎9の製品概要は,表1の通り。最初に新機能の概略を示しておくと,
(1)変換効率と使い勝手を大幅に向上させた日本語IME「ATOK12」
(2)文書目的に即した手ほどき&環境変更を行なう「ドキュメントナビ」
(3)自動処理で文書作成を援助する「入力アシスト」
(4)ワープロ専用機やXMLをも視野に入れた,各種文書の中核としての「ドキュメントセンター」構想
などとなる。もちろん,これらは大きな柱にすぎず,「開く」ダイアログの大幅強化から印刷機能の拡張に至るまで,数々のアイデアが盛り込まれている。
 特徴的なのは,一太郎9では,DTP的な文書表現力の向上はほとんどなされず,ひたすら使い勝手の向上──膨大な機能を,ユーザーにいかに自然かつ手軽に引き出させるか──に主眼がおかれている点である。一太郎8 Office Editionの機能をほぼすべて維持しながら,細かい部分でより有用な機能を追加し,それらをより気軽に活用/学習できるようにしたのが一太郎9だ,と言えよう。
 製品価格は2万円だが,ジャストシステムの他製品および他社製ワープロ/オフィス製品ユーザーには1万2000円で,旧一太郎ユーザーには8000円で販売される。また,一太郎9と同時発売される図形プロセッサ「花子9」(2万円/次号で詳報)をセットにした「一太郎9&花子9スペシャルパック」も用意され,通常価格が3万円,一太郎あるいは花子ユーザーへの優待価格が1万5000円となっている。また,付属のIME「ATOK12」に関しては,11月に9800円*1で単体発売される予定である。
 では,まずは,「ATOK12」のすべてからご紹介していこう。もちろん,「一太郎9」のすべてが先に気になる方は,p.211から読み始めてもらっても,かまわない。


脚注:
*1:「ATOK12」は,ATOK単体ユーザーには5000円で,一太郎Liteユーザーには3000円で,ATOK11体験版CD入手者には6500円で販売される(p.143〜のNEWS SCRAMBLE参照)。


画面

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実に多くの変更が行なわれた「一太郎9」。その魅力は,どこにあるのか。


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表1 「一太郎9」の製品概要

表組

発売日:9月下旬
価格:2万円(優待/乗換:1万2000円,VerUp8000円,キャンパスキット4800円)
製品構成:ワープロ「一太郎9」,日本語IME「ATOK12」,インターネットメール「Shuriken」,Webブラウザ「JustView3.01」,Unicodeフォント「JS平成明朝体W3」
必要OS:Windows98/95,NT4.0/3.51
必要CPU:i486DX4以上(Pentium以上推奨)
必要メモリ:24MB(32MB以上推奨)(NTでは32MB必要,40MB以上推奨)
提供媒体:CD-ROM
問い合わせ:(14)ジャストシステム
(?03-5412-3939/?06-886-9300)(http://www.justsystem.co.jp/if/index.html)

「ATOK12」のすべて
最強IME,未踏の領域へ
一太郎9に標準付属する「ATOK12」単体のパッケージ。単体発売は11月を予定。9800円。

変換エンジンはどう変わったか?

 '97年2月に登場したATOK11。その変換効率および学習能力は,本誌'98年3月号特集IIや7月号p.242で報じたように,現在最高峰にあると言えるだろう。
 しかし,ATOK12では,その変換エンジンを,全面的に再設計したという。では,具体的には,どのような変更が加えられたのだろうか? かえってその変更が改悪になる,という心配はいらないのだろうか?
「変換ロジックを変えるというのは非常に危険な行為なんです。他社の例を見ても,何々法なんて言って,1回ロジックを変えると,その時点でかなり変換効率を落とすことになる。IMEはいわば生き物ですから,変換効率を高めるためには,チューニングにまた膨大な時間をかけねばならなくなるわけです。よって,ATOK12でも,変換ロジック自体の変更は,基本的には行なっていないという言い方ができます。根幹となるアルゴリズムや基本処理については,不用意な変更は行なっていません。たとえば,ATOK7や8の頃の有効なベースはちゃんと踏襲されています。
 ただ,追加型の拡張を基本としたATOK11までの対応とは異なり,ATOK12では,1年半かけて,変換エンジンをリフレッシュしました。やや無理に拡張をしていた部分を,最初からやり直して,すっきりした形に再構成しています。これにより,さらなる機能拡張もしやすくなり,変換速度も約10%高速化されました。そして,OS依存部分をカプセル化することで,他のOS環境への移植もしやすくなったのです(ATOK Anytime,Anywhere:トリプルAコンセプト)。次世代に向けて,機能拡張時に障害にならないようなエンジンに生まれ変わり,変換精度の向上に加えて,高速化と移植のしやすさを手に入れた。それがATOK12なのです」(製品開発本部製品企画部サブリーダー 丸山尚士 氏)
──一般の方が日本語を打つのは,メールなどを書く場合,というのも多いと思うのです。しかし,ATOK11では,「すこしながいきがする(少し長い気がする)」が「少し長生きがする」,「むかしかいたきじ(昔書いた記事)」が「昔か痛き痔」,「きじ,かきたそうでした(記事,書きたそうでした)」が「記事,垣田層でした」なんて,文が少しくだけた際に,ありえない日本語が最初に出てくることがある。その辺への対応は,変わっていない,という理解でいいのでしょうか?
「その辺は変わりません。そのほか,方言や古文への対応なども要望としてありますが,それには根本からATOKを作り直す必要があるので……。しかし今回,辞書フォーマットを含め,品詞の種類,解析している文節のスコープを少し広げるなど,基本処理を見直しています。指示語をみた文脈解析なども,機能拡張で実現していますので,地道ながら,確実に,変換精度はあがっているんです。また,入力補助機能も,非常に有効なものを多く追加できたと思っています。体感では,ATOK11からさらに大幅にストレスを減じることに成功したと自負しています」(丸山 氏)
 以上の話から,「うたい文句だけは素晴らしいが,実は改悪」といった懸念は,不要なようである。そして今回のATOK12の新機能をまとめたのが,表2である(なお,ATOK11から省略された機能はない。JS文章表現辞典なども付く)。以下,その個々について詳しく見ていこう。


写真

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ジャストシステムきってのATOKエバンジェリスト 丸山尚士 氏

画面

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「ATOK12」のパレット。どんな新機能が隠されているのか?

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表2 ATOK12の主な新機能

表組


<変換系>
(1)指示語対応文脈解析
(2)数詞処理の強化
(3)学習による変換効率低下の防止
<リアルタイム校正支援>
(4)JUST MEDDLER2による,慣用句誤用/仮名遣い
誤り/商標名/機種依存文字の指摘
<入力補助>
(5)省入力機能
(6)確定履歴の利用
(7)同音異義語のソート
(8)再変換/前後参照変換

<インターフェイス改良/強化>
(9)入力環境の一括切り替え
(10)クリックパレット強化
(11)文字パレット改良
(12)ローマ字カスタマイズの拡張
(13)ATOKパレットの表示変更
(14)ファンクションキーガイド
(15)インターネット対応の設定
(16)カーソル位置への入力モード表示
(17)半角全角変換の強化

(1)指示語対応文脈解析
「それ」が分かるATOK12

 ATOK12では,文章中に出てきた指示語(これ/それ/あれ/これら/それら/あれら/この/その/あの/どれ/どの)の指し示す言葉を理解し,指示語の内容に即した変換候補を提示できるようになった(図1)。
 元々,ATOKでは確定した直前の入力情報をストックし,その後の変換処理に反映していたが,ストックする範囲はごく短い範囲に限られていた。それがATOK10で少し範囲を広げ,ATOK11ではついに確定した複数文をストックしておいて,スポーツの話題なら「そうしゃ」を「走者」に,音楽の話題なら「奏者」に変換するといった,文脈解析変換が可能になった。
 ただし,この文脈解析変換が常に効くようになっていると,変換速度が遅くなり,副作用も大きくなる。そこでATOK11では,ある特定の同音異義語が変換されたときのみオンになる仕掛けだったが,ATOK12ではさらに,こそあど言葉(指示語)の登場をトリガーにして,文脈解析変換がオンになる仕掛けを採用したわけだ。
 なお,この文脈解析は,やはり処理速度の問題から,連続的に文字列を入力していったときのみオンとなる。つまり,再変換時(後述)や既存の文書の途中に文字列を挿入する場合は,文脈解析は行なわれないことになるという。この微妙なさじ加減が,ATOKの強みのようだ。


(2)数詞処理の強化

 ATOK12では,数字交じりのフレーズの変換精度が向上している。たとえば,同じ「じ」の変換でも「第1」の後は「次」が,「午後1」の後は「時」が優先される。また,「かい」なら,「第1」の後は「回」が,「ビルの1」の後は「階」が優先され,「わ」なら,単なる「1」の後は「羽」が,「第1」の後は「話」が優先される……といった具合だ。
 これらは,数字に続く言葉を変換する際に,(1)「第+数詞+助数詞」などの,言葉のつながりから成立頻度が高い助数詞を優先したり,(2)数詞を伴う場合のみに有効となる共起処理(「トラック」と「台」など,語と語の結びつきの強さを判定する処理)を強化した結果である。
 これらはATOK内では例外処理として扱われるが,全体の変換バランスに影響が出ないため,今回採用された。よって,「1けいとう」で「1ヶ伊藤」が出てしまう(数字の後は助数詞が優先されるため)など,従来の癖は修正されていない。これは,通常の変換効率に悪影響を与えるためだそうだ(気になる人は,自分で「助数詞」として「系統」を単語登録してしまおう)。


(3)学習による変換効率
低下の防止

 図2のように,単語レベルの学習結果よりも,よく使う表現の語の結びつきを優先することで,ATOK12は,学習による変換効率への悪影響を,ある程度防げるようにしている。
 具体的には,「じたい」の直前に「動詞の連体形+こと」が来たら「事態」学習後でも「自体」を優先する,「〜したほうがいい」なら「法」学習後でも「方」を優先する,「〜するたび」なら「旅」学習後も「度」を優先する──など,地道な調整がなされている。
「ATOKには共起用例という,一緒に使われやすい単語同士の関係情報が入っています。従来,基本的には同音語の多い読みについて,かつAI処理などをしていない状態で誤変換が出るものを中心に,共起用例の登録をしてきました。
 しかし,それでも,単語レベルで学習していくと,図2のように間違うケースが出てくる。そこで,今回初めて,常用表現(よく使う言い回し)の関係表現をより積極的に登録するようにしたんです。これは,単純な共起用例のみならず,体系的な処理と共起情報を組み合わせた新しい仕掛けと言えます。今回,こうした処理を反映しやすい構造に,ATOK内部を変えていますので,今後ますます,こうした常用表現への対応が強化できるでしょう。ATOKの学習能力は,ますます賢くなっていけるわけです」(製品開発本部製品開発部リーダー 新田実 氏)


(4)JUST MEDDLER

 入力/変換時に文章表現をチェックする校正支援機能「JUST MEDDLER」が,「JUST MEDDLER2」に進化。従来の「ら抜き表現の使用/文体の統一/同一助詞の過剰な連続/修飾関係のあいまい性/わかりにくい否定表現」の指摘に加え,新たに以下のようなチェックが行なえるようになった。
(1)「慣用句の誤用」(画面(4)-1)
(2)「仮名遣いの誤り」(画面(4)-2)
(3)「商標名」(置換候補提示あり)(画面(4)-1)
(4)メール送信時などに注意すべき「機種依存文字」の指摘(画面(4)-1)
「慣用句に関しては,数百のデータがATOKに仕込まれていて,チェックを行ないます。ユーザーが意図的に文書校正を行なう“修太(一太郎の校正機能)”と違い,JUST MEDDLER2で入力/変換時にあまり多くの指摘をしすぎるとうるさくなる。そこで,はっきりとした誤りに絞った指摘を行なうよう,登録数を絞ったのです。商標名は,百数十程度を登録しました。「たっきゅうびん」で「宅急便<<商標名>>」と出た後で変換キーを押すと「宅配便」が,「ホチキス<<商標名>>」で「書類とじ器」が,「味の素<<商標名>>」で「うま味調味料/化学調味料」などが置き換え候補として登場するのです。もちろん,「味の素」のままでも確定できますよ」(製品開発本部製品開発部サブリーダー 井上健 氏)


(5)省入力機能

 ATOK11では確定文字列の履歴を,文字列ボックスから呼び出せたが,操作の煩わしさから,それを活用する人は少ないようだ。そこでATOK12では,そうした確定履歴を,通常の変換作業の流れの中で,手軽に呼び出せるようになっている(画面(5)-1,2)。
 具体的には,1度入力した文字列の最初の1〜数語を入力し,変換候補の中の「0」キーの候補を選ぶと(あるいは入力直後にTabキーを押すと),その1〜数文字の読みで始まる履歴が「省入力候補」として提示される。
 たとえば,「か」を入力してTabキーを押し,「神田神保町/カメラ/会議室/考えたそうだ」などが省入力候補として登場する場合,次に「かん」と入力してTabキーを押すと,「神田神保町/考えたそうだ」の2候補に絞られる……といった動きになる(前方一致検索)。その際の省入力候補は,単純な確定単位の履歴のみでなく,文節のまとまりの違う履歴も提示される。
 省入力候補は,標準ではより長い名詞句/名詞が優先されて上位に表示されるが,ユーザーの選択による学習も効くようになっている。それらの学習された省入力候補や学習結果は,もちろんマシン再起動後も保持される。
 履歴では,確定単位にもよるが,最大200個の直前確定文字列が保持されている。通常の変換ウィンドウではCtrl+Deleteで使わない単語を辞書から削除できるが,省入力候補のほうはウィンドウ上からも文字列ボックスからも削除できないのが,やや残念だ。


(6)確定履歴の利用

 (5)でも利用した確定履歴を,また違った形で呼び出すことができる。文字未入力の状態でCtrl+F8キー(あるいはCtrl+Shift+Rキー)を押せば,直前に入力/確定した文字列が,確定順とは逆順に(つまり新しい順に)上から並ぶのだ(画面(6)-1)。


(7)同音異義語のソート

 名前の変換などでは,膨大な数の変換候補が提示され,希望の候補を探すのが一苦労,といった場合がまま発生する。そこでATOK12では,先頭文字/末尾文字による変換候補のソートが可能となった(画面(7)-1)。具体的には,変換候補の中の,目的の先頭文字/末尾文字を持つ候補を選択した状態で,変換ウィンドウ下部のボタンを押す,あるいはCtrl+PageDown/PageUpを選ぶことで,ソートを実行できる。こうしたソートは,(5)の省入力候補ウィンドウ中でも,(6)の確定履歴候補提示中でも,利用できるのがうれしい。


(1)再変換/前後参照変換

 Word98上やWindows98の標準ダイアログ上で,確定文字列の再変換を行なえる「MS-IME98」。その登場とともに,MicrosoftはWindowsにおける再変換のAPIを公開した。それを受け,ATOK12でも,確定済み文字列の再変換を,一太郎9/一太郎Lite/Word98などの再変換対応アプリ,Windows98標準ダイアログ上で可能にしている。なお,一太郎9/一太郎Liteで登場するダイアログも再変換対応だが,Word98のそれとは異なり,Windows95
上でも再変換が行なえるようになっている。
 再変換の方式は,IME98と同様。(1)変換キーが押された時点で,カーソル位置の前後の文章をアプリ側がATOK12へ送信する,(2)ATOK12が自社製の専用読み仮名辞書を参照し,読み仮名を得て形態素解析し(文字列を品詞ごとに分解する),未確定文字列として提示,(3)変換候補が確定された時点で元文字列が新確定文字列に置き換わる──というものだ。
 ただし,再変換を行なう標準キー操作は,変換キーを押すだけのMS-IME98とは異なり,Shift+変換キーを押すことになる。より意図的に再変換を行なうわけだ。
 なお,この際に,MS-IME98のように,文節区切り位置の違う候補を提示することは,できない。これは変換ロジックの違いのせいだ。
「MS-IME98での文節区切り位置の変更は,スピードを犠牲に成立していると思います。むしろ大事なのは,複合名詞の区切り位置を正しく判定することではないでしょうか。私たちは,文節区切り位置の変更機能に,スピードを犠牲にするほどの実用性を見いだしていないのです。」(丸山 氏)
「その分,再変換の高速さには自信があります。IME98は,再変換の関連機能である“カーソル位置の前後の内容を参照する変換”が,標準では行なえない設定になっていますが,ATOK12では,再変換の高速性を受け,これを標準でオンにすることを検討中です。高速化は今回のバージョンアップにおける主要なテーマの1つですが,その恩恵が,こうした部分にも出てくるわけです。」(新田 氏)


入力環境の一括切り替え

 ATOK12の「プロパティ」設定に名前を付けて登録しておき,作業に応じて複数のプロパティ設定を一括切り替えできるようになった(画面(9)-1)。これにより,論文執筆時,メール作成時,表計算入力時など,自分の好みと用途に応じて異なったATOK12環境を手軽に利用できるようになる。また,設定内容を.iniファイルとして保存し,配布可能なので,職場での表記統一などの際にも重宝する。


クリックパレット強化

 マウス操作で各種文字や顔文字などを入力できるクリックパレットに,日時を入力するシートが新登場(画面(10)-1)。現在の日付の表記は「98.7.26」「平成十年七月二十六日(日)」「Sunday,July 26,1998」など計30種類のパターンから,現在の時刻の表記は「21:40」「午後9時40分」など6種類から選択入力可能で,選択した設定が次回以降も有効となる仕掛けになっている。


文字パレット改良

 文字コード表からの文字入力や,漢字検索などを可能にする「文字パレット」のデザインが見直され,欧文/和文コード表や1万8000字を登録したUnicode表の文字拡大表示が可能になった。また,大きく変わったのが,「漢字検索」シート(画面(11)-1)。指定した部首の位置(上下左右)が視覚的に分かりやすい表示になり,検索時に画数の範囲を指定可能になった。検索された漢字に関しては,画数/部首読み/音読/訓読/配当/異体字/JIS/SJIS/区点/Unicode順・逆順で簡単にソートできるようになった。「提示された漢字数が多すぎて,探すのがキツイ」といった状況も,これで緩和されるだろう。
 なお,MS-IME98ほかが採用する「手書き文字認識」による漢字検索機能は,今回も搭載されていない。ジャストシステムは,手書き認識に否定的なのか?
「そんなことはありません。手書き検索には,それはそれで良さがあるので,将来的には導入の予定です。ただ,今回は満足のいく認識精度が実現しませんでしたので,搭載を見送ったのです」(丸山 氏)


ローマ字カスタマイズの拡張

 ローマ字入力時に,Shiftキーを押しながら文字キーを押すと,入力モードが英字入力モードに切り替わり,再びShiftキーを押した時点でローマ字入力モードに戻る,といった,日本語と英語が混在する際にうれしい設定が可能になった(画面(12)-1)。また,従来ATOKではローマ字入力設定の際に,必ず母音を必要とする制限があったが,この制約が取り去られ,より自由なローマ字入力設定が可能となっている。


ATOKパレットの表示変更

 ATOKパレットの縦型表示(画面(13)-1),タスクバーへの結合表示が可能になった。もちろん,従来通り,タスクトレイへの格納も可能である。日本語入力をオフにしている際もATOKパレットを表示したままにし,マウスクリックで日本語入力をオンにすることもできる。


ファンクションキーガイド

 文字を入力して未確定状態になっている際に,各種変換を行なったり,コマンド実行を行なえるファンクションキー・ガイドを明示できるようになった。(画面(14)-1)


インターネット対応の設定

 (9)の入力環境の一括切り替え機能を利用し,インターネット対応のATOK環境設定ファイルを標準で用意している。「プロパティ」から切り替え可能で,半角かなの禁止(点丸の句読点,中黒,鍵括弧で文字コード上半角カナであるものも使用を禁止する),機種依存文字の指摘がオンになる。


カーソル位置への入力モード表示

 アプリケーションや文書を切り替えた際に,入力モードやかなロックの状態を入力カーソル位置に,ツールチップ表示できる。この表示設定は,オフにもできる。


半角全角変換の強化

 従来,文字種類ごと,記号ごとに「半角変換」指定が行なえたが,ATOK12では,そのすべてに対し,「半角変換」「全角変換」の両指定が可能となった(画面(17)-1)。ここでの設定をユーザーの確定よりも優先することもできる。


キャプション:
図1 指示語対応文脈変換の実例

図版

(1)「といた」で「説いた」が優先される状態
「今日の授業の問題は難しかった。先生が一晩かかって考えたそうな。」と入力し,確定。
続けて,「しかし,わたしはそれをすぐといた。」を変換すると
ATOK12「しかし,私はそれをすぐ解いた。」○
ATOK11「しかし,私はそれをすぐ説いた。」×
MS-IME98「しかし,私はそれをすぐ説いた。」×

(2)「せいさく」で「製作」が優先される状態
「野党が減税を訴えている。与党も同じことを言い出した。」と入力,確定。
その後,「しかし,そのせいさくはとくさくか。」を変換すると,
ATOK12「しかし,その政策は得策か。」○
ATOK11「しかし,その製作は得策か。」×
MS-IME98「しかし,その製作は得策か。」×

(3)「うつして」で「映して」が優先される状態
「ここにノートがある。」と打った後で,「だれかそれをうつして。」を変換すると,
ATOK12「誰かそれを写して。」○
ATOK11「誰かそれを映して。」×
MS-IME98「誰かそれを映して。」×
いっぽう,「ここに荷物がある。」と打った後で,「だれかそれをうつして。」を変換すると,
ATOK12「誰かそれを移して。」○
ATOK11「誰かそれを映して。」×
MS-IME98「誰かそれを映して。」×

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図2 学習による変換効率低下の防止

図版

(1)「じたい」を「字体」と学習した後に,「はしることじたいがばからしい。」を変換
ATOK12「走ること自体がばからしい。」○
ATOK11「走ること字体がばからしい。」×
MS-IME98「走ること字体が馬鹿らしい。」×。
(2)「ここ」で「個々」と学習した後で,「ここすうにちはよくない。」を変換
ATOK12「ここ数日はよくない。」○
ATOK11「個々数日はよくない。」×
MS-IME98「個々数日はよくない。」×

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画面(4)-1 JUST MEDDLER2による慣用句誤用/商標名/機種依存文字の指摘。

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画面(4)-2 JUST MEDDLER2による仮名遣い誤りの指摘

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「とうり」で変換すると…

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「まじか」で変換すると…

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画面(5)-1,2 この状態で0キーを押すと……

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画面(6)-1 確定履歴を,確定の順番と逆順に,Ctrl+F8キーで提示できる。

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画面(7)-1 変換候補の先頭文字/末尾文字による並びかえ。変換ウィンドウ上の右クリックメニューからも実行可能。

画面

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画面(9)-1 ATOK12では,複数の「プロパティ」を登録し,簡単に切り替えられる。ちなみに,ATOK12では,アプリを切り替えた際に画面のような入力モードを示すツールチップが出る。

画面

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画面(10)-1 ATOK12のパレットから起動できる「クリックパレット」に新シートが追加された。

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画面(11)-1 「文字パレット」のインターフェイスが,分かりやすく,見やすくなった。

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画面(12)-1 ATOK12のプロパティダイアログから設定できる「ローマ字カスタマイズ」の自由度が,高まった。

画面

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画面(13)-1 ATOKパレットの表示バリエーションが増えた。

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画面(17)-1 プロパティから設定できる「半角/全角変換 設定」。

画面

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画面(14)-1 DOS時代にもあったファンクションキーガイドが復活。キー操作が分かりやすくなった。


ATOKが提示する
「情報の窓」コンセプトの意味

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キャプション:
ジャストシステムのATOK開発部隊を統率する阿望博喜 氏


 以上で,新ATOK12の新機能はほぼすべて紹介した。しばらく付加機能の追加合戦,といった様相もあったIMEの世界だが,今回のATOK12は,ごくまっとうな変換精度と速度の向上に最大の主眼をおいて開発されている。これは,歓迎すべき方向性だろう。
 なお,ATOK12の発表に伴い,ジャストシステムは,“ATOKを「情報の窓」にするのだ,かな漢字変換のみならず,各種情報へアクセスする手段に進化させるのだ”というコンセプトを打ち出した。ATOK12編の最後に,その真意を,'85年のATOK5開発からATOKに関わり,現在のATOK開発チームを統率する,製品開発本部製品開発部 シニアマネージャー 阿望博喜 氏に,伺った。
「日本語IMEというのは,ユーザーに一番近いところにいて,アプリケーションに関係なく起動できて,誰もがまっ先に使い方を覚えるという3大特徴があります。まさに,マンマシンインターフェイスで一番重要なところなわけです。そう考えると,かな漢字変換以外にも,まだまだやれることがある,いや,やれていないことがたくさんある。
 考えてみると,今のIMEは,外国の方が使えるか,子供が使えるか,というと,そうなっていない。大人の日本人がまじめに打とうとして使ったときにやっと使えるという,かなり限定された場面での実用化技術でしかないわけです。だから,今後はそうした限定を取り払おうという方向性も確かにあるでしょう。
 しかし,今は外国人に使ってもらうよりも先に,限定された世界で,既存のユーザーやビジネスマンが何とかしたいと思っている点を解消したい,と思っています。『情報の窓』コンセプトは,情報化社会の中で困っている人を助ける機能提案の第一歩なわけです。
 たとえば,マシンはどんどん速くなっていますが,アプリもその分重くなっていて──これは今までの一太郎も共犯ですが(苦笑),とにかくユーザーがパソコンの前で待っている時間が,どうしても存在している。だから,動作が速くて軽いのが長所である日本語IMEで何かできれば,仮にそれが今まであった機能の代替でしかなくても,大いに貢献があると思うのです。
 現段階で言える具体的なアイデアに,“IMEによるデータの一元管理”があります。たとえば,メーラのアドレス帳などの各種個人情報を,アプリごとにバラバラに持つのではなく,ATOKで一元的にデータベースから引っ張り出してきて使えるといいだろう,というわけです。今はあまりうまく機能していないAMET*2のネットワーク対応をはかり,とってきたデータをフィルタリングするためのスクリプト環境を整備していって,ATOKからいろんなデータにアクセスできるようにしよう,といった話ですね。
 IMEで,網羅的に,一括して情報を処理できたら……。これは,ジャストシステムという枠を超えて考えていかねばならないテーマでしょう。
 最後に,私が考えるATOKの素晴らしさについて述べよ,というお話ですが,それはやはり“人”だと思います。正直,開発陣は今,非常に忙しいんですが,そんな中,取材の質問にも嬉々として答えている。その姿からもお分かりでしょうが,みんな好きでやっている。パソコンの向こうに使う人の姿を思い浮かべながら,楽しんで開発している。それがATOKの一番の強みだと,思うのです」   (工藤)


脚注:
*2:AMET(エイメット)は,ATOK Multi Engine Transferの略で,かな漢字変換以外の多彩なデータ変換をATOK上で実現するためのプログラムのこと。AMET対応アプリを接続すれば,かな漢字変換と同様の手順で,CD-ROM辞書やデータベースを検索し,結果を表示できるようになる。


一太郎9のすべて
潜在能力を引き出す新たなる挑戦
9月下旬発売の「一太郎9」。多くのユーザーは,1万円前後で購入できるはず。

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キャプション:
一太郎開発のキーマンのひとり 野村雅浩 氏


 9月下旬に,約1年半ぶりのバージョンアップを果たす「一太郎9」。Windows98日本語版発売から約2カ月,Microsoft Office97の次バージョンMicrosoft Office2000の日本語版の登場が早くとも年末か年初になると言われる,言わば絶好の無風状態の時期に,一太郎9は登場するのだ。
 今回の一太郎9の性格は,野村氏の次のコメントに端的に表われているだろう。
「ワープロの機能拡張競争は,ひとまず落ち着いたと思うんです。そして今後は,膨大な機能を,いかにして使いこなしてもらうか,潜在能力をいかに自然に引き出してもらうか──そうした仕掛けの工夫がキーになる。そこを中心に考えたワープロ,それが一太郎9なんです」(製品開発本部製品企画部サブリーダー 野村雅浩 氏)
 とはいえ,こうしたアプローチ自体は,決して斬新なものではない。私自身,Microsoft Word 98やPublisher 98,Picture It! 2.0などを紹介するにあたって,誌面で何度か述べてきた方向性である。つまり一太郎9は,Word98のIntelli Senseや,Publisher 98のウィザード機能のいいところを吸収したバージョンなのだ……。
 実は最初,私はそう考えていた。しかし,一太郎9の新機能とその背後にある思想性は,それらとはかなり異質であることが,取材の過程で判明してきたのである。一太郎9全体の話は,改めて最後に行なうことにして,まずは新機能の数々を,紹介していこう。


画面

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画面には表われにくい「一太郎9」の魅力とは?


1.ドキュメントナビ
ワープロ文書の書き方が変わる

 一太郎9では,ファイルメニューの一番上に「ドキュメントナビを開く」が新登場した。これこそ,一太郎9の新しい定型文書を呼び出すためのメニューである。
 新定型文書(ナビゲーションテンプレートと呼ぶ)は,標準で全10カテゴリ60種類以上が用意され,中身のプレビューを確認してから呼び出すことができる(表3/画面1-1)。
 なんだ,普通だな……と思うのはここまで。一太郎9はこの後が新しい。
 一太郎9は,読み込んだ定型文書に応じて,ドロップダウンメニューやツールボックス,ヘルプがダイナミックに変化する。定型文書を読み込んだ時点で,先のカテゴリ(報告書/FAXなど)に応じた「ナビモード」に切り替わるからだ。たとえば,「報告書」作成時には,「ヘルプ」メニューは「報告書の使い方」ガイドに変化し,報告書作成に不要な「マクロ」などの多くのメニューが消え,「報告書」作成に最適な環境が構築される(画面1-2)。
 それだけではない。F4キー/Shift+F4キーを押すことで,入力カーソルは次々と,ユーザーが修正すべき箇所だけにジャンプしていく。ジャンプした先では,入力カーソルのすぐそばに入力ガイドが表示され,何をどうすべきか,ナビゲートしてくれる(画面1-3)。よって初心者ユーザーでも,ほとんどF4キー操作と文字入力だけで,迷わず文書を仕上げられるわけだ。
 これこそが,今回の一太郎9の思想である,“コマンドを使わずに凝った文書を作ってもらおう”というアプローチを体現した「ドキュメントナビ」機能なのである。

 実は,ナビゲーションテンプレートの正体は,特定のメニューセットと共に保存された“通常の一太郎定型文書”の一部文字列に,入力ガイド・フィールド(後述)を設定したものに過ぎない。F4キーは,単に「入力ガイド・フィールドにジャンプする」というコマンドなのだ。よって,通常の一太郎文書と同様に,他の場所をマウスでクリックして,いかように編集することもできるし,入力ガイド・フィールドに関しても,マウスクリックでランダムに編集をかけられる。
 ナビゲーションテンプレートを,ユーザーがカスタマイズすることもできる。
 一太郎9で元文書の作成を終えたら,「挿入→コメント→入力ガイド」で,任意の文字列を入力ガイド・フィールドに指定する。「入力ガイド」設定時には,入力カーソルが来たときに提示する「説明文」や,ATOK12の入力モードなどを指定できる(画面1-4)。これを単に「名前を付けて保存」で定型文書(.jtt)形式か通常形式(.jtd)で保存すれば,ひとまずF4キーで修正個所に飛べるテンプレート/通常文書の完成だ。それらを,職場や学校の実状にあうように作成し,仲間に配布するだけでも,文書の書き方指導や統一などの手間が,軽減されるわけだ。
 さらにテンプレート呼び出し時に,メニュー類を自分でカスタマイズした「ナビモード」に切り替えたい場合は,「ツール→拡張機能→ドキュメントナビの切替」を選んで,「ユーザー1」か「ユーザー2」を選び,ナビモードに入ってからメニューカスタマイズを行なう(なお,ヘルプのカスタマイズは許容されない)。その後,「ファイル→ドキュメントナビへ保存」を選び,ファイルを保存すれば,ナビモード設定の終了だ。次にそのテンプレートを開いたときには,メニュー類が自分好みに変化するだろう。

 こうしたテンプレートの利用を中核に据えた手法自体は,昨今の年賀状ソフトや,Lotus Super Office98,Microsoft Publisher98でも見られる,流行のアプローチである。そして,そこでの最大の鍵は,どれだけ美麗な使えるテンプレートが最初から用意されているか,になる。テンプレートで勝負するソフトに,しょぼいテンプレートしかない場合は,ウィザードから外れていちから文書をデザインせねばならないという,非常な苦痛だけが残ることになるからだ。一太郎9開発途上版のテンプレートは,60種類強とやや少なく,見た目もやや地味な気がするが……。
「そこがまったくアプローチが違うところなんです。いくら美麗なテンプレートを付けても,結局は,職場ごとにカスタマイズしないと使えないというのが,実状でしょう。問い合わせに答えていくウィザードを利用することや,できあがった定型文書をそのまま利用するのが前提の仕組みは,とかくアプリケーションのブラックボックス化を招き,ユーザーの応用や操作の学習を妨げるという決定的なデメリットがあります。ユーザーを目隠しして連れていくようなやり方では,結局,職場に合った文書は作成しにくいのではないでしょうか?」(野村氏)
「それに対し,ドキュメントナビでは,手軽に凝った文書を作る過程から入って,“一太郎ではこんな場面で,こんな操作でできるんだよ”と知ってもらう学習性を重視しています。そしていちから文書をデザインしやすい,従来からの自由度も維持している。
 用意されたテンプレートは,一太郎9の各種能力を示す見本集のような存在なんです。一見地味に見えるかもしれませんが,それはユーザーのカスタマイズのためのベースとして使ってもらいたいからです。そして,それらは,各種段落スタイルの集合体であり,そこには一太郎での文書作成のノウハウが詰まっています。どこからでも編集できる自由度も維持しているので,あちこちを入力ガイドや絞り込まれたメニュー類を見ながら変更していく過程で,次第に機能を学べるのです。
 もちろん,業種別にナビゲーションテンプレートを拡充し,別途販売していく……といった展開も考えてはいますが,やはり学習性こそが,ドキュメントナビの前提です」(製品開発本部製品開発部シニアマネージャ 佐尾山英二 氏)
 こうした方向性は,大いに歓迎したい。ただし,モードの変化による快適さと同時に,新たな戸惑いも生まれはしないだろうか? たとえば,特定のナビモードでしか登場しないメニューやボタン類を,通常編集時に「あれ? 変だな,ここにメニューがあったはずだが?」と悩んでしまう場面も考えられる。例を挙げると,「文例集」モードでないと,「ツールボックスの表示設定」一覧にも,専用ツールボックスの名は出てこない(「ツール→拡張機能→ドキュメントナビの切替」で文例集ナビモードにせねばならない)。便利なドキュメントナビだが,今後のさらなる細かな配慮に期待したい面もある。


画面

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画面1-1 「ファイル→ドキュメントナビを開く」を実行。

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表3 一太郎9の10種類のナビモード

表組


カテゴリ 説明
報告書 報告書,議事録などの作成を支援。
FAX FAX送付状の作成を支援。
連絡・送付状 会議連絡,送付状,連絡書,英文レターなどの作成を支援。
文例集 自然言語で問い合わせて社内/社外向けの計600種類の文例を呼び出す。
単行本・マニュアル 単行本,論文,マニュアルなどを目次,脚注,索引を駆使して作成。
広告 パンフレットやニュースリリースのサンプルを用意。
ホームページ ホームページのトップページほかの作成支援。
宛名・ラベル印刷 差し込み印刷を活用したラベル作成,印刷を支援。
計算書 罫線表と計算機能を組み合わせた見積書/注文書/納品書/成績表の
作成。
プレゼンテーション プレゼンテーション用スライドの作成,閲覧支援。
脚注:
※この他、ユーザー設定用の「ユーザー1」「ユーザー2」カテゴリも用意されている。

画面

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画面1-2ab ナビゲーションテンプレートが読み込まれ,一太郎9が専用ナビモードに入った。ナビモードを抜けたい場合は,「ファイル→通常編集に戻る」を選ぶ。再びナビモードに戻るには,「ナビへ戻る」ボタンを押す。ちなみに,「原稿用紙」テンプレートでは,原稿用紙特有の書き方ルールに完全に対応した文書スタイルが設定済みである。

画面

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画面1-3 F4キー/Shift+F4キーで入力ガイド・フィールドを移動。移動後は,入力ガイドの「説明」が表示される。

画面

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画面1-4 「入力ガイド」設定ダイアログ。一部領域にロックをかける設定も可能となる予定。さらに,文字列をあらかじめ登録しておき,ショートカットメニューから選択するだけで入力ガイド・フィールドに文字列を入力することもできる。

画面

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画面1-5 ナビモード「文例集」では,挨拶文を一覧から手軽に選択入力できる。また,自然言語で関連する文例を検索できる。なお,収録文例は,いずれも有識者を集めたATOK監修委員会で吟味されたもの。


2.入力アシスト機能
自動化処理の適度なさじ加減とは?

 一太郎9では,(1)行頭から始まる2つ以上のスペースをインデントへ自動置換する,(2)http://〜などで始まるURLの記述を自動的にハイパーリンクに設定する(Word同様),(3)行頭の数字を自動で連番にする,(4)対になる引用符/括弧を自動補完する──という4種類の入力アシスト機能を持つ(画面2-1)。同様の機能で,すぐ思い浮かぶのは,Word98のオートフォーマットだろう。
──Wordのオートフォーマットは,数の上では,もっと多彩で充実していますね?
「Word98は自動化をしすぎていて,煩わしくなっている気がするのです。一太郎9では,ユーザーの予想を裏切らない程度の動き方しかしないように,自動化処理の範囲を限定しました。しかも,自動処理実行後には入力カーソルのすぐそばにツールチップで警告を出しますし,Backspaceで即座に元に戻すこともできる。うまくバランスを取ったつもりです」(佐尾山氏)
 まず,(1)に関してだが,Word98には段落の最初に入れた全角1文字のスペースをインデントに自動置換する機能がある(標準設定時)。よって,テキスト保存するとすべて段落の頭のスペースが消えていて驚く,といった場面もあった。それに対し,一太郎9では,行頭の1文字だけのスペースはそのままスペースとして残し,ユーザーが2文字以上スペースを打った時点で,インデントへの置換が行なわれ,次行以降も同じインデントで文字入力が開始されるようになっている(Word98ではそうならない)。しかも,標準設定では,Word98と異なり,インデントの状態が薄い三角印ではっきり目視できるようになる。
 また,従来とかく扱いの難しかったインデントだが,一太郎9では,Backspaceやスペースキーでインデント幅を自在に調整できるようになっている。従来,面倒でインデントを利用してこなかった人も,一太郎9でその便利さ,手軽さに目覚めるかもしれない。ちなみに,スペースを入力せず,フリーカーソル状態で未入力領域をクリックして文字入力を開始した場合は,インデントは設定されない。
 (3)の自動連番設定は,行頭の「1.」「(1)」などを自動で連番に指定する機能。連番指定とは,連続的に付けられた番号の間に,新たな番号を追加したり,それらの順番を入れ替えたりしても,自動的に番号が振り直される機能である。
 Word98では,「1.」の後に文を打って改行すると,自動で次行頭に「2.」と挿入されるが,そうした箇条書き機能とは異なる点に注意。同じ操作をしても,「1.」が連番に設定されるだけで「2.」は登場しない(登場する設定も可能)。その後,次行頭に「9.」などと同じフォームで数字を入力した場合は,自動で数字が振り直され,「9.」が「2.」に自動置換されることになる。連番も,これで利用者が増えることだろう。なお,この設定は,標準ではオフになる可能性もある。
 (4)では,右括弧を打った時点で左括弧を自動入力し,かつ入力カーソルは括弧の間に入る,といった動きを見せる。
 個人的には,ユーザーの知らないところで何かをされるのは好きではないのだが,すぐそばにツールチップが表示されるうえ,この程度の数の規則しかないのであれば,一太郎9側の動きを把握しながら,うまくつきあっていけそうだと感じた。逆に,Word98の多彩な自動化処理に魅力を感じる人には,物足りないところかもしれない。
 なお,Wordのようなオートコレクト(誤記の自動修正など)やバックグラウンドスペルチェック機能は搭載されていない。その代わり,ATOKでの文字入力時の慣用句チェックなどに加え,校正ツール「修太」を利用した,ファイル保存時/メール送信時の自動誤字脱字チェックなどが可能になっている。


画面

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画面1-6abc 通常編集画面でも,「文字入力」「罫線」「作図」の3モードの切り替えが,ボタンクリックで簡単に行なえるようになった。画面のようにモードを示す文字も明示されるのが分かりやすい。

画面

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画面2-1 「ツール→オプション→オプション」で,「入力アシスト」のオン/オフを指定できる。

画面

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画面2-2 一太郎9の自動化処理で,何が起こるか? なお,一太郎9のツールチップは,ユーザーが何らかのアクションを起こさない限り,ずっと表示されているので,のんびり屋の人でも安心だ。


3.ドキュメントセンター構想

 世の中に混在する標準形式や文書形式,表計算形式により多く対応して,ファイル交換/媒介の中心に位置しよう,というのが一太郎9の「ドキュメントセンター」構想だ。


(1)ファイル互換性

 一太郎9の対応ファイル形式は,一太郎Liteと同じく,(1)一太郎Ver.4〜8&Lite/Word5.0〜Word98/RTF/HTML4.0(CSS1対応)/Unicodeテキストの読み込みと保存,(2)一太郎Ver.2/3,OASYS,OASYS/Win,LANWORD,IBM DOS文書,Excel4.0〜97,1-2-3 R2.1J〜98,三四郎Ver.1〜8の読み込みに対応している。表計算ファイルは,罫線表として読み込まれることとなる。来年早々には,一太郎9用のSGML エクステンションが別途発売され,一太郎9のXML対応も図られる予定である。
──Microsoft Office2000(8月号p.292参照)では,XMLへの対応が謳われていますが。
「Microsoft側にXMLで本格的にドキュメントを標準化していこうという姿勢は見えない気がします。HTMLの勝手な拡張はできないので,その代わりにXMLを使っている,と言う感じではないでしょうか。いずれにせよ,XMLへの対応は,まずExcelやPowerPointが主で,ワープロは従ではないかと推測しています。Webブラウザを窓にした,サーバにおくOfficeという方向性は,ジャストシステムでも検討していないわけではありません。」(丸山氏)
 Wordファイルの読み込みに関しては,段落スタイル/ページスタイルなどのコンバート精度が一太郎8時点よりも向上し,より忠実にレイアウトを再現可能になった。また,一太郎8では「読み込み時の形式でそのまま保存」で「Word形式(=RTF形式)」を指定できなかったが,一太郎9/Liteではこれが可能になる。また,標準保存形式をWord形式にもできるので,Wordユーザーが周りに多い環境にはいいだろう。
 なお,一太郎9の標準ファイル形式は,一太郎8/Liteと同じ「.jtd」で,完全な互換性を持っている。ただし,入力ガイドや付箋(後述)など,一太郎8/Liteにない機能を使った一太郎9文書は,当然それらが省略されて一太郎8やLiteに読み込まれる。また,一太郎9では,画像ファイルが文中に貼り込まれているファイルの保存サイズが,従来よりも小さくなるよう圧縮保存する設定が標準になっているが(画面3-1),そうしたファイルを一太郎8で読み込んだ場合は,画像が抜けて表示される点に注意したい。


(2)ファイラーの強化

 「開く」「名前を付けて保存」ダイアログが,WordPerfectのそれのように,ドロップダウンメニュー付きのファイラーとなり,各種文書のハンドリングがしやすくなった。
 ダイアログサイズは,マウスドラッグで自在に変形可能で,従来は表示されなかった一つ上の階層のフォルダを示すアイコンも表示される。キーボードなどで,より直感的なフォルダ移動が可能なのだ。
 また,よく使うフォルダを「クリップフォルダ」にショートカット登録し,ブラウザの「お気に入り」感覚で手軽にアクセス可能としている。また,一度指定したファイル名の履歴は,従来は最大で10個までしか残せなかったが,一太郎9では「履歴フォルダ」という仮想フォルダに,ファイル名の履歴を最大500個まで残せるようになっている。「ファイル名」欄での履歴表示は従来通り10個となるが,「ジャンプ→履歴ファイルへ」ですべての履歴を日付などでソートして探すことができる。何文字か打った段階で履歴が絞り込まれる,あるいは,ファイル名がオートコンプリートされるといった機能は,残念ながら用意されていない。
 文書保存後に編集や印刷を不可にする指定も可能で,改竄されたくない文書の配布の際に便利である。ちなみに,「社外秘」「コピー厳禁」などの透かし文字を一覧から選択して,文書の背景に貼り込むこともできる(画面3-4)。
 また,「ファイル名」の欄に,URLを打つと,一太郎9にWebページが読み込まれるようになった(ナビモードにはならない)。WordPerfectのような,「開く」ダイアログがそのままWebブラウザになる,プレビューの中身への検索をかける,などといったことはできない。しかし,ファイル一覧画面での右クリックメニューの内容も充実したので,「開く」「名前を付けて保存」からエクスプローラに戻る必要性はほぼなくなるだろう。


(3)インターネット対応

 HTML4.0,CSS1(Cascading Style Sheets,Level 1)対応となり,従来のHTMLでは表現しきれなかったインデントや細かな文字サイズ指定などを,HTML保存後もある程度維持可能になった(画面3-5)。また,HTML読み込み時に,人によって異なるタグの書き方を柔軟に吸収して表示できるようになった。
 一太郎9上でボタンや入力フィールドなどの部品を並べ,サーバCGIと連携したWebページ作成に取りかかることもできる。特許の電子出願に最適な形式でのHTML出力もサポートしている。
 さらに,文書の印刷イメージをそのままGIF/JPEG形式の画像にできる。その上で,ページ送りボタンや背景色を指定してHTML文書を作成すれば,改竄不能のWebページも作れるわけだ。


(4)ワープロ専用機対応

 一太郎9では,「ワープロ専用機互換キー割付」を用意し,OASYSや文豪など,多くのワープロ専用機に共通の,最大公約数的なキー配列を一括設定できるようになった。文豪DPキーボード,日本語USBキーボードのキー割付にも対応している。「ツール→オプション→オプション→操作環境」から設定した場合は,ファンクションキーの内容がワープロ機相当になるのはもちろん,ワープロ専用機の9割が採用しているというShift+矢印キーによる罫線描画(後述),Shift+Enterによる改ページの実行などが可能となる。
 また,特殊フォーマットのOASYS文書ディスク(一部機種を除く)をWindows98/95上で直接読み込めるようにもしている。
 さらに,一太郎9には,ワープロ専用機でおなじみの行ソート(罫線表のセル内の行ソートにも対応),指定した範囲を1ページにうまく収めるよう改行幅を自動調整する「ページ内均等割付」などの機能も搭載している。


画面

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画面3-1 「ファイル→名前を付けて保存」ダイアログの「詳細」ボタンで,「画像枠のファイルサイズを小さくする」チェックが行なえる。なお,一太郎9では,WMFの画像貼り付けにも新規対応した。

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画面3-2 一太郎9の「開く」「名前を付けて保存」ダイアログが強力なファイラーになった。

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画面3-3 一太郎9では,「開く」ダイアログなどで入力したファイル名の履歴が,なんと500個まで残せる。

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画面3-4 「ファイル→文書補助→文書セキュリティの設定」で,文書にパスワードや編集・印刷禁止の指定,透かし文字の設定などができる。

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画面3-6 「ワープロ専用機互換キー割付」利用時には,画面下部のファンクションキーガイドの内容も,まったく変化してしまう。

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画面3-5 一太郎9文書をHTML出力した際の,再現度がUPした。なお,HTML作成時に役立つWebブラウザ同等の表示モードは,今回も導入されなかった。


4.その他の新機能

(1)罫線機能の充実

 一太郎8の罫線機能は,1本線の罫線を自在に引くのには向いていたが,罫線で表を描いたときのセルの扱いは不便だった。一太郎9では新たに,1つのセル内で複数行にまたがる文字列の一括範囲選択が可能となり,セル内文字列のコピー/移動/交換も,ワンコマンドで実行可能になった。また,罫線表内では,Wordの作表機能のように,セルの端から端までの罫線を一気に引かせることが可能となった。罫線を引く操作の最中には,どんなキーを押すと「面取り」罫線になるかなどの操作法がツールチップで表示されることになる。
 また,従来,罫線消去の際に,罫線の全角/半角,通常/行間などの設定を一致させねば消去を行なえなかったが,一太郎9では,それらの区別なく,すべての罫線を消去できるコマンドを用意している。
 前述の「ワープロ専用機互換キー割付」利用時には,罫線モードに切り替えることなく,Shift+矢印キーで,カーソルの軌跡をたどるように罫線を描き,Ctrl+矢印キーで罫線をなぞるようにして消去できる。Ctrl+Shift+←→キーでは,左右にある罫線かマージンにぶつかるまで,横幅いっぱいの罫線を一気に引ける。また,Ctrl+Shift+↑↓キーでは,その行にある縦罫線をまとめて上下に延ばすことができる。
 なお,従来からExcel表をワークシートオブジェクトとして貼り付け,インプレース編集を行なう(一太郎上にExcelのメニューを呼び出して編集する)ことが可能だったが,一太郎9ではLite同様,メニューやボタンで直接Excel表を貼り込むことができるようになった。Excelの表をコピーして,そのまま一太郎の罫線表にして貼り込む,Excelデータをそのまま差し込み印刷に使う──などは,従来通り,可能である。

(2)付箋

 「挿入→コメント→付箋を貼る」で,一太郎9文書中に,印字されない「付箋」を貼ることが可能になった。用途に応じ,ウィンドウ単位,ページ単位,行単位で付箋を貼ることができる。
 付箋を貼ると,黄色の付箋が登場するので,文字列をそこに直接入力することになる。右クリックメニューなどから付箋を「非表示」にすると,文書中に小さな黄色の四角いマークが貼られ,付箋の存在を明示する。通常は,そのマークをクリックすることで,付箋が開くことになる。
 文書中の付箋を一括で全表示/全非表示にできるほか,マウスが近づいたときのみ表示する,文書オープン時のみに表示する,などといった指定も行なえる。また,貼り付けた付箋の一覧から,各付箋位置に一気にジャンプして,本文編集を行なう,といった使い方もできる。
 「入力ガイド」同様,複数の人間が携わる文書などで力を発揮するだろう(画面4-2)。


(3)コピー履歴からの選択入力

 一太郎9では,カットやコピーを行なったあらゆるデータ(文字列/罫線/オブジェクトなど)の履歴をすべて残して再利用させる,マルチクリップボード機能を搭載している。右クリックメニューなどで「コピーの履歴から貼り付け」を選べば,履歴の一覧から,過去にカット/コピーした文字列やオブジェクトを,即座に貼り付けられるのだ。
 履歴はメニュー上では9個までしか表示されないが,「コピーの履歴から貼り付け→一覧から貼り付け」を選べば,過去50個までの履歴を,中身を確認しながら,選択貼り付けできる。
 これらの履歴は,新しくなった「アルバム」にも自動で登録される。「アルバム」上で履歴をソートしたり,一部履歴を削除したりもできる。
 なお,コピー履歴は,放っておいても,自動で古いものから消えていく。

(4)スライド機能

 「表示→スライド」を選ぶと,文書が印刷イメージで全画面表示され,スペースキーやマウスクリックでページめくりを行なえるようになる。マウス操作でページ指定などを行なえるスライドコントローラも用意されている(画面4-6)。文書上に一時的にマーカーを引きながら,他者へのプレゼンテーションを行なうこともできる。


(5)段落飾り

 「書式」メニューに「段落飾り」が新登場。段落全体を飾り罫で囲んだり,背景色に色やグラデーションを指定したり,影や塗りつぶしを指定したりして,手軽に派手な段落を作ることが可能になった(画面4-7)。


(6)検索/置換ダイアログの変更

 ダイアログを開いたまま本文編集ができるモードレスダイアログ仕様ではなくなり,一太郎Lite同様のモーダルダイアログ仕様になったが,能力的には一太郎8相当である(画面4-8)。
 検索/置換ダイアログでは,Liteで省略された属性検索/属性置換に代わる「飾り検索/飾り置換」タブが登場。「指定した文字列を含む段落のみを表示する」機能が省略され,「開始位置からの検索文字列をすべて選択する」が新登場したのはLite同様。ツールボックスに「検索」が登場し,検索文字を見ながらの編集ができるのも同じだ。
 あいまい検索能力は,一太郎8同等。Liteと違い,「機能開き括弧/機能閉じ括弧/機能区切り/類義語/機能」検索も可能である。

(5)ふりがなの強化

 ふりがなの位置やサイズ,色,フォント種類などを指定可能になり,下付きのふりがなも付けられる(画面4-9)。今回のバージョンアップでは数少ない,DTP的な表現力向上ポイントだ。


(6)修太の変更

 文書校正機能「修太」がマイナーチェンジ。チェック箇所にアンダーラインを引き,かつアンダーラインが引かれた言葉を含む段落に絞った表示を行なえるようになった(画面4-10)。


(8)JSフォントエフェクトツール2.3

 フォントの変形/加工を行なうJSフォントエフェクトツールが,Ver.2.1からVer.2.3へと進化。「挿入→オブジェクト枠→作成」から起動すると,最初にテキスト入力/フォント指定を促すダイアログが登場するようになった。また,フォントに「シェーディング」をかけることも可能となり,光源に関して,明暗/光源位置/なめらかさ/光源色/影シフト量を,補助光源に関して色や角度を,設定できるようになった。またその際,拡散/光沢などの度合いを%などで設定可能になっている(画面4-11)。


(9)印刷機能の拡張

 印刷ダイアログに,3つのタブシートが登場。ここで内容が新しいのが,「特殊設定」タブ。これにより,(1)1枚の用紙に複数のページを同時に縮小印刷する(=レイアウト印刷),(2)編集時の用紙とは異なる用紙に文書がうまく収まるように,あるいは%を指定して,拡大/縮小印刷を行なう──という2通りの指定が可能になっている(この2つを一部組み合わせた印刷もできる)(画面4-12)。レイアウト印刷時は,横1〜8/縦1〜8のページ数を別々に指定できる。


(10)送信メニューの変化

 付属のメーラ「Shuriken」との連携のみに特化されていたLiteの「メール送信」機能と異なり,一太郎9では一太郎8同様の「送信」メニューが採用されている(画面4-13)。「テキスト形式を付加する」送信が行なえる点が,新しい。


(11)ウィンドウを選択して表示

 従来,3つ以上の文書ウィンドウを開いている場合に,それらすべてをワンコマンドで上下/左右に並べることはできたが,任意の文書ウィンドウのみを選択して上下/左右に並べて表示する,といった芸当はできなかった(ユーザーが手で並べねばならなかった)。一太郎9では,「ウィンドウ→ウィンドウを選択して表示」が追加され,それが可能となっている(画面4-14)。


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画面4-1 従来できなかった罫線表内の範囲指定が可能になった。

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画面4-2 一太郎文書に付箋を貼る。付箋の背景色や大きさ,文字のフォント種類やサイズなどは細かくカスタマイズ可能で,それらを付箋テンプレートとして登録しておくこともできる。

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画面4-3 一太郎9では,クリップボードに積み込んだデータの履歴を保持し,それらを後から選択入力できる。

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画面4-4 コピー履歴を,コピー内容を見ながら選択してペーストすることもできる。

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画面4-5 「挿入→アルバム」も新しくなった。サムネイルの一覧から貼り付けるデータを選ぶ方式でなくなったのが残念だが,アルバムの整理やソートが可能となり,使い勝手が向上した。

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画面4-6 一太郎9で作った文書でそのままプレゼンテーションができるのがうれしい「スライド機能」。自動ページ切り替えも可能。

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画面4-7 新登場の「段落飾り」ダイアログ。段落を気軽に彩れる。

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画面4-8 一太郎9の置換ダイアログ。Wordのような,文字の並び方をパターン指定して検索する機能は今回も搭載されていない。個人的には,正規表現対応を図ってほしい。

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画面4-9 「書式→ふりがな」で設定できるふりがなの書式が,多彩にカスタマイズできるようになった。

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画面4-10 校正箇所のマーキング&絞り込みが可能になった新「修太」。

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画面4-11 付属のJSフォントエフェクトツールがマイナーバージョンアップ。なお,同じツールでも「JS数式作成ツール」は,一太郎8と同じVer.3.0のまま。

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画面4-12 進化した「印刷機能」。紙代もかからなくなり,地球環境にも優しい機能に進化した。

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画面4-13 編集中の文書(全部あるいは一部)を,ダイレクトにFDDなどに送信できる便利な「ファイル→送信」ダイアログ。その違いが,わかるだろうか?

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画面4-14 複数文書ウィンドウの並べ替えが,選択的に行なえるようになった。まさに「痒いところを掻く」新フィーチャーだ。


コラム:
COLUMN
「一太郎9」
識者の意見 木下由美さん 

一太郎関係では最強のテクニカルライター。NIFTY SERVE ジャストシステムステーション マネージャ

「これ以上,何をバージョンアップする点があるの?」というのが,記者発表に向かう前の心境でした。一太郎にしろATOKにしろ,すでに機能満載の観があり,また,一太郎Liteの登場で一太郎の新しい面も見えてきたため,一太郎Office8シリーズと一太郎Liteで充分なんじゃないか,と思っていたのです。が,デモを見てココロが変わりました。「一太郎9&ATOK12 大歓迎」です。
 「一太郎9 3つの特徴」のうち,メインだと思われる「ドキュメントナビ」「ドキュメントセンター」よりも,私自身は「使いやすさを徹底研究」している点に魅かれました。デモンストレーションで紹介されたものを見るかぎりでは,1つ1つは小さなものなのですが,「うんうん,これ,便利そう」と思うのばかりです。しかも,NIFTY SERVEのジャストシステムステーションや,JustNet内の電子会議室に書き込まれているユーザーの声が,けっこう反映されているな,ということも(「選択ペースト」「ソート(ワープロ検定には必須)」「ワープロ専用機ライクな罫線操作」など),運営スタッフとしてはホッとします。ユーザーの要望は,可能な限り,どんどん吸い上げてほしいものです。そのためには,ユーザーが意見を言える場が,もっと拡大する必要もありそうです。
 一太郎8と一太郎9と一太郎Lite,文書ファイルは互換性があるとのこと(拡張子は,すべて.jtd)。私自身は,デスクトップで一太郎9を,モバイル(愛機はリブレット60)では一太郎Liteを,と併用することになるでしょう。でも,パソコンの用途は人それぞれ。テキスト文書や,あまりレイアウトに凝らない文書のみを扱う人なら,一太郎9の豊富な機能は不要で,かえって,一太郎Liteのほうが楽です。一太郎Liteを買う/一太郎9を買う/一太郎8のまま使い続ける……どうするべきかは,各自の用途に合わせるべきであって,一概に決められるものではないのです。といっても,新しいものほしさ,ATOK12ほしさも否定できません。ユーザーが,自分に合ったものを選択することができるだけの充分な判断材料を提供するような販売方法/広告を期待します(現時点でも,一太郎8単体/一太郎Office8/一太郎Office8Pro/一太郎プレミアムのどれを買うべきか迷う,という人は多いようです)。
 ただ一点,一太郎7ユーザーは,そのまま一太郎7を使い続けるのは避けたほうがよいでしょう。マクロなど一部の機能が搭載されてないこと,動作が重いことなどが理由です。


コラム:
COLUMN
「一太郎9」
識者の意見 2
神田知宏さん
一太郎マクロでは最強のテクニカルライター。Word98への造詣も深い。

IME98はATOK12の敵ではない

 今回の一太郎9発表に臨んで,とにかく感動したのは,ATOK12の変換能力の高さだ。指示代名詞の判断や数詞処理の正確さ,それに誤用および商標の指摘! 「こんなことまでやるのか,ATOK12は!」と,ぼう然とすることしきりだった。
 もちろん記者発表の席でのデモだから,失敗しない例を選んでいるのだろうが,それを差し引いても,ただただ,画面で繰り広げられる完璧さを,無批判に見ていることしかできなかった。
 ここ数カ月,私はあえてMS-IME98を標準のIMEとして使っている。はじめてIME98を使ったときは「MS-IMEも賢くなったものだ。ATOK11と比べても遜色ないのではないか?」と思った。しかし,どうもおかしいと気づいたのは2カ月くらい使った頃からだ。「IME98の調子がよくない」「変換効率が落ちている」と,おぼろげながらに感じ始めていたのだ。その疑問は,本誌'98年7月号p.242の丸山氏のインタビュー記事で裏が取れた。IME98は,「ATOK11に迫る実力は最初だけ。使えば使うほど変換効率が落ちるIME」だったようだ。
 ATOK12は,そのATOK11をも凌駕する能力を備えているらしい。頼もしい限りだ。

一太郎はアイデンティティを捨てたのか

 ドキュメントセンター構想については,要するに多様なファイルフォーマットに対応しているだけのことで,ことさらに「開発コンセプト」と持ち上げるほどのものか? と感じた。
 しかも,どうにも納得できないのが「保存形式のデフォルトをWord形式にできる」点だ。Word文書を一太郎9で開き,一太郎9の機能で編集した後,Word形式で保存する,という作業を想定しているのだろう。しかし,これでは一太郎のプライドやアイデンティティはどこに行ったのだ,とこぶしを握り締めたくもなる。
 「入口と出口はWordでもよいから,編集には一太郎を使ってね」と,そういう提案なのだろう,と感じた。

やはり一太郎は日本語に強い

 そこまで言うからには,「こと編集能力にかけては自信あり」なのだろう。発表を見た限りでは,ポイントは「日本語」にあると思った。
 ドキュメントナビでは,質の高い文例集や挨拶文を数多く用意しているという。たしかに,一太郎8のテンプレートや文書作成機能を見れば,その質の高さは容易に想像がつく。すぐに使えて,しかも実用に耐えうるサンプル。これが,Wordにはない部分なのだ。
 先般私は,『Z式マスターWord98』(アスキー刊)という書籍のプロジェクトに参加した。その際,書籍で使えそうなサンプル文書を,Word98のフォルダから探し出すという作業をしたのだが,実に困難を極めた。テンプレートにしろ,文例ウィザードにしろ,実用に耐えうるものが,極端に少ないのだ。
 日本人が使う,日本語を書くための道具なのだから,日本語の文書に長けているということは,何をおいても実現しなければならないことだ。この点で,一太郎9には一日の長があろう。

あとは処理速度が問題だ

 では,Wordユーザーは,もろ手を上げて一太郎9に乗り換えるべきなのか。私は処理速度がその判断の分水嶺だと思う。
 Wordを使っていて,なにより安心できるのは「軽くて速い」ことだと考えている。「重くて遅い」アプリは,いくら便利でも常用するにはそれなりの覚悟が要る。
 加速度スクロールやWindows APIの使用による高速化といったことが謳われているが,こればかりは使ってみないことにはわからない。
 私のマシンの標準IMEがATOK12になることは確実だろうが,原稿を書く道具が一太郎9になるのか,Word98のままなのかは,処理速度を見てから判断したいと思う。


5.基本的な使い勝手の向上

 さて,最後に,話としてはやや地味だが,実際の操作においては効果絶大となる,基本的な使い勝手にまつわる新フィーチャーを紹介しよう。


(1)加速度スクロールからさらに加速!

 まず,スクロール。Liteと同様に,矢印キーを押し続けることでスクロール速度がどんどん速くなる加速度スクロール方式が採用されている。しかし一太郎9には,まだ秘密があった。加速度スクロールに目が慣れた方向けに,Liteにはなかった「最加速」指定が可能になったのだ。その場合の加速感は猛烈らしい……(未体験)。もちろん,従来のAlt+矢印キーによる高速スクロールも可能である。
 スクロールバーをマウスでドラッグした際に,文書もリアルタイムに追従してスクロールする「リアルタイムスクロール」,インテリマウス対応,袋とじレイアウト時にページに沿ってスクロールするなど,そのほかは一太郎Lite同等である。


(2)入力をアシストするきめ細かい対応

 そのほか使用していてかなり目立つのが,ガイド表示など,入力をアシストする細かい機能が,多数盛り込まれている点。
 ATOK12関連で言うと,前述の(1)カナ/漢字などの入力モードを,アプリや文書を切り替えた時点などでツールチップ表示する以外にも,(2)入力カーソル前後の文字種に合わせて,ATOKの入力モードを半角/全角などに自動で切り替え,その旨をツールチップ表示する。(3)未確定の文字列を,本文中に最初から挿入された形でインライン表示する(Word同等)。(4)一太郎9の「ツール→オプション」からATOK12の各種設定を行なえる。(4)一太郎9ではLite同様,12個のファンクションキーガイド(Ctrl,Shift,Ctrl+Shiftを押すと内容が変わる)が画面下に表示されるが,ATOKでの変換時にはそれらがATOKのキーガイドに変化する──などがある。
 また,従来から表示されている画面下部のステータスバーの内容も,白地に青字で表示されるなど,かなり目に付きやすいものになった(従来は気づく人が少なかった!)。
 マウスクリックできるアイテム上ではマウスのポインタが指マークになる,入力カーソルの形が挿入モードでは縦棒,上書きモードでは短い横棒になる──など,現在の状況も目で見てすぐ分かるように工夫された。


(3)キーボードのみでの快速操作も可能

 一太郎Lite同様,ファンクションキーや矢印キーでほとんどのコマンドを実行可能であり,(1)Ctrl+↓↑でのフォントの2ポイントずつの拡大・縮小,(2)Ctrl+→でのコピー,Ctrl+←でのカット,その後のEscキーでのキャンセル,(3)Shift+←→での文字単位,Shift+↓↑での行単位での範囲指定,(4)ダイアモンドカーソルの実現などに対応するフルキーカスタマイズ──などが可能となっている。もちろん,Escメニューも健在である。
 なお,ヘルプに関しては,JIIF(自然言語で,コマンドを直接実行する,FullBandに搭載の独自技術)の採用や,HTMLヘルプの採用はなかった。内容は新しくなっているが,仕掛けは一太郎8同等である。期待のJIIFは,もうやめてしまうのだろうか?
「そんなことはありません。実はJIIFは,非常にアプリに密着している技術でして,アプリごとに専用の辞書を相当作り込まなければならない。だから,一太郎のように膨大な機能を持つソフトが採用するには時間がかかるんです。現在は,JIIF用辞書の生成をある程度自動化するツールを開発している段階です。これが完成すれば,JIIF搭載アプリも続々投入できるでしょう」(丸山氏)

── 一太郎9全体に関してですが,コアとなる設計自体は,一太郎7や8と同じと考えていいのでしょうか。7月号で一太郎Liteについて,“一太郎8同様,JOCA(OCXベースの独自技術)で開発され,コアのコンポーネント(JSTARO.OCXなど)は一太郎8のものを利用している。しかし,全体制御やダイアログ操作など,アプリケーションを形成するプログラムは,いちから書き直されている。一部,一太郎8のモジュール(ライブラリ関係など)が再利用されてはいるが,その開発手法は根本から変化しているのだ。”と書きましたが,一太郎9もほぼ同じと考えていいのでしょうか。そして,高速化は,どの程度図られているのでしょうか。
「最初の質問に関してですが,基本的な開発の手法は一太郎Liteと同じですね。もちろん,一太郎Liteでは,カスタマイズ能力やマクロを削除することで,使用リソースを減らし,劇的な高速化を実現していたわけですから,一太郎9があそこまで(エディタレベルまで)高速化することはないでしょう。ただ,ダイアログなどで,Windows95起動時にメモリ上に読み込まれる標準モジュールの活用率を上げる工夫を行ないつつ,ダイアログ自体を高速動作するよう設計し直した点は,Lite同様です。ですからダイアログなどは,かなり高速に表示されます。全体の動作速度が何%ぐらい高速化できるかは分かりませんが,期待してください」(佐尾山氏)
──最後に。今回の一太郎のアプローチの変化は,どういうところからもたらされたのか,お伺いしたいのですが。
「ユーザーインターフェイスの問題を考える専門チームを作って,Wordも一太郎も使ったことがない人たちに,Wordや一太郎を使ってもらうテストを何度も繰り返しました。それで,ユーザーインターフェイスの何が問題になるのか,徹底的に洗い出したんですね。自信を持っていたのに,分からないというリポートがダーッと来たりして(苦笑)。そうした意見を謙虚に受け止めて機能を練った,それが一太郎9と言えるでしょう」(丸山氏)
「従来の一太郎の“白紙に自由に書いていく良さ”と,Word的なもののよさ──つまり,ある程度の枠を与えて,ちょっとしたことを気軽に処理させるWordの良さですね。うまくそれらを融合させつつ両立させられないだろうか,と考えていったんです。そして今回の一太郎9で,独自の,かなり斬新な方向性を打ち出せたと思います」(佐尾山氏)
 ともかくも,今また,新しい時代が幕を開けた。メジャーバージョンアップをするにふさわしい変貌を遂げた一太郎9とATOK12を見て,私はそう感じた。 (工藤)


画面

キャプション:
画面 一太郎9の全ドロップダウンメニュー(「文字入力」時)


コラム:
COLUMN  一太郎のバージョンアップを考える
 一太郎8の発売が,1997年2月。一太郎9が1998年9月予定ということで,メジャーバージョンアップとしては一年半ぶりではあるのだが,実は一太郎8には,以下の4種類が存在している。
1997年2月 一太郎8
1997年9月 一太郎8OfficeEdition(一太郎Office8に入っていたもの)
1997年12月 一太郎8OfficeEdition/R.2(一太郎Office8Personalに入っていたもの。1998年1月の一太郎Office8Pro,1998年2月の一太郎プレミアムに入っていたものもこれ)
 ※一太郎7/一太郎8が存在する環境に,単体のFullBand/三四郎8/五郎8などをインストールすると,一太郎8OfficeEdition/R.2に置き換わる。
1998年7月 一太郎8OfficeEdition/R.2U(一太郎OfficeシリーズにPowerUpDiskを導入するとこれになる)
 ※一太郎7/一太郎8が存在する環境に一太郎Liteをインストールした場合も,一太郎7/一太郎8は,これに置き換わる。
 新しいのが出るたびに追い続けてきた人の支払ってきたバージョンアップ金額と,たとえば一太郎7を使っていて一太郎8へのバージョンアップを見送っていた人が,一太郎7と一緒に使おうと三四郎8の単体を買った,というのを比較すると,後者は,三四郎8の導入で,一太郎7も勝手に一太郎8OfficeEdition/R.2に置き換わってくれ,一太郎だけを見ればタダで新しいバージョンを手に入れたように感じる。先に手を出した者が「損」をした気になってしまう。
また,最新版の一太郎8OfficeEdition/R.2Uにするために,1000円でPowerUpDiskを申し込んだが,実は一太郎Liteを購入して導入すると,PowerUpDiskを導入したのと同じことになる。となると,一太郎Liteを買うのなら,PowerUpDiskの1000円など不要だった,ということになる。
このあたり,戦略上は仕方ないのかもしれないが,ユーザーとしては,どうも引っかかりを感じ,なんとなく気分がよくないところである。 (木下由美)



月刊アスキー 1998年9号  204-219 ページ


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