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"GAZE" Topic

August 22 , 2003

特集「戦争か」
ユリシーズの脅威から大陸を守り切ったレールガン「ストーンヘンジ」。 全人類の希望が集結した大規模プロジェクトはその役割を終えつつある。 建設地、完成時期、性能、管理、費用配分、プロジェクトメンバーの国籍の割合など、 今回の計画があらゆる面で政治的配慮を尽くされたのは、この隕石迎撃砲に兵器転用の危険性が指摘されていたからだ。 それが今、エルジアの支配下にある。



「エルジアの暴挙」

 小惑星ユリシーズの衝突から4年。大陸各地に残る爪痕は今だ癒えず、 各国が秩序の回復と被害からの復興に躍起になる中、その隙をつく形でエルジア軍はサンサルバシオンに侵攻。 同国内にあるかつての隕石迎撃砲を接収してしまった。各国が自国の問題で手一杯になる余り、 管理の不履行がこれまでも度々指摘されていた。新たな国際管理の枠組み作りが模索される最中、 その結論が出る前に、状況は極めて重大な局面へと移行した。
現在、施設には運営スタッフのほぼ全員が残っている。エルジア側の発表によると、 彼らは健康な状態で軍の「保護下」にあるとのことだ。エルジアは施設とともに、 それを動かすための知識と人材も確保したことになる。しかしストーンヘンジの警備にあたったUTO指揮下の航空機12機の消息はいまだつかめず、 警備隊員らの安否が気遣われている。
最も憂慮せねばならないのは、ストーンヘンジを得たエルジアがどのような活動を行うかだ。 集中的な隕石の落下はピークを過ぎたこともあり、この4年間のストーンヘンジの稼動率はゆるやかな下降曲線を描いている。 また8つある砲塔の内の1つが隕石の直撃を受けたこともあり、施設の「攻撃力」がどれだけのものかは不明だ。 しかし次に弾が発射されることがあるならば、その標的が隕石でないことは間違いない。





「大国の評価は決定的にさがった」

 「平和の象徴が踏みにじられた。許されざる行為だ」エルジアのサンサルバシオン侵攻を受け、 各国首脳は声明を発表。その全てがエルジアの暴挙を激しく非難し断固抗議する論調であり、 大陸における軍事的緊張は一気に高まった。穏健派で知られる中央ユージア条約機構(UTO)理事長でさえ、 今回のレールガン施設占拠に対しては声を荒らげる。
「自らの評価を地に落す、大きな過ちだ。エルジアは大陸の世論全てを敵に回している。大陸諸国経済同盟の加盟国は、 なんらかの軍事的リアクションを取らざるを得ないだろう」
大陸諸国経済同盟の加盟国は小さな国が多いが、しかしその軍事力の総和は数値的にはエルジアのそれに匹敵する。 大陸の権益全てをエルジアに渡すつもりがないのであれば、同盟側が何らかの報復に出ることは間違いない。
FCU大統領は、エルジア軍がレールガン施設並びにサンサルバシオン国内から撤退しない場合、 FCU軍とその同盟国による制裁攻撃を開始すると明言、最終撤退期限を9月14日とした。 各地のFCU軍はすでにサンサルバシオン周辺への移動を開始しており、 事態が戦争に発展する可能性が一段と高くなっている。





「難民問題で表面化する軋轢」

 エルジア軍が隕石迎撃砲占拠という暴挙に出た背景には、難民問題をめぐる国際社会との軋轢がある。
隕石落下により、ユージア大陸では数百万人が難民となったが、当時最大の難民受入国として期待されていたのはエルジアであった。 しかし2000年4月、エルジア外務省は突如、ビザ発給要件の引き締めを発表。これは事実上の難民受け入れ拒否であった。 同省の説明によると、すでに20万人がエルジアに入国しておりこれ以上の難民受入は不可能である、とのことだったが、 世界はこれに納得せず非難が集中した。
この発表後も、受入再開を期待して難民がエルジア国境に集まり続けた。エルジアは難民に対し他の国への移動を呼びかけ、 国営の航空機、バスなどを使った輸送を試みるものの、こうした努力を無視する形で、 一部のNGOは人道空輸計画と称する無計画な難民輸送を続けた。エルジアはこれに対し、無責任を通り越して殺人行為だと非難。 とうにキャパシティを超えていたエルジア国境の難民キャンプは、とどまることのない難民流入のため、犯罪と疫病が蔓延し始める。
国連のグッゲンハイム弁務官は、エルジア国境周辺に形成された難民キャンプを視察、 「キャンプは不衛生極まりなく、過密化が進み危機的状況だ」と語った。この時点で国境に集まった人々は約60万人。 大陸内外から寄せられた救援物資で、ようやく風雨を防ぎ糧を得る状況であったが、それもそろそろ心もとなくなり始めた。 「難民問題を1つの国に押し付けるべきではない。この悲惨な非難生活を続ける人々を救うには、国際社会の援助が必要だ」 弁務官はユージア大陸の他の国々に受入枠の拡大と避難計画の前倒し実行を要請したが、それにまともに答える国は少なかった。
「国として人として、手は尽くした。」エルジア外務大臣フレデリック・アップダイクは、我々のインタビューに応じてこう語る。 「エルジア国内にも大小合わせて10個の隕石が落下しており、特に首都ファーバンティ付近に落ちた隕石によって数万の国民が亡くなった。 今の我が国は、柔らかい寝床と暖かい食事が用意された快適なシェルターなのではなく、 大陸で最も被害を受けた苦難と混乱の土地であることを知ってほしい」
大きな身体と紳士的な態度が印象的な大臣だが、エルジアの難民対策に対する国際世論が話題にのぼると眉をひそめた。 「(他の国は)平時にはエルジア製品の不買運動をしているのに、金がかかる国際問題となると一方的に我が国を頼る。 100万人の難民受入は到底無理な話であり、批判されるべきは小国のひがみ根性だ」
個人的な意見だが、と彼は付け加える。しかしこの感情的な答弁が、エルジア国内の世論を反映したものであることは間違いなかった。





「反エルジアで諸国が結束。ISAF(独立国家連合軍)設立」

 ロバート・シンクレアFCU大統領は記者会見を行い、大陸諸国経済同盟はISAF(Independent States allied Force:独立国家連合軍)へと脱皮し、 軍事面でもより親密な関係を構築していくと発表した。
説明によるとISAFとは、大陸諸国間経済同盟加盟国11カ国を原加盟国として発足した集団的防衛機構で、ユージア大陸の安定を助長し、 集団的防衛並びに平和の維持をその目的とする。現在の加盟国は16ヶ国。加盟国が武力攻撃受けた場合にはそれを全加盟国への攻撃とみなし、 個別的又は集団的自衛権の行使による集団防衛によりその国を援助する。
FCUとその同盟国の間では、エルジア軍の軍事的脅威を前に、集団的防衛を目的とした軍事同盟の必要性がずいぶん長い間議論されてきた。 しかし経済共同体として以上の結びつきはエルジアを必要以上に刺激しかねないという意見が大半で、理論的な研究は進めつつも、 これまでは共同演習などの具体策が打ち出されることはなかった。
今回このタイミングでISAFという多国籍軍が編成されたのは、エルジアに対する制裁攻撃により全面的な戦闘へと突入した場合に備え、 各国の軍隊を統合して1つの指揮系統の下にまとめたいというFCUの思惑があった。もちろんその中心となるのはFCU軍だ。
ISAFの戦力はエルジア軍に匹敵すると言う。しかし実際戦闘となれば、双方相当の消耗と被害を覚悟せねばならない。 ISAFはエルジアと本気で戦争するつもりかとの質問が上がると、大統領は答えた。
「我々は必ず勝利する。それは明日太陽が昇るのと同じくらい確実な事だ」




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