大教大池田小児童殺傷事件の報道について

2001(H13)年6月8日
(財)全国精神障害者家族会連合会
〒110 東京都台東区下谷1-4-5
tel 03-3845-5084/fax 03-3845-5974
担当:事務局長 桶谷肇

 日頃、貴社におかれましては社会正義のため迅速で正確な報道のためご尽力されていることに対し深甚なる敬意を表します。
 本会は217万人いるといわれる精神障害者(厚生省による)を身内に抱える家族の会であり、1965(昭40)年に創設され、現在、全国に約1600の家族会および47都道府県の連合会によって構成されています。本会は精神障害者の医療・福祉向上のため、精神保健福祉に関するさまざまな知識や情報の普及、精神疾患に対する偏見をなくすための啓発活動、行政に対する働きかけなどを行っています。また、精神保健福祉法の規定(精神保健福祉法51条の2)により、「精神障害者社会復帰促進センター」に指定されております。

 このたび大阪府池田市で起きた事件で、被害にあわれた方の一日も早い回復を願うとともに、亡くなられた方々に対し深く哀悼の意を表します。またご家族の皆さまの驚きや悲しみをお察し申し上げます。

 さて、この事件で逮捕された男には、精神病院の通院歴があったと報じられていますが、その記述については、私たち身内に精神科治療を受ける者を持つ立場から見て重大な疑義を感じざるをえません。記事(番組)の中で報道されている「男は…精神病院に通院中で…」という部分は、その表現(以下、病歴報道)によって、読者(視聴者)には「精神疾患」が事件の原因であり、動機であると理解されてしまいます。その結果、「精神病者(精神障害者)はみな危険」という画一的なイメージ(=偏見)を助長してしまうと考えるからです。

 報道機関には「容疑者が精神障害者である場合に、その本人の人権保護の目的で匿名にする」という原則があるようですが、精神科の病歴報道はそうした意図に反して精神障害者一般を危険視するような報道になってしまっているのではないでしょうか。

妄想や幻聴などの症状は薬物療法でコントロールしやすいといわれています。通院中だったとだけ報道するのではなく、通院中にもかかわらず、なぜこんな事件が起きたのか、服薬はきちんとしていたのかなど、事件の背景をきちんと取材し、今後の教訓となるような報道をしてください。

 どの病気でも「早期発見・早期治療」が大切なのは言うまでもありません。しかし、「精神障害者は危険」という偏見の存在が、精神科医療につながることをためらうような風潮を助長しているとしたら、二重に不幸なことだと考えます。

 現在、入院患者だけで約33万人、通院医療費補助受給者だけでも約34万人が精神科に受診しており、約200万人近くの患者が精神科に入院・通院しています。こうした人たちの立場や気持ちにも配慮した記事(番組)づくりをお願いいたします。

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