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鈴木 次に“コンストラクションモード”についてなんですが、これについては、どういった経緯から入っているのでしょうか?
石津 ゲームを製作する過程で、戦闘を入れるツールを作ってもらったんですが、これが非常にうまくできていたんですよ。久田君というプログラマーが作ったものなんですけれど。一方、「bis.」を発売するに当たって「ストーリーのムービーをつけるだけじゃ、なんか寒いよね……?」という意見もあって。そうした中で、「このツールを製品化しても面白いんではないだろうか」ということをプロデューサーが言い出したので、いいんじゃないとなったのです。
鈴木 すると、ゲームを作る上でのツールをもとにした発展形、ということですか?
石津 そうですね。まぁ、まったく同じというわけではありませんが。
鈴木 あれをいじれば、かなりの面が作れますよね。
石津 そうすると、ゲームの製作者と同じ苦労を背負いますけどね(笑)。
鈴木 このコンストラクション機能も、本来は前作の段階で構想されていたんですか?
石津 いや、それはないです。「bis.」で初めて企画されたものです。
鈴木 僕は前作の「PANZER FRONT」に続き、今回の「bis.」でもゲームのマニュアル製作を担当したんですが、コンストラクションの部分は本当に感心するほど多機能で、マニュアル一冊の中に占める比率でもかなりボリュームがありました。総じて“コンストラクションモード”の完成度については、満足されていますか?
石津 ええ。非常に。
能登 まぁ、できる限りのことはやったので。
鈴木 では、次に“パンツァーフロントモード”について……。
能登 正直に言えば、もっと戦車を追加したかったのは事実ですね。自由にできるといいつつも、結局、戦車も戦場もある程度、限られたものしかないので……。
石津 でも、あれ以上に戦車を増やすというのは、もう泥沼なんですよ。前作における戦車の装甲板の性能値を見直して、ちょっと現実と違うかな、というのを直したりしたんですけどね。それを加味するだけでも、限界でした。ゲーム内の戦車ですが、当たり所が30カ所ぐらいあるんですよ。それを全部の角度と全部の装甲板の厚みに応じて分類するわけですから、データを管理する側が戦車のことを知らないと、ある意味、非常に難しいんです。
能登 それを知らない人にお願いすると、常識的な、もう「これって常識じゃないの?」というような部分での間違いが、あったりして……。
石津 これは、宮武さんのデザインした架空戦車の話なんですけど、製作の途中で、側面装甲板の厚みが前面に入れられていたりしてね(笑)。ずれていたんですよ。そういうのがね、あったりする。「どうも弱いな……」とは思っていたんだけど(笑)。
鈴木 製品版ではそれ、ちゃんと直ってます?(笑)
石津 直ってます(笑)。あれは戦後のアメリカの、T30という重戦車の性能をもとに作ってあるはずなんで、「それなりに強いはずなのに」という理由から、判明したんですけどね。
鈴木 ところで、ユーザーからの反応はどうでしたか? これは現時点ではまだ、前作に対する反応に限られてしまいますが……。
石津 まぁ、戦車好きの友人たちには、細かい不満もあるでしょうけど、だいたい楽しんで、満足していただいているようです。
鈴木 永野さん(永野護氏)も、そういうところに入るんですか?
石津 いやいや(笑)。永野さんには2、3度しかお会いしてないんですけど、初めてゲームをプレイしていただいた時から、もう結構ウケてもらっていて……。戦車が大好きな人ですからね。でも、戦車って特殊な世界を楽しむ、というと少しアブないかもしれないですけど、そういうのも楽しいんじゃないかな、とは思いますね。
鈴木 そういうものですよね。そもそも“戦場”というシチュエーション自体、自分では体験できないものですし……。今のゲームなどを見ていると、消防士になったり、建設機械を動かしたりと、意外と「がんばれば自分でもできるじゃん」というのがテーマになっているな、という印象があるんですよ、僕には。
石津 戦車戦というのは、もっと切羽詰まったところですね、たしかに……。
鈴木 ゲームの中で建設機械を動かすくらいなら「戦車を動かした方が!!」という気がするんですけど、ねぇ……。
石津 現実に仕事で建設重機を動かしている連中に聞くと「いやぁ、毎日仕事でやっているから、わざわざゲームでやったことない」って(笑)。

鈴木 話は戻りまして“パンツァーフロントモード”なんですが、今回の「bis.」で増えたマップの数というのは……
石津 8ですね。タクティクスで。
鈴木 これらのマップに関しては、やはり前作で間に合わなかったものですか?
石津 ですね。もともと「PANZER FRONT」に入れる予定で作っていて、ギリギリになって落としたものもありますから。“ゼーロゥ”とかは、最後の最後で落としたマップですね。これはもう、時間がなくて、戦闘がうまく組み上げられなかった。で、「だったら思いきって入れるのをやめよう!」って、落としちゃいました。おかげで今回サーチライトつきで完成したんですけどね。
鈴木 九州の串良のマップも存在しますが、あれは……?
石津 あれだけは、今回、まったくの新規で企画したものですね。
能登 串良は、本来は「三式(中戦車)を出したい」というところからスタートした話だったんでしたっけ?
石津 そうそう。コンストラクションモードで、日本軍の戦車をサービスで入れようと始めたんですけど、途中で「どうせやるんだったら、専用の戦場も用意しちゃえ!」ということで。そういう経緯で生まれたマップですね。
鈴木 当然、あれは架空の話ですよね。
石津 そうです。1945年(昭和20年)の11月ですからね。「アメリカ軍による日本本土上陸」という、そういうシチュエーションを考えて……舞台を千葉県にするか九州にするかでずいぶん迷ったんです。地図を両方買ってきて、眺めて。そうするうちに候補の一つだった千葉県の茂原の地形があまりにも平坦で、「ゲームにするとあまりにも単調かな」と感じられたもので、最終的に九州の起伏のある地域にしてみました。ただ、僕は千葉県出身なんで、あのマップには千葉の田舎を感じる、昔の風景を再現してみたんです。設定上は九州なんですけれど、僕が知っている田舎に近いですね。
鈴木 いま九州に行っても、当時の風景なんて残ってないでしょうね。
石津 一応調べたんですけど、よく分からないことも多いんですよ。たかだか60年くらい前の話なのに、同じ日本人がその風景を忘れている、知らないというのは、なんかいやな話ですよね。そこは本当に土の道だったのか、それとも砂利が敷いてあったのか、とか……。当然アスファルトではなかったんでしょうけど(笑)。アメリカ軍の上陸に備えて、道自体もけっこう補修されていたみたいなんですが、実際にどういう風に補修していたのかとなると、調べる時間も足りないこともあってわかりませんでしたね。
鈴木 仮に首都圏での本土決戦を想定するとすれば「茂原あたりで戦車戦」という考えも、あったのかもしれないですけど……。
石津 実際、茂原あたりになった可能性はありますね、九十九里に上陸してきたとなると。選択としては「昭和20年・秋」の九州で志布志周辺にするか、「昭和21年・春」の設定で千葉県・茂原にするか。仮に翌年3月の茂原を舞台にマップを作るのであれば、風景には梅か菜の花を入れたり、ね。それもまた「作りでがあったかな」という気もしますが……。
gM  串良のマップで感心したのは、地面の草の色から空から山肌まで、どれも「日本の色をしている」ということでした。ヨーロッパ・ステージのものをそのまま持ってきているとか、山肌・遠景は流用とかではなくて、明らかに「空と山肌は日本だ!」と……。
石津 あそこはもう、苦労してもらいましたから、担当者に(笑)。ずっと横についていて、こまかく言ってましたからね。
鈴木 こだわった?
石津 はい。それに対応してくれた、美術担当の森君が大変だったけど。ほとんど全部のマップは、彼1人で作ってます。
gM  串良のマップでゲーム開始してすぐのところ、左側に階段があるじゃないですか。階段を登ったところには小さな祠があって……。あそこは、わざわざ苦労して登って行っても見通しがきかなくて、戦術的にはまったく意味がないようですけど……。
石津 ええ、あれは洒落です(笑)。鳥居も登場するでしょう? やっぱり日本なんで、鳥居があったほうがいいかな、と。それから串良のマップには、石でできた道祖神も道路のすぐ脇に2つほど、置いてあるんですよ。
能登 やりすぎると怒られるかも知れないですけどね、各方面から。
石津 基本的に、「海外の人間が勘違いしてつくる日本」に絶対したくなかったんですね。今あるゲームというのは、どんどん過剰気味に演出していく。ユーザー側に楽しませるために、過剰演出でどんどん際限なく膨らんでいるでしょう? アニメのコスチュームデザインにしてもそうです。そうじゃなくて、普通のさりげない風景をつくるとか、そういう努力が足りないんじゃないかな、と僕なんかは思うんですよ。
鈴木 たしかに過剰に作って「そら見ろ!」というのが多い。
石津 そういうものが絶対ダメだとは言いません。僕もずっとそうやってメカニックデザイナーとしてやってきたところもあるわけだし。ただ、すべてがあまりにも過剰になって来ると、もうお腹一杯になるんですよ。だから……。
gM  地味な部分の演出に、すごいこだわりが感じられますよね。たとえばキャタピラの後側で巻き上げられた土の表現であるとか、あそこらへんが……
石津 あそこは、能登くんのセンスですね、苦労してもらいましたから(笑)。あれは、よく見てもらえるとわかるんですが、地形が変わると、巻き上がる土埃の高さも変わるんです。
能登 泥っぽいところに入ると、はね上がる泥の高さも変わりますし……。だから、マウスに乗って泥沼に行ったりすると、大変ですよ(笑)。
鈴木 そういう、ごく当たり前のところを作り込んでいくのが、実はもっとも面倒な部分でもあったりする、と……?
石津 逆説的に言うと、CG・ゲームって今では何でもできちゃうんで、気がつくとデフォルメしたものを作っているんじゃないか、と思うことがあります。なんか、「自由がきかなかった時代のカメラワークでCGを作ってみるのも面白いんじゃないかな」、なんてね。当時のレンズって、特殊なものをのぞいては、絶対に最短撮影距離90cm以内にはならないですから。超望遠もなければ、超広角もない。35ミリから90ミリくらいの間しかないんです。ところがアニメやゲームの場合は、感覚的に超広角なんですよ。そういう、今風のものにはしたくない、と言うか……。まあ、気持ちの問題ですが。



「PANZER FRONT」……(c)Ishizu Yasushi (c)Shangri-La (c)1999 ASCII Corp.
「PANZER FRONT bis.」……(c)2001 ENTERBRAIN,INC./Ishizu Yasushi


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