「PANZER FRONT」開発者インタビュー
鋼鉄の騎士たちの肖像・後編
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鈴木 ゲームに登場する戦車ですが、今回の「bis.」で新規追加になっている車両として“エレファント”や“マウス”が挙げられますよね。あのラインアップはどういう基準で……。やはり前作の「PANZER FRONT」にモデリングが間に合わなかったものを、順次入れていった、ということなんですか?
石津 いや、そうじゃないです。さきほどお話した通り、前作「PANZER FRONT」は、最初はストーリーモード優先でゲームデザインされていました。だから、“ストーリー上必要となる車両”という基準で車両をセレクトして、モデリングを進めていったわけです。そのような事情から、たまたまストーリー中に登場させる予定のなかったエレファントやマウスは、ゲーム自体に登場していなかったというわけです。
能登 だから前作では「ヤクトパンターはいないのに、ヤクトタイガーがいる」というような車両ラインアップになっていたんですよ。
石津 実はヤクトタイガーは、アメリカ編のストーリーモードのボスキャラとして、マルダンジャンというマップに使うつもりでした。前作から登場していたのはそのためです。対空戦車のヴィルベルヴィントは、ホームページに入れてありますけど、アメリカ編の主人公の兄貴がパイロットという設定で、彼がヴィルベルヴィントに撃墜されるシーンがあったんですよ。だからイベント用に作られた車輌です。
鈴木 そういうことだったんですか……。その他、今回の「bis.」に盛り込んだ細かい要素についてはどうですか?
石津 個人的に言うと、実は「bis.」で真っ先に改良したのは、自分のコントロールしている戦車が撃破されても、戦闘自体は終わらずに、ゲームをどんどん続行できる、というフューチャーです。これは前作「PANZER FRONT」との大きな違いだと考えています。あえて前作の戦場を全部入れてあるのは、そういう事情もあるんです。前作では、自分が撃破されるとそれでゲーム終了だったわけですが、今回の「bis.」ではその後も戦闘を継続して、自分以外の味方車輌に命令を与えることにより、ミッションを続行することが可能です。
鈴木 つまりコンティニューですね。
石津 2P側コントローラが差してある状態でセレクトボタンを押すと、2号車3号車に視点が切り替わるんです。操縦はできないわけですが、指揮下の車両に命令はできますから……。今回はそのあたりをマニュアルでハッキリ打ち出しました。
gM  今回の「bis.」での大きな改良点として、戦闘中の通信をすべて音声で再現している、という部分も大きいと思うんです。実際、私の周囲でも「あれは燃える!」という声も多いんです(笑)。そこで話はまた“串良”に戻るんですが、唯一、日本語による音声通信が盛り込まれていないのは、実は「日本軍戦車の通信機の低い性能を再現した」とか、そういう計算があってのことなんですか?
石津 いやいや、あれは純粋に演技指導の問題だったりします(笑)。
鈴木 当時の戦車同士の音声のやりとりが?
石津 いま頼むとすると、どうしても「声優さんに」となってしまうでしょう? 自衛隊員を2〜3人借りてきて「お願いします!」というわけにもいかないし(笑)。昔の帝国陸軍戦車兵の話す言葉、まぁ僕らは実際には聞いたことがないわけですが、それがリアルかどうか、日本語だと、やっぱり伝わってしまうんじゃないかと思うんです。それがドイツ語やロシア語となると、軍人らしい細かいニュアンスとかまでは、さすがに問われないでしょうが……。
鈴木 ニュアンスの違いが、日本語だと露骨にばれる、と?
石津 そこをどういう風に演技指導するか、という問題なんですが、正直なところ、こっちにもそのノウハウがないですし(笑)、むしろ「恐かったのであえて入れなかった」というのが、正直なところですね。
鈴木 素朴なしゃべりというか、そういうニュアンスが欲しかったわけですか?
石津 そうですね、昭和30年くらいの映画の俳優さんの雰囲気がほしかったんですが……。あの時代の戦争映画だと、実際に演じている役者さんたちが“本当に戦争に行った人たち”ですから、なんか肝が据わっているんですよね。
鈴木 昔の日本人というのは、昔のドキュメンタリー番組を見ているとわかりますけど、しゃべり方からしてどこか違いますよね。何かそっけないというか……。
石津 今回ドイツ語訳を担当してくれた人に「大戦中のドイツ人と今のドイツ人の言葉って、いったいどれくらい違うんですか?」って聞いてみたんです。そうしたら「そんなに変わらないんじゃないの?」って言われて(笑)。“えーっ?!”って思ったんですよ。なんか違うんじゃないかと。当時のドイツ兵と今のドイツ人の喋りかたって……。本当はそういうところまで徹底的にできるといいな、と思ったんですが……。反対に、ヨーロッパ版「PANZER FRONT」を出す時には「日本軍の通信音声を入れてみたら面白いんじゃない?」なんて話までされて。でも、その時は「は?」と思ったんですけど、それはそれで面白いのかなという気もしてきたな……(笑)。
 潜水艦ものの戦争映画「眼下の敵」で、第一次大戦にも従軍したというベテランUボート艦長のクルト・ユルゲンスが言う台詞がある。
 「昔は戦争にも人間味があった。いまは全部、機械と電気ばかりで味気ない……」。
 今ならさしずめ“機械と電気”の部分が“コンピュータと電子機器”“バーチャル”という言葉に置き換えられるのだろう。しかし、戦争の様相は変わっても、今も昔も人間の感覚は変わらない。そして、戦争とは常に「その時点の最新技術の粋を集めて」戦われているのである。第二次世界大戦という言葉から、私たちはどこか古式騒然としたものをイメージしがちだ。それは当時の写真がほとんどモノクロだったことから、どうしてもノスタルジックなイメージがつきまとうからだろう。しかし、現実の兵士たちはモノクロなどではなく“オールカラーのリアルな戦場”で、古式騒然とした武器ではなく“当時の最新兵器”を用いて戦っていたのだ。このように考えたとき、「PANZER FRONT bis.」は、第二次大戦の戦場を再現したヒストリカルでノスタルジックなゲームではなく、リアルなタンクシミュレーターとして、私たちに迫ってくるのではないだろうか? なぜなら、そこに当時の兵士たちが操った兵器としての戦車、命がけで戦った戦場が、もっとも優良な意味での“リアル”として収められているのだから……。(了)
(文=鈴木ドイツ)
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能登泰彦
■ 有限会社ソユーズ
■ 主にミリタリーものを中心に、ゲーム開発に関わる。現在はゲーム開発集団「ソユーズ」代表。戦車戦ゲーム「鈍色の攻防」の企画・シナリオのほか「PANZER FRONT」「〜bis.」でメインプログラマーを務めた。実はロシア語通。

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石津泰志
■ デザイナー
■ メカデザイナーとして、88年まで「スタジオぬえ」所属。現在フリー。映像作品などの世界設定、美術設定を手がける。「ベルデセルバ戦記」でゲーム製作に参加。「PANZER FRONT」「〜bis.」両作品でディレクターを務めた。


「PANZER FRONT」……(c)Ishizu Yasushi (c)Shangri-La (c)1999 ASCII Corp.
「PANZER FRONT bis.」……(c)2001 ENTERBRAIN,INC./Ishizu Yasushi


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