Scene3:仕事として一番魅力があるところ
 
 
 
しかしアニメの場合、たとえば『機動戦士ガンダム』でも突如支援メカが登場して、いろいろな変形合体を見せてみたりと、スポンサーに対する繊細な配慮を見せているでしょう。そうした資金提供サイドの要求についてはどう考えていらっしゃいますか。
 
 
 
 

いや、僕に言わせてもらえば、それこそが仕事として一番魅力があるところですよ。そのせめぎ合いこそが面白いんです。「ガンダム」でも、富野さんはよくその辺のところを苦痛のように語っていますけど、本当はそこが一番面白かったはずだと思いますよ。あの人もプロの中のプロですからね。

僕の場合は性格が飽きっぽくて、美少女ものも好きですけど、すごく地味な作品も好きで、いろんなジャンルが好きなんです。だから商業的な要請でも姿勢を切り替えて取り組めるんですよ。“美少女もの”だったら、“美少女もの”として徹底的にやります。その一方で美少女もののフリをして、「そこいらのちょっと文学的なものよりももっと濃いことやってやろう」とか、そんなことも考えます。どちらにも面白さはある。ガイナックス作品の魅力はそこにあるんじゃないかと思っています。

途方もない天才ならともかく、商業作品の土俵でなんの制約もなく「あなたのパッションの赴くままにつくりなさい」と言われても、それはそれで企画のとっかかりがつかめないでしょうね。やはり「ロボットは3体出しなさい」とか言われないと。

「ロボットを3体出せ」と言われて、「それじゃあロボットものはやりたくないよ」とは感じないんですよ。じゃあ3体、どうやってかっこ良く出してやろうとか、そういう風に考えていきます。だから「制約」というものを、あまり実感としたことはありませんね。

キャラクターデザイナーとしての立場で言えば、それとは別に作画の線の制約があります。アニメでは、あまりキャラクターの線を増やすと現場の制作の手間が増えてしまいますから、なるべく少ない線でつくる必要がある。だからもっと線を増やしたいな、と思うことはありますね。ただ少ない線で、多い線のキャラクターよりも魅力的で個性的なキャラクターをつくることができれば、それは気持ちいいですし、自分でも最終的にはやっぱり、少ない線のアニメのほうが好きですね。

絵柄を簡単に覚えられるかどうかが、キャラクターデザインのひとつの指標だと思うのですが、一般にキャラクターは線が増えれば増えるほど覚えにくくなりますね。しかしそもそも貞本さん。キャラクターとはなにものなんでしょうか。

一体……、なにでしょうね。やっぱり絵のデザインも大事でしょうけど、それだけではないものですね。ちょうど今、鶴巻が監督する新しい企画のキャラクターデザインを詰めていますけど、たとえば女性をつくるとしたら、まずデザイン以前に、現実にいる女の子のここは面白い、面白くないという部分から考え始めます。そこが重要なんですよ。その人がどう生きてきて、こういうときにはいかに考えるだろうか。そういう、もやもやっとした漠然としたイメージをまずつくって、それにどういうデザインを乗せていくか。そういう作業を僕は行っています。

だからまずデザインありきでは考えない。「今このヘアスタイルが流行だからこのキャラの髪型をこうしよう」、というような発想でつくられたキャラクターは、仕事がら一目でわかるんですよ。他人の作品を評価するつもりはありませんけど、そうしてつくられたキャラクターを見ると、「薄い」と感じてしまいます。外見上は違っていても、デザインの向こうにあるキャラクターの性格が同じに見えてしまう。それはキャラクターデザインではないと思う。「絵をデザインしているだけだろ、キャラクターはつくってないだろ」と感じます。
 
 

貞本義行氏インタビュー