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M:tGやっちまった小咄集

原文
A Short History of Magic Mess-ups
著者
Mark Rosewater
訳者
杉井光 ◆h92HIkARU.
投稿日
2003-11-12
更新
2003-11-12

”最大の過ちは、過ちを犯したときにそれを認めないことである。”

- Winston Churchhill(訳注1※Churchhill→Churchill)

人生においては――殊に、カードデザインみたいなクリエイティヴな仕事をしている者にとっては(ちゃんとカードデザインの話だから安心してくれ)――、成功は教訓を産まない。失敗からこそそれは産まれる。なぜなら、物事がうまくいっているときには、人はまわりの反応に敏感になれないものだからだ。でも、敗北の痛みを経験すれば、なにが間違っていたのかを考えてみようという気持ちが少しは出てくる。今回、私が失敗談なんてものを持ち出してきた理由はそれだ。古典的な失敗談を挙げ、その結果から我々がなにを学んだのか議論し、それを通してM:tGの長い歴史を見る。これはなかなか面白いかもしれないと思ったんだ。

さらに、読者のみなさんにはちょっとしたボーナスが用意してある。私は最近、自分のコラムの間違い指摘のメールが他の話題よりもだいぶ多いことに気づいた。なので、今回は「やっちまった」コラムであることを記念して、20の間違いをこのコラムの中に隠した(いつものように、いくつかはかなりずるい隠し方なので要注意)。来週、このヘマの完全リストをあげるから、チェックするように。(訳注※かんべんしてください、訳すのが大変なんで)なお、コラムにはわざと間違いを入れてあるけれど、書いてあるM:tGの「やっちまった」の内容については100%真実であることは明記しておこう。

さて、つけ加えることはもうない。(訳注2※ado→add)M:tGの「やっちまった」歴史をお送りしよう。

やっちまった1号 −(カードデザイン)− ホームランド

わたしがWotCにてフルタイムで勤め始めたのは、ホームランドの発売のすぐ後だった(‘94年末だ)。そして実を言えば、このころはM:tGにとっては危機的な時期だった。心当たりがあると思うが、M:tGのプレイヤーは、カードのアイディアがネタ切れになって、良いカードセットを出し続けられなくなるんじゃないかと心配していた。そして……ホームランドだ。

M:tGのカードデザインにここ8年を捧げてきた人間として、批判は甘んじて受けよう(訳注3※blunt→brunt)。ホームランドはしょっぱいセットだった。斬新なわけでもなかったし、新しいメカニズムを生み出したわけでもなかった。良いシナジーもなかった。それほどエレガントなセットでもなかった。現在の我々がカードセットに必要だと考えている要素は、ほとんど持ち合わせていなかった(雰囲気はすごくよかった。だから、デザイン上の美点がまったくなかったというわけではない)。

しかしホームランドは、WotCに重要な教訓をもたらしてくれた。このゲームを生かすも殺すも、カードデザイン次第だということだ。プレイヤーは様々な理由からこのゲームに惹かれる。でも、全員に共通しているのは、遊んで面白いかどうかが大切だということだ。もしR&DがM:tGを面白いゲームにするための努力を怠ったら、みんな買うのを止めるだろう。ホームランドは、たしかにゲームにとっては大したインパクトをもたらさなかった。しかし舞台裏では、会社のデザイン思想を転向する契機となったんだ。

やっちまった2号 −(カード開発)−ウルザズサーガ

先週、私はプロツアー・ニューオーリンズに行ってきた。フォーマットはエクステンディド。世界選手権の後、R&Dはこの環境で3枚のカードを禁止にし、さらにミラディンが加わった。 結果、やってきたのは、安定3ターンキル、たまに2ターンキル(そしてごくまれに1ターンキル)という猛速環境だった。

しかし、ウルザズサーガが最初に使用可能になった頃のエクステンディド環境と比べてみてくれ。今の環境なんてまだまだ大甘だ。プロツアー・パリ(ウルザズサーガが発売されてすぐのエクステンディドの大会)で囁かれたジョークにこんなのがある。「ゲームは3ステージにわかれている。最初のステージはコインフリップ。次のステージがマリガンのチェック。最後が――第1ターンだ」(訳注※late→last)

開発チームの一員として、私は頭を抱えることしかできない。ウルザズサーガのパワーカードが気違いじみているなんて、猿にでもわかることだった。これまで存在するカードセットのうちで、ウルザズサーガよりも強いのはα版だけだろう(αの方が強いのかどうかすら議論の余地がある)。それに、αの頃とは前提がまったくちがう。当時、普通のプレイヤーは$30〜$50くらいしかカードにつぎこまなかったし、Black LotusやAncestral Recallなんてカードはそれぞれの地域に一枚ずつくらいしか存在しなかった。それに、そういったカードは他に比べて飛び抜けて強いだけだったんだ。

私は8年間WotCで働いてきたわけだが、R&Dメンバー全員が社長室に呼ばれて大目玉を食らったのは、私が知る限りウルザズサーガのときだけだ(訳注6※entirity→entirety)。そのときどうなったのかは自分でもよく憶えていないので敢えて説明はしない。重要なことは、R&Dが貴重な教訓を得たということだ。開発を念入りに行わなければ、カードデザインはまったく無意味になる。ウルザズサーガには良いアイディアがたくさんあった。しかし、ゲームが平均1.5ターンしか続かないという事実が、それをみんな曇らせてしまった。

ウルザズサーガの大失敗の反響から、R&Dはニューウェーヴの新規雇用に乗り出した。Randy Buehler、Brian Schneider、Henry Stern、Worth Wollpert、Elaine Chaseといった面々だ。そして、刷新された開発環境への道を開いた(これは後にインヴェイジョンで結実する)。

やっちまった3号 −(メカニズム)−強すぎたフリースペル

これは個人的な「やっちまった」のひとつだ。私はキャントリップに代わるもの――カードだけをコストとして、実質的にはマナのかからないカード――を作ろうとして、それは結局、ゲームを根本から破壊することになってしまった。

フリースペルというのは――俗称を知らない人のために説明すると――ウルザブロックにいくつかある呪文で、使うとその点数で見たマナコストぶんの土地がアンタップするというものだ(Time Spiral、Frantic Search、Tolarian Windsなど)。(訳注7※Toralian Windsはフリースペルではない)

このメカニズムは根本的に壊れていることが証明された(訳注8※wasが抜けている?)。主な問題点は、これがマナ生成のために使用されたということだ。普通は、カードメカニズムはコストによって補正される。しかしフリースペルは、マナコストに比例して性能が上がるという奇妙な特性を持っていた。

フリースペルから得た教訓はこういうことだ――カードデザインの段階で作り出されたものすべてが、開発段階で必ずしもバランスよく働くとは限らない。

やっちまった4号 −(メカニズム)− 弱すぎた「他の〜とのバンド」

この「弱すぎた『やっちまった』」に該当するのはいくつかあるだろうが、私はこの、間違った道を思いっきり遠くまで行ってしまったようなやつを選んだ。「他の〜とのバンド」は、色んな意味で間違っている。その狂気の沙汰を洗いざらい説明しようかと思ったが、Mark Gottliebがこれについて素晴らしい記事を書いている("Absurd or Ridiculous? You Decide")ので、それを紹介するだけにしておこう。

やっちまった5号 −(メカニズム)− ルールを混乱させまくったLicid

以前に触れたように、licidはルーリングに関して山ほど頭痛の種をこしらえたんで、ルーリングチームは「licidの存在そのものを認めないことにしよう」なんてジョークを飛ばしていたくらいだ。二つのカードタイプ(しかも一つはローカルエンチャントだ)をほいほい切り換えるものだから、クソ虫の缶を開けたみたいに問題が噴出した。

初期デザインの段階からもカードタイプ変化の効果は色々と問題があったので、そういう場合は早い段階からルーリングチームと話し合っておくことを学んだ。

やっちまった6号 −(カードデザイン)− オーヴァパワーなYawgmoth's Will

私のなかで、このカードがグランプリである。今まで印刷されたカードの中で最もパワフルである(議論の余地はあるだろうが)という理由ではない。あんな狂った強さを持つカードがどれぐらいまずいのか、R&Dはとっくに知っているべき時期だったのに、Yawgmoth's Willは作られてしまったのだ。

考えてもみてほしい。Regrowthは手札に1枚だけカードを戻すことができる(訳注9※atが余計)。このカードはウルザズサーガがデザインされる何年も前に制限カードに指定されているのだ。Yawgmoth's Willは1マナ重いが、墓地のカードを事実上すべてRegrowthさせることができる。たしかに1ターンだけだが、Yawgmoth's Willと同じスタンダード環境に存在したDark RitualやLotus Petalなどのカードによって、その1ターンは非常に有効な1ターンとなる。

ここでの教訓は、カードデザイナーは過去を尊重することを学ばなければいけない、ということだ。以前に壊れたシステムがあれば、それはまた作っても、高確率で壊れている。

やっちまった7号 −(カードデザイン)−アンダーパワーなSorrow's Path

このカードはあまりにひどいので、私も無理矢理デッキに入れたりこれで勝とうとしたりするのをあきらめた。ちゃんと使おうと思ったら、相手にこの土地を押しつけて、継続的にタップしまくるしかない。ひどすぎるので、対戦相手にコントロールを渡すくらいしか使い道がないんだ。

カードデザイナーとして成長するためには、なにがうまく働くかだけではなく、なにがうまく働かないかについて理解することも重要だと思う(訳注10※itsにアポストロフィが欠けている)

やっちまった8号 −(カードデザイン)− ひどすぎた修繕、Tinker

Tinkerは、わたしがいつもお気に入りで使っているアンティキティのカード、Transmute Artifactが元になっている。しかし元のやつの、「追加のマナを支払う」テキストが、少し邪魔くさいなと思ってしまったんだ。だからそれを削った。

ぅあああああああああああああ。

やはり、Tutor能力と無料で場に出せる能力をくっつけたのだから、さらにマナがかかるようにするべきだったかもしれない。

Tinkerの教訓はこうだ。デザイナーは、カードをリニューアルする前に、カードのチェックをどうするか理解しておく必要がある。

やっちまった9号 −(カードデザイン)− ルール問題のHumility

「Humilityが場に出ています――」で始まるルールの質問が、ほんとに、ほんとうに死ぬほどたくさん来た。皮肉なことに、私はごく単純でエレガントなカードをデザインしたつもりでいたんだ。 ここでの教訓は、書き加えた方がいいこともあるってこと。削るって? 危ないぞWill Robinson! 危ない!(ロビー・ザ・ロボットの声で)(訳注※ギャグのネタがわからないんでだれか解説してください)

やっちまった10号 −カード・パッケージング− レジェンド

初期のM:tGは、カードのパッケージングミスに対して公正な負担をしていた。しかしレジェンドで最大級のパックエラーが起きた。すべてのアンコモンがAとBの2グループに分けられてしまい、1ボックスの中のアンコモンがすべてどちらかのグループのものだけ、という事態になってしまったんだ。つまり、レジェンドを1箱買ってもアンコモンは絶対にコンプリートできないということだ。揃えるためには、もうひとつのグループの箱を買った人間を見つけてトレードしなければいけなかった。

たしかな品質のものを売るためには、商品生産の過程上の様々な役割をマスターしなければいけない。それを実証してくれたという点で、この話は実に啓蒙的だ。私やRandyのコラムはR&Dの寄与に焦点をあてているが(訳注11※my→mine)、知っての通りM:tGを作るためには他にも様々な問題を解決するための様々なセクション(編集、プロダクションなど)がある。そのへんを忘れないことも重要だ(訳注12※またitsのアポストロフィが欠けている。ひょっとしてこういう文法なのか?)

やっちまった11号 −カードイラスト− テンペストのCoP

カードイラストは見た目的な価値だけではなく、ゲームをプレイする上でも重要な役割を担っている。プレイヤーはカード全部のテキストを読んだりはせず、イラストを視覚的な手がかりとしてそのカードがなんのカードかを区別している。しかしごくたまに、カードイラストがはっきりせず、実際に混乱を引き起こすこともある。この顕著な例が、テンペストの5種のCircle of Protectionだ。

見てわかるとおり、特に白と黒とシャドウは区別しづらい。

少し離れた場所からでは視覚的にカードをはっきり区別できない、ということがないように、最近は(特に同じリミテッド環境のカードどうしは)かなり注意を払っている。

やっちまった13号 −カードイラスト− どう見ても飛んでいるWhipoorwill

もうひとつ、よくあるカードイラストでの混乱は、飛行を持っているかどうかということだった。最も露骨な例は、ダークに入っているカードだ。緑のレアにWhipoorwillというクリーチャーがいる(訳注13※ダークにはレアがない)。Whipoorwillが、実際に鳥の名前であることに注意。当たり前だが鳥は飛べる。そしてイラストでも、飛んでいる最中に見える。素晴らしい。

で も こ の カ ー ド は 飛 行 を 持 っ て い な い ん だ !

Whipoorwillみたいな失敗例の結果を受けて、最近のクリーチャーのイラストには、飛べるか飛べないかがちゃんと描いてある。

やっちまった14号 −カードイラスト− カード名を誤読されたHyalopterous Lemure

Lemureは死の責め苦を受けた精霊で、永遠に呪われ、大地を歩くことを定められている。アイスエイジのデザイナーは、このクリーチャーを、死を喚起させるようなやつにしようと考えた。そして、イラストがあがってきた。そこで彼らが見たものは……

lemur(キツネザル)だった。

Lemureじゃない。責め苦を受けた精霊なんかじゃない。夜行性で毛むくじゃらの哺乳類だった。

これはもちろん、アーティストが間違ったものを描いてしまった唯一の例というわけではない(例えば、Mark TedinはUrza's Mineの絵を請けたとき、最初に地雷(land mine)の絵を持ってきた)。でも、カードイラスト担当は、そういう間違いが実際にカードになってしまわないように、かなり徹底している。(訳注※しかしLemureのイラストはほんとうに可愛いので、そういうミスなら許す。個人的に)

やっちまった15号 −(カードイラスト)− カード名を誤読されたAlchor's Tomb

レジェンドのフレーバーの多くは、色んなデザイナーがやってきたD&Dのキャンペーンに由来している(訳注※そ、そうだったのか!)。そういったキャラクターの一人がAlchorだ。さて、Alchorはウィザードで、WotCの共同設立者にして前社長/CEOであるPeter Adkisonの持ちキャラだった。そしてこのカードは"Alchor's Tome"(Alchorの秘本)として提案された。ウィザードが戦闘前に準備する、あの強力な呪文書だ。しかし不幸にも、アーティストが"tome"(秘本)を"tomb"(墓所)と読み間違い、Alchorのお墓を描いてしまった。そんなわけでM:tGの世界では、Peterのウィザードは殺されてしまったんだ。

やっちまった16号 −(テンプレート)− Dead Ringers

テンプレートは科学だ(あるいは芸術だという人もいるだろう)。M:tGのルールテキストを様式に沿って「技術的に正確に」・「はっきりと理解しやすいように」書くためのものだ。しかし時々、このふたつの機能が適切に働かないことがある(訳注14※met→わからんが多分、間違い)。いちばん悲惨な例では後者をあきらめることになる。

ほとんどのプレイヤーはこのカードを見て最初にこういう反応をする。「(゚д゚)ハァ?」

要するにこのカードはなにをするのか? うむ、まずこいつは2体のクリーチャーを破壊できる。さらに、どちらも黒ではいけない。さらにさらに、2体のクリーチャーはきっかりちょうど同じ色、もしくは同じ色の組み合わせの多色でなければならない。――ついてきているか?

一歩立ち戻って、もう少し興味の持てそうな話にしよう。いかにしてこのカードが、こんなよじれて混乱したテンプレートになってしまったのか? このカードは最初、単純に2体の同じ色のクリーチャーを破壊できる黒のカードだった。しかしプレーンシフトの開発チームがこれを嫌がった。多色カードに水を差すからというのだ(最初のバージョンでは、赤緑のクリーチャーと白緑のクリーチャーをこれ1枚で破壊することができた)。さらに彼らは、アーティファクトクリーチャーも殺せないようにテンプレートを変えろと言ってきた。

テンプレートチームは会議で、カードの制約についてだけ話し合い、基本に立ち返ることを忘れるという古典的なミスを犯した。M:tG語で書かれたテキストが英語としても意味を成すだろうなんて確信してしまったんだ。

やっちまった17号 −改行− Book Burning

まずはこのカードを見てくれ。

そう、最初の行はカンマで終わっているわけではないけれど、ここで改行してあると、たしかにこれが一文みたいに読める。これはかなり多くのプレイヤーにこう思わせてしまったようだ――

「対戦相手がこのBook Burningってカードを手札に持っていなければ、6点ダメージが行くんだろ? な?」

これは、些細なことが波紋を呼んで大きな混乱に発展するという顕著な例だ。

(訳注※わかりにくいので詳述。Book Burningのテキストは、改行まで正確に再現するとこうなっている。

Unless a player has Book Burning 
deal 6 damage to him or her, put 
the top six cards of target player's 
library into his or her graveyard. 

この一行目の最後にもしカンマがあったら。

Unless a player has Book Burning, 
deal 6 damage to him or her, put 
the top six cards of target player's 
library into his or her graveyard. 

訳すとこうなる。「プレイヤーがBook Burningを持っていない限り、そのプレイヤーに6点のダメージを与え、対象のプレイヤーのライブラリの一番上のカード6枚をそのプレイヤーの墓地に置く」。

しかしこんな誤読をするやつがほんとにいるのだからアメリカは広い。M:tGのテンプレから明らかにはずれているから、わかりそうなものだけど)

やっちまった18号 −新しいカード枠− アーティファクトの外枠

我々はまだミスを犯す可能性がある。それを強調するために、このカテゴリーをここに含めた。これは実際に我々の最後のミスだ。白のカードとアーティファクトのカードが近づいて見なければわからないなんて、駄目だ。しかし、Randyが三週間前のコラム("A Scary Card Frame Story")で書いた通り、来るフィフス・ドーンでこの問題を解決する。詳しくはRandyのコラムを読んでくれ。

やっちまった19号 −プロツアーにて− Terry Borer「なにかインスタント使う?」

プロツアーでも古典的な「やっちまった」がいくつもあった。Marco Blumeは‘99年世界選手権で、アーティファクトなしでCovetous Dragonをプレイしてしまった。プロツアー・パリの決勝でMark JusticeがMike Longに投了したとき、実はMikeのデッキには勝ち手段が残っていなかった。

しかし「やっちまったの王様」と私が信じているのは、若きカナダ人、Terry Borerだ。

それはプロツアー・アトランタの準々決勝で起きた。プレリリース・セットのリミテッドフォーマットという最初で最後の大会だった(ミラージュ発売直前)。Borerはカナダの同胞Darwin Kastleと対戦していた。彼は手札ですでに勝っていた。何体かで攻撃すればいいだけだった。通ったクリーチャーにGrave Servitudeをプレイすればいい(BorerのアタッカーはKastleのブロッカーより多かった)。殴る、Grave Servitude、準決勝へ邁進。しかしBorerは妙なことを考えた。Kastleがブロッカーを割り振った後で、こう訊いてしまったのだ。

「なにかインスタント使う?」

その質問はなにげないものに聞こえた。しかしヘッドジャッジCharlie Catinoはその重要性を理解していた。Kastleがなにも使わないと答え、BorerがGrave Servitudeをプレイしようとしたところで割り込んだのだ。そう、あの質問はつまり、Borerが優先権をパスしたということだ。そしてKastleも呪文のプレイをしなかった以上、呪文をプレイできる機会はパスされてしまう。Borerの微妙な質問ひとつで、Grave Servitudeをプレイする隙間は消え失せた。

攻撃に耐えたKastleは次のターンで勝ってしまった。待て、これはまずいなんてもんじゃない。Borerはそのデュエルを落とした。そのせいでマッチにも負けた。そのせいで準決勝にも進めなかった。そのせいで追加のプロポイントももらえなかった。そのせいで後に、プロプレイヤー・レースで同郷のPaul McCabeに負けることになる。

たった一言の微妙な質問で、Borerはデュエルとマッチとツアーとプロプレイヤ・オヴ・ザ・イヤーのタイトルを逃したんだ。高くついたね。

やっちまった20号 −私のコラム− KamahlとPhage

前述したとおり、私のコラムには輝かしいへまの歴史がある。おそらく最大のミスは、Phage開発秘話のコラムだろう("Phage of Enlightenment")。このコラムで私は、R&DメンバーのElaine Chaseが考案したPhageとVolrath's ShapshifterとKamahlのコンボを伝えた。問題は、Phageの能力が戦闘ダメージを与えたときだけなのでこのコンボは動かない、ということに私もElaineも気づかなかったことだ(念のため書いておくと、編集のAaron Forsytheがいちはやく気づいて、例をRolixに差し替えてミスを訂正してくれた)。

私がこれを「やっちまった20号」に選んだのは、これが最も多く指摘メールや掲示板上での議論を呼び起こしたものだからだ。ここでの教訓は、カードはいつもチェックしろということだ。それから編集者がチェックする時間をじゅうぶんとれるように、記事の原稿はとっととあげろと(訳注15※proof→proveか?)

たぶん、振り返ってみればM:tGの歴史上のたくさんの「やっちまった」も、楽しんでもらえたと思う。これらの失敗がなければ、M:tGのゲームはこんにち知られているような形にはならなかっただろうから。

当ページは、2ちゃんねる卓上ゲーム板「MTG Sideboard Online 日本語版」スレッドに投稿された記事を、426(braingeyser-lj@infoseek.jp)がまとめたものです。