ザッツ・エンターテイナー!
ポール・ニューマン/ロバート・レッドフォード主演の『スティング』(1973)というしゃれた映画があります。1930年代のシカゴを舞台に詐欺師たちが一世一代の大博打を張るこの映画の背景に流れるのは、スコット・ジョプリンの軽妙な「ラグタイム」です。「ラグタイム」とは、19世紀終わり頃の米国南部の酒場などで流行ったピアノ曲で、左手が規則的に和音のリズムを刻み、右手が
シンコペーションに満ちたメロディを弾く、というスタイルでした。
1868年、南北戦争が終わって黒人奴隷が解放されたばかりの米国南部アーカンソー州に生まれた黒人ジョプリンは、町から町へ巡演の旅を続けながら「メイプルリーフ・ラグ」(1899)、「イージー・ウィナーズ」(1901)、「エンターティナー」(1902)など
ラグタイムの名曲を次々にヒットさせ、“ラグタイム王”と呼ばれるようになりました。同時に大学に通って音楽の勉強も続け、大規模な舞台作品にも挑戦。1911年には生涯の大作、
歌劇『トリーモニシャ』を完成させました。これは人種の平等をテーマに、主人公の黒人女性トリーモニシャが教育によって自立し、無知と迷信に縛られた黒人コミュニティを目覚めさせていくという内容で、黒人が書いた史上最初の優れた歌劇と考えられています。
ところで、ラグタイムに似た
舞曲に「ケークウォーク」があります。これも19世紀末にアメリカ黒人の間に起こり、ヨーロッパに入って社交ダンスの一つとして流行しました。
ドビュッシーが書いたピアノ
組曲「子供の領分」(1908)の「ゴリウォーグのケークウォーク」は有名ですね。
エンターティナー 作曲:Scott Joplin
2000 YAMAHA MUSIC MEDIA
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