キーボード配列の真相
世界一受けたい授業(1月22日)の2時限目で、キーボードの基になったタイプライタの文字配置はタイプが速くならないように「打ちにくく」なるよう配置されていると言っていたが、僕が学校の授業で聞いた話は全く逆で、英単語で出現頻度の高い文字を人差し指、中指やホームポジション等の打ちやすい場所に、出現頻度の低い文字はホームポジションを外れた小指などの打ちにくい場所に配置し、総合的に「打ちやすく」してあるということで記憶している。
番組を観ている時はサラっと流したが、後日某チャットでその話がでてちょっとした議論になり、ある人がネットで調べたところ現在主流のQWERTY配列は打鍵速度が上がらないように「打ちにくく」並べられているという説が圧倒的だった。
授業で聞いた話はなんだったんだ・・と思い自分でも調べてみたら、いくつかの反論サイトを発見。
このサイトによると、《なぜ今のQWERTY配列になったかという理由に関しては、諸説入り乱れています。一番よく耳にするのが「タイプバー(印字棒)がジャムる(絡まる)のでわざと打ちにくい配列にした」という説と、「セールスマンがTYPE WRITERと打ちやすくするため」という説です。》
また、このサイトでは《『IBM-PC ハードウェアバイブル』の中で、著者である Winn L. Rosch 氏》の反論が紹介されている。
《タイプバー(用紙に文字を打ち付けるために振り上げられるレバー)が絡まないように、アルファベットの順序に関係なくばらばらにキーを振り分けることは、まったく意味のないことである。 なぜなら、タイプバーの配列とキーの配列は、直接的な関係は何もないからだ。》
機械的には、キー配列とタイプバーの並べ方は無関係に設計できるということで、なんとなく納得できる。ということは、キー配列とタイプバーの絡みによる故障は関係なく、タイプが速くならないように「打ちにくく」配置したという説は怪しくなってくる。本当に打ちにくく配列するなら、人の視点や指毎の器用さにあわせて、ZやQ、あるいは記号など出現頻度の低い文字を中央に、E・R・T・H・Dなどの出現頻度の高い文字を分散させて端に配置するはずであるが、実際はその逆になっている。
当初はABCD・・とアルファベット順に並んでいたようだが、デタラメな配列やABC順はQWERTY配列に比べて最終的に到達する速度がずっと遅くなるという説もある(原典不明)。
また、10本の指を使う現代式のタッチタイピング方式は、QWERTY配列が定着してから約10年も経ったあとで行われるようになったらしく、それまでは左右の人差し指、中指の4本のみを使ってタイプしていたようで、それを前提に考えるとQWERTY配列はそれなりにタイプ効率が良かったのではないかと思われる。
Dvorak配列の優位性を示す試験結果として19世紀末のタイピングコンテストや第二次大戦中の米国海軍の実験結果などが存在するが、「QWERTY配列が他の配列がDvorak配列を代表とする他のキーボードに対して劣っていることは(実験データに基づいて)実証されてはいない」ということを歴史的資料から説明している人のことがここで紹介されている。
製品化してここまで普及したからにはそれなりに「打ち易さ」を考慮して設計したはずであり、そうするとQWERTY配列が「打ちにくく」配置したという説の出所はどこか・・ということになる。
ここからは僕の推測だが、QWERTY配列はわざと打ちにくくしてあるという説はDvorak等の後発キーボード開発者及び販売者が新キーボードの販売戦略として打ち立てたのではないだろうか?そして、QWERTY配列に不満を感じていたユーザーがこの説を広めたのでは?
確かにQWERTY配列よりDvorak配列の方が英単語入力は楽そうに見えるが、日本語しか入力しない人にとってはどちらの配列でもあまり関係のない問題かも。
日本語を入力するなら仮名入力が一番なのだろう。日本語キーボードもいろいろな規格があり、JIS配列がデファクトスタンダードとなっているようだが、これも入力効率が一番良いわけではないようだ。ローマ字入力だとほとんどの仮名で1文字あたりキーを2回押さないといけないので仮名入力の方がタイプ速度が上ということだったので僕も最初は日本語キー配列を覚えようとしたが、プログラム→英字、ワープロ→仮名と使い分けるためには26+51=77文字分(記号、濁点・半濁点・拗音などもあるのでそれ以上)の配置を覚えなければならいので、仮名入力はを覚えるのは諦めた。英語がデファクト・スタンダードである限り、英字キーボードがデファクト・スタンダードであり続けるのだろう。

経済学では品質が劣るのに歴史的偶然によって市場で勝ち残る代名詞のようにQWERTY配列キーボードが取り上げられているようだが、QWERTY配列は製品として致命的な欠点があるか、またはより画期的な入力方法(キーボード以外で)が発明されない限りQWERTY配列のデファクト・スタンダードは揺るがないであろうと思う。
 #前述のサイトではこれについてのコメントも記されている
 ##その議論はバグだらけのWindowsでやったらどうかと思うのは僕だけでしょうか?
by yossa_blog | 2005-01-25 23:14 | 個人 | Trackback | Comments(8)
トラックバックURL : http://yossalog.exblog.jp/tb/1835350
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Commented by 安岡孝一 at 2005-01-30 22:04 x
>QWERTY配列はわざと打ちにくくしてあるという説はDvorak等の後発キーボード開発者及び販売者が新キーボードの販売戦略として打ち立てたのではないだろうか?

実はこの説を流布したのは、誰あろうAugust Dvorak本人です。『Cost of Teaching Typewriting Can Be Greatly Reduced』(The Nations Schools, Vol.11, No.5 (May 1933), pp.39-42)や『There Is a Better Typewriter Keyboard』(National Business Education Quarterly, Vol.12, No.2 (Dec. 1943), pp.51-58,66)などの論文で、QWERTY配列を攻撃するために、繰り返しこの説を披露していますが、いずれの論文にも全く根拠が述べられていません。しかもDvorakのこの説の誤りは、のちにRoy T. Griffithの論文『The Minimotion Typewriter Keyboard』(Journal of the Franklin Institute, Vol.248, No.5 (Nov. 1949), pp.399-436)で徹底的に反論が加えられているのに、いまだに信じる人が多いのは困ったものです。
Commented by yossa_blog at 2005-01-31 13:49
コメントありがとうございます。
やはり「QWERTY配列は打ちにくく設計されている」というのはDvorakによるものだったのですね。
自分の設計の優位性をアピールするために競争相手を攻撃することはアメリカでは珍しくないのかもしれませんが、それを鵜呑みにしてテレビで雑学として紹介するのは良くないですね。その説に根拠がないなら尚更です。
Commented by 安岡孝一 at 2005-02-12 00:51 x
「QWERTY配列は打ちにくく設計されている」という誤解をちょっとでも減らすべく、私のページ http://slashdot.jp/~yasuoka/journal に「QWERTY配列に対する誤解」という文章を書いてみました。よければ、ごらん下さい。
Commented by 塩澤秀和 at 2005-02-16 14:48 x
QWERTYに対するDvorakの優位性が、でっち上げ実験の結果だという根拠になる追試データってあるんでしょうか? ご教授ください。
Commented by 塩澤秀和 at 2005-02-16 15:09 x
Liebowitz, Margolis 両教授の反論「真実は、これまでにQWERTY以外のいかなるキーボードもQWERTYに取って代わるだけの十分な利点があることを示せなかった、ということである」

これは分かります。Dvorakには十分な利点がなかったから広まらなかったというのは定説なので。ただ、「実験をやったのが誰々だから信頼できない」等の理屈がよく分からないわけです。実験結果が正しかったとしても、その値ではまだ十分ではなくて、普及への閾値を越えられなかったとも考えられます。

それに、「Dvorak博士はまんまとQWERTYをけなすことに成功した」という理屈もよく分かりません。現実に、QWERTYの支配は揺らいでいないわけですから、Dvorak陣営に実際のメリットはほとんどないわけです。けなしたからまんまと成功したってのは、偏見の持ちすぎではないかと。
Commented by yossa_blog at 2005-02-16 18:27
>QWERTYに対するDvorakの優位性が・・・
元々はこの文章ですね・・
《QWERTYキーボードに対してDvorakキーボードが「優れている」という「話」は、「神話」に過ぎない(いや「でっち上げ」だという方が的確だ)》
Dvorakの実験によるデータだからって「でっち上げ」と決め付けるのは間違いですね。どちらかというと「でっち上げ」なのはこっちの方です。
《タイピング速度を遅らせるためにQWERTY配列は考案された》
紹介したリンク先の文書をちゃんと理解してませんでした。
 #記事を修正しておきます
Dvorak配列の方が後発なのでQWERTY配列よりはタイプ効率が良くなるように設計していると思いますが、本当はどちらがどれだけ効率的なのかを客観的に実験したようなデータは僕が探した範囲では見つけられませんでした。

>「Dvorak博士はまんまとQWERTYをけなすことに成功した」
これは僕の言葉ではないと思いますので、回答は控えます。
ただ、QWERTY配列に対する攻撃の意図はあったと思います(僕の推測ですが)。

コメントありがとうございました。
Commented by 塩澤秀和 at 2005-02-17 17:05 x
ちょっとお騒がせしてしまいましたね。
スラドにユーザ登録して、安岡先生の本家に飛び火しました(笑)
http://slashdot.jp/comments.pl?sid=239975
Commented by 塩澤秀和 at 2005-02-17 17:06 x
すみません、お礼を忘れていました。
回答および議論ありがとうございました。
名前 : パスワード :
URL :
非公開コメント
< 前のページ 次のページ >