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 特集2 「Writing 指導の要諦は?」

Writing 指導の要諦は? =想像力と創造力を如何に培うか=

兵庫県立明石高等学校教諭  福山 忠夫


●求められる自己発信型の英語学習

昨今の入試問題,なかんずく,国公立大の個別試験 を見ると,"英語教育を阻害する"入試悪玉説は濡れ 衣だと思わざるを得ない。ペーパー・テストという限 界内で受験生の英語の運用能力を如何に検出するかと いうことに意を用い,工夫がこらされている。英文を 速く正確に読み,内容をまとめ,批判する力をも要求 する問題が大勢を占めてきた。これは,指導要領に謳 われている「速く読みとる,概要や要点を読みとる。 自分の考えなどを英語で表現する」という趣旨にも適 ったものである。具体的にはテキストの構成を念頭に 論理展開を追わせながら,制限字数内で大意や段落の 要約,対立する見解を整理し,自己の意見を日本語 (時には英語)で述べさせるなど日本語,英語ともに 要約力,表現力が求められている。 Writing の領域で言えば,テーマに基づく自由英作 文は勿論のこと,日本語文を読ませて感想を,絵や漫 画,表や数字を提示してその内容や解釈を,条件設定 をして手紙を英語で書かせたり,或いは日本独特のも の,例えば「おにぎり」や「じゃんけん」を英語で説 明させたり,といった単に英作文力だけでなく想像力 や創造力を日頃から培っておかないと対応できない問 題が増えている。 これは,旧来型の英文和訳,和文英訳から自己発信 型への転換を迫るものであり,「運用としての語学能 力」養成という本来の英語教育に立ち返ることを求め ていると解すべきであろう。しかるに,翻って我が日 常の指導を思う時,旧態依然たるの感を拭えず,忸怩 たる思いにかられる。 Writing の指導目標は,自分の考えを筋道立てて効 果的に表現できる力を養成することであるが,その道 筋を如何につけるべきか。自由英作文に関する筆者の 拙い指導法を俎上に乗せ,ご教示を仰ぎたい。

● 自由英作文への手順

「何を書いたらいいのかわからない」が多くの生徒 の口癖である。その上,自分の思いや見解を適切に言 語化し,効果的に組織化する訓練を日本語でも十分に 受けているとは言い難い。そこで,?身近な問題に目 を向けさせ問題意識を持たせるために,新聞記事の切 り抜きを与え,問題点を整理させ,自分の意見を日本 語で書く練習をさせる ?英文の教材を与え,英語で 内容を要約し,自分の意見を書かせる ?英字新聞に 載ったアンケート等を選び,それに基づいて小論を書 かせる ?自分の体験をテーマに,資料を収集して英 語で書き,後に制限語数内に収める練習へ進む,という 手順を踏むことにした。以下,順を追って説明する。

● テーマ発掘現場をまず新聞に

?に関しては何故新聞なのかということになるが, 平易で取っつきやすく,議論になる事柄が論点を整理 して掲載されており,今日的な問題への意識づけに役 立つこと,そこから?へつながるテーマ発掘の技量を 身につける練習になるからである。テーマといえば, 生徒は机上の白紙を前にして,無から有を生み出すご とく創作するものと誤解しているようである。 A speaker`s task is not to originate or create ideas but to make existing information and ideas understandable and valuable to his listeners. The speaker`s originality is revealed in the way he selects and treats his subjects. (George W. Fluharty et al., Public Speaking and Other Forms of Speech Communication, Harper &Row Publishers, Inc., 1981. p.45) speaker, listener をwriter, reader と読みかえてもら えばよいが,テーマとなるべきものは,もともと目の 前に存在しているのである。要はそれを見る心の目が 養われているかどうか,発掘する技量を身につけてい るかどうかであろう。

● 英文要約をステップに

日本語の新聞で話題を探し,要約し,自分の感想を 書く練習を一通り終えると,次は400 語前後の英文を 読み,内容を50 語内外の英語で要約させる。これは 原稿作成段階で,main idea が簡潔に表現できるよう になるための予備練習である。次にその要約を踏まえ ながら,自分でテーマを発展させる練習をさせる。清 水幾太郎氏は,『論文の書き方』(岩波新書)の中で,大 学時代,先生から外国文献を,その長短にかかわらず 原稿用紙2 枚半で紹介する仕事を与えられ,その作業 を通じて「私の精神が読む働きから書く働きへ移って いった」と述べらておられる。社会科学の大著を要約 することと同列には論じられないが,「書くという精 神で読む姿勢」は論文作成のためであれ,英作文のた めであれ,文章修行の重要さにおいては変わりはない。

● 英文記事をデータにアイデアを練る


To the question: "Is your mother affectionate, tender-hearted and kind?" only 60 percent of Japanese children replied in the affirmative, whereas from 80 to 90 percent of those in France and England answered "yes." In the United States the figure was 98 percent! The majority of Japanese children described their fathers as being more affectionate than their mothers whereas in all other countries, it was the mothers who were portrayed as being more kind-hearted. (Asahi Evening News Dec. 17 `81) という記事や,Are daddies friends?と題した Most fathers believe they are their children`s friends, while their wives wish they were fathers their children respect, according to a survey.(以下,略)(Asahi Jun. 29 ユ82 ) などの記事は,与えられたデータを如何に組み立て, アイデアを練るか,つまり,メexisting information and ideasモ を読み手にunderstandable かつvaluable に再編成して示すかの練習には好個の題材である。2 年生 の女生徒はWhere Has A Father Gone?という表題で Is your father a man you greatly admire, respect, and love not only as a father, but as a friend? Of more than 10,000 parents who answered questions posed by an insurance company, 40.2 percent of the men said they were their children's friends. 16.9 percent described themselves as strict fathers and 13.8 percent said they were respected by their children. と書き出して,自分なりの"あるべき現代の父親像" を描き, Now, girls, you have understood what kind of person you should choose for your future husband! Boys, you have understood what type of father you should be to your future sons and daughters! と結ぶスピーチ原稿を仕上げた。 以上?〜?の手順は,いずれも生徒本人の興味とは 直接関係なく,課題として与えたものであった。「自 由な感想を自由な長さで書くという方法は,あまり文 章の修行には役立たない。むしろ,初めは,こういう 自由は捨てた方がよい」(清水 前掲書p.9 )という 言葉の意味を生徒諸君は理解してくれたものと思う。

● 自分の体験をテーマに

自分の体験に基づいて自由に書く段階に入る。手順 は,テーマを発掘し,テーマを絞って中心思想 (central idea )を明確にし,それを支える主要論点 (major ideas )を決め,brainstorming を経て主要論 点を支える資料(supporting materials )を収集し, アウトライン法で整理する,というのが一般的であろ う。その際,配列はTopical Order が無難である。な お,主要論点は1 つか2 つが良い。多くなると,論旨 に混乱をきたすからである。supporting materials の 型としては,explanation, analogy or comparison, illustrations, specific instances, statistics 等がある が,要は,主要論点を発展,拡充,強化する情報を集 めることである。 生徒の実作例と添削過程を示すことができなかった が,僭越ながら,拙著『英語スピーチの指導と実例』 (山口書店)を参考にして頂ければ幸いである。 ――文章を作るのは,思想を作ることであり,人間 を作ることである――(清水 前掲書)を肝に銘じつ つ。





「英文読解:読解力向上のために」
東京都立江北高等学校教諭 小川 匡夫

「ライティング:Writing指導の要諦は?」
兵庫県立明石高等学校教諭 福山 忠夫

「リスニング:リスニングあれこれ」
神奈川県立神奈川総合高等学校教諭 鈴木 栄


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