「推奨環境」を書いてはいけない

推奨環境とは何か

サイトに行くと、大抵推奨環境と云うものが書いてあります。例を提示すると、以下の様なものです。

当サイトはInternet Explorer 5.0/Netscape 6.0に最適化されています。
800*600以上での閲覧を推奨します。
スタイルシートをONにして下さい。
JavaScriptをONにして下さい。

と、この様な感じで、そのサイトを見るのに適切な環境を提示するのが推奨環境と云うものです。このサイトは、先程も言った通り多くのサイトで書かれています。

しかし、この推奨環境を書くのは、自分がへたである事を自ら宣言している様なものなのです。

何故書いてはいけないのか

推奨環境を書いてはいけないと言う根拠は、サイトは極力環境に依存してはいけない存在だからです。殆どのサイトは、HTML文書を中心として構成されていると思います。HTML の利点は環境に依存しないことであり、環境に依存した時点で、それはHTMLを書くのがへただと云う証拠です。

環境に依存しなければOSUA、解像度、発色数、CSSの対応・未対応、JavaScriptのON・OFF等を推奨する必要等ありません。書く人がへただから、環境に依存して、推奨環境を書かなければならなくなるのです。HTMLの記述が巧い人のサイトは、いや、巧いと言うのは誤解を招くので、言い換えると、HTMLの理念に反する様なマークアップを態々行わなければ、推奨環境等書かなくても良い訳です。

「当サイトを閲覧するに於て、推奨される環境はありません」と書いておき、それを背負いながら環境に依存しない様に努力するのが、制作者としての仕事であります。私のサイトも、環境によっては見辛いかも知れません。と、言うより見辛い環境はあるでしょう。何故なら、「HTMLは環境に依存しない」とは言っても、UAがそれを解釈してくれないと如何にもならないからです。それでも、環境に依存しない様に努力はしています。

努力を惜しんで閲覧者任せにするのは、制作者失格です。碌に制作も出来ないのに制作者になるのは、はっきり言って瞞着です。

それに、「推奨環境を書くのが普通」と思っている人以外が、推奨環境を書いているのを見たら、そのサイトの印象は悪くなり、信用もなくなります。どんなに少くとも、私の中では確実に印象も信用も低下します。

そもそも、「このUAで見て下さい」とは制作者の我侭です。自分の意図した通りに見てほしいと思う気持は良く分ります。でも、推奨されない環境だとしたら、如何なるでしょう。制作者は、推奨するからには、推奨環境と同じ環境で見る事を前提にしてサイトを作成している筈です。それを推奨されない環境で見たら、そのサイトは非常に見辛いものになります。

皆に見てほしくて公開したサイトの筈が、知らぬうちにリピーターを減らしてしまっているのです。

推奨環境に意味はあるのか

そもそもの問題として、推奨環境を書く必要性があるか如何か疑問に思います。「1024*768で御覧下さい」と書いてあったとしても、ノートPCの方には如何しようもありません。「Internet Explorerで御覧下さい」と書かれていても、その人がOperaユーザだった場合、態々そのサイトの為だけにInternet Explorerをインストールする人はいないでしょう。Mac OSではバージョンが5.5で止っていますし。

仮に、UAを変えたり、CSSを有効にしたり、JavaScriptを有効にしてくれる人がいたとしても、OSまで変える人は先ずいないでしょう。

「あ、『Windowsで御覧下さい』って書いてある。じゃあ、Windowsを買いに行こう」――有得ません。

環境に依存しない為にも、仕様書やガイドラインを読みましょう。試行錯誤しても巧く出来ないなら、HTML等の、W3Cが推奨している技術を使い、その文法に従って、アクセシビリティの確保を少しでも楽な状態にしましょう。

制作者が推奨環境を書きたがる理由は、アクセシビリティに関する知識がない、自信がない、技術がない等でしょう。そして何よりも、多くの環境が存在する事を知らないのが原因です。

「セレクトメニューからジャンプする」等のサンプルを、JavaScript講座サイトで見た事があると思います。それをその侭持って来て使った人は、まさか、そのメニューを動かす事が出来ない環境がある等、夢にも思っていないでしょう。その結果、謎のアンカーが誕生してしまう訳です。

モニター出力、音声出力、点字出力、文章のみ、モノクロ、モバイル、Windows、Mac OS、UNIX、Internet Explorer、Netscape、Opera、Mozilla、Lynx、w3m、PC、テレビジョン等、ありとあらゆる環境で閲覧出来る様な設計にするのが制作者の仕事です。

勿論、世界にはどの様な環境があるのかは分りませんから、「どんな環境でも問題なく表示出来る」と云うのは難しいと感じるかも知れません。しかし、HTMLは元々環境に依存しない様になっています。W3Cは、私達が想像も出来ないほど多種多様な環境を想定した上で、勧告しているのです。よって、HTMLの仕様とアクセシビリティ・ガイドラインの二つを守れば、どんな環境にも依存しないサイトになるのです。

「当サイトはLynxに最適化されています。Internet Explorer、Netscape、Opera、Mozilla、Amaya、Mosaic等の視覚系UAでは閲覧に障碍をきたします」等と云うサイトを作成出来たら、それはそれで面白いかも知れませんが。

駄目な環境は無視しても良い

環境に依存するHTMLを書いてはいけないとは言いましたが、そもそもそのHTMLを適切に表現出来ない環境には、依存しても良いでしょう。今時HTML 4.01にも対応していないUAに対応させる事は極めて困難ですし、Internet Explorer 5以前とかNetscape6以前とかの古過ぎるUAの面倒まで見る気にはなれません(Netscape Navigator 4.xは論外)。自然にリソースを作ったら、古いUAでも見る事が出来たのであればそれに越す事はありませんし、古過ぎるとしてもそれを考慮するのは良い事です。しかし、それを無理に背負い込む必要はないのではありませんか。

幾ら横スクロールバーが出ないデザインを心がけると言っても、UAの大きさを10*10にしたら、どんなに頑張っても横スクロールバーは出ます。環境に依存しないに超した事はありませんが、駄目過ぎる環境まで考慮する必要性はありません。それは腐れたUAが悪いのです。