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文学賞メッタ斬り!

当たってます、講談社メフィスト賞

『覘き小平次』 (京極 夏彦/中央公論新社) 『阿修羅ガール』(舞城 王太郎/新潮社) 『石の中の蜘蛛』(浅暮 三文/集英社)
大森 今、最も元気がいいのは講談社メフィスト賞。山本周五郎賞の京極夏彦(『覘き小平次』16回)、三島由紀夫賞の舞城王太郎(16回『阿修羅ガール』)、日本推理作家協会賞の浅暮三文(56回『石の中の蜘蛛』)と、今年は出身作家が続けさまに受賞している。メフィスト賞作家が講談社以外の出版社で書くと賞を取るという法則ができたかもね(笑)。

豊崎 京極夏彦は遅すぎでしょー。

大森 直木賞の候補にも2回なってるけど、どっちも蓋を開けると受賞作なしという(笑)。普通の公募新人賞って、まず社内外で下読みして4〜5編に絞って、最終選考でベテラン作家に読んでもらって選ぶっていうシステムでやってきたんだけど、これだと乱歩賞でも話したような弊害も出てくる。ホントに新しい作品は出て来にくいというね。だから、メフィスト賞は、編集者が社内選考だけで受賞作を決めるというシステムをつくった。締切りもなしで、随時受付け。だれが反対しても、編集者生命を賭けて強力に押す編集者がひとりいれば受賞できる。

豊崎 持ち込みみたいなものでしょうか。


大森 厳密にいうと、メフィスト賞より前に、花丸新人賞というのを同名のボーイズラブ小説誌が同じようなシステムでやってましたけどね。マンガの持ち込みのノウハウを活かしたんですね。

『六枚のとんかつ』(蘇部 健一/講談社) 『煙か土か食い物』(舞城 王太郎/講談社)
豊崎 結果、受賞作品はまさに玉石混淆。はずれも多いんだけど。

大森 『六枚のとんかつ』(3回*1998)とか。 

豊崎 でも、だからこそ面白い。乱歩賞作品は、確かにある一定の水準には達してるかもしれないけど、一人の舞城王太郎(『煙か土か食い物』19回*2001)も生み出せないもんね。

『ハサミ男』(殊能 将之/講談社) 『UNKNOWN』 (古処 誠二/講談社) 『コズミック』 (清涼院 流水/講談社)
『Jの神話』(乾 くるみ/講談社) 『フリッカー式』(佐藤 友哉/講談社) 『タブ(エ)ストン街道』(浅暮 三文/講談社)
『火蛾』(古泉 迦十/講談社) 『クビキリサイクル』(西尾 維新/講談社) 『銀の檻を溶かして』(高里 椎奈/講談社)
大森 あと殊能将之(『ハサミ男』13回*1999)、古処誠二(『UNKNOWN』4回*2000)をこの5年くらいに出しているのは評価できる。作品の評価はともかく、清涼院流水(『コズミック』2回*1996)2回*1996)を世に出せたのもこの賞ならではでしょう。乾くるみ(『Jの神話』4回*1998)にはもっと仕事してほしいけど。佐藤友哉(『フリッカー式』21回*2001)はまだちょっと保留(笑)。

豊崎 わたしも好きじゃない、かばう人の気持ちはすごくよくわかるけど。だからって認める気にはならない。あと浅暮三文(『タブ(エ)ストン街道』8回*1998)、古泉迦十(『火蛾』17回*2000)も好きだな。

大森 西尾維新(『クビキリサイクル』23回*2002)なんか、いま爆発的に売れてますね。高里椎奈(『銀の檻を溶かして』11回*1999)も売れてるけど、西尾維新は、もはやノベルス界のベストセラー作家。

豊崎 ええっそうなの? なんで? キャラクター小説なの? 萌え? なんで!?

大森 20代の人には人気あるらしいよ。ぼくは「西尾維新からメフィスト賞がわからなくなった」と言ってますが(笑)。作風は、清涼院流水系なんだけど、流水ほどギャグがすべらないという。

豊崎 ふーん。結構、ギャグ満載なんだ。

大森 ぼくは笑えないけど、田中啓文は笑えると主張しました。ということは、西尾維新は40代には理解できないというわけでもないのかな。最近の若い人の好きなミステリの代表例ですね。オレは若いと思ってるミステリ読みの試金石になるかも。

豊崎 佐藤友哉は?

大森 20代の典型例とは言い難いんじゃないですか? ごく一部に心酔するひとがいる。若手の津原泰水みたいな立場かな。『エナメルを塗った魂の比重』はいいですよ。佐藤友哉は、舞城王太郎とならんでグラース・サーガ派でもある。

豊崎 メフィスト賞は、あたりはずれはあるけど、つい気になる存在。また舞城くんみたいなのが出て来たらどうしようとか思うから。そういう期待感は乱歩賞にはないもん。ファンタジ−ノベル大賞とメフィスト賞があれば、もうあとはどうでもいいや(笑)。

大森 でも打率は低いですよ。当たればホームランだけど。

豊崎 すごく低い。だからわたしね、舞城くんとか別の賞で出てきたら、こんなに熱狂しなかったかもしれない。メフィスト賞だったから、わー!でたーって狂喜乱舞したのかもしれない。

大森 新庄みたいな賞ですね。

豊崎 ホントだ(笑)。乱歩賞はヤンキースでやってる松井くらいの賞。イチローにすらなれないのがつらいとこ。

大森 もっとがんがんホームランが出るはずだったのに、って(笑)。

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