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教室から

  小池教授の紙上特別講義
             
キャラクター原論1
  漫画、アニメ、ゲーム
      不況知らず、世界を席巻
           日本の「顔」の一つに。                                 

(2005.11.22更新) 

 

 漫画、アニメ、ゲームは今や、日本が世界に誇る産業となりました。人気の秘密は「キャラクター」にあります。様々なキャラクターを生み出し、後進を育てる漫画作家の小池一夫・大阪芸術大教授(69)が、その秘けつを明かします。

 
 キャラクタービジネスはまさに不況知らず。世界中で何十兆円もの売り上げを出し、多くが日本産の漫画、アニメ、ゲームです。ポケットモンスターだけでも世界で3兆円規模。アニメ「クレヨンしんちゃん」は約40カ国で放送され、「ドラゴンボール」は実写版ハリウッド映画として製作中です。世界に映る日本の「顔」の一つなのです。
    

 メディアコンテンツ産業=(1)=の国内市場は13兆円。国は5年後に15兆円規模と見込んでいます。いずれ、自動車製造業(国内22兆円)に迫るでしょう。
 2002年に小泉首相が「知財立国宣言」=(2)=を出し、著作権や商標権を守る大切さが議論されるようになったのも、日本のキャラクターが世界を席巻する「キャラクター時代」だからでしょう。
 私は30年近く前に劇画村塾=(3)=をつくって以来、どのようにキャラクターを「創(つく)り」「動かし」「活(い)かす」のかというキャラクター原論を教えています。
 初めはみんなよく分かっていないから、すぐドラマを仕立てようとします。これでは何も描けません。
 まず、キャラクターをつくる。それができれば自然にドラマが流れてきます。
 たとえば、私の「子連れ狼(おおかみ)」=(4)。初めはストーリーなんてないんです。相棒の小島剛夕(ごうせき)と酒を交わし、「主人公はやもめの浪人でどうだろう」という話から始めました。
 子どもは何歳→3歳にしよう。子どもをどうやって連れ歩くのか→乳母車に乗せて旅している。当時らしい木の箱車を思い浮かべ、小島剛夕がその場でささっと描いていきます。
      
           
                  ●最初に人物像をつくれば、
           ○ストーリーは自然にできる。
 

 子どものまげは侍のようなちょんまげか→いやいや、町民の子のまげぐらいがいい。そこで大五郎の「ちゃんカット」ができるわけです。浪人の名はどうする→流れ者の一匹狼だから拝一刀(おがみいっとう)にしよう、とね。
 子どもを連れ歩くことで危機感が出る。そんな浪人のキャラクターにふさわしい冒頭シーンは何か。ガラガラと箱車を押して出てくる場面になるわけです。
 そこからドラマが始まり、敵方を考え出します。その際も頭に思い描くのは、箱車を押して街道を進む姿。そこに絡むキャラクターを思い浮かべ、突き詰めていく。自然にストーリーができてきます。
 連載は毎回、そんな試行錯誤の繰り返しです。だから「最初にキャラクターをつくれ」というんです。
 漫画もアニメもゲームもキャラクターがなければ生まれてきません。アニメ映画「千と千尋の神隠し」のヒットも、千尋がいたからこそ。漫画、アニメ、ゲームを結ぶかすがい。それがキャラクターなんです。
    
 こいけ・かずお 2000年から大阪芸術大教授。今春誕生したキャラクター造形学科の学科長。代表作は「子連れ狼」「弐十手(にじって)物語」など。米映画「キル・ビル」は自作「修羅雪姫」が基に。「少年漫画の梶原一騎、青年漫画の小池一夫」と評される。「新・子連れ狼」など7本を連載中。

 《記者から》 これだけ日本の漫画やアニメがはやる理由。それをキャラクターづくりの大ベテランにうかがいました。いち押しキャラってだれでもあると思います。私は「あしたのジョー」の力石徹(りきいしとおる)。ストーリー中盤で亡くなると、寺山修司氏が葬式まで開く人気ぶりでした。小池さんの作品では「拳神(けんしん)」の海渡(かいと)勇次郎。ボクシングに夢中になる背中を、愛や嫉妬(しっと)の心を抱いた女性が追います。「そんな男になりたい」と妄想するようになったら、もう十分、作家の勝ちなのでしょう。

 ◇キーワード
 (1)メディアコンテンツ産業 映像、出版、ゲーム、音楽産業などの総称。「デジタルコンテンツ白書2005」によると、2004年の国内市場は13.3兆円。国内総生産の2.6%にあたり、プラスチック製品製造業、情報通信機械器具製造業をしのぎ、金属製品製造業とほぼ並んだ。2003年、内閣に知的財産戦略本部ができ、2004年にコンテンツ振興法が施行された。
 (2)知財立国宣言 特許や著作権の規制で知的財産を守り、日本の国際競争力を強めるのが狙い。漫画やアニメ、ゲームの分野は海賊版が後を絶たない。中国で昨年、「クレヨンしんちゃん」のコピー商品が商標登録され、「本物」が店から撤去される騒ぎが起きた。
 (3)小池一夫劇画村塾 1977年創設。「犬夜叉(いぬやしゃ)」の高橋留美子氏は1期生。約10年にわたり開講され、ゲーム「ドラゴンクエスト」を生んだ堀井雄二氏、「北斗の拳」の原哲夫氏らが輩出。「伝説の漫画塾」と言われた。2003年に復活し、今年になって「小池一夫キャラクター塾」と改名した。
 (4)「子連れ狼」 1970〜1976年、週刊漫画アクションで連載。幼子の大五郎を連れ、浪人の拝一刀が旅をする。「ちゃん」「一殺五百両」のせりふで人気を集めた。若山富三郎氏や田村正和氏の主演で映画になった。米、独、香港、台湾で翻訳版が出され、米映画化も決定。2003年、大五郎が主人公の「新・子連れ狼」(週刊ポスト)が始まった。 

 
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