──ニューシングル「しおり」は、ものすごくAqua Timezらしい曲ですね。【太志】 そう言ってくれる人が多いんですよ。だから、きっと自分たちのセンターに位置する曲調なんでしょうね。
──この“しおり”というタイトルは・・・。【太志】 読みかけの本にはさんでおく、しおりのことです。実は歌詞に“しおり”という言葉は一度も出てこないんですけどね。
──じゃあどうして、このタイトルに?
【太志】 いわゆる失恋ソングではあるのですが、でも、この歌の主人公の物語は・・・というか、この主人公の恋心は、まだ終わってないからです。物語の途中だよ、という意味で“しおり”というタイトルにしたかったんです。そこは、こだわりました。
──恋は終わってしまったけど、でも恋心は終わっていない。【太志】 そうです。そういうことって、よくあると思うんですよね。別に付き合っているときだけが恋愛ではないと思うし。そういう部分を描いてます。
──タイトルを見て、もしかして“しおり”という名前の女の子の思い出を歌にしたのかな、なんて思っていたのですが(笑)。
【太志】 そういった誤解を招くかもしれないな、という予測はしていました(笑)。でも違います。あくまでも、ひとつのストーリーとして描きました。
【mayuko】 そういう切ない恋心を歌った詞ではあるけれど、どこか爽やかさもあるというか。例えばサビの<そよ風の帰り道>っていう言葉であったり、その部分のメロディーであったり。だから演奏に関しても、それと同じように爽やかにしたいと思ったんです。それで“キーボードでしっとりした雰囲気にするんじゃなくてギターで引っぱっていく曲だね”みたいな話をして。その結果、こういうカラッとしたサウンドになりました。
【大介】 ロックな感じというか、元気な感じというか。そういうところを意識してギターを弾きました。初夏のようなイメージで演奏したので、ちょうど春から夏に向かっていく今の季節にぴったりなんじゃないでしょうか。
【TASSHI】 最も大切にしたのは空気感ですね。主人公は終わってしまった恋を引きずっているけれど、でもあえてジメジメさせないでカラッとした空気感を表現したかったんです。だからドラムも歯切れのいい感じで叩きました。
【OKP-STAR】 「決意の朝に」や「千の夜をこえて」で見せられた自分のたちのカラーを引き継ぎつつも、さらに発展させられたらいいなっていう気持ちで演奏しました。テンポは「決意の朝に」に近いんですけど、この「しおり」のほうが、より突き抜けた印象に仕上げることができたので満足しています。
──切ない歌詞と爽やかで勢いのある曲調。確かに、そのバランスは「しおり」の大きな魅力になっていますね。だから聴いていると失恋の歌であるにもかかわらず、なんだか前向きな気持ちになれるっていうか。
【太志】 男って、わりと思い出を美化するじゃないですか。そういう女々しさを気持ちよく歌っちゃおうと思ったんです。
──気持ちのいい女々しさ(笑)。
【太志】 そう(笑)。ずっと過去のことを歌ってるんですけど、でも最後の最後に<ただこの空を見て想う「今日もあなたが好きでした」>って現在の心境を歌っていて。女々しいかもしれないけど、それが本当の気持ちなら、それでいいんじゃないかなっていう歌です。
(文:大野貴史)