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原発がどんなものか知ってほしい

[ Feed Water Equipment Panel ]

お客様相談室/広報部営業課


EiFYE原子力発電所FAQ特別編

●『Re:原発がどんなものか知ってほしい』●
(超長文注意/文章のみ約130kB)

 こちらには、とあるサイトに掲載されている「原発がどんなものか知ってほしい」というタイトルの記事について、私なりの見解とコメント、訂正事項などを取り纏めたものを配置しています。

 なお、文章の性質上、どうしても全体的に堅い真面目な文章になっています。

 また、今後新しい情報の入手によって文章が改定される可能性があります。
 あしからず御了承願います。

[Now Rev1.03 / Ver.2002.01/30.07:16]

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 さて、既にご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、原発反対意見を記述するページの一つに【原子力発電がなくても暮らせる社会をつくる国民連合】様のページがありまして、その記事の中の「原発がどんなものか知ってほしい」というタイトルのページで「原発技師のお話」として原発の実態についての話が書かれています。

 原子力に関する見解の一つとして読まれても良いかと思いますが、この文章にはかなり誤った内容が含まれていますので、注意が必要だと思います。

 URLはこちら>genpatsu_shinsai.tripod.co.jp/hirai/です。

 

 こちらの文章について、私個人的に感じた事や、同じ現場を見る者として訂正したい事が多く見受けられましたので、以下に私なりの見解をFAQ特別編として書いておきたいと思います。

 

 なお、私は学生時代から原子力発電は社会にとって必要なモノだと思い、現在その職務に就いている人間なので、ある程度原発賛成に偏った記述になってしまう可能性が否定できません。

 ですが、できるだけ私の直接の現場経験や、客観的な事実や測定データ、公式記録を元に、客観的に書こうと思います。

 

 なお、この文章に問題の文章を攻撃する意思はありません。

 ただ、『貴方の見方ではそう見えたのかもしれませんが、私の目から見た原発はこうですよ』という話を書いておきたいのです。

 あくまでも、同じ『原発の現場を知る者』として彼が彼なりの見解を書いたように、私は私なりの見解を書いておくという事です。

 

 また、明らかに『現実に沿わない(公知のデータに反する等)誤った記述』がされている部分がありますので、訂正、コメントを入れさせて戴きたいと思います。

 

 なお、例によって本文は私の個人的な見解です。電力会社の公式見解ではありません。

 従って、原発職員と言っても、私自身が勘違いしている部分もあるかもしれませんし、知らない部分もあると思います。

 ですから、100%絶対こうなんだという断言はできません。

 

 例えば、私は原発職員ですが、常駐検査官の前歴を知りません。知らない事については確固たる説明をするのは困難なわけです。

 もっとも私の感覚からすれば、普通は知らないのではないかと思うのですが・・・

 

 という訳ですので、現場関係者の視点の一つとして見ていただければ幸いです。

 



「原発が毎日被曝者を生み、大変な差別をつくっているものでもある」

 放射線の線量の大小を無視して言えば、確かに毎日被曝者を生んでいるというのは間違っていないと思います。

 ただし、致死量の被曝、広島や長崎の原爆による被曝とはまったくレベルの違うものです。

 これを言いますと、病院のレントゲン室も毎日被曝者を出していると言えてしまいます。

 (放射線量はそちらの方が高い場合も多々あります)

 ですから、身体に影響が無いレベルの被爆についてこういった表現をするのはどうかと思います。

 

 また、原発で作業をしたからと言って、必ず被曝するという訳ではありません。原子炉建屋の中にも外部の自然環境と同レベル程度の線量しかないエリアが多々あります。

 従って、一日原子炉建屋の中で作業しても被曝線量が0.00mSv(メーターの最低レベル)未満である事も多々あります。

 

 また差別については後程詳しい話があるのでここでは割愛しますが、事の大小はともかく確かに存在すると思いますので否定はしません。

 実際、自分が「私は原発職員です。」と言って良い顔をされる事は殆どありませんから。

 自分としては現実に原子力発電所の安全性を確保すべく日夜努力しているつもりなんですが、正直言って風当たりは悪いです。

 でも、もちろん差別をしないで扱ってくれる人も居ます(ウチのBBSの常連さんなんかがそうですね(笑))し、中には賛同してくれる人もいます。だから一概に被害者風を吹かせるつもりもないです。

 



「現場監督として長く働きましたから、原発の中のことはほとんど知っています。」

 さて、みなさん現場監督はどういった仕事をしているかご存知でしょうか。

 私が知る限り、監督は作業員が作業している状況を見て、きちんと正しく仕事をしているか、安全上問題が無いか、放射線被曝の程度はどのくらいか等を監視して、作業が正常に進行する事を管理する人だと思います。

 ですが、現場監督はあくまでも作業現場を見る人です。

 ですから、自分が担当した作業、例えば建築屋さんなら、建築に関する作業は詳しいでしょうし、私以上に実情を知っているかもしれません。

 ですが、専門外の作業、例えば電気品の施工管理等はハッキリ言ってあまりご存知無いと思います。

 現場監督は現場作業の専門家で有るがゆえに、専門以外の分野についてはそれほど詳しくない、プラント局部的には詳しくても全般を通した見方をするのは難しいポジションだと思います。

 

 従って、「原発の中の事はほとんど知っています」というのは少々言い過ぎでは無いかと思うんですが。

 正確には「原発の建設作業については殆ど知っています」という表現が適切だと思います。

 実際、どう見ても放射線管理に関する記述には実情に相違する部分が多く見受けられますので。

 そのあたりを正確に表記すべきと思います。

 

 ちなみに私の場合は「原子力発電所の運転」(現場でのバルブ操作、機器保守パトロール等現場業務と中央制御室での原子力発電所設備の総合的運転操作業務)の経験があります。

 これは、原子力発電所を自分が運転しているわけですから、プラントの構造、各種システムの内容、各種機器の振動や温度、正常異常時の音響状態等、機器運転状態の様子、原子炉の起動停止、出力調整、タービン発電機の運転状況の把握等もできます。というかそれが仕事ですからしなければなりません。

 運転をしている訳ですから、何に注意して運転しなければならないか、何が起きた時どのように対処したら良いかも解ります。逆に何がどうなったら本当にどうしようもないかも解ります。

 自分のプラント、それ以外のプラント問わずトラブル情報も連絡が廻って来ますので解ります。

 自分のプラントなら機器の癖もわかりますし、全体のシステム構成、プラント各所の通常の放射線量の状態(どこのエリアは放射線量が高いか低いか)等も解ります。

 

 また、現在は「技術センター」で電気技術担当グループに所属していますので、原子力発電所の電気品、特に高電圧電動機、原子炉再循環ポンプ関連、変圧器関連、送電線保護継電器関連等について、点検保守体制や実際の現場作業の状況(これはかなり抜き打ち的に現場を確認に行きますので、自分としてはリアルな現場状況を知っていると認識しています)、また、各種点検・測定データを集約していますので、設備の劣化進展状況等も解ります。

 プラントも福島第一、第二、柏崎刈羽とも現場に入っていますので、ある程度東京電力のプラントなら内部の状況も知っているつもりです。

 

 ですが。当然これ以外の事に付いては話で聞いた程度しか解らないのが現状です。

 

 例えば、今現在タービンのブレードがどのくらい磨耗しているのかとか、給水ポンプをいつ交換修理したか等、機械に関する部分は弱いと思います。

 まぁ、それでも同じ部署の機械グループから相応の情報が入ってきますのである程度はわかりますが。

 

 ですから、以下の文章については、そういう経歴の人間が書いた事だと認識していただきたいと思います。

 もちろん、自分が思っているよりも実情を見損ねている部分もあるかもしれませんので、自分の文章も「絶対完璧とは断言できません。」

 従って、ある意味問題の文章と本文章は対等なモノかもしれないですが、裏付け調査を結構行っていますので、私の方がより現実的な話を書けていると思います。

 



「原発は地震で本当に大丈夫か、決して大丈夫ではありません。」

 耐震設計で固い岩盤の上に建設されているので安全だというのは机上の話だという事ですが、これは確かに机上の話です。

 そもそも設計というモノは机上で行われますので、間違っていないでしょう。ですが、机上で充分に検討されたものな訳です。その設計は信頼に値すると私は思います。

 また、設計がキチンとしていれば大丈夫だが「施工が悪くては意味がない」という話については私も賛同します。

 ただし、そこで「地震がきたら決して大丈夫ではありません」と断言するのは誤りだと思います。

 実際耐震設計のされたものであって、同時に「施工が悪い」とは断定できないのが現状です。本当に施工が悪いのかどうかが問題です。

 私が知る限り、原子炉建屋他で施工が悪いというものは無いと思います。設計がされて、施工が正しいのならば、「大丈夫です」という事になります。

 耐震設計通りに組み立てられた設備なのだから大丈夫だと思います。

 



「素人が造る原発」
「現場にブロの職人が少なく、いくら設計が立派でも、設計通りには造られていない」

 これはかなり偏った見方だと思います。

 

 設備は設計された設計図面通りに施工されるのが普通です。もちろん完成した時点で設計通りになっているかどうかの数値管理も行っています。材質や大きさが正しい物を使用しているか、設計どおりの配置になっているかはキチンとチェックされます。

 考えてみてください。施工チェックの記録簿には自分が確認したという署名が残るんです。後で何かあったらチェックした自分が責任を問われる訳です。

 普通心配になるでしょう?

 本当にキチンと出来ているのか、間違いなく設計通りになっているか調べますし、見えない部分については説明を要求します。確かにここで見えない部分についてはメーカーの説明を信じるしかありませんので、メーカーがウソをついている場合、場合によっては見抜けない可能性はあります。

 ですが、機器のサイズや材質は入荷伝票等を確認すれば確認できますし、溶接の状況などは昔はどうかわかりませんが、現在は非破壊検査をすることで確認することができます。

 実際、原子炉格納容器内の配管溶接作業が完了すると放射線探傷試験という、いわゆる配管のレントゲンを撮ってキチンと溶接されている事を写真で確認します。これは現場で撮影した写真ですから偽造できません。この写真で目で見てキチンと出来ている事が確認されますので、設計どおりに造られない確率はかなり低くなると思います。

 



「原発にしろ、建設現場にしろ、作業者から検査官まで総素人によって造られているのが現実」

 これは根本的に話がおかしいと思いませんか?

 この文章を書いたご本人は「現場監督として長く働きましたから、原発の中のことはほとんど知っています。」と宣言されています。

 という事は、工事管理を行う現場監督であるご本人は素人では無い訳ですよね?

 ちゃんと現場監督にはそれなりの方が就いているという事が証明されているのではないでしょうか。

 確かに監督者の全員が充分な経験者ばかりでは無いかもしれませんし「若い監督」という記述が後に出てきますので、監督もピンキリという事なのかもしれません。確かに私が現場を見た感じでも人によってレベルは様々だと思います。

 やたらと詳しい細かい熟年の方も居ますし、比較的経験の浅い若い方も居ます。でも若いからと言って駄目かと言うとそうも言い切れません。歳をとっていてもトラブル経験の無い人とトラブル経験のある若手だと同等か若手の方が詳しかったりする事もありますから。

 

 また、確かに嫌な見方をすればこの文章を書かれた本人が「いや自分は素人ですよ」と言われてしまうと実も蓋も無い話になってしまいますが、それは無いとしたいと思います。

 

 というわけで、「総素人」は言い過ぎだと思いますが如何でしょうか。

 

 また、実際現場の作業では受注メーカーの管理員が作業を管理しますが、その下に作業班長という腕章を着けたある程度の実力があることを確認された資格者が作業を仕切る体制になっています。

 主要な作業は班長さんが仕切って行い、若手の人はそれを見て、技術を受け継ぎ、経験を積んだ所で班長資格の試験を受け、合格すればこんどは自分が班長として作業を仕切ることになります。

 ですから、「現場に職人がいなくなりました。」「全くの素人を経験不問という形で募集しています。」という表現は適切でないように思えます。

 ちゃんと作業の仕切りにはそれなりの人材があたっています。

 というか、建屋の電球の交換とか、そういったちょっとした作業はともかくとして、「素人に重要機器の分解点検なんか絶対できません。」

 予めやり方から解っていなければ作業自体が出来ないわけです。だいたい構造が解らなければ分解した後組み立てられません。実際、経験の無い人間に1/100mm焼嵌めカップリングの接合等は出来ないでしょう。

 従って、やはりある程度の経験者が作業に携わっているのは間違いないと言えると思います。

 

 ただし、そういった経験者の下にいる一般の若手作業員の中には確かにモノが解っていない人もいます。

 全員が全員玄人ではないという話は間違っていないと思います。

 ですが、作業は必ずその作業を理解している玄人が仕切っているというのは間違いなく、その玄人に仕切られた作業を通じて、素人であった若手が経験を積んでいくという体制が出来ていることは、私が現場を見た印象と受注会社に出向して実際に一緒に作業をして経験した事からも間違いなく言えると思います。

 



「東京電力の福島原発では、針金を原子炉の中に落としたまま運転していて、1歩間違えば、世界中を巻き込むような大事故になっていたところでした。」

 この話は正直言って「一歩間違えば」の部分が解りません。

 針金がどのようにして大事故の引き金に成るのか想像できますでしょうか?

 

 運転経験から原子炉の構造をある程度知っている自分が思うには、確かに異物混入は問題ですし、針金が混入した事で炉内に引っ掛かったり傷をつけたりすることが考えられると思います。

 制御棒に引っ掛かって当該制御棒1本が動かなくなる可能性も否定できませんが、原子炉は数本制御棒が動かなくても未臨界にできるようになっていますので事故には進展しません。

 原子炉再循環ポンプに引っ掛かって振動を出したりする可能性も考えられます。最悪それによって原子炉の停止を余儀なくされる事は考えられます。

 しかし、どこをどう一歩間違えても「世界中を巻き込むような大事故」に進展する事は考えられないのですが。

 

 従って、この表現は不適切であると私は思います。

 こういう書き方をするならば、「針金がどこをどのようにすることで大事故になるのか」を説明する必要があると思いますがどうでしょうか。

 というか、皆さん逆にこの文章を読まれて「どうやって針金から世界中を巻き込むような大事故になるんだろうか?」という疑問を持たなかったでしょうか?

 その疑問が発生しなかったとしたら、少々文章の読み込みが足りないかもしれませんよ(笑)

 

 さて、それはともかくとして、異物混入と言う問題は確かに大問題です。

 従って今でもかなり気を使って管理されています。

 工具類は全て員数管理(持ち込んだ数と作業終了時に持ち出した数が合ってる事を確認します)がされていて、工具の置き忘れ等が無いように管理しています。

 



「現場に職人が少なくなってから、素人でも造れるように、工事がマニュアル化されるようになりました。」

 一つ誤解を招く表現があるので訂正させていただきたいと思います。

 マニュアル化というのは作業手順に漏れが無いようチェックできるようにした作業要領書を作るようにしたと言う事です。職人さんの経験だけに頼るのではなく、適正な作業手順、作業項目を明文化する事で正しい作業ができるようにしたものです。これには今までの経験による作業のノウハウも組み込まれ、過去の失敗を繰り返す事が無いようにしています。

 例えば、我々プラントの高圧電動機を扱う人間で、ある程度経験のある人間ならば「循環水ポンプ電動機は見かけのわりに重量が約70トンあるから、通常よりもでかいクレーンを使う必要がある」と言う事を常識で知っています。ですから現場に行って100トンクレーンが来ていれば「ああ、充分吊り上げられるな」と納得するわけです。ですが、経験の無い素人さんはそんな重量を知りませんから、見かけだけで50トンのクレーンを使おうとするかもしれないわけです。

 そんな事をしたら吊れないばかりか、中途半場に持ち上がってそのまま倒壊事故を起こすかもしれません。

 だからマニュアルには「電動機重量70トン。使用クレーン100トン荷重以上」と明記して間違いを防止するようにしているんです。

 

 よっぽど構造が簡単なモノ、例えばスタンドミラーなんかを買ってきた時は説明書を見ないで組み立てちゃうかもしれませんが、ちょっとした高性能のパソコンデスクを組み立てるときなんかだと、簡単そうでも組み立て図面を見ながら作りませんか?

 仮に図面に番号が振ってあったとして、その通りに組み立てるだけだとしても、左右が正しいか、サイズのあった部品を使っているかを確認しますよね?確認しながら造るから変に試行錯誤することなく、当初の完成図どおりのモノが組みあがるわけです。

 だからマニュアルによって「組み立て間違い」が減るのは間違いないと思います。

 あとは「重要なモノを造っている」という意識がどうなるかという問題ですが、これは個人差の世界ではないかと思います。

 マニュアルがあるからと言う事で安心して気楽に組み立てる人も確かにいるかもしれません。

 しかし、マニュアルを確認しながら、確実な作業を行う人も沢山居ると思います。特に先に述べられていた「若手の監督」の人はマニュアルを確認することで熟練者に匹敵する確実な仕事をこなせるのではないかと私は思います。

 



「原発には放射能の被曝の問題があって後継者を育てることが出来ない職場なのです。」

 これも一方的な話だと思います。

 確かに原子力発電所には放射線の強い場所が存在します。

 が、それは原子炉格納容器の中の一部だったり、廃棄物貯蔵タンクの下部だったりとかなり限られた場所だけです。

 

 また、被曝の問題がある作業に限らず、作業開始前には当日の作業手順や注意事項の確認などを行うTBMーKY(ツールボックスミーティング・危険予知)などのミーティングを事前に行います。ここで放射能が強いなら強いものに対する手順や注意事項などが説明されるんです。

 事前に説明を受けてから作業を行いますから、相応に作業の流れを理解して作業をすることもできるわけです。

 従って、被曝の問題から後継者が育てられないと言う事は無いと思います。

 

 また、殆どの機器(恐らく所内機器の7割以上)は放射能を持っていないか、持っていたとしても微量で、ほとんどが普通に作業する事ができる環境にあります。

 また残りのそこそこ放射能のある機器でも後継者育成に影響があるようなものは殆ど無いと思います。

 

 というわけで、大部分が前述のとおり、作業班長について作業を行い、後継者を育てる事は充分可能な環境にあります。

 というか、自分、現場で班長さんの仕事を見て作業手順や実際の作業上の注意点なんかを学習したんですから。間違いないです。

 



「原発の作業現場は暗くて暑いし、防護マスクも付けていて、互いに話をすることも出来ないような所ですから、身振り手振りなんです。」

 これも非常に誤解を招く局部的な話です。

 ニュース等で報道されるシーンは殆どが事故時の映像なので防護マスクをつけた映像なんかがよく流れるわけですが、防護マスク着用の必要がある場所は極一部だけです。

 例をあげると原子炉格納容器内でも原子炉直下のペデスタルエリア、原子炉頂部の原子炉の蓋などを扱う作業場所の一部、放射能汚染の強い機器部品の点検ために区画されたビニールハウスの中等があります。

 この場合でも事前に作業内容のミーティングを行って作業の注意事項の説明を行ってから作業に入りますし、作業中でもマスクごしや身振り手振りである程度の意思疎通もできます。更に作業が終わった後にいろいろ話もしてますから、技術を教えられないという事も無いと思います。

 また、昔ながらのゴムで密着するタイプに代わって、近年ではフードマスクと呼ばれる、透明な窓の付いたビニールカバーで頭をすっぽり包み込んで、そのカバーにポータブルの送気ユニットからフィルターを通して空気を送るというタイプのマスクが使用されています。これだとカバー越しに会話ができるので普通にコミュニケーションが取れます。

 また、インターフォン(というか、スピーカーマイク、ヘッドセットですか)を使って通話したりもしているそうです。(ただ環境(騒音など)によっては確かにまっとうに会話の出来ない所はあるみたいです。
 言われてみれば運転中の電動駆動給水ポンプ周りなんかだとうるさくて会話が出来ないです。騒音の問題は結構あるかもしれないです。が、騒音は原子力発電所に限った事では無いと思いますので。

 

 それ以外の作業、例えばタービンの点検、ポンプの点検、各種電動機の点検、電源盤の点検など、ほとんどの作業ではマスクの着用の必要がありませんし、騒音の問題も無いので、作業中に意思疎通に困難をきたす事は無いでしょう。

 



「細かい仕事が多い石油プラントなどでは使いものになりませんから、だったら、まあ、日当が安くても、原発の方にでも行こうかなあということになります。」

 正直私は溶接工の方々の経歴を知りませんので、もしかしたら本当にこのような話もあるのかもしれません。

 が。

 先にも書いていますが、非破壊検査による溶接検査を行いますし、配管や熱交換器など水や空気の通る部分は耐圧試験で実際に漏れたり壊れたり割れたりしない事を確認してから使用しますので、施工ミスがあればそこで見つかるようになっていますから、さほど問題は無いかと思います。

 



「素人が造る原発ということで、原発はこれから先、本当にどうしようもなくなってきます。」

 というわけで、これも言い過ぎではないかと思います。決して素人が造るわけではないです。ただ、末端の作業員の中には素人に近い人も居るというのは正しいと思います。

 どこの業界でも新人と言うのは素人なモノだと思います。私だって様々な研修や訓練、実作業をすることで現在の技能を身に付けたわけで、発電所に来た当初は「管理区域には鉛の放射線防護スーツを着て入るものだ」等とすっかり素人考えを持っていたんですから。当然問題の文章を書かれた平井さんだって、初めは素人だったはずですよ。

 素人も現場で経験を積んで、玄人になっていくんです。その辺を間違えないようにして欲しいと思います。

 また、技術者の減少を問題にしているのであれば、それは原子力発電所に限った話ではないでしょうし、このように「原発がどうしようもなくなってくる」というのであれば、それは今後建設される全てのモノがダメになってくると言う事を意味する事になるのでは無いでしょうか?

 道路も鉄道も建物も、全ての建造物がダメという事になりますから、これはいくらなんでも言い過ぎではないかと思います。

 ただ、後継者不足、職人不足の問題はどこでも深刻なようですから、一概に言い過ぎとばかりも言えなくなって来るのかもしれませんが、そんな時代になったとしたら、日本自体、もう既に原発を建設できるほどの国力を持っていないと思いますね。技術を失った技術大国に存在価値はありませんから。はい。

 



「出来上がったものを見るのが日本の検査ですから、それではダメなのです。検査は施工の過程を見ることが重要なのです。」

 これは私も同意見です。

 建設現場を確認しなくては実際に正しく施工されている事の確認は難しいと思います。

 実際コンクリート建築などの完成品の外観を確認しただけでは中身が正しく造られているかを確認することが難しいです。ですから、やはり建設中の現場にはなるべく足繁く通って状況を把握しておく事が今後の管理上も重要ではないかと思っています。

 もちろん、メーカーからの報告書も信用していますが、やはり自分が目で見たものなら、より一層納得してサインができるというものですから。

 

 さて、コンクリートあたりはまぁそうなのですが、先ほども書いた通り配管や溶接個所なら非破壊検査で確認することもできます。

 また全体が完成してから実際に配管に水や空気で圧力をかけて耐圧試験を行いますので、設計どおりの耐圧性能を持っていることを確認できますし、実際「リーク試験」という名称で試験を行い、確認しています。

 ですから、施工過程を見た上で耐圧をするほうがより確実ですが、現状でも配管系等は耐圧試験をすることで製品の実力の確認はできていると思います。

 



「メーカーや施主の説明を聞き、書類さえ整っていれば合格とする、これが今の官庁検査の実態です。」

 確かにこういったスタイルもあると思います。

 が、ここで問題です。この書類ってのは何の書類だと思いますか?

 はい、この書類というのは大体において試験成績書を指します。

 先ほど書いた耐圧試験や、機器の動作試験、インターロック動作試験等の試験結果を取り纏めた書類です。

 

 ただ、このデータを偽造されてしまうと判断が難しくなるのは事実でしょう。

 ですが、実際はデータの他に受け入れ検査として、実際に提出されたデータ通りの結果が出るかを確認する実地試験を行っているんですね。

 それはそうでしょう、出来たものがキチンと動く事を確認しなければ、製品に対して支払いできるわけ無いです。

 そういう意味ではみなさんが家電品を動作試験する事も無く買ってきて、正常に動作しなかった時点で初めてクレーム修理交換を行うのと違って、プラント設備は完全に動作し、スペックを満足する事を確認してから支払いをしますから、より確実に商品を購入していると言えるかもしれませんね。

 

 というわけで、メーカーから提出された各種試験データ、さらにそのデータが正しい事の実証試験を通じて施工完了を確認しますから、一概に悪いと言う事は無いと思います。

 



「運転管理専門官が素人であり、「実は恥ずかしいんですが、まるっきり素人です」と、科技庁(科学技術庁)の者だとはっきり名乗って発言した人がいました。」

 これは正直言って、私には真偽が解りかねます。

 残念ながら私には専門官に知り合いは居ませんので、直接話を聞く機会がありません。

 ですが、自分がプラントを運転していた時に立会い検査があって、その機器の操作を検査官の前で実施した事があります。

 結構圧力や流量が規定値通りか、出るべき警報が出ているか、余計な警報が出ていないかなど、細かくチェックされていたように思います。

 なので、はたして「まるっきり素人」だったかというと、個人的にはそうは思えませんでした。

 

 さて、それはそれとして、話の方向性が変わりますが。

 常識で考えてです。

 普通、「科技庁(科学技術庁)の者」が自ら講演会で「まるっきり素人です」と「会場から発言」するものでしょうか?

 たとえ本当にそうだったとしても、『「昨日まで養蚕の指導をしていた人やハマチ養殖の指導をしていた人を、次の日には専門検査官として赴任させた。」「美浜原発にいた専門官は三か月前までは、お米の検査をしていた人だった」と、その人たちの実名を挙げて話してくれる』モノでしょうか?

 常識で考えて、これを実行したら下世話な話ですが、言った本人、科技庁から締め出されてしまうと思いませんか?

 はたして「自分の職を追われて」まで、「講演会の会場」で、そのような発言をする「お役人」が居るでしょうか?

 自分だったらどうでしょう?多分情けなさ過ぎてとても話す気にならないと思います。しかも多分自分の首が飛びます。できれば話したくないでしょう。

 今現在「運転管理専門官」をしている人がこういった発言ができるのかどうか。

 正直、私は「本当かなぁ・・・」という印象を受けるのですが。

 でももし、本当に全くの素人が専門官をやっていて、自分の運転にコメントをつけていたのだとしたら・・・・ちきしょー、適当に言いたい事いってんじゃねー!とか思ってしまいますが、私が感じたところではそれなりに原子力を知ってる方だったように思うんですけども。

 うーん、正直よくわかりません。

 ・・・って、現時点でこんな文章書いてることがお上に知れたら自分の首が危ないかもしれませんけどね。
 正直、今ちょっと怖いです。怖いですが、それでも敢えて書きます。個人的に書く必要性を感じますから。そして多分世界中でも今の私と同じの立場の人間で他に書く人が居ないでしょうから。

 



「東京電力の福島原発で、緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動した大事故」

 これは1992年に起きたトラブルですね。

 復水器で水に戻った炉水を原子炉に戻す給水ポンプが予備機の電動機遮断機点検による誤信号によるインターロック動作によって全台停止してしまい、給水されずに蒸気だけが出てしまった結果、原子炉水位が急低下してしまったので、蒸気が出るのを止める為に原子炉が隔離され、ECCSの一つである高圧注水系によって別系統から給水し、水位を回復したというものです。

 個人的には「通常給水全喪失」なわけですから「事故」と言って良いと思いますが、原子力業界ではこのレベルであれば「異常な事象」と言ってます。この言葉使いについては詳細後述します。

 個人的には別にどちらでもいい気がしますが、拘る人は拘るようです。

 

 このケースでは設計どおりに原子炉は緊急停止もしましたし、水位が通常より下がったので原子炉の自動隔離もされました。そして設計通り高圧注水がなされて水位が回復したという事なので、たとえ「事故」が起きても原子炉の健全性を保護するシステムがキチンと動作して原子炉は無事だったという、安全系設備が妥当である事も示しているのではないかと思います。

 

 で、ちょっと調べると解るのですが、海外ではECCS動作どころか、原子炉停止不能、炉心メルトダウン事故も数件起きているんです。

 ちなみにタービン火災や爆発事故と言った、かなり凄い事故も起きています。

 というわけで、やはり爆発まで行くと「大事故」と言いたくなるのですが、保護系の正常なインターロック動作について「大事故」という表現を使うのは、私はちょっと言い過ぎかなぁと思います。この辺の感覚は多分一般から見てもずれているかもしれませんね。

 

 設備を実際に見て知って、何がどうなると何が動作するという仕組みを見知ってしまうと何が致命的かが解ってくるんですが、この場合は設計範囲内で『予定通り放射能漏れ事故を防止できた』と言えるので、『大事故』とまでは言わなくてもいいと思います。個人的には『外部環境に放射性物質が漏れた』という事態が「大事故」なのではないかと思います。

 

 で、この時、専門官への連絡ミスで連絡が行かないという不手際があったのですが、これは別に「電力会社の人は専門官がまったくの素人であることを知っていますから、火事場のような騒ぎの中で、子どもに教えるように、いちいち説明する時間がなかったので、その人を現場にも入れないで放って置いた」というわけじゃないと思いますよ。

 当時は自分入社前なので詳細は解りませんが、これだけのトラブルだと確かに現場は火事場のような忙しさでしょうし、連絡体制が現在のように整備される前の事ですから、単純に連絡担当者が明確じゃなかったか何かで連絡漏れしたのではないかと思いますが・・・

 わざわざ「説明が面倒だから連絡するのやめとこーぜ」とはならないですよ。だって、あとあと面倒じゃないですか?

 常識で考えてです。お役人に連絡が遅れたとなっては後々大変でしょう?

 実際このケースでは説明が大変だったと思いますよ。所長あたりが当時の通産省に頭を下げたと思います。

 なので、所内の事務所の状況を知る私の視点からすると「素人だから知らせなかった」というのは間違いだと思います。

 

 また話の方向性が変わって申し訳ないですが、個人的にはその、なんというか、なんで『現場監督がそのへんの事情を語れるのか?』の方が不思議でならないのですが・・・。普通、現場担当者が知る由も無い話だと思いませんか?

 



「原子力検査協会の人がいます。この人がどんな人かというと、この協会は通産省を定年退職した人の天下り先ですから、全然畑違いの人です。」

 まず大前提として『原子力検査協会』という協会は存在しないのですが・・・

 正直私も初耳だったので「そんな協会を実際に原子力発電所に勤務する自分が知らないなんて、そんなバカな!」と思って思わずgoogleで検索してしまいましたが、検索結果は問題の文章だけでした。

 率直に言って、この一文によって、私のこの文章に対する見方はかなり懐疑的になってしまいました。

 とりあえず、ニュアンスの近い物を探してみると

 (財)原子力発電技術機構か(財)発電設備技術検査協会あたりがありますが、これらは決して素人の天下り先じゃないと思います。(ちなみに発電技検については原子力専門機関じゃないですね。)

 

 というわけで、この一文については何らかの訂正をお願いしたいと思います。

 そして機関が存在しない事を知らずに「そんな素人の機関が見てるのか」とお考えになってしまった方。やはりもう少し「本当なのか?」という事に注意して読まれるべきだと思いますよ。

 



「原発の事故のことも電力会社ではなく、メー力−でないと、詳しいことは分からないのです。」

 この点については確かにそういった側面があります。

 トラブルが起きればもちろんある程度は電力会社の内部で原因を追求して、原因とそれに対する対策を決定しています。ちなみに本店にある原子力技術部あたり(同部に友人が居ますが、かわいそうな事にトラブルがあると連日終電に間に合わないようです)が死ぬ思いで対応しています。

 ですが、トラブル発生の原因となった設備の故障原因や、故障メカニズムはやはりメーカーで分析しなければわからない部分も多いです。

 制御装置の故障だったら、故障している設備がどんな状態になっているかは解りますが、基盤のどこが壊れたのかは、メーカーに聞かないと解らない場合が多いです。(と言っても、最近はどの基盤が壊れたかまでは解るようになってますので、予備基盤に速やかに交換できるような体制になってきていますが)

 

 また、金属部の磨耗が原因だったとして、詳細に磨耗状況を調査するには工場の施設を使用しなければならない場合が多いです。

 金属にひび割れが発生したら、発生部を工場に持ち込んで分析して、応力腐食割れなのか、熱によるものなのか等を解析して、対策を出すわけです。

 

 みなさんだってテレビが煙を上げたら火災を防ぐために、コンセントを引き抜いてとりあえず安全を確保して、それからメーカーに修理に出すでしょう?

 プラントだって同じです。トラブルがあれば、まずは原子炉を安全に保護し、必要ならば設備の停止操作を行って、安全を確保してから、壊れた機器についてメーカーに確認を依頼します。

 

 なので、これはそれであっていると思います。

 



「天下りや特殊法人ではなく、本当の第三者的な機関、通産省は原発を推進しているところですから、そういう所と全く関係のない機関を作って、その機関が検査をする。そして、検査官は配管のことなど経験を積んだ人、現場のたたき上げの職人が検査と指導を行えば、溶接の不具合や手抜き工事も見抜けるからと、一生懸命に言ってきましたが、いまだに何も変わっていません。」

 これは確かに言えると思います。

 客観的に監視する団体が必要だと思います。

 ですが、ちょっと考えてみて下さい。

 原発関係者以外の第三者で原発の設備の妥当性を評価できる人が居るでしょうか?

 原発を評価できるのは、基本的に原発を知っている人間である必要があります。

 リアルな原発を本当の意味で知っている人間は原発関係者しかいません。

 従って、原発設備を検査する第三者機関というのは実に難しい話になる訳です。

 もちろん配管溶接単体の検査なら溶接協会に頼むので問題ありません。そう言う意味では溶接の確認は原子力とは関係ない第三者機関であり、提言されている内容に適合するかと思います。もっとも溶接検査については今度法体制が変わって、自主対応の方向に転換されましたが。

 電気品の検査ならば原子力に限らず電力産業で活躍する検査会社に依頼すればOKです。(実際はメーカー自身が確認してますね)

 

 というわけで、このような状況下で「日本の原発行政は、余りにも無責任でお粗末なものなんです。」と言ってしまうのも言い過ぎではないかと思います。

 

 原子力設備の運用状態を監視する機関としては近年NSネットと呼ばれる電力会社やメーカーの集合体が出来てます。

 これは客観的に自分の会社以外のプラントも見て評価し、総合的に問題点を抽出し、改善していこうと言うものですが、結構効果をあげています。

 関西電力の良い体制を他の電力にも展開したり、プラントごとに問題のある部分をコメントし、修正させたりしています。

 そう言った意味では政府もある程度対応を実施していると言えると思います。

 



「私が関わった限り、初めのころの原発では、地震のことなど真面目に考えていなかったのです。」

 これは逆に問いたいと思いますが、ではなぜ初期の原発である日本原電東海1号機や東京電力福島第一原発の1号機、関西電力の美浜原発1号機の建物が耐震設計が施された造りになっているのでしょうか?

 地震国である日本に原子炉を設置するという段階で、初期から原発の耐震設計にはかなりの注意が払われています。

 だからこそ地震計が配備され、大きな地震が来ると自動停止するようになっているわけですし、建物だってわざわざ地表の土を取り除いて大地の岩盤面に基礎を作っているのです。

 ですから、初めのころの原発から、ちゃんと地震の事は考えて造られているのは間違いありません。

 ただ、建設初期からすると現在は地震についての研究が進んで、いろいろな新しい見解が出ているのは事実ですので、現在に比べれば建設初期の段階ではわからなかった事もあっただろうと思います。従って古いプラントは当時の知見で設計されていますから、その後の新発見については検証をしながら対処する必要があると思います。

 



「女川原発の一号機が震度4くらいの地震で出力が急上昇して、自動停止したことがありましたが、この事故は大変な事故でした。なぜ大変だったかというと、この原発では、1984年に震度5で止まるような工事をしているのですが、それが震度5ではないのに止まったんです。」

 さて。この震度5で止まる工事というのを調べてみたのですが、ちょっと詳細が見つかりませんでした。というわけで、制御棒の振動を防止するためにクリップをつけた工事なのか、地震計の設定値変更なのかが解りません。

 もし振動防止の工事であれば、確かに震度5に設計されたモノが4で動作したという問題もわかります。

 ですが、もし地震計の方の工事であれば、このトラブルとは関係ないので別な話と言うことになります。

 

 さて、震度4で停止した原因は制御棒と燃料棒が揺れた事による原子炉出力の振動によって、出力が高くなった時に緊急停止設定値に引っ掛かったというものです。

 わかりやすく言うと、「高速道路を運転中、ブレーキを踏まないのに、突然、急ブレーキがかかって止まった」のではなく、「突然エンジンの回転が上がったり下がったりし始めたので、安全のためにリミッターが動作して燃料供給が止まり、エンジンが動力運転を停止した」と言えます。

 高速走行中に急ブレーキがかかったら危ないですよね?スピンしたりするかもしれませんし、運転者だってビックリします。

 でも、原子炉が緊急停止したからと言ってスピンするような危険な事は無いわけです。核反応が止まるだけですから。「ブレーキがかかる」と言うよりは「燃料供給が止まる(アクセルから足が離れた)」という表現の方がより近いと思います。

 という事で、これは誤解を生む表現だと思います。

 

 それから、これもちょっと考えて戴きたいんですが、「なにも原因が無いのに原子炉が緊急停止する」はずが無いです。

 停止するからには停止する原因が必ずあります。

 

 今回は前記の理由で原子炉出力が一時的に上昇したから止まったわけで、正しい動作です。

 

 ですが、設定値5のところ4で止まったというのは確かに設定がずれていた事になるわけですから「5では止まらない可能性もある」という話はある意味ありえます。

 従って、いろんなことが設計通りにいかないということの現れという事も確かにできると思います。

 

 ですが、まず大前提として知っておいて戴きたいのですが、原子力設備は常に安全側寄りの設定をされているということです。

 震度5で動かない危険があるのならば、設定値がそれほど正確に設定できないのであれば、震度4寄りの、より安全な設定を行うものです。

 『圧力74キロで原子炉緊急停止信号が出る』という設計を満足する為には計器誤差を考慮して、73.8キロくらいで停止するようにセットしたりします。

 従って、設定値よりも安全側で動作する事は充分あり得ると言うことです。

 やはり怖いのは上記のように「震度5でも止まらない」事な訳ですから。

 というわけで、4で止まった事についてはそれほど問題視する必要はないのではないかと思います。逆だったら大問題になりますが。

 



「原子炉には70気圧とか、150気圧とかいうものすごい圧力がかけられていて、配管の中には水が、水といっても300℃もある熱湯ですが、水や水蒸気がすごい勢いで通っていますから、配管の厚さが半分くらいに薄くなってしまう所もあるのです。」

 ここで予備知識を一つ。

 火力発電所の運転蒸気圧力は246気圧。蒸気温度は538度。さらにタービン発電機の回転速度は原子力の2倍の3000回転です。

 原子力発電所は原子炉の核燃料を保護する為に、比較的低い圧力と温度で運転されているのです。だから熱効率が悪いという問題もあるのですが。

 というわけで「70気圧」でも確かに十分高いかも知れませんが、「ものすごい圧力」と言うのは言い過ぎじゃないでしょうか。火力の超超臨界圧ボイラーに笑われてしまいます(T_T)

 というわけで、原子力発電所の蒸気条件は実はそれほど過酷なモノでは無いんです。ただし、火力の過熱蒸気と違い、湿り蒸気が流れるのでタービンブレードなどは湿分対策が必要で、対処されています。

 また、確かにメンテナンスを怠れば配管の肉厚が薄くなる個所もあります。従って、メンテナンスも適宜行いますし、必要に応じて配管の交換も行います。私は部署も違うんで交換頻度の詳細は解らないですが、配管の交換は滅多にあるものでは無いはずです。間違っても毎年配管を交換するような個所はないですから誤解しないようにお願いしたいです。

 



「原発は一回動かすと、中は放射能、放射線でいっぱいになりますから、その中で人間が放射線を浴びながら働いているのです。」

 これは確かに一部その通りですが、あくまでも放射線でいっぱいになるのは主に原子炉格納容器の中だけです。それも原子炉再循環系配管近傍が主です。

 

 格納容器内部でも給水配管なんかはハッキリ言って殆ど放射能無いです。

 もちろん格納容器外にある設備、例えばタービンや発電機周り、給水系ポンプ配管等は殆ど放射能はありません。

 タービン系には放射能がある蒸気が来なくなるわけですし、蒸気に含まれていた放射性物質は短時間で崩壊して放射能がなくなりますので、運転中は近寄らない方がいいタービンも分解時にはそれほど問題にならないレベルになっています。

 

 従って、放射線を浴びながら作業をする人というのは、原子炉本体や原子炉再循環系統の点検する人と、制御棒やその駆動機構の点検をする人。あと廃棄物処理設備の点検なんかをする人等に限られます。

 補助機器冷却系熱交換器の点検作業なんかしても被曝線量はゼロなのが現実です。

 従って、原子力発電所で作業する人全員が被曝するわけではないので間違えないようにしていただきたいです。

 



「防護服というと、放射能から体を守る服のように聞こえますが、そうではないんですよ。放射線の量を計るアラームメーターは防護服の中のチョッキに付けているんですから。つまり、防護服は放射能を外に持ち出さないための単なる作業着です。作業している人を放射能から守るものではないのです。だから、作業が終わって外に出る時には、パンツー枚になって、被曝していないかどうか検査をするんです。体の表面に放射能がついている、いわゆる外部被曝ですと、シャワーで洗うと大体流せますから、放射能がゼロになるまで徹底的に洗ってから、やっと出られます。」

 これはその通りです。正しいです。現場で着るスーツはナイロン製ですからアルファ線以外の放射線は貫通します。

 私も実際に現場を自分の目で見るまでは鉛の防護服を着るものだと思っていたのですが、実際は違いました。

 逆にいうと鉛の服を着て動きずらい状態で長時間現場に居るよりは、ナイロン服で作業を行って、短時間で作業を完了させた方がトータルの被曝量が少ないともいえます。

 また、ナイロン製のツナギ服なわけですが、これは言われている通り、放射性物質が身体や衣服に付着して、それが放射線管理区域外部に持ち出される事を防ぐ為に着用するものですので、管理区域の出口で脱衣かごに脱ぎ捨てます。が、実際はその下にシャツと内ズボンをはいていますのでパンツ一枚までは行きません。それじゃ女性職員が困ってしまいますから。はい。

 出口ゲートで全身の放射線測定をして異常なければ管理区域から出られます。出てから私服に着替えますが、もちろん女性は専用の更衣室がありますので大丈夫です(笑)

 ちなみに男性は広い更衣エリアでパンツ一枚で着替える事になりますが。

 



「また、安全靴といって、備付けの靴に履き替えますが、この靴もサイズが自分の足にきちっと合うものはありません」

 安全靴のサイズは女性用23センチからGEの外人さん用の30cmまで1cm刻みで配備されていますので、だいたい合うと思いますが。

 確かに26.5cmがジャストフィットの私としても27だと緩くて26だとキツイという話はありますが・・・でも足場に問題をきたすほどでは無いと原子炉再循環ポンプに素手でよじ登る私としては思います。

 というわけで、この見解もちょっと一方的かなと思います。

 

 また、「放射能を吸わないように全面マスクを付けたりします。」という見解については前述のとおりです。

 しかし、確かに着けるエリアはありますが、かなり限定されます。ざっと見た限り、少なくとも95%以上の作業員はマスクを必要としません。

 



「放射能の心配をしながら働くわけですから、実際、原発の中ではいい仕事は絶対に出来ません。普通の職場とはまったく違うのです。」

 これも先ほどからの繰り返しになりますが、放射能の心配をしながら作業をしなければならないのは本当に極一部の作業個所だけです。

 普通の電動機分解点検等は一般の作業服で作業するくらいですから、普通の職場と同じように作業できるエリアが大部分なのが実情です。

 これは実際に現場見学に来られた方なら現場の様子を見てお分かりになっている事だと思いますよ。

 

 それから後の方で「現場の放射能は危険なレベルでは無いと洗脳するので作業員はそれほど怖がっていない」という記述があるのですが、この文はその内容に矛盾します。

 



「ボルトをネジで締める作業をするとき、「対角線に締めなさい、締めないと漏れるよ」と教えます」

 これは正解です。ボルト締めの基本です。文句ありません。私もそうしていますし、そう指示します。

 



「その現場が20分間作業ができる所だとすると、20分経つとアラ−ムメーターが鳴るようにしてある。」

 これは微妙に違います。

 アラームメーターは時間ではなく、被曝する放射線量を設定します。

 従って、「20分経つと鳴る」のではなく、「規定の線量被曝すると鳴る」というのが正しいです。従って、現場の状況によっては30分居られる場合もあれば、15分で鳴る場合もあります。

 ありますが。

 これほどの被曝をする可能性のある仕事はかなり限定されます。

 私の知る限り、これほど時間制限を要する作業は、所内で使用済核燃料と原子炉本体の次に放射能の強い、「原子炉再循環ポンプ」の分解点検で「ポンプのインペラを手入れする場合」だけです。

 あ、あと場合によっては廃棄物処理系の濃縮廃液タンク廻りの作業も注意が必要かも知れません。(こちらは実際に作業に立ち会った事が無いので実情をよく知りません)

 基本的に、他の作業では普通一日作業してもアラームが鳴ることはありませんし、鳴らないで済むように線量管理・作業管理を行います。

 というわけで、この話も確かにあるにはありますが、かなり特例についての話と言えるでしょう。

 



「アラームメーターというのはビーッととんでもない音がしますので、初めての人はその音が鳴ると、顔から血の気が引くくらい怖いものです。これは経験した者でないと分かりません。」

 これは私も経験があります。

 確かにかなり大きな音がなります。どんなうるさい現場に居ても間違いなく聞き取れる音です。

 ハッキリ言ってビックリします。血の気が引きます。その衝撃は経験した人でなくては解らないでしょう。

 ですが。

 通常ならばアラームが鳴る所まで被曝する前に作業を終了します。

 というのも、アラームが鳴ったら退出ゲートまで戻らねばならないんですが、その間鳴りっぱなしなんです。ハッキリ言って現場で目立ちますし、第一うるさくてやってられません。

 

 さて、私は実際ポンプ点検はした事が無いのですが、ちょっと見ていた限りでは、もともと作業前に現場の線量を測定しておいて、どのくらいの時間でどのくらい被曝するかをあらかじめ把握してから余裕を持って作業をして、アラームが鳴る前に「そろそろだから作業終了」という連絡が入って、作業に区切りをつけて点検エリアから出てくるようです。

 さらに最近は個人の線量を作業エリアの外部で監視していて、外から「今○○mSvだから、そろそろ出てください」というようにしているみたいです。

 というわけで、外で監視してくれているので、そんなに時間にびくびくしながら作業をしている様子は無いように見受けられます。

 



「ビーッと鳴ると、レントゲンなら何十枚もいっぺんに写したくらいの放射線の量に当たります。」

 これは設定値によります。アラームメーターは警報値を設定できるようになっています。

 作業の内容によって、予めどれくらい被曝するかが解っていますので、予想を超える被曝をした場合にアラームが鳴るようにしています。

 例えば見学者に携帯していただく時の設定値は0.10mSv、放射能の無いエリアでモーターの分解点検を行う場合の設定値は0.30mSv程度。原子炉格納容器の中で作業をする時は0.50mSv程度。そして高線量作業を行う場合、設定値は最大で1.00mSvです。

 従って、見学者が現場で何かの拍子に放射線量の高いエリアに迷い込んだりすると、すぐにこのアラームが鳴りますが、被曝量は0.10mSvですからレントゲン一枚撮るか撮らないかというレベルです。

 最大の設定でアラームが鳴った場合、胸部のレントゲンなら0.06〜0.30mSv、胃のレントゲンでは0.6〜4.0mSvと言われていますから、胸のレントゲンに比べると数枚分の被曝と言えますが、胃のレントゲンを考えると1枚か2枚程度のものという事になります。

 また、設定値が低ければもちろんレントゲン以下の線量でもアラームがある場合があります。

 

 というわけで、最大設定でアラームが鳴った場合は1.0mSvという事になりますが、健康上影響は無いレベルとは言っても、一日に1mSv被曝と言ったら私としても多い印象を受けます。

 これが毎日だと確かにちょっと気になるかもしれませんね。

 



「ですからネジを対角線に締めなさいと言っても、言われた通りには出来なくて、ただ締めればいいと、どうしてもいい加滅になってしまうのです。」

 さてこれも問題です。

 重要な機器のボルト締めはトルク管理がされています。つまり「何キロの力でボルトを締め付けました」という事を管理しているのです。

 これはトルクレンチを使って測定し、間違いなく閉まっている事を電力会社の監理員が立会い確認します。実際今日(2002/01/29現在)、ケーブル端子の締め付けトルクを私ともう一名で確認してきました。

 そして、締め付けが完了したボルトにはアイマークと呼ばれるマーキングをします。ボルトと台座にかけてマジックで線をひいて「規定の力でここまで締め付けました」という印を付けるんです。

 ですから適当にただ締め付けるだけという事は無いはずです。このマークを付けた上で検査時にボルトが廻るようだとやり直しになりますから、作業時には一発で合格できるようキッチリ締めていると思います。

 

 また、これも考えれば解ると思いますが、締め付けをキチンとやらなくて適当にしてしまって後で水が漏れたらアウトです。

 立会い検査で水が漏れた日には作業員も監督も真っ青になります。場合によっては次回以降の仕事が廻ってくるかも怪しくなります。

 だから、ちゃんと管理基準通りに締め付けて、漏れが無いように検査前に何度もチェックするんです。

 というわけで、ボルトの締め付けをいい加減に行うと言う事は、少なくとも現在の管理の中では無いと思います。

 



「放射能垂れ流しの海。定検が終わると、海に放射能を含んだ水が何十トンも流れてしまうのです。はっきり言って、今、日本列島で取れる魚で、安心して食べられる魚はほとんどありません。日本の海が放射能で汚染されてしまっているのです。」

 この件については断固として抗議したいと思います。

 どこからどうやって放射性の廃液が流れ出すんでしょうか?

 定検中でも運転中でも廃液は処理施設に移送して蒸留濃縮処理をしています。

 従って、定検で汚染廃液が出た場合、処理施設の濃縮廃液は増えますし、これを固化処理して廃棄物ドラム缶につめるので廃棄物ドラム缶の発生量が増えるという事はあります。

 ですが、放射性廃液が海に流れ出すという事態は本当に大事故でも無い限り絶対ありません。

 もし万が一流れ出してしまったとしたら、放水口にある放射線測定器に検出されてしまいます。

 この放射線測定データは県町にも直接伝達されていますから、隠し立てなんかできません。

 

 また、実際問題がないかどうか農畜産物や海産物などを定期的に採取して放射性物質の量を調べています。ここでも運転中定検中を問わず異常は見つかっていません。

 

 放射能廃液が漏れれば、もちろん放水口付近の放射能が上がります。上がってしまったら、これはかなり大々的な除去作業を行わない限り除去できませんよね。
 従って実際に漏れれば比較的長期間、放水口の線量計の指示が以前に比べて上がりっぱなしになってしまうわけです。
 誰が見ても放射性の水が漏れた事がわかってしまいます。

 つまり放射能漏れは隠せないという事です。

 JCOの時もそうでした、JCOで事故が起きた時、原子力研究所周辺にあるモニタリングポストはその異常な放射線を克明に記録しています。

 

 放射能は目には見えませんが、計器に検出されるのを隠す事が出来ません。

 隠したところで放射線は少々の物なら貫通して出てきてしまいますから、測定されたら一発で見つかります。それこそ原子炉建屋のようにきちんと遮蔽しない限り(もっともそこまで遮蔽すれば管理されていると言えてしまうかもしれませんが)、外部で検出されてしまいます。

 放射線というのはそういった性質のモノなんです。

 だから漏らさないように細心の注意を払っていますし、100%バレる事が解っているのにわざわざ故意に隠れて漏らそうなんて事はする理由がありません。

 その点だけは、どうかご理解戴きたいと思います。

 

 そして、これも言わせてもらえれば、なんで現場監督の人がこんな事をいえるのか不思議です。

 現場作業をしていて放射性廃液処理の状況が解るものでしょうか?

 それも上記に記載されているような、かなり限定された特殊な放射線作業に従事する人がです。

 ここで、自分が出した廃液を秘密裏に持ち出して(実際は退出ゲートの放射線チェックで見つかるので放射性物質を持ち出すのは不可能ですが)、自分で海に捨てたと言うのであれば本人談としてまだ話になりますが、全文からして恐らく廃液処理についての知識もそれほど無いと思われる方がなぜそこまで断言できるのか?

 おかしい話です。

 

 だいたい「日本列島で取れる魚で、安心して食べられる魚はほとんどありません。」という程であれば、もっとニュースになって然るべきだと思いませんか?

 狂牛病であの騒ぎです、それが日頃食べる近海の魚が汚染されているのだとしたら、シャレにならないパニックになってもおかしくありませんよ。

 漁業問題としてもっと大々的に取り上げられてしかるべきでしょう。

 中には「パニックを恐れた政府の悪徳役人がマスコミに圧力をかけて隠しているに違いない」等と勘ぐる方もいるかもしれませんが、その政府の役人にしても刺身を食べたりしてますよね。
 原発職員だって地元で採れた魚を食べてます。あまり大きな声では言えませんがプラントの取水口スクリーンにタコが引っ掛かったりすると下っ端社員が回収してきて、茹でダコにしてみんなで食べたりもしてます。

 

 つまりはこの「放射能垂れ流しの海。」という話は明らかに間違っていると言う事です。

 私の話の方がウソだと思われるなら、実際に放射線計測器を借り出して(東京電力の営業所に申請すれば貸してくれると思います)普段食べている魚の線量を計って見ればいいんです。絶対問題ないレベルですから。

 

 この時点でこの方の文章がかなりの偽証を含んでいる事が証明されたのではないかと思います。

 



「海に放射能で汚れた水をたれ流すのは、定検の時だけではありません。原発はすごい熱を出すので、日本では海水で冷やして、その水を海に捨てていますが、これが放射能を含んだ温排水で、一分間に何十トンにもなります。」

 これはタービンの排気蒸気を冷やす循環水のことを言っているわけですが、タービン発電機を使用する発電所では火力原子力を問わず、確かに温排水として水温が上がった海水を放水しています。

 ですが、原子力発電所のこの排水は特に放射能汚染などはされていません。

 だいたいにして海水は冷却チューブの中を通っていますから直接蒸気と触れる事がありません。

 従って、放射性物質が海水に混入する事はあり得ないんです。

 また、頭の回転の良い方は「ではもし冷却チューブに穴が開いたら漏れ出すだろう」と思われるかもしれません。

 この点については実は逆の事態になるんです。排気蒸気を冷却凝縮する復水器は内部が蒸気の急激な凝縮によって真空状態になっています。ですから冷却チューブに穴が開いた場合、海水に蒸気が混入するのではなく、復水器内に海水が漏れ混むという事になります。

 従って、たとえ穴があいても海水に放射性物質が混入する事はありません。

 また先程も書いたとおり、排水に放射能が含まれていれば、放水口モニターで検出されますので、やはり県町にバレます。

 

 というわけで、循環水を「放射能を含んだ温排水(汚染廃液)」扱いする事は誤っていると言えると思います。

 



「原発の事故があっても、県などがあわてて安全宣言を出しますし、電力会社はそれ以上に隠そうとします。それに、国民もほとんど無関心ですから、日本の海は汚れっぱなしです。」

 上記の説明のとおりですので、決して日本の海は放射能で汚れているわけではありません。これは断言します。

 



「防護服には放射性物質がいっぱいついていますから、それを最初は水洗いして、全部海に流しています。」

 これも誤った知識です。

 洗濯を行った時に出る排水は専用の「ランドリードレンタンク」に貯蔵され、放射能測定を行って、きちんと管理されています。

 測定を行って放射能が有れば放射性廃棄物として処理しますし、汚染のないエリアの作業服を洗っただけで、放射能が無い事が確認された水は普通の洗濯排水として放水されます。

 

 これもちょっと考えれば解ると思いますが、もともと放射性物質を人体に付着させないように、代わりに防護スーツに付着するだけで済むようにしているのに、その防護服の洗濯廃液をそのまま流すというのはあまりにもナンセンスですよね?

 防護服で放射性物質の外部漏洩を防いだ意味が無いです。

 また前述のとおり、放射能を持った水を放水すれば放水口の放射能測定によって漏れているのがバレますので、垂れ流す事は絶対無いです。

 



「排水口で放射線の量を計ると、すごい量です。」

 これについては本当に放水口の放射線の量を知っているのかと問いたいくらいです。

 放水口の放射線量はだいたい10cps弱程度です。

 東京電力のサイトではリアルタイム公開をしていない(県町にはデータが行っていますが)ので悔しい限りなのですが、中部電力の浜岡原子力発電所では毎日のデータが公開されています。

 http://www.chuden.co.jp/hamaokastate/index1.htmで確認できますので、是非自分の目で確認してみて下さい。

 また、電力会社のサイト情報は信用できないと疑われる方は、福井県原子力環境監視センターでも福井圏内の放射線に関するデータを公開していますので、こちらも確認して見て下さい。

 なお、測定される放射線の量は検出器の設置場所の環境や気象条件等によって、かなり大きく変化する事があります。詳しくはそれぞれのデータ公開ページの解説記事を御一読下さい。

 

 このとおり、だいたい10cps弱程度です。一秒間に10パルス程度の放射線を検出する量という意味です。この量は自然界にある線量に比べて特に多い量ではないと思います。

 従って、実際の測定値から放水口の放射線量は自然界のそれと変わらないと言えると思います。

 

 というわけで、この文も明らかに誤ったものと言えると思います。

 



「私はいままで原発のことを知らなかった。今日、昆布とわかめをお得意さんに持っていったら、そこの若奥さんに「悪いけどもう買えないよ、今日で終わりね、志賀原発が運転に入ったから」って言われた。原発のことは何も分からないけど、初めて実感として原発のことが分かった。どうしたらいいのか」って途方にくれていました。みなさんの知らないところで、日本の海が放射能で汚染され続けています。」

 これこそが私が最も嫌うところの風評被害以外の何ものでもありません。

 先述の説明から原子力発電所から放射性廃液が漏れている事は無いとお分かりいただけたと思います。

 にもかかわらずこのような差別が行われるのは何故か。

 

 正直言ってこの問題には個人的に非常に憤りを感じているので断言してしまいますが、

 この問題の文章のような誤った知識が平然と流布されている為に、多くの人が誤解を余儀なくされているからに他なりません。

 

 実際、この海水が汚染されるという話はあちこちで耳にします。

 つまりそれくらい誤った知識が広まってしまっているという事です。

 この誤った知識によって不当な差別が行われていることがあるわけです。

 JCOの時もそうでした。あの時だって、放射線は出ましたが、放射能汚染は広がっていなかったんです。だから農作物なんか何の影響もありませんでした。でも差別によって多くの食糧が事実上廃棄されました。

 あの時、私はとても悲しかったです。頭にきましたよ。ちょっと勉強すれば解る事なのに、NHK以外の視聴率を狙った故意にか知らずか誤解を招くような内容のニュース報道で煽られれるままに、なんの検証もせずにただ拒絶する一般の人々に怒りに似たモノを感じました。

 

 だから今回もこんな文章を書いているんです。

 休日を潰して書いてるんです。

 私はオタクですから、ホントは休日にはのんびりゲームなんかやってたいですよ。昨日買ってきたばかりのハンドルコントローラーでレースゲームもやりたいです。

 でも、それ以前にとにかく原子力発電所に対する誤解を解きたいと思うんです。

 自分が見知っている現状をキチンと説明して少しでも無意味な差別を無くしたいんです。

 ひいては自分も差別されないようになりたいんです。

 そんな事を考えてこんなページをやってるという事は、参考までにでも知っていて欲しいかもしれません。

 

 ええ、話が横道に逸れすぎましたので修正します。

 



「原発の建屋の中は、全部の物が放射性物質に変わってきます。物がすべて放射性物質になって、放射線を出すようになるのです。」

 これは金属等が放射化されるという意味だと思います。確かに放射化されるという事はあります。ですが、建屋の中のもの全てが放射性物質に変わるというのは誤りです。

 

 物質が放射能を持つには、放射性元素を含む必要があります。放射線にさらされて、徐々に原子が励起されて放射性を持つ元素に変われば放射化された事になりますが、モノによっては殆ど放射化が起きないものもあります。

 また、一部のプラスチックなど放射線の照射によって脆くなってしまうモノもありますが、放射化する物質はあまりないはずです。

 

 確かに主蒸気配管や、原子炉再循環系配管等、原子炉水の直接流れる部分は徐々に放射化されていきます。実際原子炉再循環系の配管なんかはうっかり知らずによっかかったりするとそこそこの被曝をしてしまいます。

 ですが、この線量の上昇は金属の放射化の影響もありますが、実は殆どは配管内部に付着したコバルト60等の微小な放射性物質によるものである事が大きいんです。

 

 これは原子炉本体の金属にしてもそうです。

 ですから、先日実施された原子炉内部の炉心シュラウドと呼ばれる炉内構造物の交換工事の時は化学除染と呼ばれる、化学薬品洗剤を混ぜた水を循環させて炉内にこびりついた放射性物質を溶かして除去するという作業をして、原子炉本体の放射能を下げてから作業しています。

 まぁ簡単に言えば、ポットの内部にこびり付いた水アカをクエン酸洗浄剤で洗うようなモノですね。

 実際、その作業の時に私は炉内に入ったんですが、通常なら数分でかなりの被曝をしてしまうところ、本来なら核燃料のある部分に30分近くも居たにも関わらず0.06mSvしか被曝しませんでした。

 つまりは、原子炉本体でさえ、表面に付着した放射性物質を除去すれば、放射化のレベルは人が入れるくらいにできると言う事です。

 

 だからこそ、充分な放射性物質除去を行う事で、原子炉施設の解体作業も可能になりますし、放射性廃棄物の量もかなり少なくて済むんです。コンクリートなんか殆ど放射化されていないので一般廃棄物として処理できます。

 

 というわけで、「物がすべて放射性物質になって、放射線を出すようになるのです。」という表現は明らかに違います。

 

 また、原子炉直結の設備は確かに放射化も考えられますが、例えば原子炉格納容器の外側。コンクリート遮蔽の外側に有るモノはまず放射化することはありません。

 なぜなら放射化するほどの放射線が存在しないからです。

 

 「どんなに厚い鉄でも放射線が突き抜けるからです。」という記述もありますが、これも誤りです。

 実際には原子炉内の核燃料が反応している運転中でも原子炉本体金属による遮蔽、炉内の水による中性子遮蔽、原子炉周囲にある生体遮蔽コンクリートによる遮蔽、原子炉格納容器による金属遮蔽、その更に外周のコンクリートによる遮蔽等によって、原子炉建屋内の放射能はほとんど外部と変わらないんですから。

 実際に見学に来られれば運転中の原子炉炉心上部に立つことが出来ます。この見学の写真は良く出回っているので見た事のある方もいるかと思いますが、つまりあの頂部ハッチのコンクリート遮蔽によって放射線は充分遮られているんです。

 放射線を浴びなければ放射化は起きません。従って建屋内の物が全部放射性物質になっていくという事はないんです。

 

 だいたい、放射線が全てを貫通してしまっていたら、発電所周辺にも放射線が出てしまう事になりますが、もちろんそんな事はありません。

 実際発電所周辺に設置されている放射線測定器モニタリングポストの測定値は自然量と変わらない数値を示していますから。

 

 現状で知られている放射線の一種で「どんなに厚い鉄でも突き抜ける」事ができるのはニュートリノだけです。

 もっともコレは地球すら貫通するわけですが。

 

 というわけで、この表現も誤りです。

 そろそろ訂正するのも疲れてきましたが、次行きます。

 



「ホコリ、どこにでもあるチリとかホコリ。原発の中ではこのホコリが放射能をあびて放射性物質となって飛んでいます。この放射能をおびたホコリが口や鼻から入ると、それが内部被曝になります。原発の作業では片付けや掃除で一番内部被曝をしますが、この体の中から放射線を浴びる内部被曝の方が外部被曝よりもずっと危険なのです。体の中から直接放射線を浴びるわけですから。」

 内部被曝が怖いというのは正しいです。私も内部被曝には気を使って現場を歩いています。

 で、実際、放射性の埃(通常ダストと呼んでいます)が舞うような作業の時は、必ずマスクをする事になっています。

 

 でも、プラント内の全ての埃が放射性かというともちろん違います。

 放射性の埃というのは普通の埃が放射化されてできるのではありません。

 また、放射性ダストが存在するのは放射性物質の粒子が付着した機器を分解点検していたりして、放射性ダストが機器から出てしまう可能性がある作業現場だけです。

 

 だから作業エリアを限定して作業して、掃除が終わって、放射線測定をして、問題ない事が確認されるまではエリアが解除されないんです。

 従って、エリアが問題無くなるまではマスクエリアになっているわけですから、理論上内部被曝することは無いわけです。

 

 また、ダストモニタという放射線計測装置によって建屋内の空気中の放射能も常時測定していますので、どこかで放射性のダストが舞えば、このモニターに引っ掛かります。

 事実、以前配管から放射性蒸気が漏れる事故があった時にはコレで放射能が検出されました。

 というわけで、「内部被曝は怖い。だから相応の対処がされている」という事です。

 

 また、内部被曝については放射線管理区域で作業をする従事者全員が3ヶ月に一度、ホールボディーカウンターという内部被曝測定器で全身を測定し、異常が無い事を確認しています。

 



「原発を見学した人なら分かると思いますが、一般の人が見学できるところは、とてもきれいにしてあって、職員も「きれいでしょう」と自慢そうに言っていますが、それは当たり前なのです。きれいにしておかないと放射能のホコリが飛んで危険ですから。」

 この話の一部は本当です。

 もちろん一般見学者が歩くエリアは特に綺麗に掃除していると思いますし、壁面塗装なんかもキチンとしてます。

 まぁ、確かに冗談抜きで見栄えは重要ですから。

 

 自宅にお客さんが来るときは念入りに掃除したりするのと同じ事です。

 

 ですが、綺麗にしておかないと放射能の埃が舞うというのは誤りです。

 先ほども書きましたが、基本的に放射性物質の付着した機器の分解作業エリア以外には放射性の埃は無いわけです。

 たとえ見学コースを外れても、放射性の埃が溜まってる所なんかはまず無いです。

 そうでなければ我々通常パトロールする人間が毎日マスクして歩かなければならなくなるじゃないですか?

 

 それに見学エリアもそれ以外のエリアもみんな繋がっていますし、同一の空調機で換気されていますから、他のエリアの埃が飛んでくる事だってあるわけです。

 だから見学エリアだけが特に綺麗だというのはある意味見栄えが良いという以外の意味は無いです。

 

 といっても、タービン発電機まわりなんかはあれだけ広いわけで、見学個所だけ綺麗にもなにもあったもんじゃないんですが。

 



「私はその内部被曝を百回以上もして、癌になってしまいました。」

 さて、これも問題です。

 先ほども書きましたが、内部被曝はホールボディーカウンタで監視されています。ここで内部被曝が明らかになれば現場立ち入りが制限されたりするわけです。

 で、「100回以上も内部被曝した」と言う事は、このカウンタで100回も引っ掛かったという事になると思うのですが、私はそんな人を聞いた事は無いです。

 また内部被曝者が出たとなると、結構大事件になります。

 何の作業で内部被曝者が出たのか、どのような作業管理をしていたのか、放射線防護は適切だったのか等が追求されます。また、他の作業でも再発しないように内部被曝の発生の情報も、対策内容も周知徹底されます。

 

 しかるに私の知る限りそれほどの事態は無いです。もしかしたら昔はあったのかもしれませんが。

 

 でも、これもよく話題にのぼる話なのですが、果たしてその「ガンになったというのは、本当に被曝が原因か?」という事です。

 残念ながら私はご本人を良く知りません。

 だからもしかしたら現場監督にありがちなヘヴィースモーカーだったのではないかとか、余計な事をついつい考えてしまったりします。

 現状では、原子力発電所における作業とガンの発生について明確な因果関係は示されていないはずです。

 

 もし内部被曝でガンになったのであれば、相応の内部被曝線量のデータがあるはずですが、それが公開されていない以上、因果関係を論じる事も困難ですので、このくらいにしておきます。

 でも少なくとも現状のプラントではガンになる程の内部被曝は起こらないと、私は思います。

 



「放射能というのは蓄積します。いくら徴量でも十年なら十年分が蓄積します。」

 この話も評価が難しいところです。

 内部被曝について言われているのであれば、外部に排泄されないものは確かに蓄積されます。蓄積されれば内部被曝測定の時にだんだん検出値が上がっていくことになると思います。

 ですが、現場で作業する事で被曝し、その被曝による影響が蓄積するというのであればそれは誤りです。放射線を浴びたからといって、浴びた量が蓄積されるわけではありません。

 致死量に近い異常な被曝はともかくとして、通常の作業で放射線を浴びたからと言って細胞が変質してしまうわけでもありませんし、細胞が新陳代謝するのにあわせて被曝した細胞は入れ替わります。

 時間が経てば条件がクリアするので、時間を基準に許容量が決まっているんだと思うんです。

 というわけですが、ちょっと判断が難しいですね。

 



「三日分とか、一週間分をいっぺんに浴びせながら作業をさせるのです。これは絶対にやってはいけない方法ですが、そうやって10分間なり20分間なりの作業ができるのです。」

 確かに明記されているとおり、絶対にやってはいけない方法だと思います。

 ですから先ほど話題に上った放射線アラームメーターは一日の許容量を超過した作業が出来ないように設定、管理されているんです。

 自動的に設定されるものですから、どうしたって一日分以上の被曝をすれば例のアラームが鳴ってしまいます。

 ですから、少なくとも現状では間違っても一週間分を一日で浴びせて作業をする事は起こりえません。

 

 だいたい気がつきませんか?

 一週間分を纏めて被曝したとしたら、その作業員は1週間作業に従事できないわけです。それではその作業できない人は残りの作業期間どうするんでしょうか。

 もちろん被曝しない別な作業に回る事はできるかもしれませんが、効率が悪いです。

 更に結局たくさんの交代要員を確保しなければなりませんから、短時間で交代交代作業をするのとトータルでは同じ事になってしまうような気がするのですが。

 

 確かに私は東京電力の、それも近年の現場しか知りません。だから昔はそんな無謀な作業をしていたのかもしれません。

 でも、今だって昔と同じ機器を点検しているわけですよ。

 その今の作業において、上記のような無謀な方法で作業をしている事は見た事も聞いた事も無いです。

 少なくとも今はこんな方法の作業はしていないと思います。

 



「動いている原発は放射能の量が物凄いですから、その一本のネジを締めるのに働く人三十人を用意しました。一列に並んで、ヨーイドンで七メートルくらい先にあるネジまで走って行きます。行って、一、二、三と数えるくらいで、もうアラームメーターがビーッと鳴る。中には走って行って、ネジを締めるスパナはどこにあるんだ?といったら、もう終わりの人もいる。ネジをたった一山、二山、三山締めるだけで百六十人分、金額で四百万円くらいかかりました。」

 これも凄い話なのですが。

 昔は本当にこんなことをしていたんでしょうか?

 現在では考えにくい作業ですが、やろうと思えば確かに出来そうな手段ではあります。

 

 しかし。30人で交代交代で締めなければならないエリア。しかも運転中で高線量。

 という事だと、原子炉格納容器は窒素封入されていて入れませんから、恐らく主蒸気配管の近い給水加熱器室での作業だと思うのですが、でもこのエリアでも一週間に一度は特別管理職の当直長が直接パトロールしていますし、30人交代でなければネジを2,3山を締められないような放射線量は無いような気がします。

 ネジを締めなければならなくなる事態というのは・・・蒸気漏れでしょうか。だとしたらエリア放射線モニタが黙ってませんし、他の同様のネジも確認しないといけませんから普通はプラント停止になります。

 水漏れであればやはり給水量と蒸気量のアンバランスが記録計で検出できるので、やはりプラント停止になると思います。

 というわけで、少なくとも、現在はこのような作業は無いと思います。

 



「なぜ、原発を止めて修理しないのかと疑問に思われるかもしれませんが、原発を一日止めると、何億円もの損になりますから、電力会社は出来るだけ止めないのです。放射能というのは非常に危険なものですが、企業というものは、人の命よりもお金なのです。」

 なるべくプラントを停止しないというのは間違いではありません。

 停止となるとコストも勿論ですが、報道による攻撃対象にもなりますから。

 ですから、停止せずに治せるなら停止せずに治したいところです。

 が。

 上記のような事態となると、止めると思います。

 ある意味電力屋は堅いです。

 トータルで半端な修理をして失敗したら効率が悪い、と言う事なら確実に治る手段を取るものです。(だと思います。)

 

 また、放射線は確かにレベルによっては危険です。危険だからこそ管理されているわけです。原子力発電所関係者なら誰もがそれは承知しています。

 ですが、人命より金が大事かといわれたら、決してそんな事は無いです。

 そんな強硬な作業をして、万一事故が起きたら。人身災害が起きたら。一大事ですよ。手続きだって大変なんです。そんな無理はしたくないです。

 確かに放射線どうこうの問題も勿論ありますが、それ以前に危険な作業は可能な限り回避します。人身事故の発生の方がトータルで見てプラントに与える影響が大きいですし。

 ただし、それがプラントの健全性に多大な影響のある緊急な作業であれば、例外も有り得ると思います。例えばたとえ線量が高くても、そこにあるバルブをあけなければ原子炉が危険な状態になってしまうというような事態であれば、ある程度の強攻策はとるかも知れませんね。

 でも、一般の作業で人命より金が優先されると言う事は無いと、私は思います。

 



「原発で初めて働く作業者に対し、放射線管理教育を約五時間かけて行います。この教育の最大の目的は、不安の解消のためです。原発が危険だとは一切教えません。国の被曝線量で管理しているので、絶対大丈夫なので安心して働きなさい、世間で原発反対の人たちが、放射能でガンや白血病に冒されると言っているが、あれは“マッカナ、オオウソ”である、国が決めたことを守っていれば絶対に大丈夫だと、五時間かけて洗脳します。」

 これも随分偏った見解だと思います。

 放射線管理教育というのは、放射線管理区域で作業を行う場合に必要なルールを説明するものです。

 例えば、管理区域には線量についての標識があります。

 現場を知っている人間なら「3A区域」という看板のある場所は、「放射線量が結構高いけれど、汚染は無いんだな。」と言う事が即座に解るので、なるべく早くそのエリアを離れるようにしようとします。

 また「2C区域」という看板があれば「線量はそこそこだけど、汚染があって、C区域装備をして入らないといけないんだ。」という事を理解できます。

 こういった標識の説明や、廃棄物はどこにどのように分別して持っていけばいいか、作業で出た排水はどこに捨てればいいか等、作業をする上で必要な知識を教育されるんです。

 もちろん放射線の年間許容量や、アラームメーターの使い方や意味合いなども教えています。更に作業中に注意することや、作業安全に関わる事などの一般的なルールも教育されます。

 というわけで、現場で標準的に必要になる知識を教育しているものであって、決して「原子力発電所は安全なんです。絶対安全です。心配ないです。」という事を洗脳する場では無いと、受講した私自身は思うんですが、でも捕らえ方によってはそう見える部分もあるのかもしれないですね。

 



「私自身が二〇年近く、現場の責任者として、働く人にオウムの麻原以上のマインド・コントロール、「洗脳教育」をやって来ました。何人殺したかわかりません。」

 これも随分な話です。

 本人がそう言っているからには、彼はそのように教育したのかもしれません。

 私は彼の教育を受けた事が無いので解りませんが、ハッキリ言って自分が受けた教育はこんな話ではありませんでした。

 私は東京電力に入社して発電所に来た時も、出向して所内の協力企業に入った時も教育を受けましたが、決してこんな洗脳のような話ではありませんでした。

 それどころか、協力企業で受けた教育では『なんだかんだ言っても、結局人です。人との付き合いを大事にして信頼関係を築く事が社会人としてやっていく上で重要なんです。』という社会教育のような話まで受講したんですよ。

 というわけで、これは自分が経験していますから間違いなく断言できます。この洗脳話は絶対におかしいです。

 



「みなさんから現場で働く人は不安に思っていないのかとよく聞かれますが、放射能の危険や被曝のことは一切知らされていませんから、不安だとは大半の人は思っていません。」

 これもそんな事はないと思います。

 みんな致死量の放射線がどんなレベルなのか、どういう場所に長く居たら多く被曝してしまうのか、逆にどこに居れば被曝を最小限に済ます事ができるのかを知っています。

 放射線に関する正しい知識を持っているわけです。

 だから過剰な心配もしませんし、逆にどういう時は危険なんだという線引きを知っているから、比較的危険なところで作業をする場合は注意して作業にあたるんです。

 私だってそうです。通常の一般作業区域では何ら放射線を気にすることなく作業しますが、やはり線量3のエリアで作業するときはなるべく迅速に行うようにしています。

 でも、たとえ線量3のエリアであっても、被曝線量はアラームメーターに表示されるので自分がどのくらい被曝しているのかいつでも見れますし、万一アラームメータが鳴るほどの被曝をしたとしても、それでもまだ健康上影響のないレベルだと言う事を知っていますから、ある程度保険を持った感じで安心して作業に当たっていられるんです。

 というわけで、不安を感じないというのは知らないから感じないのではなく、正しく知っているから感じないのだと思います。

 ただ、中には国際的な基準値すら疑う人もいるでしょうから、そういう人は僅かな線量でも過剰に心配しているかもしれないですね。

 私としては、発電所で被曝するレベルの線量ではガンの発生率に有意な変化は見られないし、実際にアラーム寸前まで被曝した時も特に体調も悪くならないですし、心配ないと思って日々の作業にあたっています。

 

 また、この一文は前述の「放射能の心配をしながら働くわけですから、実際、原発の中ではいい仕事は絶対に出来ません。」という記述に矛盾しています。

 



「作業者全員が毎日被曝をする。それをいかに本人や外部に知られないように処理するかが責任者の仕事です。本人や外部に被曝の問題が漏れるようでは、現場責任者は失格なのです。これが原発の現場です。」

 これが本当だとしたら、現場監督は全員悪人という事になってしまいますね。

 

 これもまた誤解を招く話なので明言しておきますが、被曝線量を誤魔化す事は出来ない体制が既に確立しています。

 

 当日の作業は線量管理がされています。

 作業対象の放射線量は測定によって予めわかります。

 ですからその機器についてどれくらいの時間作業をしたらどれくらいの被曝をしてしまうのかは事前に計算できるんです。

 従って、一日の作業時間と必要な人員数はそれに照らして決められるわけです。

 そしてもし被曝している事を隠す為に、何らかの裏工作を行ったとしても、被曝量が予め計算されていた値から大幅に少なければ何らかの不正を行っている事が即座にバレます。

 予想と実情をチェックして、ウソがつけないようになっているんですよ。

 実際この被曝隠しがバレると厳重に処罰され、最悪の場合、その業者のプラント出入りが禁止になります。

 ですから、不正に被曝を隠す事は不可能なわけです。優秀な監督ならその辺りの事情を知っていますから、なおさら被曝を隠して自分の首を締めるような事はしないでしょう。

 

 というか、もう30年以上も原子力発電所は運転されているんですよ。点検だってもう随分やってる。だからどの作業でどれくらい被曝するのかなんてことはもうわかりきっているんです。

 わかりきった上で、どこを改善すれば被曝量をより減らせるのかについて探求しているわけです。それが線量低減というものなんです。

 

 もう一度書きますが、放射線に関する事にはウソはつけないんです。

 物理現象は正直だと言う事です。

 



「東京電力の福島原発で現場作業員がグラインダーで額(ひたい)を切って、大怪我をしたことがありました。血が吹き出ていて、一刻を争う大怪我でしたから、直ぐに救急車を呼んで運び出しました。ところが、その怪我人は放射能まみれだったのです。でも、電力会社もあわてていたので、防護服を脱がせたり、体を洗ったりする除洗をしなかった。救急隊員にも放射能汚染の知識が全くなかったので、その怪我人は放射能の除洗をしないままに、病院に運ばれてしまったんです。だから、その怪我人を触った救急隊員が汚染される、救急車も汚染される、医者も看護婦さんも、その看護婦さんが触った他の患者さんも汚染される、その患者さんが外へ出て、また汚染が広がるというふうに、町中がパニックになるほどの大変な事態になってしまいました。みんなが大怪我をして出血のひどい人を何とか助けたいと思って必死だっただけで、放射能は全く見えませんから、その人が放射能で汚染されていることなんか、だれも気が付かなかったんですよ。」

 この話は聞いた事があります。救急車などが汚染されたという話です。

 が、まったく除染をしないで出したという話は初耳です。これは更に別途調べて後日追記する事にします。

 

 ちなみに、私の入社以降に指を切ってしまって運び出された人が居ましたが、この人はちゃんと除染してから出たという話です。

 でもどうしても切り口の中だけは除去できなかったのでそのまま運んで治療を受け、医療に使用した器具など汚染したモノは全て所内に回収したと聞いています。

 今ではそのあたりの体制も確立していると思います。

 



「東京電力の福島第二原発で再循環ポンプがバラバラになった大事故」

 これは有名な事故ですね。

 3号機で正月に起きたものです。国際尺度でレベル2という重大事象とされています。

 確かにこれは大きなトラブルでした。

 原子炉再循環ポンプの振動が大きくなり、警報発生に至ったので停止して分解したところ、ポンプの軸受けや羽が損傷していて、削れた部分が金属紛になって炉内に流入したというものです。

 ちなみにポンプの状況については解説図がネット上にあります。
 http://mext-atm.jst.go.jp/atomica/owa/fig_img?fig_path=/images/02/02-07-02-08/07.gifです。

 なんですが。これをバラバラと表現するのかどうかは、個人的に微妙だと思います。

 また、「大事故」という表現も後にご本人が書いておられますが、非常に受け取った人の印象が変わってくる表現です。この表現の件については別途後述します。

 



「チェルノブイリの事故の時には、私はあまり驚かなかったんですよ。原発を造っていて、そういう事故が必ず起こると分かっていましたから。だから、ああ、たまたまチェルノブイリで起きたと、たまたま日本ではなかったと思ったんです。」

 さて、この話もおかしい点があります。

 チェルノブイリの事故はプラント固有の構造(黒鉛減速炉)と、故意に安全システムを切って不安定な低出力運転を実施した為に発生したものです。

 従って、「原発を造っていて、必ず起こると解っていた」というのは話の筋が違います。

 そして「たまたま日本ではなかったと思った」という話が整合しません。なぜなら、プラント構造の違いによって、構造的に同じような事故は日本のプラントでは起きようがないからです。

 これはかなり周知されています。ネットで少々調べれば分かる事です。

 というわけで、この話もおかしいと思います。

 



「関西電力の美浜原発で細管が破断した事故は、放射能を直接に大気中や海へ大量に放出した大事故でした。」

 誤りです。過去の記録を見れば解りますが、発電所敷地内外に設置されている放射線監視装置の指示値は通常と変化なく、外部に対する放射能の影響はありませんでした。

 http://mext-atm.jst.go.jp/atomica/owa/display?opt=1&term;_no=02-07-02-04に事故概要記録がタイムテーブル付きで解説されていますので、ぜひ確認していただきたいです。

 



「この事故はECCS(緊急炉心冷却装置)を手動で動かして原発を止めたという意味で、重大な事故だったんです。」

 誤りです。事象発生時、ECCSは自動起動しています。

 後の減圧操作時には確かに減圧系を手動で起動していますが、これはあくまでもある程度事象が落ち着いてから、停止操作を行う上で起動したもので、炉心の健全性の観点からは問題視するものではないと思います。

 

 ちなみに2002年1月現在、原子炉を停止して点検中の福島第一原発2号機では、使用済み燃料プールの冷却の為にECCSである残留熱除去系ポンプを運転中です。これもECCSの手動起動には違いありませんが、特に異常な事では無いと思います。ECCSも場合によっては非常時以外に使用される事だってあるんですよ。

 



「ECCSは原発の安全を守るための最後の砦に当たります。これが効かなかったらお終りです。だから、ECCSを動かした美浜の事故というのは、一億数千万人の人を乗せたバスが高速道路を一〇〇キロのスピードで走っているのに、ブレーキもきかない、サイドブレーキもきかない、崖にぶつけてやっと止めたというような大事故だった」

 これも違うと思います。ブレーキである原子炉自動停止はかかりましたし、サイドブレーキにあたるECCSも正常に動作しています。

 「高速運転しているバスはエンジンが故障したので自動的にブレーキがかかって止まり、エンジンが止まってからサイドブレーキを引いて、完全に停車した。」という表現が適切でしょう。

 前述の岩にぶつけて止まったという表現は明らかに誤った文章だと思います。

 



「原子炉の中の放射能を含んだ水が海へ流れ出て、炉が空焚きになる寸前だった」

 誤りです。一次冷却水が二次冷却水系に漏れ出したのは確かですが、海にまでは漏れていません。

 また原子炉が自動停止していますから、空焚きにはなりません。火の消えたガス台の上でヤカンが空焚きになることはないのと同じようなものです。

 ただ、原子炉は停止後も燃料の残留熱を冷やしてやらなければならないので、引き続き冷却は必要ですが、この点についてもECCS自動起動により炉水位は確保されていたわけですから、やはり空焚きなる寸前という事は無いです。

 



「日本が誇る多重防護の安全弁が次々と効かなくて、あと〇・七秒でチェルノブイリになるところだった。」

 確かに2台ある加圧器逃がし弁は開けられませんでしたが、きちんと設計どおりの代替系で減圧処置を行って、停止しています。

 また、ECCSの自動起動は事態に応じて的確に実施されました。更にこのシステムがダメだったとしても、予備系がちゃんとスタンバイされています。従って、このトラブルからはチェルノブイリには成り得ません。

 



「たまたまベテランの職員が来ていて、自動停止するはずが停止しなくて、その人がとっさの判断で手動で止めて、世界を巻き込むような大事故に至らなかったのです。」

 誤りです。前述のとおり、自動停止しているのでとっさの判断の手動停止操作はありませんでした。

 



「この事故は、二ミリくらいの細い配管についている触れ止め金具、何千本もある細管が振動で触れ合わないようにしてある金具が設計通りに入っていなかったのが原因でした。」

 これはその通りです。

 私が見ても実に遺憾な施工がされていたものだと思います。

 



「そのことが二十年近い何回もの定検でも見つからなかったんですから、定検のいい加減さがばれた事故でもあった。」

 これについては私もほぼ同意します。

 なぜ最初の施工完了検査で見抜けなかったのか。その後の定検でもカメラなどで確認していなかったのか、そのあたりに疑問を感じます。

 ですが、正直言って、PWRの定検がどのように行われているのか、当該個所の監視は可能なのか等、詳細がわからないので、あまりコメントしようが無い気もします。

 



「入らなければ切って捨てる、合わなければ引っ張るという、設計者がまさかと思うようなことが、現場では当たり前に行われている」

 これについては、確かに美浜のトラブルで金具が変に加工されていた痕跡があった事などから、全く無いわけではないという認識を持っていますが、といって当たりまえに行われているとは思えません。

 どう考えてもレアケースだと思います。

 実際、他のプラントで同様の施工ミスは見つかっていないはずです。

 一件をとりあげて、それが当たりまえだと言うのは言い過ぎだと思います。

 ただし、今後もこのような施工ミスが無いよう、万一あったとしても検知できるような厳しいチェック体制で望む必要性は感じました。

 



「図面を引くときに、私が居た日立は〇・五mm切り捨て、東芝と三菱は〇・五mm切上げ、日本原研は〇・五mm切下げなんです。たった〇・五mmですが、百カ所も集まると大変な違いになるのです。だから、数字も線も合っているのに合わなかったのですね。これではダメだということで、みんな作り直させました。何しろ国の威信がかかっていますから、お金は掛けるんです。」

 これについては現場を見ていないのでなんとも言えないのですが。そんな事があったんでしょうか・・・

 でも、メーカー独自の規格という奴は確かに存在するので、私としてもそんな事もあるかもしれないという気はします。

 



「どんなプラントの配管にも、あのような温度計がついていますが、私はあんなに長いのは見たことがありません。おそらく施工した時に危ないと分かっていた人がいたはずなんですね。でも、よその会社のことだからほっとけばいい、自分の会社の責任ではないと。」

 これについても私の意見を挟む余地はないです。ノーコメントです。

 確かにそういうことがあったかもしれません。でも、この話は「はずなんですね」という記述の通り、推測の域を出ていないと思うのですがどうでしょうか。

 ちなみに温度検出器、通称TEと言うんですが、私もあんなに長いのは初めて見ました。

 



「動燃自体が電力会社からの出向で出来た寄せ集めですが、メーカーも寄せ集めなんです。これでは事故は起こるべくして起こる、事故が起きないほうが不思議なんで、起こって当たり前なんです。」

 確かに一つの企業だけで構成された団体ではないですから、いろいろ主義主張の違いもあると思います。

 でも、だからと言って、事故が起きない方が不思議かと言われるとそうでもないと思いますが。

 もしそういう話しだとすると、大規模ゼネコンで行われているJV工事なんか全部事故が起きない方が不思議と言う事になってしまいます。

 研究などでも複数の企業による共同研究なども行われていて、成果をあげています。

 動燃の問題はもっと別の所にあるような気がします。

 



「普通の人にとって、「事故」というのと「事象」というのとでは、とらえ方がまったく違います。この国が事故を事象などと言い換えるような姑息なことをしているので、日本人には原発の事故の危機感がほとんどないのです。」

 これは「言い換える姑息な手段」を狙ったモノというわけではなくて、ちゃんと経緯があるんです。実は原発の事故レベルには定義がありました。

 この定義については
 http://mext-atm.jst.go.jp/atomica/owa/fig_img?fig_path=/images/15/15-10-01-06/01.gif及び
 http://mext-atm.jst.go.jp/atomica/owa/fig_img?fig_path=/images/15/15-10-01-06/02.gifに示されていますが、電力の発表はこの基準に従って「事象」と「事故」を使い分けているんです。

 この定義では周辺公衆への被曝があった場合を事故と定義しているので、公衆に放射線による影響が無かったこれら原発のトラブルは事故ではなく事象と呼ばれていたのです。

 

 また、この定義に従って、JCOのトラブルは事故と表現されていました。

 

 なんですが、実は既に1992年3月には国際的な尺度としてIAEAが定めたINES(International Nuclear Event Scale)の正式な導入が各国に提案されていて、1992年8月から国内の評価尺度をINESに切り替えて運用しているんです。

 このINESの尺度は最近のニュースでも「〇+(ゼロプラス)」とか「〇−(ゼロマイナス)」のように報道されているので、皆さんご存知かもしれませんが、それぞれ
 http://mext-atm.jst.go.jp/atomica/owa/fig_img?fig_path=/images/11/11-01-04-01/01.gif
 http://mext-atm.jst.go.jp/atomica/owa/fig_img?fig_path=/images/11/11-01-04-01/02.gif
 に示されています。

 この国際評価で行くと、日本の原子力発電所の事故と言われるものは殆どレベル2以下に入っているんです。

 従って、今でも事故ではなく事象と呼ばれている場合が多いんですね。

 

 また、この件については、作者が、『「事故」というのと「事象」というのとでは、とらえ方がまったく違います。』と言われているわけですが、同様に『大事故』という表現が多用されている問題の文章にも同じ事が言えると思います。

 どちらも適正な表現をするべきでしょうね。

 

 ちなみに、海外のトラブルは日本の比ではないモノがしばしば起きていますので、興味がおありでしたら是非ネットなどで検索してみてください。

 



「プルトニウムはどんなに微量でも肺ガンを起こす猛毒物質です。プルトニウムはこの世で一番危険なものといわれるわけですよ。」

 極微量で肺がんを引き起こす猛毒という表現はおかしいと思います。

 プルトニウムは放射性物質です。確かに半減期も長いです。

 ですが、ここで問題視されているのはアルファ放射線を出す事です。

 決してサリンや砒素などのような、物質特有の毒性を持っているわけではないんです。

 

 では、同じ放射性物質の中で、何故プルトニウムだけが猛毒扱いされるのか、それはアルファ線を放射する為に、内部被曝した場合に、強い影響力があるからです。

 アルファ線は紙一枚で遮る事ができる放射線です。しかし内部に取り込んでしまうと遮蔽物が無いので、アルファ線を直接浴びてしまい、これがガンを引き起こすのではないかというわけです。

 しかし、それを言い始めると、アルファ放射線を出す物質は他にもありますから、それらも猛毒扱いしなければならなくなるでしょう。

 確かにアルファ核種を扱うのは注意が必要ですが、だからと言ってプルトニウムを取り立てて猛毒扱いする必要は無いと、私は思います。

 また、アルファ放射線は紙一枚で防げるものですから、内部被曝さえしないように注意して扱えば透過力の強いガンマ線を出すものより扱いは簡単です。例えばドラム缶に入れてしまえば外部の放射能は『ゼロ』になります。

 



「しかし、日本のプルトニウムが去年(一九九五年)南太平洋でフランスが行った核実験に使われた可能性が大きいことを知っている人は、余りいません。フランスの再処理工場では、プルトニウムを作るのに核兵器用も原発用も区別がないのです。だから、日本のプルトニウムが、この時の核実験に使われてしまったことはほとんど間違いありません。」

 確かに日本の使用済み核燃料の再処理はフランスのコジェマ社とイギリスのBNFLで行っています。

 ですが、あくまでも依頼しているのは再処理であって、再処理後の回収プルトニウムと、放射性廃棄物はまるまる日本に帰ってきます。

 見方によっては日本の使用済み燃料から抽出されたプルトニウムがフランスで使用されたと見る事ができるかもしれません。

 しかし、最終的には再処理した分は日本に帰ってくるんです。

 これは海外派兵をせずに、アメリカに金を払って、「救援物資に使ってくれ」と言っているのと同じような話です。結局はアメリカの国庫に収まった時点で兵器購入資金と見分けがつかなくなってしまうんです。

 というわけで、あくまでも見方だけの問題だと思いますし、無意味な議論だと思います。

 



「もし、日本政府が本気でフランスの核実験を止めさせたかったら、簡単だったのです。つまり、再処理の契約を止めればよかったんです。」

 再処理されてしまっているものの契約を止めたとして、それで核実験を止めさせる事が本当にできると思いますか?

 私はそうは思えません。

 核実験の実施という高度に政治的な意味を含んだ事態は、日本の再処理どうこうというレベルの話ではないと思います。

 



「普通の原発で、ウランとプルトニウムを混ぜた燃料(MOX燃料)を燃やす、いわゆるプルサーマルをやろうとしています。しかし、これは非常に危険です。分かりやすくいうと、石油ストーブでガソリンを燃やすようなことなんです。原発の元々の設計がプルトニウムを燃すようになっていません。プルトニウムは核分裂の力がウランとはケタ違いに大きいんです。だから原爆の材料にしているわけですから。」
「いくら資源がない国だからといっても、あまりに酷すぎるんじゃないでしょうか。早く原発を止めて、プルトニウムを使うなんてことも止めなければ、あちこちで被曝者が増えていくばかりです。」

 プルサーマルについては別途解説文を書いていますので、こちらを参照していただきたいと思います。

・『プルサーマルって何?』
・『使用済燃料の再処理で得られるプルトニウムは、全体の一%足らずで、資源の有効利用とは言えないというご意見について』
・『MOX燃料を使うと制御棒が効きにくくなるという見解について』

・『プルサーマルとMOX燃料』詳細解説冊子(PDF形式)<かなり詳しい冊子です

 

 なお、既に現在の炉心内部でもプルトニウムは反応していますので、MOXを使用したとしても大きな影響はありません。

 また、原爆の材料と言っても使用形態が全く異なります。

 その点だけは間違えないで戴きたいと思います。

 



「日本には途中でやめる勇気がない。世界では原発の時代は終わりです。原発の先進国のアメリカでは、二月(一九九六年)に二〇一五年までに原発を半分にすると発表しました。それに、プルトニウムの研究も大統領命令で止めています。あんなに怖い物、研究さえ止めました。」

 これについてはご存知の方も多いと思いますが、カリフォルニアで電力危機を味わったアメリカは再び原子力に対して推進の立場に転じています。

 これが少なくとも現状を支える為にも原子力発電所は必要なのだという証拠なのではないでしょうか。

 

 ドイツは確かに原発を止める決定を下しました。これは原子力発電に反対する緑の党が政権を握った為、公約を実行しているものです。

 ですが、代わりに隣のフランスから原子力発電によって作られた電力を購入しているというのも有名な話です。

 

 そして仮に原子力発電の時代が終わったとして、代替はどうなっていますか?

 代わりに風力を使うという話があります。確かに風力は有力なクリーン発電方法だと思います。推進には私も賛成しています。

 が、これには安定した供給が出来ないという最大の問題があります。

 

 電力の需要は刻々と変化します。電力会社はその変化に合わせて発電機の運転を調整しています。

 ですが風力は不必要な時に停止させる事は出来ても、風が無ければ必要な時に出力を出す事ができません。

 風が一定の強さで吹きつづければ出力は安定しますが、吹いたりやんだりする風の場合は出力が変動します。

 これでは安定した電力供給が出来ないのです。

 だから、風力は補助的に使うとしても、主力にはなり得ないんです。

 

 ちなみに電力の需給バランスの調整は分単位で行われています。

 電力の自由化が決まって、発電業者に対して30分ごとに必要量の出力調整を行ってくれるように依頼していますが、「それじゃやってられない」という事で反対意見が続出しているそうです。

 ですがね、電力会社は今までそうやって、いやもっと過酷な出力の微調整を行う事で電力の安定供給を維持してきたんです。

 30分で調整すれば良いなんて、甘い話なんです。

 ぜひその辺りの事情を理解して欲しいです。

 

 っと、すいません、また話しが逸れました。戻しましょう。

 



「どうして日本が止めないかというと、日本にはいったん決めたことを途中で止める勇気がないからで、この国が途中で止める勇気がないというのは非常に怖いです。」

 これは「やめる勇気がない」んじゃないと思います。

 「やる必要がある」という事だと思います。

 

 アメリカで原子力発電が再開されるように、現実にこの世界を支える為に、まだ原子力は必要なエネルギーだと思います。だから続けるんです。

 そして、もし、原子力に代わるもっといい発電方法が実用化されたら、その時になって初めて乗り換えればいいわけです。

 

 「日本の原子力政策はいい加減なのです。日本は原発を始める時から、後のことは何にも考えていなかった。その内に何とかなるだろうと。そんないい加減なことでやってきたんです。」というお話にあるとおり、先を考えずにいい加減に『現状を支えている原子力をやめる事はできない』と、こう思うんです。

 

 原子力を進める上では、確かに問題を先送りにしてきた経緯があります。

 実際に進みが遅くて困っているのが現状です。それでもやっと六ヶ所村の再処理施設の稼動が見えるところまでやってきたんです。やっと国内で核燃料リサイクルが成立する目途が立ってきたという所です。遅々としてはいますが、確かに進んではいるのです。

 先送りにしてきた部分がやっと進んできています。

 しかし、「先送りにしてこれた」のは、あくまでも再処理、廃棄物処理と言った、「事後の処理に関する部分」だった事を忘れてはいけないと思います。

 

 ここで原子力をまず止めて、代替電源の確保を先送りにしたらどうなりますか?

 電力不足が現実のものに成ることは明らかです。

 

 だから今も原子力を続けているんだと、私は思います。

 



「いままでは大学に原子力工学科があって、それなりに学生がいましたが、今は若い人たちが原子力から離れてしまい、東大をはじめほとんどの大学からなくなってしまいました。机の上で研究する大学生さえいなくなったのです。」

 確かにこれも問題として取り上げられています。

 実際に詳細調べたわけではないのですが、確かに原子力を研究する学生は減っているそうです。

 もっとも、学生人口自体が減っているわけですからある程度は仕方ないとも思いますが、確かに忌々しき事態だと私も思います。

 

 しかし、東大から「原子力工学科」は無くなっているようですが「システム量子工学専攻科」という名称で大学院には原子力を研究する部門がちゃんと残っています。東大で原子力の勉強が出来なくなったというわけではないと思います。

 



「メーカーでさえ、原子力はもう終わりだと思っているのです。」

 これも極端な話です。

 確かに原発立地が進まない今、火力プラントのリプレース(建て替え)が多い今、人員をそちらに割くのは当然だと思います。

 というか、だいたいにして、メーカーは今、合併劇の真っ最中です。東芝は三菱と提携してますし、日立も近く某社と提携するという話を聞いています。

 ですが原子力部門を無くすという動きはどこにもありません。

 というわけで、別にメーカーが原子力を終わりだと思っているという見方は出来ないと思います。

 



「具体的な廃炉・解体や廃棄物のことなど考えないままに動かし始めた原発ですが、厚い鉄でできた原子炉も大量の放射能をあびるとボロボロになるんです。」

 原子炉本体は確かに徐々に放射性脆化という現象で脆くなってきますが、60年は余裕でもちそうなデータが取れています。さしあたって「ボロボロ」にはなりません。

 また、原子炉は内部に試験片と呼ばれる原子炉材料と同じ材質のものを入れてあって、これをサンプリングして試験する事で、原子炉本体の材質の状態を確認しています。

 従って、原子炉本体の劣化は確実に検出する事が出来ます。

 

 それから、いわゆる応力腐食割れ(SCC)の問題については、現在では材質を変更して対策してあります。この対策によりプラントの耐用年数が大幅に延びています。

 



「一九八一年に十年たった東京電力の福島原発の一号機で、当初考えていたような廃炉・解体が全然出来ないことが分かりました。このことは国会でも原子炉は核反応に耐えられないと、問題になりました。」

 これは初耳でした。

 私は直接詳細は知りませんが、通産省あたりに文書があるかもしれませんね。

 ちなみに現在では解体手法の研究も進み、手法の目途も立っています。

 また実際に日本原電東海発電所で解体作業を実施中です。

 



「放射能がゼロにならないと、何にもできないのです。放射能がある限り廃炉、解体は不可能なのです。」

 これについては前述の通り、化学除染等により線量を大幅に下げる事が可能となっています。

 従ってゼロになるのをただ待たねばならないというわけではありません。

 また、解体ではありませんが、実際に原子炉内構造物であるシュラウドの交換作業も実施され、原発の殆どの部分が交換修理可能である事も証明されています。

 



「人間にできなければロボットでという人もいます。でも、研究はしていますが、ロボットが放射能で狂ってしまって使えないのです。」

 さて、ロボットにもいろいろな種類があります。

 その中に放射線のある環境で水中溶接をするロボットや水中カメラを搭載したロボットなどが実用化され、実際に使用されています。

 余談ですが、最近良く使われる「CCD」はダメだそうです。あと「耐放射線レンズも結構なお値段」だそうです。

 

 さて、しかしながら現場で「放射能でロボットが狂った」という事象は一つもありません。

 この放射能で狂うロボットというモノがどんなものだったのかはどこにも記述が無く、不明です。

 なお、また聞きな話ですが、「火星探査ロボは大気がない為、宇宙放射線の影響で誤動作する可能性があって、その対策をしてるって話は聞いたことがある。」という情報もあります。

 そういえば半導体素子に放射線が当たった時に誤動作する可能性があるという話を私も聞いたような気がしますが、その問題は遮蔽すれば済む話だと思います。

 



「結局、福島の原発では、廃炉にすることができないというので、原発を売り込んだアメリカのメーカーが自分の国から作業者を送り込み、日本では到底考えられない程の大量の被曝をさせて、原子炉の修理をしたのです。今でもその原発は動いています。」

 確かに福島第一1号機は原子炉再循環系配管の交換も行い、原子炉直結配管の熱応力緩和改造なども実施しています。

 聞くところではGEの作業員が来て作業を行っていったそうです。

 またアメリカの放射線管理基準は日本よりもかなり緩いので、日本の作業員に比べて多くの被曝をして作業をしていたという事です。

 ですが、アメリカとはいえ国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告には従っているわけですから、多くの被曝と言っても、国際基準を超える事は無いはずです。

 また、その作業による被曝で致死者が出たというニュースも聞いたことがないです。

 また修理する事が出来たので今でも運転を続けられています。

 



「最初に耐用年数が十年といわれていた原発が、もう三〇年近く動いています。そんな原発が十一もある。くたびれてヨタヨタになっても動かし続けていて、私は心配でたまりません。」

 その後の解析によって、現在ではなんと寿命は60年行けると言われています。

 もちろん然るべき補修やモーター、ポンプなどの交換を行いますが、原子炉本体は炉材のサンプリング分析の結果、まだまだ充分大丈夫な事が判っています。

 従って、言われるほど「くたびれてヨタヨタ」には成っていないというのが現状のようです。

 



「なぜ、原発は廃炉や解体ができないのでしょうか。それは、原発は水と蒸気で運転されているものなので、運転を止めてそのままに放置しておくと、すぐサビが来てボロボロになって、穴が開いて放射能が漏れてくるからです。原発は核燃料を入れて一回でも運転すると、放射能だらけになって、止めたままにしておくことも、廃炉、解体することもできないものになってしまうのです。」

 これも誤った見解だと思います。

 実際、シュラウド交換工事の時にプラントを一年近く停止していますが、錆びなんか出てないです。

 もちろん穴も開いてませんし、放射能だって漏れてません。

 

 というか、それを言ったら火力プラントだって同じように水や蒸気が流れているわけですよ。常識で考えてみても、配管系が停止してスグにボロボロになるはずが無いです。

 この表現を見る限り、「この人は本当にプラントを知っているのか?」と疑念が湧いて仕方ありません。

 

 また、一回運転すると放射能まみれになるという話ですが、これは確かにある程度はいえます。当然ですが、放射性をもつ蒸気や水がプラントを循環する訳ですから、一度運転すれば全体的に多少は汚染がつく訳です。

 でも、だからと言って、停止も解体も出来ないとは言えません。除染すれば殆ど除去できるレベルです。

 また、フラッシングと呼ばれるきれいな水を循環させて途中にあるフィルターでろ過する運転をする事で系統の掃除もできるようになっています。

 



「先進各国で、閉鎖した原発は数多くあります。廃炉、解体ができないので、みんな「閉鎖」なんです。閉鎖とは発電を止めて、核燃料を取り出しておくことですが、ここからが大変です。放射能まみれになってしまった原発は、発電している時と同じように、水を入れて動かし続けなければなりません。水の圧力で配管が薄くなったり、部品の具合が悪くなったりしますから、定検もしてそういう所の補修をし、放射能が外に漏れださないようにしなければなりません。放射能が無くなるまで、発電しているときと同じように監視し、管理をし続けなければならないのです。」

 さて、閉鎖されたプラントというモノを私は見学した事が無いので、実際のところは判りません。判りませんが、発電を停止して、配管から水を抜いておくと言うのなら解りますが、運転中同様に水を入れて動かし続けなければならないという話はちょっと合点が行きません。

 別に水を循環させておく必要性を感じないのですが、何故水を流し続けなければならないのかが不透明です。

 先ほどの停止して置いて置くと錆びて穴が開くという話が根拠だとすると、これも変な話になります。

 給復水配管は内部に酸化皮膜が形成されていますから、乾燥保管しても錆びて、ましてや穴があくというのは無いように思います。

 

 放射線がある限り管理をしなければならないのは合っていると思うのですが。

 



「これから先、必ずやってくる原発の閉鎖、これは本当に大変深刻な問題です。近い将来、閉鎖された原発が日本国中いたるところに出現する。これは不安というより、不気味です。ゾーとするのは、私だけでしょうか。」

 というわけで、先ほども書きましたが現在日本原電東海発電所では閉鎖ではなく解体が進められています。

 ついでに言うと、実験炉であるJPDR1も解体され、今では原子炉跡地は綺麗な更地になっています。

 確かに解体は時間もかかって大変な作業のようですが、現に解体が実施されているわけですので、この閉鎖に関する心配は不要かと思います。

 



「低レベル放射性廃棄物、名前は低レベルですが、中にはこのドラム缶の側に五時間もいたら、致死量の被曝をするようなものもあります。」

 低レベル放射性廃棄物の区分については実は明確な数値による設定はなされていないという話を聞いてます。

 だいたい発電所からでるモノは核燃料以外は全て低レベル廃棄物だと言われてますが、そうなると確かに中には線量の比較的高いモノもあります。

 しかしながら、5時間で50%致死量である4000mSvに達するドラム缶を見たことは無いです。

 

 区分が数値化されて明確なわけではないので「低レベル廃棄物のなかで最も線量の高いモノ」と言うのは明確には解りませんが、参考としてIAEAの区分によれば低レベル放射性廃棄物というのは2mSvから20mSvの放射線量当量のあるものを言うそうです。

 この区分を適用するならば、最大で20mSvのドラム缶の脇に5時間居ると100mSvとなりますから、やはり5時間で致死量というのは話が合いません。

 というわけで、この話しも真偽がはっきりしないです。

 



「日本が原発を始めてから一九六九年までは、どこの原発でも核のゴミはドラム缶に詰めて、近くの海に捨てていました。その頃はそれが当たり前だったのです。私が茨城県の東海原発にいた時、業者はドラム缶をトラックで運んでから、船に乗せて、千葉の沖に捨てに行っていました。」

 これ、本当なんでしょうか?

 もし真実なら、これは大きな問題だと思います。

 それこそ世界的な論議になると思いますし、千葉近海だって調査しなければなりません。

 現実問題として、国際的にも『海洋投棄は、日本においては実施されていない。』とされています。

 

 海洋投棄問題については、日本海にロシアが海洋投棄を行ったという話は周知の事実で、これについては様々な調査もされました。この調査では特に影響はないという結果が出ています。

 また、「北大西洋でOECD/NEA協議監視制度の下で、英、仏、西独等により1967年から1982年にかけて海洋投棄が実施されたが1983年以降は行われていない」という情報を聞いています。

 

 さて。ここで私、ちょっと冷静に考え直してみたんですが。日本原電敦賀1号機と関西電力美浜1号機運転開始は1970年。東京電力福島第一1号機の運転開始は1971年です。従って、電力会社の原子力発電所はまだ出来ていませんから69年にはまだ廃棄物が発生していません。

 だとすると、1969年まで日本が海洋投棄をしていたという話は1966年に運転開始した東海発電所のガス炉か、それ以前の実験炉のものという話になります。

 さすがにそこまで古い話になると、当然電力会社には記録が残っていません。また、確かに実際にそれをやった当人しか知らないのかもしれません。

 でも少なくとも、現在では海洋投棄は国際的にも禁止されていますし、ドラム缶も番号管理されて存在場所が管理されていますので、今後も公式にも非公式にも実施される事はないと思います。

 



「一体、三百年ももつドラム缶があるのか、廃棄物業者が三百年間も続くのかどうか。どうなりますか。」

 300年もつドラム缶というのは難しいでしょう。

 確かに剥き出しのままであれば、ドラム缶はどうしても錆びたりしてくると思います。

 しかし「処分」された段階で、ドラム缶はそれを並べたコンクリートピットごとコンクリートで埋め込んでしまいますので、ドラム缶は完全にコンクリート詰めされた状態になります。

 従ってコンクリートと一体となった状態ですので錆びなどは問題にならないと思います。

 このような処分方法は「浅地中処分」と呼ばれていて、既に実施されています。

 

 廃棄物業者が300年続くのかという件については、逆に「300年管理する事が決まっている」のであれば「300年は続く事になる」のではないでしょうか。

 



「もう一つの高レベル廃棄物、これは使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出した後に残った放射性廃棄物です。これはどろどろの高レベル廃棄物をガラスと一緒に固めて、金属容器に入れたものです。この容器の側に二分間いると死んでしまうほどの放射線を出すそうですが、これを一時的に青森県の六ケ所村に置いて、三〇年から五〇年間くらい冷やし続け、その後、どこか他の場所に持って行って、地中深く埋める予定だといっていますが、予定地は全く決まっていません。」

 これは正しいです。

 高レベル廃棄物処理の最終的な方策は処分方法こそほぼ決まった(ここでは割愛しますが詳細は経産省でパンフレットを作って説明しています)ものの、埋設地が見つかっていません。

 原子力発電最大の問題と言えると思います。

 これは間違いなく今後解決する必要がありますが、正直言って頭の痛い問題である事この上ありません。

 原子力発電をやるべきだと思っている自分自身、この問題だけはどうしようもない部分として引っかかり続けています。

 もう、それこそ私の家の地下に埋めれるものなら埋めて欲しいと本気で思っているくらいです。

 



「原発自体についても、国は止めてから五年か十年間、密閉管理してから、粉々にくだいてドラム缶に入れて、原発の敷地内に埋めるなどとのんきなことを言っていますが、それでも一基で数万トンくらいの放射能まみれの廃材が出るんですよ。生活のゴミでさえ、捨てる所がないのに、一体どうしようというんでしょうか。とにかく日本中が核のゴミだらけになる事は目に見えています。早くなんとかしないといけないんじゃないでしょうか。それには一日も早く、原発を止めるしかなんですよ。」

 原子力発電所の解体廃棄については既に放射性廃棄物として処分する部分と、通常の産業廃棄物や再生コンクリートとして使用できる部分などについて決まっています。

 低レベル廃棄物はやはり低レベル廃棄物として埋設する事になっています。

 が、密閉管理を5年か10年行うという話は無いように思いますが。

 解体に5年から10年かかるのではという話なら聞いたことがありますけれども。

 また、変な話、今原発をすぐに止めたところで、解体廃棄物の量は変わらないと思いますが。早く止めたからといって「なんとかなる」わけじゃ無いように思います。

 



「「お聞きしていいですか。今、廃棄物を五〇年、三百年監視するといいましたが、今の大人がするんですか?そうじゃないでしょう。次の私たちの世代、また、その次の世代がするんじゃないんですか。だけど、私たちはいやだ」と叫ぶように言いました。この子に返事の出来る大人はいますか。」

 確かにこの女子生徒の意見ももっとも思えるかもしれません。

 確かに廃棄物問題は我々の世代だけでは解決できません。次の世代。そのまた次の世代へと受け継がれる問題になります。

 

 ですが。

 考えてみて下さい。福島第一原子力発電所1号機は1971年に運転を開始しました。私はその年に生まれました。私が生まれた時、原子力発電は始まっていました。

 そして今、私はその福島第一原子力発電所1号機にも携わって仕事をしています。

 これはある意味既に2代目に引き継がれていると言えるのではないでしょうか。

 

 私が育ってきた今までの間、私は知らず知らずのうちに原子力発電による電力を使って生きてきました。

 今の自分の生活があるのは原子力発電によって支えられている部分がある事も学生時代には理解していました。だからそれについて引き継がなければならない部分があることもある意味理解していたと思います。

 今、原子力発電所があるのは何故か。それは原子力発電が新しいエネルギー源として必要だったからではないでしょうか。オイルショックもあり、石油依存から脱却する必要もあったでしょう、近年ならCO2削減問題にも関わる事でしょう。

 必要があって今ある。それは確かに自分が生まれる前から自分の知らないうちに造られたものかもしれません。でも当時それらを動かし始めた人たちは少なからず未来の為に、恐らくは当時子供であり、今は大人になった我々の生きる時代の為にと思って原子力発電を始めた部分もあると、私は思います。

 そして、現在、実際にそれに支えられている現実がある。

 ならば、その利益を享受してきた世代であり、そして今を支えられている我々にはそれを引き継ぐ義務があるのだと思います。

 自分たちが始めた事じゃないからと言って無視していい物ではないと思います。

 昔の大人たちは将来の子供達の為に、すなわち今の自分達の為に頑張って作ってくれたんだと、そう思うんです。

 

 そして昔の大人達だって、自分達以前の大人達が残した厄介ごとを解決しながらやってきたわけです。

 

 そう、僕らから見た大人達は、その前の大人達がしでかした『戦争』という厄介ごとの後始末もやらされてきたんですよ。

 それに比べれば今の我々や、我々の一つ下の世代の引き継ぐモノの何と軽い事か、と思うんですがどうでしょうか。

 

 結局誰もが前の世代のことを好むと好まざると引き継いできたんです。それが歴史なんです。

 

 確かに今となっては、「先送りで俺たちに後始末を押し付けて」と文句を言う人も居るでしょうし、「原発を作って欲しいなんて俺は言ってない」という人も居るかもしれません。

 でも私はこれを受け継いで、なんとか問題も解決しつつ、将来的にもエネルギー不足を起こすことなく文明を維持していけるようにしたいと思っています。

 

 嫌なモノ、面倒なモノを引き継ぐのは嫌だと言うのは簡単です。

 でも、引き継ぐべきもの、引き継がねばならないものと言うのは、原子力に限った事ではなく、いろいろな分野にあると思います。

 地球温暖化問題だって、石油をあんなに大量消費した結果ですし、オゾンホールだって、便利だって事でフロンを使いまくった結果です。

 当時子供だった我々は、「そんなの大人がやった事だ」と言えば確かにそう言えてしまうでしょう。

 

 でも、誰も故意に面倒な問題を残そうとして残してるわけじゃないんですよ。

 気がついたら遅かったり、知らなかったりした。ある意味、人間のやる事なんだから仕方ない部分もあるんじゃないですかね?

 

 それに、現状を拒絶した所で、事態は何も好転しません。

 対策を我々の世代がやらなければ、更に先の将来に、更なる悪影響を残してしまうでしょう。それは回避したい。

 だから面倒な問題も引き継いで、我々が何とかしなければいけない。

 目前に現実に問題がある以上、逃げる事は出来ないんです。

 文句を言っても誰も対処できません。自分たちが対処するしかありません。大人に文句を言うのはかまいません。でも処理は結局自分たちがしなければならない。

 

 もし本当に引き継ぐのが嫌なら、自分たちの世代でそれをやめるようにすれば良いのではないでしょうか。

 

 温暖化問題対策をしたくなければしないというのもその世代の意思です。実際にアメリカなんかは現在の繁栄を維持する為にCO2削減計画を無視しようとしているわけですし。

 その結果、将来地球がダメになったとしてもそれはその世代が選んだ道なんですから。

 

 もちろん、そんな事をしたら次の世代に猛烈に文句を言われるでしょう。それは「自分達より更に前の世代が悪いんだ」なんて言っても通用なんかしません。

 今の大人たちがちゃんと対処してくれなかったからだと、子供達は訴えるでしょう。そう、今まさにその女子生徒さんが言ってのけたようにです。

 

 私なら彼女には以上の話をしたいと思います。

 

 そうやって時代は引き継がれるものなんですから。その鎖を断ち切るとしたらそれは自分達自身だって事を言ってあげたいですね。

 ただし、同時に自分たちがした事は未来の子供達に今の自分同様に評価される事になると言う事も解ってもらいたいと思います。

 

 さて、話が横道に逸れすぎました。話を戻します。

 



「それに、五〇年とか三百年とかいうと、それだけ経てばいいんだというふうに聞こえますが、そうじゃありません。原発が動いている限り、終わりのない永遠の五〇年であり、三百年だということです。」

 これはその通りだと思います。

 原子力発電を続ける限り、廃棄物処理だってずっと続きます。

 でもこれはやはり原子力発電に限った話ではないと思います。

 アスファルトの道路を使う限り永遠に補修を続けなければ成りませんし、産業が存在する限り産業廃棄物は発生しますし、人間が今のような生活を続ける限りゴミは出続けます。

 人間が生きている限り、永遠に問題が尽きる事はありません。

 大きな視点で見ればそういう見方もできると思いますが、どうでしょうか。

 



「日本の原発は今までは放射能を一切出していませんと、何十年もウソをついてきた。でもそういうウソがつけなくなったのです。」

 ですから、確かにゼロとは言いませんが、環境に影響があるような放射性物質は本当に出ていないんです。

 これも排気塔のモニター数値がリアルタイムに公表されていますから、ぜひ確認してください。

 http://www.tepco.co.jp/fukushima1-np/monitoring/haiki3.htmlで確認できます。

 見ていただけると解りますが、10cps未満程度の環境にある自然の放射線となんら差が無い数値が出ています。

 

 従って「原発にある高い排気塔からは、放射能が出ています。出ているんではなくて、出しているんですが、二四時間放射能を出していますから、その周辺に住んでいる人たちは、一日中、放射能をあびて被曝しているのです。」という記述も全くの誤りである事がおわかりいただけると思います。

 


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