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第14回 ─ シティー・ポップ
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掲載: 2003/05/29
更新: 2003/06/12
ソース:『bounce』誌 243号(2003/5/25)

80年代(好景気)の日本で花開いたポップスのスタイル──シティー・ポップ……そう言葉に表すと、当時を知る人には〈もはや死語では?〉と言われるかも知れませんが、そこから発信されたスタイリッシュな佇まい、メロウネス、繊細さ……は、その解釈を時代と摺り合わせながら、現代のポップスにもしっかりと受け継がれているのですよ!

文/小野田 雄



 さかのぼると(またしても)はっぴいえんどに通じてゆくシティー・ポップ・ヒストリー。いつから、そして、誰がその名称を発明したかは別の機会に譲るが、その言葉が一般的に使われるようになったのはカー・ステレオが普及し始めた80年代初頭のこと。当時、愛車にはシティー・ポップの名盤として大ヒットを記録した山下達郎『RIDE ON TIME』(80年)と大滝詠一『A LONG VACATION』(81年)が積まれていて……なんていうエピソードは星の数ほどあった。そこに松本隆と縁の深い南佳孝『Silkscrean』(81年)や寺尾聰『Reflections』(80年)などを加えることもできるが、主役のほとんどは70年代の先駆者たちに影響を受けた世代のアーティストたち──浜田金吾や角松敏生(この2人は山下達郎の担当ディレクターであった小杉理宇造が設立したレーベル、AIRに在籍)、シュガー・ベイブをカヴァーしたEPOなど──が挙げられる。音楽的には前述のアーティストたちが築き上げた70年代の邦楽ポップスや同時代に盛り上がりを見せていたAOR、クロスオーヴァー・ミュージック(≒フュージョン)の影響を消化した、〈洗練〉された〈都会的〉なサウンドを〈シティー・ポップ〉と呼んでいた。

  〈洗練〉〈都会的〉というキーワードは、単に音楽的な話だけでは終わらなかった。学生作家であった田中康夫(現・長野県知事)が、好景気を反映したブランド志向の若者たちを描いた小説「なんとなくクリスタル」(81年)を刊行したことで社会現象化したり、イラストレーター/漫画家のわたせせいぞうが、都会に暮らす男女のショート・ストーリー「ハートカクテル」(83〜86年、「週刊モーニング」にて連載)で人気を集めたりと、〈洗練〉された〈都会的〉な嗜好はシティー・ポップを巻き込んでひとつのカルチャーとして確立されたのだ。

 しかし、どんなブームにも終わりがあるように、多くの都会幻想が暴かれたこと、洗練と商業化が形骸化を招いたこと、さらに90年のバブル経済崩壊が追い討ちをかけたことでひとつのカルチャーは終焉を迎える。ただし、シティー・ポップは死んでしまったわけではなかった。

 モノは言いようであって、90年代のいわゆる〈渋谷系〉と呼ばれた音楽も、当時とは文脈や形を変えたシティー・ポップであると言うことができる(ピチカート・ファイヴやフリッパーズ・ギターを手掛けたプロデューサーの牧村憲一は、かつて山下達郎や竹内まりやを手掛けていた)。また、彼らがDJ的な視点からかつてのシティー・ ポップを再発見したことで、文化的な背景を取り払った純粋な音楽としてシティー・ポップは一般化され、キンモクセイや堂島孝平(ほかディスクガイド参照)といったアーティストに受け継がれている。つまり、シティー・ポップに終わりはないのだ。

 果たして、21世紀のシティー・ポップはどう変化を遂げていくのだろうか?

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