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【社説】

赤福偽装 “みそぎ”をしないと

2007年10月13日

 コーチンの次は赤福、また偽装表示である。「老舗」とは信頼の上に成り立つ看板だ。それだけに消費者の「食」に対する不信をかき立てた。もういいかげん、その根を断たないといけない。

 業界紙がアンケートを基に選んだ「二十世紀を代表する土産品」で、二位を大きく引き離してトップの座に輝いたのが、北海道の「白い恋人」。以下福岡のからし明太子、宮城の「萩の月」、京都の「八ツ橋」と続き、三重の赤福餅(もち)は、長崎のカステラや静岡の「うなぎパイ」を抑えて五位に入った。

 一位と五位が、賞味期限と製造年月日の偽装表示に手を染めた。

 「赤福」は、一七〇七年の創業で、今年ちょうど三百年。伊勢神宮門前のあんころ餅が、当時ブームを呼んだ「おかげ参り」の参拝客に受けたのが始まりだ。

 赤福の名は、京から来た茶の師匠が言った「赤心慶福」から付けたとされている。「赤ん坊のようなうそ偽りのないまごころを持って自分や他人の幸せを喜ぶ」という意味で、同社の社是にもなっている。

 旅人相手の地菓子がいつか評判になり、販路が増える。赤福の出荷先は原則中部から関西に限られてはいるものの、出荷量は一日数万箱にも上り、商品の流通経路や管理が複雑になっていく。

 数十年前までは、その日の売れ残りは、周辺の関係者らに配っていたというのだが、生産量がここまで増えるとそれでは追いつかない。

 流通の効率性が優先されると安全性がおろそかになる傾向は、「白い恋人」の偽装にも当てはまる。健康といのちを養う「食べ物」を、ただの「商品」として扱うようになってしまうのだ。

 うち続く偽装表示の発覚で、消費者も敏感になっている。わずかな表示のごまかしが、三百年かかって積み上げた信頼をあっという間に崩してしまう。信頼があっての看板だ。

 「伊勢神宮で“みそぎ”をしてもらわんとあきませんな」

 消費者の不信と願いが凝縮されたひと言だ。

 「明浄正直(せいちょく)」。神道の考え方の基盤となる四文字だ。伊勢神宮の「おかげ」で、ここまで育った老舗である。この言葉を忘れては成り立たない。

 「赤心慶福」の精神は、生産から小売りまで、一次産品から加工品まで、食品の製造に携わるすべての人が堅持すべき心構えのはずである。「明浄正直」の原点に立ち返り、食の業界一丸となって、不信の連鎖を断ち切る姿勢を見せてほしい。

 

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