2007/11/15
「聖書の歴史」
「聖書の歴史」
歴史学者のカマール・サリビーなどは,パレスティナ(旧約聖書ではカナンと呼ばれ現在中近東東北部地域)は聖書の歴史に結びつく,はっきりした証拠は考古学的には何ひとつあがっていない。そして旧約の舞台はパレスティナではなく,アラビア半島西部説をあげ,もしそうであるとするなら,聖地そのものが間違っていると言っている。
山本七平氏著「聖書の常識」によると,<たとえばヨシュア記第十一章の,ヨシュアによるハゾル攻略記事の「その時ヨシュアは引き返してハゾルを取り,剣をもって,その王を撃った。ハゾルは昔,これらすべての国々の盟主だったからである。
ただし丘の上に立っている町々をイスラエルは焼かなかった。ヨシュアはただハゾルだけを焼いた。」という記述が実に正確であることが,有名な考古学者イガエル・ヤディンのハゾルの発掘で明らかにされている。さらに下がってダビデ王時代ともなると,彼がエルサレム攻略の時利用した水汲み用の杭がそのまま残されており,またヒゼキア王の水道には,今も清々と水が流れ,聖書の記述の通りなのである>
山本七平さんは聖書の中の最初の歴史書である旧約聖書のサムエル記と列王記をよく読んだほうがよいとアドバイスしています。山本さんは平成三年十二月十日に亡くなっていますが,考えが比較的近い歴史学者のHG・ウエルズは「今日のパレスティナは当時のカナンの地であり,カナン人と呼ばれるセム系民族が住んでおり,彼等はチレやシドンを建設したフェニキア人の近縁であり,ハムラビのもとにバビロンを奪い,最初のバビロニア帝国を建てたアモル人にも近いものであった。−−−創世記のうちには,このイサクとのちにイスラエルと名を変えたヤコブの生涯や,イスラエルの十二人の子供のことや,大飢饉の日が来て,彼らがエジプトに隠れていったことも述べられているのである」
モーゼ率いるエジプト脱出の旅の途中で,シナイの山に登ったモーゼはエホバの神より十戒を授かる。ウェルズは言う<イスラエルの子供達がエジプトに定住して奴隷となった物語には,やや曖昧な点がある。ラムヤス二世の記録では,ゴシェンのの地にいくつかのセム族が定住していたことや,彼らが食物の不足のためにエジプトに隠れていたことを述べているが,モーゼの生活やその行動はエジプトの記録には全くないのである。
それにエジプトでの悪疫や,紅海で溺れたという神人王のことも見当たらない。とにかくモーゼの物語にはかなり作り事めいたものが漂っており,そのもっとも著しい挿話の一つに,モーゼが母のため葦の箱舟に匿されるところがあるが(出エジプト記第二章第三節)これは古代シュメールの伝説にも見出されるものである。
モーゼの五書について,これらを頭にいれて旧約聖書を読んでゆくと比較的理解しやすい。初期キリスト教の歴史は,ナザレ人イエスの真の教えと精神と,ガリラヤから彼(イエス)を慕い,これに従ってきた弟子たちのこれにたいする誇張や,誤解との間における苦闘の物語である。−−−
彼らによって伝えられた「福音書」と「使途行伝」とは,つぎはぎのむらだらけの記録であり,いくつかの問題があるとしても,全体としては極めて偽りのない初期の記録になりうるものである。これらはイエスの教えの信奉者たちはナザレ人と呼ばれているが,初期の頃から一方はイエスの教えをそのまま信じる者と,他方は使徒の解釈に従う者との二つの傾向が混ぜ合わさっていて,その間に大きな混乱をみせるようになって行った。
しかししばらくの間は,彼らも自我の完全な克服というイエスの訓戒を守っており,その財産を共有にして愛だけが彼らを結びつけていた。しかしやがて彼等はその信仰をイエスの復活とか,不思議な昇天とか,再臨の物語のうえに築くようになると,自我の否定自体がその報酬であり,それ自体が天国である,ということを理解する者は殆どいなくなってしまった。
自我の否定をやがてくるべき再臨の日に,力と支配を報酬として与えられる資格のための犠牲とみなすようになったのである。彼等はいまやイエスをユダヤ人たちが長い事待ち受けていた「救世主」というメシア,すなわち約束されたキリストと全く同一のものとするようになった。
そして彼等は預言者のうちに十字架の受難の預言を見つけだしたのである。マタイ伝はとくにこれらの預言者の預言を主張している。こうしたいくつかの希望によって活気ずき,多数の信徒の新鮮で純潔な生活によって力ずけられて,このナザレ人の教養はユダヤとシリアとに燎原のように拡がっていった。
PS:この記事を読んでおやっと思われたでしょう。それもそのはず「H・G・ウエルズ」は300人委員会の宣伝・広報部長であった。山本七平さんの記事の下がそうです。
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