特報
運慶作の仏像を発見
運慶作大威徳画像

写真 上:大威徳明王坐像 下右:発見当初の納入品 下左:納入文書奥書

▲表紙へ


☆運慶の仏像を発見〜県立金沢文庫にて〜

 県立金沢文庫において保管する大威徳明王坐像(だいいとくみょうおうざぞう/称名寺光明院所蔵)を解体修理したところ、像内納入文書が発見され、本像が運慶の作品であることが判明しました。

○小さな名作・大威徳明王像
 平成10年、称名寺の光明院から発見された総高21.1?pの小さな仏像です。この仏像は破損部分が多いのですが、顔面と胴部が残り、鎌倉時代前期にさかのぼる優秀な作品と認められました。その後、X線撮影の結果、像内納入品の存在が確認され、本年2月末、修理の途中で納入品の開封に成功しました。

○納入文書の驚くべき事実
 納入文書は、香料などとともに和紙に包まれ、像の胴部にはめ込まれていました。像が作られて以来、開封された痕跡は見られません。文書末尾の奥書によると、この仏像は、建保4年(1216)11月23日に、「源氏大弐殿」(げんじだいにどの)が発注者となり、運慶によって作られたことが明記されています。
 本像を作らせた「源氏大弐殿」とは、鎌倉幕府の歴史をつづった『吾妻鏡』に登場する「大弐局」(だいにのつぼね)を示すものと考えられます。この女性は、源氏一門の加賀美遠光(かがみとおみつ)の愛娘で、将軍御所に仕え、源頼朝の子息で将軍職を継いだ頼家・実朝の2人の養育係として重要な役目を果たした、鎌倉幕府の中でもトップクラスの女房です。

○天才仏師の新たな一作を初公開
 運慶は日本で最も有名な仏師ですが、現存する確かな作品はわずか5件、ほぼ確実と推定される作品も5件しか伝わっていません。今回の発見は運慶の真作を1つ加えるものです。今まで、鎌倉幕府の中枢部の人物のために作られた作品は、記録の上でしか知られていなかったので、美術的価値ばかりでなく、歴史的にも重要な資料として位置づけられるものと思われます。

 なお金沢文庫では、開催中の特別展「金沢文庫の仏像」(会期:4月19日〜6月10日)において、修理の完成したこの仏像と納入品を初公開しています。