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第13回 ─ VISUAL-KEI
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まとめ読み

掲載: 2007/05/24

ソース:『bounce』誌 286号(2007/4/25)

さまざまな音楽カテゴリーを丁寧に教えてくれる誌上講座が開講! 皆さん、急いでご着席ください!!

文/出嶌 孝次

I ヴィジュアル系の成り立ちと特徴

 ヴィジュアル系(以下V系)……この言葉に偏見のある受講者もいるかもしれないが、今回はそんな諸君のための講義だからね。V系とは言葉どおり、メイクや衣装などの視覚表現で独特の世界観や様式美を構築したロック・バンドと定義付けることができる。つまりは特定のサウンドを指し示す言葉じゃなく、〈渋谷系〉とかと同様に受け手の感覚的な判断に依るところが大きいわけだな。基本的にはニューロマやLAメタルの中性的なセンス、またはゴスのイメージなどを下地に、ロリータ〜サイコパス〜オカルト〜猟奇趣味といった〈異形〉や〈禁忌〉のトッピングで過激なセンスや個性が競われている。音の傾向はハード・ロック〜ヘヴィーメタルをはじめ、BOOWYの影響下にあるビート・ロックやパンクなどが基本型。クラシック音楽やインダストリアルを採り入れる人たちも多いね。

 具体的な起源にはD'ERLANGERやCOLOR、X、BUCK-TICKら80年代デビュー組が挙げられる。呼称自体はXの掲げたコピー〈PSYCHEDELIC VIOLENCE CRIME OF VISUAL SHOCK〉が元だとされることが多いね。もちろん彼らは出所もサウンドもバラバラだし、当時の彼らがV系と呼ばれていたわけじゃない。ただ、COLORのDYNAMITE TOMMYが運営する大阪のFREE-WILL、XのYOSHIKIが設立した東京のEXTASYという2大インディー・レーベルが、同時多発的に現れた後進たちが躍進できる土壌を築いたことは重要だ。なお、前者はBY-SEXUALやかまいたちらを世に出し、後者はLUNA SEAやGLAYをデビューに導いているね。90年代半ばに彼らやL'Arc〜en〜Ciel、黒夢が台頭し、それにPENICILLINやSHAZNAなどポップな面々が続くことで、最大公約数的な〈V系〉像が形成されたわけだ。ただ、それによって多くのアーティストがある種の偏見と向き合わなければならなくなったのも事実。表現の狭間で揺れながら、V系はメジャー化とコア化を繰り返し、サウンド的にも多様化していく。まあ、見た目も大事だし、見た目だけで判断するのも早計だってことだ。

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