■「ヤードに舵」 広がる憶測■

かすむ優先順位

広島市の本音不透明

新球場建設に向け、宇田会頭(左)に要望書を手渡す秋葉市長。構想の成否は、市の「姿勢」にかかる (4月15日、広島商工会議所)

 「細部の詰めを市に頼まれて…」。大手ゼネコンの担当者が明かす。案件はヤード跡地への新球場の建設。四月中旬のことだ。同時期、大手広告代理店もヤード跡地での球場運営案を求められた、という。市は現在地からヤードに舵(かじ)を切った―。関係者にそんな見方が広がった。

 新球場建設促進会議の最終報告は、建設場所は現在地を基本とする。ヤード跡地は、現在地が資金や工期面で困難になった場合と、優先順位を明確にした。促進会議の半年間の議論でも、ヤード跡地を積極的に推す声はほとんどなかった。

 市の南部盛一都心活性化担当局長(56)は「まずは現在地で検討するという方針に変わりない。現在、精査しており、六月には結果を報告できる」と強調。ヤード案の検討を認める市の別の担当者は「並行してやらないと、もしもの時に間に合わない」と説明する。しかし、額面通り受け取る向きは少ない。

地図「広島市民球場とヤード跡地」

 市土地開発公社が先行取得し、年に一億円を超す金利負担を生むヤード跡地の活用は、市の「宿願」だ。「昨秋以降、市は陰に陽に、ヤードの優位性をアピールしてきた」。促進会議の下部組織、新球場建設検討委員会の元委員もこう語る。

 建設費は、現在地の百六十五億円に比べヤードは九十億円と安い。元委員は「ただ、周辺の道路整備などを考えれば、ほぼ同額になる。そう指摘すると、市は『いずれ必要になる公共投資。別財布です』。当時から思いが透けていた」と続けた。促進会議の元メンバーは「ヤードへの建設を前提としたコンペの話を市から聞いた。そこまで考えているとは」と驚きを隠さない。

 特定目的会社(SPC)構想が消えた時点が潮目だった―。関係者の多くの受け止めである。経済界が支持し、本命視された民間主導のSPC構想は三月初め、採算性の乏しさでついえた。「『公設』なら、市の意向をくまざるを得ない」。こうしたムードの中で、ヤード案が台頭し始めた、というのだ。今、経済界や広島県には「負担が少なくて済むなら」との容認論さえある。

 「現在地の『深掘り』を誠実にやっていただいていると聞く。それが筋であり、市を信頼している」。広島商工会議所の宇田誠会頭(70)は、こうした認識を示し、続けた。「納得できる理由と手順であるなら、ヤードでも財界は協力する。ただ、今さら『安価』というだけでは困る。そこも含め促進会議は現在地を基本としたはずだ」

 促進会議は官民のトップが集い、オープンな論議によって球場建設の機運を高めてきた。バトンタッチを受けた市の検討作業はしかし、見えにくい。市の本音が周囲に広がる「結論ありき」とするならば、構想は根底から揺らぎかねない。

◇ ◆ ◇

 広島市民球場(中区)に替わる新球場建設構想が、揺れている。官民代表による新球場建設促進会議は、「現在地」を建設の第一候補地とする最終報告をまとめ、広島市に検討を委ねた。しかし今、その作業をめぐり「市は東広島駅貨物ヤード跡地(南区)に傾いている」との受け止めが、急速に広がっている。市内部で進む検討作業を追い、構想の行方を探る。

2005.5.23


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