■「現在地」に技術的課題■

本音はどこに

検討作業急ぐ広島市 市内部に思惑や戸惑い

建設場所などをめぐり検討作業を進める広島市の新球場建設担当職員

 広島市役所の本庁舎六階。フロアの一角を仕切った急ごしらえの一室に「都心活性化推進課 新球場建設担当」と真新しいプレートが掛かる。

 秋葉忠利市長の「新球場建設を全市民的プロジェクトにしたい」との意向を受け、今年四月に発足した新組織だ。新谷耕治担当課長(48)らスタッフ五人が今、新球場の建設場所や事業費を確定する作業を急いでいる。

▽夏までに大枠

 急ぐ理由は、さまざまにある。来年度に着工して二〇〇九年のプロ野球開幕までの完成という目標から逆算すれば、本年度末までに事業計画を策定しなければならない。国から補助金を受けるなら、来年度予算の概算要求時期である今年夏までに、計画の大枠を固めなければならない。

 「本当に現在地建て替えができるのか、技術的な検討課題はまだ残っている」と新谷課長は説明する。官民でつくる新球場建設促進会議の最終報告は「現在地でプロ野球を開催しながら建て替える」との案を基本に据えたものの、その実現可能性に完全な裏付けがあるわけではないからだ。

 グラウンドや観客席を広げ、現球場より施設規模が拡大しても現在の敷地内に収まるか▽プロ野球を開催しながらの工事でも目標の三年で完成可能か▽工事中に観客の安全性は保てるのか―。市は四月中旬、野球場設計を手掛ける大阪の設計会社に調査を委託した。

▽やはりヤード

 こうした作業が、「市は現在地より貨物ヤード跡地(南区)に傾いた」との見方につながっている。しかし、市の南部盛一都心活性化担当局長(56)は「促進会議の最終報告に沿って一生懸命検討している。それなしには次のステップに進めないから」と結論ありきを否定。あくまで「虚心坦懐(たんかい)に」検討を重ね、建設場所の確定、県や地元経済界との資金協議に進むという。

 ただ、市内部に「現在地は困難。やはりヤードしかない」との見方があるのは事実だ。ある幹部は「塩漬け土地の解消、沈滞する広島駅周辺の活性化と、ヤードを選べば市の長年の懸案事項を解決できる」と願望交じりに訴える。

 「経営が厳しいカープのためにもなる」。こうした理由から、建設コストが安く、工期が一年短いとされるヤード支持論もある。現在地で仮に敷地を拡大すれば、周囲の市青少年センターだけでなく県立総合体育館などにも影響が及びかねない。百六十五億円が見込まれる建設コストが「さらに膨らむ」との観測もヤードを後押しする。

 別の幹部は懸念を明かした。「現在地からヤードへと方針転換した時に、市民が納得できる説明が果たしてできるだろうか」。ヤードは現在地に次ぐ「有力候補」か、それとも単なる「保険」なのか。促進会議の最終報告は、そのどちらにも読める。「今思えば、事業費の上限などを明確にしておくべきだった」と幹部は付け加えた。

 建設主体である広島市の本音は、いずれにあるのか―。検討作業を急ぎながらも思惑や戸惑いが広がり、その本音はまだ、市内部でも定まっていない。

2005.5.24


新球場建設
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