AAM-4(99式空対空誘導弾)

F-15型機に搭載されたAAM-4


近年、航空自衛隊の戦闘機F-15とUSAF(米空軍)の戦闘機が模擬空中戦を実施すると、バタバタと自衛隊の戦闘機が落とされるという、理由は自衛隊の戦闘機の性能が悪いわけでもパイロットの腕が悪いわけでもない。なぜならUSAFの戦闘機には撃ちっぱなしミサイルであるAIM-120(AMRAAM:発展型中距離空対空ミサイルの略)を装備しているからである。

相手がAMRAAM、こちらがセミ・アクティブ・ミサイルであるAIM-7Mで空中戦をすることを考えてみると、その違いがわかる。相手とヘッドオンで会敵し同時にミサイルを発射したとする。AMRAAMの方はミサイルのアクティブ・シーカーが相手をロックオンすれば、直ちに退避行動を取ることができるが、(AMRAAMは母機による中間誘導が必要なので、発射即退避というわけにはいかない。但し発射前ロックオン(LOBL)モードは別)こちら側はミサイルが命中するまでイルミネーターで敵機を照射し続けなければならないため退避行動は取れない。ということは敵機とミサイルとの後ろをまっすぐに飛びつづけなければならない。(実際にはアンテナのアングル範囲内で機動はできる)まっすぐであるということは最短距離であるということである。退避運動をとっている機とまっすぐ飛んでいる機ではどちらが先にミサイルが命中するかは明白であろう。

(退避行動を取っていれば相対距離が延びるし、相対速度が減ることによりドップラーシフトを減じてパルス・ドップラー・レーダーから逃れることさえできる。またミサイルに機動させることにより、ミサイルのロケット・モーターの燃焼が終わっていた場合は運動エネルギーを消費させ、回避し易くすることができる。)

AAM-4の開発では搭載兵器のオール国産化という方針と、AMRAAMが日本には供与されないのではないかという懸念が背景にあったと思われる。(当初は米国とNATO諸国以外は門外不出だと言われていた。)そのため比較的早い時期から研究開発が行われていた。なおXAAM-4という開発名称の以前はアクティブレーダーホーミングミサイルの意からAHAAMという呼称であった。

このミサイルの特徴としては、射程の延伸(AIM-7Mの約2倍)、ECCM(電波妨害排除)能力、多目標同時射撃、巡航ミサイルのような小型・低高度目標への対処、低価格化といったものが挙げられる。なお寸法諸元は全長:3.66m、全幅:0.77m、胴径:0.20m、発射重量:220kgでほぼAIM-7系と同等である。

誘導方式は初期・中期は指令・慣性誘導方式で、終末誘導は自身の持つXバンドのアクティブ・レーダーによる誘導に切り替わり、ミサイルがロックオンしたら、母機は待避機動を行える。(勿論、指令誘導を行わなければ発射後に直ちに待避できる)なお、発射後に中間誘導を僚機に引き継がせることも可能である。

AAM-4の特徴として、以下のものが挙げられる。

射程の延伸

撃破性能の向上

打ちっ放し性、多目標同時対処能力

ECCM能力・クラッター排除能力の向上

機動性の向上

その他

AAM-4は技術試験において、ターゲット・ドローン(富士重工製J/AQM-1改)を4機同時に撃墜する実績を示し、AMRAAMとの争いで制式化に向けて大いに前進したと言われおり、また試験時には驚異的な誘導精度を示して直撃に次ぐ直撃が続き、そのため近接信管の試験データが中々得られなかったという話まで伝わっている。

技術試験の実射内容を以下に記す。なお実射試験に使用した標的は航空機模擬標的(J/AQM-1改)T〜W型(チャフ装備型、レーダー反射面積低減型、高機動型、4機同時誘導型)、巡航ミサイル模擬標的(ASM-2にMDI(射撃評価装置)を搭載したもの)、Xバンドのレーダー反射面積を極力低減させた曳航標的である基準標的(NPT-IR-1改)及び超低高度曳航標的(JAQ-50改)の4種類である。(超低高度曳航標的はレーダーターゲットで実射用標的ではない)また基準標的への実射時には文字通り標的に直撃して操舵翼で標的を切り裂いたとのことで、標的は曳航母機によって回収されて、岐阜試験場に持ち帰られている。なお実射場所はG空域(小松沖)である(恐らくエリアR141)

F-15にAAM-4を搭載するために必用な搭載改修の要点を以下に示す。

これらの改修はMSIP(多段階発展計画)機がIRAN(定期修理)を実施する際に搭載改修が実施されていたが、、現在はF-15の近代化改修のメニューとして取り込まれ、近代化実施時に改修されることになった。なお搭載改修済であるかどうかを見分ける識別点はLAU-106A/Aランチャのアンビリカルコネクタとマーキングの違いしかない。

なおAAM-4搭載用OFPは飛行教導隊のF-15へのAIM-120B搭載改修で作成されたOFPをベースにしており、搭載インターフェイスもAIM-120Bのものと合わせてあるため、AAM-4搭載改修を実施したF-15型機はAIM-120B運用能力を持つことができる。AIM-120B搭載改修とAAM-4搭載改修のハード的な最も大きな違いはAAM-4の運用には専用の指令送信装置(J/ARG-1)が必用なことである。(AIM-120BではFCSレーダーから指令送信波が多重送信される。)

またF-2型機へAAM-4搭載は優先課題とされているようだが、装備できるようになるにはインテグレーション等にまだまだ時間を要する模様であり、搭載が実現するには後述するAAM-4改の制式化によるか、F-4改の後継機と目されるF-2のFIバージョン(F-2E/F型?)の登場まで実現しない可能性もある。(追記:三菱重工は既にF-2へのAAM-4搭載改修案のプロポーザルを空幕に対して提出している)また防衛庁は16年度からF-2を対象とした「アクティブ・電波・ホーミング・ミサイル搭載に関する研究」を開始する予定で平成20年の実用化を目指している。

製造会社は三菱電機で、お値段は1発当たり1億円程度と言われているが、量産と共に値段は下がる筈である。

現在は技術研究本部により、搭載機器の更新によるコストダウンと能力アップを狙ったフォロー・アップを行っているが、AAM-4改としてビーム機動目標対処能力の向上、スタンドオフ・レンジ(自立誘導距離)の延伸、ECCM能力の向上、巡航ミサイル対処能力の向上等を盛り込んでおり、平成20年頃の実用化を目指している。(実射試験発射母機は914号機になる模様)

将来的にはラムジェット等のエアブリーチング・エンジンを採用して射程の延長等の能力向上が行われる見込み。(現在、技術研究本部は川崎重工を主契約者としてダクテッドロケット飛しょう体の研究試作を行っているが、これがAAM-4に搭載されるとの話がある)またAAM-4をべースに海上自衛隊の護衛艦に搭載されているRIM-7Mシースパローの後継として、新艦載短SAM(XRIM-4)の開発が技術研究本部で行われている。