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特派員すけっち

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特派員すけっち:麻薬や酒におぼれる者を救うゴスペルの響き----ニューヨーク

 米ニューヨーク・ハーレムの教会で、麻薬依存者などの更生を支える施設「ARC」の入所者やOBでつくる聖歌隊メンバーが、体を揺すりながら、ゴスペルを奏でる。歌いながら感極まってハンカチで涙をぬぐう者もいる光景は、アフリカから米大陸に渡った黒人奴隷たちが神に救いを求めて歌ったことが源となったゴスペルならではのものだろう。

 経済格差という現実に苦しむ黒人は今でも少なくない。麻薬や酒におぼれる者もいる。聖歌隊のディレクターを務めるニムロッド・ランプキンさん(61)は、ARCがゴスペルを更生に役立てようとした狙いを「神を感じて歌うゴスペルによって、メンバー1人1人の心の中に、この世に生かされているという感謝の気持が沸いてくる」と語る。

 かつて黒人文化が花開いたセントラル・ハーレムは今、90年代から始まった再開発の波に洗われている。ヒスパニック系の住民が暮らすイースト・ハーレムとウエスト・ハーレムは、店の看板のほとんどでスペイン語が使われている通りがあり、中南米特有の豆料理を売る食堂にもよく出合う。しかし黒人居住区のセントラル・ハーレムは不動産物件の賃料が急騰し、黒人住民の一部はブルックリンなどへ移り住むようになっているという。

 それでもこの教会の中に限っては、黒人文化が今でも花盛りだ。麻薬におぼれる生活からの再起をかける者の歌声に合わせ、教会に集まってきた地元の黒人住民も陶酔した表情でリズムを取る。圧倒的な声量、リズム、テンションの高まりに、訪れた欧州や日本からのツアー観光客も知らず知らずのうちに引きずり込まれて、総立ちで手拍子をする。ニューヨークはセカンドチャンスの町、とも呼ばれる。【ニューヨーク高橋秀明】

2008年5月11日

 

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