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                           地名・富士山

            

   
 石器時代のはるかな昔、この流麗な富士の姿を見た古代人は、この山に何を見たのか。 「フジ」とは、一体何か。

 地名は、そこに住む人々の「土地に対する」共通認識を「言語の要素で構造化したもの」であり、誰でもが共通の認識として「納得できる説明」がなされたものでなければ「命名」は生き残ることが出来ないのです。
 意味の要素である「素語=言語の素子=意味の弁別体」でもって、対象物を認識し説明しています。

 『これまでの諸説』

 「富士」の自然地名の由来については、これまで確たる論考はなく、次のような経緯をたどってきました。
 
 1、江戸時代の国学者平田篤胤は、穂の如く奇霊に立つ山、穂久士が布久士になり、さらに富士に転訛したものであろうと、富士を神聖視する見方をした。
 2、明治十年に来日したイギリス人宣教師ジョン・バチェラーは、『アイヌ語より見たる日本地名の研究』を表し、「富士」はアイヌ語の火を意味する「フチ」が語源だとした。一時期このアイヌ語説が広く流布された。 
しかし、アイヌ語の「フチ」は「おばあさん」という意味で、「火」という意味は全くないのです。
「アペフチカムイ」(火のおばあさんの神)の「フチhuchi=おばあさん・姥・おわり」を「火」と取り違えたようだ。「火」は「アペ」である。


「フチ」の発音に関して、金田一京助は次のように書いている。
(「北奥地名考」1932年)
「若し語原が、説者のいう如くアイヌ語のhuchiであったならば、国語にクヂ(またはクジ)となっていた筈で、国語にハ行音でフジとなる為には、その語頭音は必ずやpかfでなけれだならない。それは上代の国語の音には[h]音がなく、外国の[h]音はこれが為にみな[k]音に取り込まれる例であったからである。現今のフジであるからとて、huchiをその語原に見立てたのは、国語の音韻史を無視した失考だった。」
 金田一京助によって、文法構造の異なるアイヌ語説は誤りだとされ、「フジ」を和語として捉えるようになってきた。また、地名分布の上からも「フジ」の地名が大和中心の周圏構造を持ち北海道には関係ないことが分かってきたので現在ではアイヌ語説を唱える人はいなくなった。

 鏡完二氏は、「フジ」という長い山の斜面を表す方言があり、空に美しい弧を描く虹もフジといい、美しく垂下る花もフジであることから、「フジ」は長いスロープの美しい地形を表す倭語であると主張されました。しかしながら「藤」は「フヂ」であり、「富士・フジ」の「ジ」ではないので、首を傾むけざるをえません。「し・じ」と「ち・ぢ」は別語で意味が異なります。
濁音は清音の意味に「障り」を現す「形態概念」が附与されています。


 1、「フジ」=「富士」 「シ・ジ」の意味は「下方向・下の形態」と「サ行・動詞・連用形」

 万葉集の真仮名は「不自」「布士」「布仕」「布自」「布時」などがある。 
 「ジ」の真仮名は「自・士・仕・司・時・慈・緇」
 注意すべきは、漢字の意味は全く関与せず、単に音韻を表すカナに過ぎない。重要なことは「単音節の意味概念」が「スキーマ」として意味の束になっているということです。

 2、「フヂ」=「藤」
 「ヂ」の真仮名は「遅・治・地・蒔・耻」


   <素語分析手法> の 解 説

 解析手順  『フジヤマ』
1、対象のデーターを一音節に分解する。
  「ふ」「じ」「や」「ま」に分離する。
2、「富士」の古代の漢字仮名(真仮名)を調べる。
「じ」と「ぢ」があるので、どちらであるかを確認する。「富士」の「士」は「ジ」である。「不二」「不尽」の漢字は当て字であるから音の確定は出来ないのでデーターにはならない。

「富士・フジ」=「不自」「布士」「布仕」「布自」「布時」などがある。 
 「ジ」の真仮名は「自・士・仕・司・時・慈・緇」

「やま=和語」。「サン」は漢語であるから「やま」で分析する。


○ 「フ・口で吹く形態・上から柔らかく被さる形態・定まらない形態」
 用語例 「降る・吹く・伏す・踏む・ふさぐ」「ふんわり・ふわっと・ふさふさ」「舟・文・風呂」
○ 「シ・下方向の形態」「ジ」。濁音は、清音の意味の、雑に変化した崩れた形態を表す「ジ゙=下に存在している対象が、ぎっしり・いっぱい・ごたごたの形態」「しじに・繁に(副詞)・下に、たくさん・いっぱい・ぎっしり〔山・人・草木・竹・花などに言う〕語例「知る・敷く・死す・したたる・仕切る・しなふ・しみる・占める」「鹿・羊歯・芝・島・縞・沁み・霜・皺」。
○ 「ジ」=「じらす・じりじり・じれったし・じろじろ・じわじわ・じとじと」「すじ・つじ・ねじ」
○ 「ヤ・矢の形態・∧形状」語例「遣る・焼く・休む・痩せる・やつれる」「やさし・やすり・やすらか・やな・やに・屋根・山・脂・柔か」「あやまる・あやまつ・あやめる・あやし・あやす・いや・うあや・こや」
○ 「マ・目の形態・円形・球形・半球体・間・真・二つ揃い」


◎ 「伏し・ふ・し(連用)」=「伏し⇒節(名詞化)」=「フ・上から柔らかく被さる形態」+「シ・下」の構成で「上から下へ柔らかく被さった形態」を表す語である。
◎ 「ふす」=「伏す」は「膝を折って身体を被せるように這わせた形態」が原意で、体をうつむけに倒した形状から「横になる・寝る・倒す・下に押さえつける」などの意に展開されている。
◎ 「ふし・節」は「ふす・伏す」の連用形で、「伏し」の形状から、名詞化した語である。

 
 用語例
「節々が痛い」の「ふし」は「関節」の事で「膝のクルブシ」「肘や肩のフシ」「指の節」の身体語。
「クルブシ・踝」=「クル・繰る・刳る」+「節」で、足首の関節の、両側に突起した骨。
「コブシ・拳」=「コ・子・小」+「フシ・節」=「小さく握った指の関節の形状」が節形で富士形である。
「タケノフシ・竹の節」は横にして側面から見ると富士山の形状である。
「カツヲブシ・鰹節」=「カタツウヲ=カツヲ」。「鰹節の形状」が富士形である
◎ 「シ」⇒「ジ」の濁音化は、清音の語の意味が、濁音化すると「雑な形態」を表す意味に変化する。
「ヒシ・菱・◆形」⇒「ヒジ・肘」菱形ほど尖っていない形状が「ひじ・肘」

「フシ・節・伏した形状」⇒「フジ・富士」
 濁音化した理由は、名詞化した「節」の「フ・上から柔らかく被さる形態」の「シ・下」は、山裾の大きく広がる裾野の複雑で巨大な形状を「ジ」と濁音化したものである。

                富士

              伏し ⇒ 節
               濁音化・ふじ

「フ・上から柔らかく被さる形態」の語例

「吹く」「葺く」「拭く」「房」「ふさふさ」「蓋」「舟」「踏む」「降る」「伏す・伏せる」「伏し⇒節」

     上記の説明をまとめる

【ふじ・富士】は「伏せ」の連用形「伏し」が名詞化して「フシ・節」の形状が名称となったもので、「ジ」音は「シ=下」の形態が複雑で巨大な様相をしている様相を濁音化して表現したものといえる。
ほんらい「伏せ」は上からかぶせる形態でかぶせる形状の多くは「傘・髪の毛(ふさふさ)」などで「フ」は息をフーと吹きかける形態が基本になっている。


 ハ行は「ハヒフヘホ」は「ハッハッハ」「ヒッヒッヒ」以下すべて人の笑い声となり、これは身体の「頬の内部の部位の構造的な形態が関与していることが判る。
【は・歯】【ひ・くちびる・久知比流・ビ・引く(甲類)息をヒク・取り込む・臼で挽く・くだく】【ふ・上から柔らかく被さる形態】【ヘ=ヘリ=口の縁・へら・舌べら・舌べろ・(甲類)・たべ・減る・圧し】
【ほ・頬の形態・膨らんで大きくなるもの・空洞構造・穂・帆・火・掘(甲類)】

【やま・山】の分析

「ヤマ:山」=「ヤ・矢の先端の形状は∧形状」+「マ・目のスキーマ=円形・球形・半球(横から見た形状)・間・真」=「∧形状」+「半球体」=「ヤマ=円錐形」
古代人は「山」を道具の「矢」と、人体部位の「目」の概念を結合させて「山」の意味を構築したのである。目を側面から見ると半球体である。


【ふぢ・藤】も考察してみよう。
「藤・フヂ」=「フ・上から柔らかく被さる形態」+「チ・微細」⇒「ヂ・細かく雑多にたくさん」で「上から柔らかく被さる、細かなたくさんのモノ」である。
 藤の花の垂れ下がった花房の形態を表す語である。
「チ=微細」の語例は「小さい」「父・乳」「千」「散り・埃・塵」「散る」「ちび」「ちまちま」「ちみる」「ちらり」「ちらちら」「ちりぢり」「ちくり」
「父」の「乳」は「小さい=チ」が二つ付いているので「父・チチ・小小」。女性は「乳房・チブサ」。
 身体語で二つあるものは二回続ける。「頬・ホホ」「目目・メメ」「耳・ミミ」「手手・テテ」「股・モモ」

「紫陽花・アヂサヰ」=「ア・吾」+「チ・微細・ヂ=細かなものがぎっしり」:「サ・前方斜め下方向へ進む意・笹の葉形状」+「ヰ・連続」の構成で「主体に小花がぎっしり斜め下方向へ連続している花」