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人気演出家対談(上)

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ごみ・かずお 日本テレビ執行役員エグゼクティブ・ディレクター兼プロデューサー。1956年生まれ。CM制作会社を経て、87年に入社。「クイズ世界はSHOWbyショーバイ!!」のほか、「マジカル頭脳パワー!!」「エンタの神様」など、数々の人気番組を演出。
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たなか・けいいち 番組制作会社「ホームラン製作所」代表取締役。1962年生まれ。「クイズ$ミリオネア」「料理の鉄人」のほか、「VVV6」(フジテレビ)、「魂のワンスプーン」(TBS)、「愛のエプロン」(テレビ朝日)など、料理バラエティーを数多く演出している。

クイズの後追いは危険 五味 一男さん

100匹目のドジョウ状況 田中 経一さん

 演出した番組を次々にヒットさせ、「視聴率の神様」と呼ばれる日本テレビ執行役員の五味一男さん(51)と、「料理の鉄人」「クイズ$ミリオネア」(ともにフジテレビ)などの人気番組を手がけたフリー演出家・田中経一さん(45)。バラエティー番組制作のプロ同士であり、「お互い強く意識してきた」と話す2人に、テレビ界の現状について語り合ってもらった。(聞き手・森重達裕、写真・青山謙太郎)

 ――2人は初対面ですよね。どんな印象を持っていましたか。

五味 お会いするのが楽しみでした。日テレにはいないタイプの、ダイナミックな演出家ですから。

田中 僕は、なるべく五味さんに近寄らないようにしてました。出演者の発言をテロップで逐一フォローすることも、番組を定時よりも1、2分フライングで始めることも、五味さんが最初でしたね。実は、僕は一番最後までテロップは使いたくなかったんです。

五味 賛否両論が独り歩きして、私がA級戦犯扱いされてますね……。

田中 どの局も五味さんのマネをしてテロップを入れてるのに、「編集作業でこんなにお金がかかるのは、五味さんのせいだ」なんて言われてますよ。

五味 まあ、どこも表面的なだけのマネをしてると思います。僕は番組の性格によって、ケースバイケースで判断していますから。

 ――今、クイズ番組が週に計30本近くもあるバブル状態です。

五味 僕は「クイズ世界はSHOWbyショーバイ!!」(日本テレビ)をはじめ、足かけ12年ぐらいクイズ番組に携わってきましたが、今の番組は全部、新しいとは感じません。フジテレビの「クイズ!ヘキサゴン2」で解答者がボケるスタイルも、「SHOWbyショーバイ」が初めてです。ジャイアント馬場さんや野沢直子さんの珍解答を楽しむ形ですね。

田中 僕が「クイズ$ミリオネア」を始めた8年前は、クイズ番組などまったくなかった時代でした。フジテレビから依頼された時、「本当にクイズでいいんですか?」って聞き直した覚えがあります。だんだん視聴率が良くなってきたころ、「トリビアの泉」(フジテレビ)の人気が出てきたんです。あれ以降、うんちく系のクイズ番組ばかりになった。

五味 でも最近、(視聴率の)数字的には番組の明暗がはっきりしてきましたね。番組というのは全部そうですが、あまりにも出すぎると飽きがくる。たとえば、フジテレビの「SMAP×SMAP」は、木村拓哉が週に1回だけコントをやるプレミア感があるから長寿番組になったんです。

田中 僕なんか出入り業者ですから、テレビ局の編成部の同じ人が1年前とまったく逆のことを言ったりして、いつも揺さぶられてます。一番、安心できる場所にみんなで群がって、100匹目のドジョウを狙うという間抜けな状況です。

五味 クイズが当たっているからクイズをやろうと思った時点で、もう遅い。僕はよく「後づけのマーケティング」と言ってますが、人と同じ方向に流れるのはすごくリスキー(危険)ですよ。番組の狙い、中核は何か。そして、それが視聴者に受け入れられるかどうかが重要なのに、そこに気づいてない番組が多すぎますね。

2008年6月11日  読売新聞)
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