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出版トピック

「ONE PIECE」尾田栄一郎さんに聞く

ワクワク感を子供に 途中からでも面白く

写真の拡大鎌倉・由比ヶ浜に作られた「ワンピースビーチハウス」。アニメの声優らがセレモニーに駆けつけた
鎌倉・由比ヶ浜に作られた「ワンピースビーチハウス」。アニメの声優らがセレモニーに駆けつけた
鎌倉・由比ヶ浜に作られた「ワンピースビーチハウス」。アニメの声優らがセレモニーに駆けつけた

 週刊少年ジャンプ連載の海賊ファンタジー『ONE PIECE(ワンピース)』が、連載10周年を迎えた。既刊46巻で累計1億4000万部、日本一人気のある少年マンガとして、アニメでも絶大な人気を誇る。作者の尾田栄一郎さん(32)に、10年間の“航海”について聞いた。 (石田汗太)

 鎌倉・由比ヶ浜の砂浜に、主人公のルフィたち一味の海賊船「サウザンドサニー号」が出現した。連載10周年記念のイベントで、8月19日までの間、グッズや軽食を売る「海の家」として営業する。21日のオープニングには約600人のファンが詰めかけたが、ほとんどが若い女性。作品の熱心なファンが少年だけでないことを見せつけた。

 「最近は少年マンガを読む女性が多いので、そういう読者にある部分支えられていることは知っています」と尾田さん。「でも、僕はあくまで『ど真ん中の少年』に向けて描いている。それで責任は果たせるだろうと思っています」

 海賊王を目指す少年ルフィとその仲間たちが、ワンピースという大秘宝を求めて「偉大なる(グランド)航路(ライン)」をゆく。記録ずくめの“怪物マンガ”である。第27巻の初版部数263万部はコミックス史上最大記録。累計部数1億部達成も史上最速。1999年開始のテレビアニメ、8本のアニメ映画、20本以上のゲームソフトと、人気はとどまるところを知らない。

 その秘密を明かす作者の言葉は明快だ。「『ワクワク』です。どんなに時代や環境が変わっても、少年が求めるものは変わらない。僕は『15歳の自分』に向けてずっと描いてきて、それで外したことがない。僕が、鳥山明先生の『ドラゴンボール』などに感じたワクワクを、今の子供に味わわせてあげたい」

 熊本市出身。17歳の時に少年ジャンプの登竜門「手塚賞」に準入選。大学を1年で中退してプロを目指すが、22歳でこの初連載にこぎ着けるまではボツの山だった。個性的な画風は、「雑誌の中で目立つように」意識的に作り上げたという。

 「海賊」は、子供のころから描きたかった題材。最近でこそディズニー映画で盛り上がっているが、実は、過去に海賊マンガが成功した例はあまりない。「後で気づきましたが、海賊は本質的に略奪者なので、『正義の海賊』というと矛盾になる。少年マンガとしては、意外に難しいジャンルだった」

 思いのままに生きるルフィは、結果的に多くの人を救うが、正義のヒーローではない。正義は法の側にあり、ルフィたちはアウトローの集団だ。しかし、仲間=家族を思う信頼の力は、時に正義の傲慢(ごうまん)さをあぶり出す。

 46巻を通読すると、ひとつの架空世界を丸ごと描く大河ドラマとして、綿密に計算されていることに驚く。物語的にはつい最近、最大級の山場を越え、後半戦に突入したようだ。

 「少年マンガを長く続けることで一番の困難は、読者が入れ替わること。だから、途中から読んでも面白くなくてはいけない」。ある意味、日本一高いハードルを課せられた漫画家と言えまいか。「でも、自信はある。ラストは以前から決めていますが、たどり着くのが何年後かは、ルフィに従います」

(2007年7月25日  読売新聞)

『One piece 巻1』

  • 尾田栄一郎
    出版社:集英社
    発行:1997年12月
    ISBN:9784088725093
    価格:¥410 (本体¥390+税)
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