TOP > はじめに
■はじめに
■背景
最近,大学による小型衛星の開発が盛んになってきている.これは,大学の研究室において人工衛星を開発・製作・打ち上げ・運用するものであり,その大きな特徴は三つ挙げられる.第一に短期間開発が可能であること,第二に低コストであること,第三に教育効果があること,である.これらの特徴により,新規技術の発掘・開発の場として,ビジネスの場として,期待されている.さらに,計画・設計・製作・試験・打ち上げ・運用・解析などの一連の過程を体験することができ,「ものづくり」の観点から教育効果は大きい.
■香川衛星開発プロジェクト
このような背景から,香川大学においてもプロジェクトを推進することとなった.2004年秋ごろからプロジェクトを立ち上げる話が持ち上がり,全国の小型衛星開発に関する動向,世界的情勢,さらに具体的な開発・製作内容に関する情報を収集した.そして,香川大学能見研究室における独創性ある研究「テザー宇宙ロボット」の技術実証を目的とした,香川衛星開発プロジェクトSTARSを推進することとなった.
■地域連携
このような大きく,また宇宙という一般的に魅力的なキーワードを含む,プロジェクトの波及効果として,地域活性化が期待される.理科離れが懸念されている状況で,小・中・高生および高専生に対しプロジェクトを広めることは,ものづくり教育の観点からも,教育効果が大きいと期待される.また,地域産業から挑戦的な技術を生み出し,衛星に搭載していくなど,地域の特色を活かした衛星としていくことで,地域活性化に繋がることも期待される.さらに,一般の方々に香川衛星構想を紹介し,何らかの形で参加して頂くことにより,宇宙への興味を持ってもらうことは,宇宙開発の理解,ひいては科学技術への理解へと発展することが期待される.
■衛星概要
香川衛星開発プロジェクトは,「テザー宇宙ロボット」の宇宙技術実証を目的としたものを計画している.テザー宇宙ロボットは,能見研究室の主要テーマの一つである.テザー宇宙ロボットとは,テザー(ひも)に繋がれたロボットを宇宙空間で用いるものであり,独創的なシステムである.とくに,微小重力環境におけるひもの挙動,ひもを利用したロボット制御法は,学術的にも価値の高いものである.このような独創的かつ新規的なシステムの宇宙実証は,信頼性・安全性の面から従来の宇宙開発では困難であり,前述の短期開発・低コストの特徴を含む小型衛星として最適なものであると考えられる.ミッションは,二機から構成されることから,一方から他方をカメラ撮影すること,地球・他天体・宇宙デブリなどを立体的に撮影すること,などを考える.実際の宇宙空間に存在する宇宙機を離れた位置から撮影すること,二機の宇宙機によるカメラ撮影,はこれまでにないミッションである.