共同研究 科学研究費課題番号(16520060)

平井金三における明治仏教の国際化に関する宗教史・文化史的研究
 平井金三は京都出身の明治の英学者で東京外語大などの教官職を歴任した人物である。現在では英語教育史あるいは初期社会主義史にかろうじてその名をとどめるにすぎないが、明治22年には神智学協会々長H・S・オルコットを招聘して日本仏教の復興に火をつけ、明治26年シカゴで開催された世界宗教会議では流暢な英語で弁舌をふるい、日本人では唯一大喝采を以て迎えられた。さらにその前後、アメリカ各地で講演会を開き仏教伝道に勤め、おそらくはヨーロッパ系アメリカ人相手に仏教伝道を行った最初の日本人であると思われる。帰国後はユニテリアンに参加、そこを退いてからは松村介石の道会、最後は自ら、禅的瞑想団体、三摩地会を興すにいたった。大正に入ってまもなく急逝したが、その弟子には宗教学の祖となった姉崎正治がおり、加藤咄堂、平野威馬雄も彼に英語を学んでいる。
 その知名度は低いが、宗教史だけでなく、日米交流史、英学史などでも発掘されるべき人物である。しかも幸いなことに、アメリカにおける講演の資料、雑誌記事、さらには作家アニー・エリザベス・チェニーやユニテリアン牧師ジェンキン・ロイド・ジョーンズとの手紙といった資料がほとんど手つかずで残っている。それらの明治の封印された資料はかけがえのないものであり、私たちの研究会では、その資料を現在に引き出し、平井金三という明治の逸材を忘却の彼方か ら引き出すことを目標としたい。
 

研究会メンバー

赤井敏夫 英文学、神智学と反植民地主義 (神戸学院大学)

橋本貴 英文学、資料デジタル化 (神戸学院大学)

橋本順光 文化論、近代欧米のアジア観 (横浜国大)

野崎晃市 宗教学、明治キリスト教と平井金三 (筑波大学、研究員)

Jeff Shore 禅学、平井金三と禅 (花園大学)

Judith Snodgrass 日本学、平井金三とエリザベス・チェニイ (西シドニー大学)

吉永進一 宗教学、平井金三と近代霊性思想 (舞鶴高専) 代表

左は平井金三と娘

在米中の講演会チラシ。RingeはRiuge(龍華、平井の法名)の誤り。10月28日の平井の講演に続いて11月10日はブラーモ・サマージのナガルカルが講演を行った。入場料は大人一人35セントとある。ヒルサイドチャペルとは、ウィスコンシン州スプリンググリーンにあったジェンキン・ロイド・ジョーンズのユニティ・チャペルと思われる。同教会は、若きフランク・ロイド・ライトが製図を担当したことでも知られる。
   報告書はこちらをクリックしていただければPDFファイルでダウンロードできます(およそ2000KBです)。  

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