今回の「NO COMIC〜」はつか素が2007年最も売りたい、最もみなさんに読んでもらいたい漫画家であるむんこ先生を特集します。現在5作品を6誌で連載中のむんこ先生。以前から「らいか・デイズ」をはじめとした良作の数々でディープな漫画ファンはもちろん女性の漫画読みの方にまで広く人気がありましたが、先月号に発表したつか素個人の2006年ベスト漫画の一つである「メメ子ちゃん」など最近は強烈で魅力的なキャラクター漫画でも人気を集めています。今回のインタビューではその創作の裏側はもちろんデビューまでの秘話など伺ってきました。ぜひ読んでください!

   
 
 第73回:水城せとな先生

 第72回:カトウハルアキ先生

 第71回:中田ゆみ先生

 第70回:柴田ヨクサル先生

 第69回:梅澤淳 氏

 第68回:はっとりみつる先生

 第67回:蒼樹うめ先生

 第66回:むんこ先生

 第65回:清水栄一先生×下口智裕先生

 第64回:塩崎雄二先生

 第63回:「コミックビーム Fellows!」編集 大場渉氏

 第62回:大石まさる先生

 第61回:ヒロユキ先生

 第60回:きづきあきら先生・サトウナンキ先生

 第59回:ISUTOSHI先生

 第58回:重野なおき先生

 第57回:紺條夏生先生

 第56回:志村貴子先生

 第55回:森永みるく先生

 第54回:神宮司訓之氏

 第53回:私屋カヲル先生

 第52回:久世番子先生

 第51回:大島永遠先生

 第50回:おがきちか先生

 第49回:「コミックハイ!」編集長 野中郷壱氏

 第48回:えりちん先生

 第47回:倉科遼先生

 第46回:よしながふみ先生

 第45回:菊池直恵先生

 第44回:石田敦子先生

 第43回:藤代健先生

 第42回:林家志弦先生

 第41回:山名沢湖先生

 第40回:ひぐちアサ先生

 第39回:鈴木次郎先生

 第38回:竹本泉先生

 第37回:深巳琳子先生

 第36回:影崎由那先生

 第35回:宮野ともちか先生

 第34回:甲斐谷忍先生

 第33回:芳崎せいむ先生

 第32回:阿部川キネコ先生

 第31回:田丸浩史先生

 第30回:二ノ宮知子先生

 第29回:大井昌和先生

 第28回:広江礼威先生

 第27回:曽田正人先生

 第26回:日本橋ヨヲコ先生

 第25回:羽海野チカ先生

 第24回:石田敦子先生

 第23回:柳沼行先生

 第22回:大島永遠先生

 第21回:吉崎観音先生

 第20回:小野寺浩二先生

 第19回:ぢたま某先生

 第18回:森薫先生

 第17回:木尾士目先生

 第16回:堂高しげる先生

 第15回:犬威赤彦先生

 第14回:八神健先生

 第13回:志村貴子先生

 第12回:文月晃先生

 第11回:Dr.モロー先生

 第10回:梁慶一・尹仁完先生

 第9回:山口貴由先生

 第8回:塩崎雄二先生

 第7回:倉上淳士先生

 第6回:榎本俊二先生

 第5回:氷川へきる先生

 第4回:山浦章先生

 第3回:さなづらひろゆき先生

 第2回:村枝賢一先生

 第1回:はっとりみつる先生

  • まず漫画家になったきっかけを教えていただけますか。

    10代の最後くらいから投稿を始めたんですけど、当時は全部ストーリー系の漫画しか描いていなかったんです。それで最初に投稿したのがスピリッツで、それからヤングアニマルに行って、モーニング・イブニング(編集注:当時の担当さんが両編集部の編集業務を行っていた方なので合同表記しています)と、その4誌を転々としていました。編集さんにも本当にお世話になったんですけど、どのネームも編集会議までに行くレベルじゃなかったんです。 同人誌を描き始めたのは投稿がなかなか上手くいかないこともあって、漫画が嫌いになりそうだったからなんです。それでストーリー漫画ではない漫画、自分のだんな(旦那)を主人公にした「だんなぼん」を描き始めたんですけど、それを読んだモーニング・イブニングの担当さんがすごく気に入ってくれて、「むんこさん、これ面白いから、次のストーリーが通らなかったら、これで行こうよ」って言ってくれたんです。でもその担当さんが、その直後に編集部をやめちゃいまして、それでどうしようかな、なにかないかなって投稿できる雑誌を探している時に、たまたま「あずまんが大王」(あずまきよひこ先生)を読んだんです。すごく面白くて、4コマってこんなことが出来るんだって思ったんです。それで4コマもありだなって思って、色々読んでいく中で「まんがくらぶ」に投稿したところ、拾っていただいたんですよ。

  • 「あずまんが大王」の具体的にどこに惹かれたんですか?

    キャラクターがどれもこれも素晴らしく活き活きしているところかな。あんなにいっぱいいろんな魅力的なキャラクターが出てくるなんて素晴らしいと思いました。 1を見ただけで10をわかる感じかな。例えば劇中で智ちゃんが浴衣を買った時に「よいではないか」ゴッコを昔よくやっていたって描いてあると、「ああ、甘やかされているんだな、この子は」って想像できますし、神楽さんが浴衣を買うって言ったらお父さんがすごく喜んだっていう話を読むと、男の子らしい風貌の神楽さんに対して(男らしい風貌でもいいけど、でも)女の子らしくして欲しいなって思っているお父さんの姿、そういうお父さんに育てられているんだなって想像ができるんです。 キャラクターの持つ、それ自体は出てこないんだけど、なんかそういう見え隠れする背景というか、「そういう風な親御さんだったらこういう娘さんになるよね」みたいなものがすごく想像できるんですよ。だからこそキャラクターの骨格というか、性質がすごくちゃんと描かれていると思うんです。本当に大好きな作品でセリフを全部塗りつぶされたらそれを全部埋められるくらい読みました(笑)。

  • デビューの話ですけど、ひょっとしたら4コマじゃなくて夫婦エッセイ漫画を連載したかもしれなかったんですね。

    いやあ、エッセイ漫画を読むのは嫌いじゃないんですけど、商業誌で描くなら自分が作ったキャラクターで描きたいと思っていたんでわからないですよ。あと「だんなぼん」は私の旦那がやたら個性的なキャラなんで(笑)、それを他人に説明するにあたっての名刺代わりに作ったような本なので商業誌で描くにはちょっと・・・っていうのはありましたね。 でも「だんなぼん」を描いたことで、やっぱり漫画ってキャラクターなんだなって改めて思いました。身近な人からでも読んでくれた方がみんな楽しいって言ってくれたんで、少し自信も持てましたし、それまで描いていた漫画では泣けるエピソードも含めて色々な話を考えていたんですけど、まずは強烈なキャラクター!っていうことは旦那から学びました(笑)。

  • なんか「まい・ほーむ」のお父さんのような方ですね。

    つい一昨日もまた会社を辞めてきたんですよ(笑)。「仕事、探してこい!」って蹴り出したんですけど、もう数え切れないぐらい職が変わっているんで。なんかストレスを溜めない人なんで悩まないで辞めちゃうんですよ。周りがおろおろしても本人がなんとも思わないみたいな(笑)。舞(「まい・ほーむ」の主人公小学生)のお父さんもダメ人間ですけど、ダメ人間の殻を被っているぐらいでちょうどいいというか、漫画でもそうなんですけど、弱い人、他人との比較の中で潰れていくような人は絶対に描きたくないんです。だからそうした枠組みに入らない、入りきらない、ある意味でヒーローみたいなキャラ、「釣りバカ日誌」のハマちゃんとかがそうだと思うんですけど、そういったキャラが描きたいんです。舞のお父さんもだんなもそういった意味では天才肌の最終系というか、ヒーローのようなキャラなんでダメ人間ぐらいでちょうどいいんだと思います(笑)。ダメとかバカとか言っているぐらいじゃないとただの崇拝になっちゃうんで。

  • 4コマを描く上で苦労しているところって何かあります?

    最初の頃と今では苦労の質が変わりましたね。最初の頃はとにかく必死だっただけなんで(笑)。まずネタのバリエーションを作るのに苦労しました。例えば設定を使ったオチだと、「らいか・デイズ」(以下、「らいか」)の場合、らいかが頭がいい子だっていう設定を使ったオチ、先生の悩みさえも相談を受けるといったことや、頭は良いけど恋愛話は苦手といったこととか、そういったネタですね。 最近の苦労はそういった設定が固まったせいか、ストーリーがどんどん進んじゃうので、ストーリーに寄り過ぎないように、笑いでなくてもいいから4コマ目にちゃんとオチというか区切りを必ずつけるように気をつけています。あと特に最近ですけど、しんみりし過ぎないように努力していますね。

  • しんみりといえば、「だって愛してる」(以下、「だって」)を読んだ時、なんてニクイ演出をするんだ!って思ったんです(笑)。最初にキャラクターのドタバタを見せておいて、コミックスの最後の方に「妊娠」という重いテーマでしんみりさせる。その流れに「ずるいなあ」って思ったのですが、「はいぱー少女ウッキー!」(以下、「ウッキー」)でも「がんばれ!メメ子ちゃん」(以下、「メメ子」)でもそういったところがあるんですけど、意識的にされているんですか。

    いや実は全然意識していないんです。だから私的には結構奇跡だなって思っているんですよ。多分どの作品でもそうなんですけど、最初からガッチリと話を決めていないんで、連載当初はただ一生懸命キャラクターを動かしているだけなのが、ちょうど単行本1巻分になりそうなあたりから設定やキャラクターが固まってくるというか、キャラクターが自分で動き出すので、そのキャラが成長するための壁というか障害みたいなものが見えてくるというか、描けるようになると思うんです。

  • 劇中に他の漫画のキャラが登場することがありますが、これは意識的に描かれているんですか?

    あまり意識していないんですけど、何となく街の風景とか雰囲気っていうのを同じにしておくと楽かなあっていうのがあるのかもしれないですね(笑)。実はデビュー作の「ふたりでおるすばん」の頃から全部同じ街のつもりなんです。普通に同じ街だからそこに行けばあの人がいるんだよみたいな感じですか。らいかが八百屋に行けば街子(「だって」の主人公夫婦の奥さん)がいるし、メメ子の会社には「まい・ほーむ」の親父がいるんですよ。遊び感覚じゃないですけど、やっぱり後ろに全然関係ない人を描くより知っている人を描いた方が楽しいじゃないですか。 漫画ってコマに描かれていること、テレビや映画だとカメラに映っているところしか見えないんですけど、映っていないところにもドラマってあるはずなんですよ。例えば「メメ子」だったら、ある場所にカメラが置かれていて、メメ子を主人公として映しているんですけど、ちょっとカメラをヨコにずらしたら今度は別のキャラクター、ウッキーだったり、それともまったく別の新しいキャラが主人公の漫画になると思いますし、そんな漫画を描いていきたいですね。 私が漫画を描く時の感じって「ウッキー」の後書きが最たるモノなんですけど、カメラを持ってそいつらの住んでいる街に行く感じなんです。「ちわー作者でーす」って。「今月は何かあったかい?」ってキャラクターに聞いて回っていて、それを漫画にしているんですよ。

  • 現在5作品を連載していますけど、単純に大変なんじゃないかって思いますがどうなんですか?

    おかげさまでデビューしてすぐにたくさん連載をさせていただいたので、仮の話になっちゃうんですが、私すごくキャラクターのことを妄想しちゃう人間なんで、少なかったらそのキャラクターのことばかり考えて、読者の方が追いつかないぐらいの勢いでどんどん話を進めちゃったと思うんです。だからそれを抑える為にもこれぐらいキャラクターを抱えている現在の形の方が良いんじゃないかな。

  • 「らいか・デイズ」とかもうすぐ5巻ですが、長く連載していく中で変わること、変えたことってありますか?

    いつもいっぱいいっぱいなんですけど、この話はこういう話だからっていう風に決めないようにしようって思っています。例えば読者の方がこういうのを求めているんだろうなって思うときがあるんですけど、申し訳ないんですけど、それよりもキャラクターの声を最優先に描こうって思っています。私より編集さんより、そして読者の方よりキャラクター達の声が最優先なんですよ。だから「いいお話」を描いた時とかに編集さんから「評判が良かったですよ」って言われても、じゃあ次はちょっと変えようかなって思うぐらいなんです。そこが良かったから続けるんじゃなくて、他にも面白いところがあるはずだからそれを拾っていこうって考えるようにしています。 最初は喜んでもらえるのを単純にどんどん描こうって感じで描いていて、もちろん今でも喜んでもらいたい気持ちは変わらないんですけど、それ以上に他のものも考えていかないと、これからもたくさんの量を楽しく描き続けるにはそういったことが重要なんじゃないかと思うようになりましたね。ただ本当にこれでいいのか、ここまでやっちゃっていいのかって不安になる時はあります。どの作品でも1巻ぐらいの量を描き終わって、キャラクターが息をし始めたら、もう私からキャラクターを動かすことはないんですけど、キャラが動き過ぎて、ここまで話が進んじゃったけど大丈夫かなって悩むことはしょっちゅうですよ。

  • 子供や子供っぽい性格のキャラが多いのはよく動くキャラだからですか。行動的だし、日々成長しているし。

    そうですね。動いてくれて、それでいて自分から楽しめる人が好きなんですよ。受け身じゃなくて動ける人。楽しく生きている人を描こうと思うと何かそういう感じになるのかもしれませんね。やっぱりそうじゃない人、ちゃんとした大人というか、物分りの良い人ばかりだと動かないんで4コマにしにくいと思うんです。

  • 子供らしい純粋さというか、これもずるいなあと思ったのは「ウッキー」の中でのウッキーと鈴子の関係なんですけど、野生児のウッキーに対して病弱な鈴子を出したのはどうしてなんですか。

    恋愛のテイストを入れたかったんですよ、「ウッキー」で。人が成長するのを描くのになにがいいだろうと考えた時に、やっぱり恋愛だろうって思ったんです。他にも大切な人の死とかなにかがあると思うんですけど、それだと重くなっちゃうんで、恋愛にしたんです。人に恋をする、人を大切に思う、その対象として鈴子を出したんです。女の子同士にしちゃいましたけど、でも男相手でウッキーがしおらしくなるというのはちょっとないだろうし、小さい時ってそういうことがあるじゃないですか。 自分のキャラの中で女性として素晴らしいと思うのは舞なんですけど、コイツはいい女になるなって思って描いているのはウッキーなんですよ。

  • キャラで言えば「ウッキー」の弟がすごいおデブちゃんじゃないですか。他にも「らいか」に出るおデブな先生(紺太)とかもいますけど、なにか理由があるんですか?

    自分が肥満児だったからですよ(笑)。あと普通にクラスに一人二人太っている子っているじゃないですか。背が高い、低い、デブだったりチビだったり、ウッキーの弟は色々いる中でたまたまデブの子を描いただけなんです。紺太については性格がズバ抜けていいヤツなんで、せめて見た目ぐらいなんとかしないとただのスゴイ人になっちゃうんで体型だけでもということで太らせたんです。

  • 漫画を描いていく上で気遣っていること、守っていることってあります?

    手を加えないことですね。私がニュースや新聞やらを見て感じたことっていうのをダイレクトに入れないようにしています。キャラクターの言葉というか、彼らの持つ意見を大事にしたいんですよ。具体的な例を言うと、らいかが劇中でトムヤムクンがマズイって言っているんですけど、私は大好きなんです。細かいことなんですけど、そういったことも含めて自分の考えや趣味をキャラクターに投影しないように気をつけています。 それでも私の一番身近な友達に言わせると「らいか」や「まい・ほーむ」だと私が言いたいことを言うような説教くささがあるみたいで、「メメ子」や「ウッキー」のほうがそういったものがないからということで好きらしいんですよ。 確かに「メメ子」とかでは本当に自分を出さないようにかなり気を遣って描いていると思います。単純に可愛いところ、面白いところを描こうとしていますね。なんかペットを飼う感じに近いかもしれませんね(笑)。ペットというかメメ子を溺愛しているキャラに社長秘書の乾さんがいるんですけど、このキャラを出したのは元々メメ子ってウッキーに近いようなもう少し妖怪ちっくな顔だったんですけど、それだとあまりにも可哀想だったんで、メメ子を可愛い、可愛いって言ってくれるキャラが必要だったんで登場させたんですよ。

  • ペンネームの由来を教えていただけますか。

    「究極超人あ〜る」(ゆうきまさみ先生)の曲垣剛ってキャラ、分かります?目が丸いキャラでビックリするとムンクの「叫び」(世界的有名な絵画)の顔になるんですけど、その顔がとても面白くてよくマネしていたんですよ。中学ぐらいからそのモノマネを持ちネタにしていたんですけど、高校の漫研に入った時にペンネームと自画像を描きなさいって言われたんで、それでそのムンクの「叫び」から取ってむんこっていうペンネームにしたんです。それ以来漫研や同人誌を一緒に作った子とかからむんこちゃん、むんこちゃんって普段から呼ばれるようになったんで、これをペンネームにするようにしたんです。

  • 最後に読者へのメッセージをお願いします。

    さっきの話になっちゃいますけど、読者の方の要望よりもキャラクターの声を優先しちゃう漫画家ですが、誠心誠意やらせて頂きますので暖かく見守って下さい。なんとか捨てないで付き合ってくれると嬉しいなって感じです。最後までこいつらの生活、成長を見ていてもらえればなって思っています。

[取材日:平成19年2月2日 (協力:竹書房「まんがくらぶオリジナル」編集部)


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