読み切りでのデビュー時から現在連載中の「ふたつのスピカ」を通じて、少年・少女 が持つ純粋で無垢な感情の変化を描くその独特の表現で、専門店はじめ様々な編 集部からも注目を集める柳沼行先生。 今回のインタビューではその柳沼先生に「スピカ」連載までのお話しはもちろん、 その漫画感など気になるお話しをたくさん聞いてきました。 編集前にいつもの倍の文字数にもなってしまった程の内容の濃いインタビュー、 ぜひご一読下さい!

   
 

© 柳沼行/メディアファクトリー

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『とらだよ。』vol.29対象ページ
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 第73回:水城せとな先生

 第72回:カトウハルアキ先生

 第71回:中田ゆみ先生

 第70回:柴田ヨクサル先生

 第69回:梅澤淳 氏

 第68回:はっとりみつる先生

 第67回:蒼樹うめ先生

 第66回:むんこ先生

 第65回:清水栄一先生×下口智裕先生

 第64回:塩崎雄二先生

 第63回:「コミックビーム Fellows!」編集 大場渉氏

 第62回:大石まさる先生

 第61回:ヒロユキ先生

 第60回:きづきあきら先生・サトウナンキ先生

 第59回:ISUTOSHI先生

 第58回:重野なおき先生

 第57回:紺條夏生先生

 第56回:志村貴子先生

 第55回:森永みるく先生

 第54回:神宮司訓之氏

 第53回:私屋カヲル先生

 第52回:久世番子先生

 第51回:大島永遠先生

 第50回:おがきちか先生

 第49回:「コミックハイ!」編集長 野中郷壱氏

 第48回:えりちん先生

 第47回:倉科遼先生

 第46回:よしながふみ先生

 第45回:菊池直恵先生

 第44回:石田敦子先生

 第43回:藤代健先生

 第42回:林家志弦先生

 第41回:山名沢湖先生

 第40回:ひぐちアサ先生

 第39回:鈴木次郎先生

 第38回:竹本泉先生

 第37回:深巳琳子先生

 第36回:影崎由那先生

 第35回:宮野ともちか先生

 第34回:甲斐谷忍先生

 第33回:芳崎せいむ先生

 第32回:阿部川キネコ先生

 第31回:田丸浩史先生

 第30回:二ノ宮知子先生

 第29回:大井昌和先生

 第28回:広江礼威先生

 第27回:曽田正人先生

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 第23回:柳沼行先生

 第22回:大島永遠先生

 第21回:吉崎観音先生

 第20回:小野寺浩二先生

 第19回:ぢたま某先生

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 第15回:犬威赤彦先生

 第14回:八神健先生

 第13回:志村貴子先生

 第12回:文月晃先生

 第11回:Dr.モロー先生

 第10回:梁慶一・尹仁完先生

 第9回:山口貴由先生

 第8回:塩崎雄二先生

 第7回:倉上淳士先生

 第6回:榎本俊二先生

 第5回:氷川へきる先生

 第4回:山浦章先生

 第3回:さなづらひろゆき先生

 第2回:村枝賢一先生

 第1回:はっとりみつる先生

  • 編集:まずこの「ふたつのスピカ」を描く事になったきっかけを教えてくだ さい。

    柳沼先生:フラッパーで描くきっかけになったのが投稿だったんですけど、 実は賞には漏れたんです。 でも最初に担当になってくれた方が、落ちたにも関わらず、すごく熱心に 色々とサポートをしてくれて、読み切りを描くことになったんです。 だけど実際に30ページもの長編というものをこれまで描いたことがなか ったんです。それでどうしようかなぁって思ったときに、昔から友達の同 人誌とかに、2,3ページで描いていた短編を膨らませてみようということ で、最初の読み切り(「2015年の打ち上げ花火」・1巻収録)を描いてみ たんです。

  • 投稿した作品も今の作品と似ているんですか?

    投稿した作品はもっと普通の話でしたね、青年誌によくある人と人との 恋愛みたいな・・・、そんな感じの作品です。 でも編集部からそういった作品じゃなくて、もっと違った作品、SFでも何 でも良かったんですけど、少し宙に浮いた作品を描いて欲しいって言わ れたんです。 それで、「じゃあ、普通の話は描けないな」と思って、実はSFとかファンタ ジーとかに苦手意識があったんですけど、さっきも話しました同人誌に 宇宙や幽霊をテーマに頼まれて描いたのがあったんで、それらの要素 を組み合わせて作ったのが1作目の読み切りだったんです。

  • じゃあ、宇宙や宇宙飛行士ものというテーマは以前から暖めていたわけ ではなかったんですね。

    本当に申し訳ないんですけど、そうなんですよ。 だからそういった期待というか、「宇宙とかすごく好きなんだろうな」とい ったような想像をされている方が多いらしくて、すごくがっかりされたこと もあるんですよ(笑)。 実際に宇宙の設定が決まったのは、2本目の読み切りの打ち合わせの 時でした。 その時点ではこの読み切りがこうした連作の形になると決まっていなか ったんですけど、「この作品が連載になったときに誰が主人公になるの?」 って聞かれて、この女の子、アスミが、宇宙飛行士を目指すみたいなこ とを、あまり考えずに言ったら、それが担当さんに響いたらしく「じゃあ、連 載できるように頑張っていこう」ということになったのがきっかけです。

  • タイトルに「スピカ」を選んだのはどうしてですか?

    殆ど後付けになっちゃうんですけど、獅子座の後を追いかける星座に乙 女座があって、そこのα星がスピカなんです。それでライオンさんの後を 追っかけている女の子というイメージと重なるんで、いいなって思って付 けました。

  • 作品を作る上で影響を受けた作品ってありますか?

    影響を受けたもの……、繋がっているかどうかわからないんですが、岩 井俊二さんの作品には影響を受けたかもしれないです。 大学生の時、深夜ドラマで「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」 を見たんですけど、見終わった後、朝まで眠れなかったんです。 もうあまりにも良すぎて、自分の中で「この世界を表現したい!」という気 持ちがいっぱいになったんです。その頃は漫画もそんなに描いていなか ったんですけど、何らかの形でその世界観を表現できたらいいなって思 いました。 だから1作目の「2015年の打ち上げ花火」のタイトルには、岩井さんへの リスペクトの意味も入っています。 あと色々な作品を見ていて思うのは、やっぱり「少年期」を描いている作 品にはグッと来るものがあるんですよ。だから子供の話を描いていきた いですね、初恋とか子供時代にしか有り得ないキラキラした部分とか。

  • 初連載ですけど、なにか執筆活動で変化はありましたか?

    今迄経験がなかったんで、特にないです。あまり考えないで描いていま す(笑)。 はじめはいつ打ち切られてもいいように(笑)、毎回一話読み切りみたい な形で描いていこうとしたんですけど、やっぱり難しかったですね。 だから今は後先考えずにこの連載を大きな読み切りだと思って、「最終 回にこんなことを描きたい」というゴールだけを設定して、そこまでの伏 線をずっと描いていけばいいかなって思っています。

  • 最終回に描きたいものというのは、連載当初から変わっていないんですか?

    変わっていないです。 僕の場合、テーマとかじゃなくて、「こんなシーンを描きたい」といった感 じで話を描き始めるんです。 だから見せたいシーンや、言わせたいセリフが出てきたら、それが描け るように「ムリヤリ話を繋げていく」といった描き方をしているんですけど、 以前は先頭から繋げていって、「コレが描けたら終わり」って感じだった のが、こうしてプロとして描くようになってからは、まず描きたいものを最 後に持ってくるように考えて、そこから逆算するようになりました。

  • 連載ではキャラクターが増えたり、学校とか世界が拡がりましたよね。そ のあたりはどうですか?

    そうですね、ページ数が決まっているんで、そこに全部描ききれないとき があるのが辛いですね。 僕としては群像劇、ドラマの「ふぞろいの林檎たち」や「白線流し」のよう な青春群像みたいな、それぞれのキャラが悩みを持って、独立したキャ ラを持っているものを描きたかったんです。 だけどそれだと人数が増えすぎてまとまらない可能性があるから、もう 少しアスミを中心にした2〜3人ぐらいの仲間というか、アスミを起たせる 存在として描いてみる方法も考えてみたり、そのあたりの設定は色々と 悩みました。 実際、僕自身アスミは一番好きなキャラなんですけど、「アスミだけ」と いう感じじゃないんです。どっちかと言うと僕としてはアスミが成長すると いう話よりも、アスミが周りに与えていくという話にしたかったんですよ。 周りの友達の持つ悩みとか、そういったものに何かを与えていくというか。

  • 作家さんの中には、すごい個性があるキャラクターが浮かんで、そのキ ャラクターを描きたくて、物語を作る方がいらっしゃいますが、それとは違 いますね。

    キャラクターありきじゃないですね。 僕はどっちかというとそこにいる全員の雰囲気を大切にしちゃうんですよ。 だから読んでいて、それぞれがぼんやりしちゃうことがあるかもしれない ですけど、こういうキャラクターを描きたいというのはないです。 自分の趣味になっちゃうんですけど、雰囲気というか空気、そのアスミ達 の後ろにある背景、例えばそこに単純に桜が咲いていたりしている様子、 そういったものが描きたいんですよ。 正直、色々と批判があるかもしれないんですけど、僕が描けるのはこう した世界だけなんで。

  • 連載を続けていくなかで、変化していったものとかありますか、例えばキャ ラクターの性格とか。

    そうですね、キャラクターで言えば僕は基本的に悪いヒトが嫌いなんで、 出来るだけ出したくないんですけど、連載を続けていく中で、編集さんか らアスミをいじめるような悪いキャラクターを出してみてはどうかって提案 されたんです。 いわゆる『ドラマを起こす』ためなんですけど、それであの先生を登場させ たんです。だけどダメでしたね、どうしても丸くなってしまうというか、やっ ぱり描ききれないんですよ。 編集さんもそれを感じてくれたんで、どっちにするか相談したんです。この ままアスミをいじめさせるか、フェードアウトさせるか、それでフェードアウト させることにしたんです。 実際、悪いヒトどころか悪い顔も描けないんです。描いても描いてもみん な丸くなっちゃうんで、そういう性格のキャラについてはあきらめちゃったと ころもあります。もし性格を悪くするにしても、本当に悪いままはイヤなんで、 なにか安心できる根拠、悪くなった理由を入れますね。 マリカについても本当はもっと性格がキツイはずだったんですけど、彼女 もやっぱり丸くなっちゃいましたね。

  • キャラクター設定についてですが、どうしてライオンを登場させたんですか?

    ライオンはですね、最初に浮かんだイメージがライオンが立て髪をなびか せて階段の上に立っているというイメージがなんの脈絡もナシに浮かん だんですよ。 最初の読み切りのときがそうなんですけど、そのイメージの中にドカン、ド カンと花火が浮かんでたらいいなって思ったのがきっかけです。 でもライオンがいきなり立っているのもどうかなって思ったんで、そこに昔 の幽霊ネタを繋げてみたんです。 あまり理由付けはないんですよ、いつもイメージとして突発的に浮かんだ ものを後から形にしていく感じなんです。 あとアスミに関して言えば、いまっぽくしたくなかったんです。元気があると いうか、ハキハキした如何にも「主人公です」みたいな感じではなく、抑え た感じにしようとしました。

  • それはキャラクターの動きで雰囲気を壊したくないからですか?

    う〜ん…、雰囲気だけなんですよ、僕の作品って。大事にしているのはそ こにある雰囲気で、全部抽象的になっちゃうんですけど、具体的にどうこ うって浮かんでこなくて、アタマのイメージだけで描いちゃうんですよ。

  • アスミだけがライオンを見える設定にしたのはどうしてですか?

    恥ずかしい話なんですけど、もし僕が子供を産んだら、こんな形がいい なと思う理想の関係なんです。 実は以前付き合っていた女の子に話したことがあるんですけど、「僕の理 想の親子は一人娘がいて、父親がいて、母親は早く死んでいるんだ」っ て言ったら、もの凄くなじられました(笑)。

  • そうでしょうね(笑)。やっぱり子供は成長していきますけど、根っこの部分 は無垢のままでいて欲しい感じですか?

    そうですね。今だと無垢や純粋であることってすごい恥ずかしいことのよ うに言われますけど、僕は「純粋でいいじゃん」って、強調したいんですよ。 正直気恥ずかしい部分ってあるんですけど、でも逆にそれを押していき たいなっていう考えもあって、恥ずかしいけどそういう部分って失いたくな いというか、親子の労りあいとか、自分に置き換えるとすごい恥ずかしい んですけど、せめて漫画の中では忘れずにいたいんです。 最近漫画でも妙にリアルな、辛い現実とかが描写されている漫画ってあ りますけど、でもそれって現実で充分じゃないかって思うんですよ。やっぱ り漫画の中ぐらいは優しい世界があっても良いと思うんです。

  • すごく良く分かります、やっぱりせっかく読むんだから、幸せな気持ち、楽し い気持ちにして欲しいですね。

    確かに優しいだけだと、すごく甘っちょろい世界だけになっちゃうとは思う んですけど、そういう世界というかそんな作品があっても良いと思うんです。 やっぱり生きているとイヤなこととか、辛いこととかがいっぱいあって、現実 逃避みたいな言い方になっちゃいますけど、「せめて漫画ぐらいは」ですね。

  • 見開きの使い方が効果的ですよね。それはかなり意識しているんですか?

    そうですね、そこはかなり意識しているんですけど、元々ページ数の多い 漫画って描いたことがなかったんで、最初に描くときに30ページなら最後 の方の26、27ページ目は見開きにするって、自分で決めちゃったんですよ。 見開きでドカーンと盛り上げたとき、残り2,3ページを余韻にすると収まり がいいなって思ったんです。あと「チャンチャン!」という感じでは終わらせ たくなかったというのがありますね。 やっぱり余韻ってすごく大切だと思いますし、実際こうしたフェードアウトみ たいな感じは自分にあっていると思っています。

  • 執筆活動以外でなにか変化ってありましたか?

    実家で描いているんでなんにも変わらないですね(笑)。 ただ何も言わないけどやっぱり親は心配していると思いますよ、一生続く ものだと思っていないでしょうし、僕自身も一生続くものだと思っていなく て(笑)、どっちかというと山にこもって自分の創作活動をしたいという思 いがあるんですよ。 大学の時に切り絵をやっていたんですけど、それが結構楽しくて、将来的 にはそっちもやってみたいなって思っているんです。でもそれを口にすると、 実は自分の中学からの友人で漫画家さんがいるんですけど、「漫画家で いる以上、一生漫画家でやっていくんだという気概でやらなくちゃダメだ!」 って、よく怒られるんです(笑)。

  • 同じ漫画家という友達がいることは何か違いますか?

    いろんな意味で救われているところはありますね。 やっぱり彼がいるから安心して描けるというか、同じ悩みというか、大体 僕がグチるんですけど、それをさらっと「気にしなくて良いよ」みたいなこと を言ってくれたりするんで、すごく助かっています。

  • 最後に読者へメッセージをお願いします。

    よく「このまま変わらないでいて欲しい」と言われるんですが、それがどう いう意味かよくわからないんですけど、多分この雰囲気を気に入っていた だいていると思うんで、頑張って続けていければと思っています。 読んでいる人にすれば、色々言いたい事はあると思いますけど、特に奇 をてらっているわけでもないですし、単純に僕が心地いい世界を描いて いるだけなんで、突っ込まないでくれると助かりますね(笑)。

[取材日:平成15年6月4日(協力 コミックフラッパー編集部)]


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