来週の株式市場、クリスマスで閑散だが下値底固い

2008年 12月 20日 15:49 JST
 
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 [東京 19日 ロイター] 来週の東京株式市場はクリスマス休暇で海外投資家の多くが不在のなか、小動きの静かな一週間となりそうだ。日経平均は上値を追っていくエネルギーはない半面、下値も底堅く、比較的狭いレンジ内での展開が予想されている。

 波乱要因があるとすれば、米政府による自動車大手救済の行方だ。米ビッグスリーについては、政府は救済の意志を示しているものの状況は流動的。9月に経営破たんした米リーマン・ブラザーズ(LEHMQ.PK: 株価, 企業情報, レポート)と同じような事態となれば、大きな株価下押し圧力となるため、市場関係者は依然、警戒感を解けない。

 来週の日経平均株価の予想レンジは、8300円─9000円。 

 <米自動車大手、救済の行方に警戒感>

 ポールソン米財務長官は「ブッシュ大統領は自動車メーカー破たんを回避する措置を望んでいる」と述べる一方で、「自動車メーカーの再編や破たんが正しい結果なら、秩序ある方が望ましい」との見方も示している。立花証券執行役員の平野憲一氏は「秩序ある破たん」の意味するところについて「労働組合が救済条件に納得しない場合、組合の機能を抑えるためにいったん破たんさせ、その後に救済するということではないか」と分析する。

 ビッグスリーは救済されるという期待感はあるものの、「リーマン・ブラザーズの例もあるので、結果が出るまではわからない。米自動車大手に関しては、目先的に大きなヤマ場だ」(国内証券)と警戒感は強い。市場では「救済が暗礁に乗り上げれば、失望売りが出る上、ドル安が更に進む可能性もある。国内の自動車株など輸出関連も売り込まれるだろう」(国内投信)との声がきかれた。 

 <25日線と一目均衡表の雲の下限との間での動き>

 米ビッグスリーというワイルドカードを除けば、典型的な年末モードとなりそうだ。クリスマス前の23日は米国の住宅関連の経済指標、国内では26日は消費者物価指数、家計調査、労働力調査、鉱工業生産速報など月末恒例の重要経済指標が発表されるが、イベントとしての注目度は低い。大和住銀投信投資顧問チーフストラテジストの門司総一郎氏は「今週発表された12月米フィラデルフィア地区連銀業況指数など、直近の米国経済指標はむしろ予想よりもよい。国内経済指標については、悪いのは織り込み済み」とし、反応は限定的とみている。

 15日に発表された日銀短観12月調査で企業景況感の大幅な悪化を確認したにもかかわらず、今週の日経平均は下値を大きく割り込む場面はほとんどなかった。下値では公的年金などの買いが観測され、「上値追いのエネルギーには乏しいが、下値も徐々に切り上がっているようだ」(立花証券の平野氏)とみられている。明和証券シニア・マーケットアナリストの矢野正義氏は「下は25日移動平均線の8300円程度をクリアした状態、上は一目均衡表の雲の下限がカベとなっている。来週もこの範囲内での動きとなりそうだ」とみている。

 一方、大和住銀投信投資顧問の門司氏は、年末ラリーの可能性を指摘する。過去のデータからみた可能性として「例年、年末の5営業日は薄商いのなか、小じっかりの相場が展開されるようだ」(門司氏)という。 

 <業績相場から金融相場への転換期待も>

 一方、国内株式相場の質に変化の兆しが現れているとの指摘が出始めた。市場の関心は金融問題からファンダメンタルズに移り、景気減速下で自動車などの日米の基幹産業が打撃を受けているのが現状だ。国内株式では、ドル安/円高が一層の下押し圧力となり、業績悪化懸念から輸出関連株が売られる相場となっている。半面、これまで売りの対象となってきた不動産株や銀行、証券などの金融株が持ち直してきたとの指摘が少なくない。

 米国が事実上のゼロ金利政策を採択し、日銀も利下げで追随するなど、世界的に金融緩和が進んでいることから、「先行きの流動性期待感で不動産や金融株が買われ始めた。来週も動意に乏しいなかで、これらの業種が個別物色される可能性がある」(明和証券の矢野氏)という。

 立花証券の平野氏は、「円高が続き、業績相場の様相は依然、強い。半面、市場は流動性期待から金融相場への転換も意識しているようだ。その意識が強まれば、不動産株や金融株がけん引役となって、日経平均が9000円水準を試す場面もあるのではないか」と述べている。

 (ロイター日本語ニュース 石渡 亜紀子)

 
 
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