米自動車大手救済こうみる:クレジットひとまず落ち着くが、救済内容の精査必要=トヨタアセット 濱崎氏

2008年 12月 20日 12:34 JST
 
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<トヨタアセットマネジメント 投資戦略部 シニアストラテジスト 濱崎 優氏>

 

 米自動車大手の経営が破たんすると、世界の株式やクレジットなどの市場が機能不全に陥り、企業の資金調達に支障が出る恐れがあっただけに、米政府がつなぎ融資の実施を決めたことを評価している。今回の融資でマーケットはひとまず落ち着くだろう。

 ただし、クレジット市場にとっては、注意すべきポイントがある。ひとつは、米政府が自動車大手に債務の株式化(デッド・エクイティ・スワップ)などを通じた大幅な債務の削減を求め、一方、政府が議決権のない株式引受権(ワラント)を取得するという点だ。もしこれがクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のデフォルト(債務不履行)事由に該当することになれば、信用リスクを取る売り手に多額の損失が発生することになるため、救済内容を精査する必要がある。

 ワラントについても再建成功時の株式値上がり益を確保できれば問題はないが、米自動車大手の経営環境が一層厳しさを増しているため、再建計画がスムーズに運び、株価の上昇が期待できるか不安な面がある。今回の融資に伴う厳しい条件をクリアするために、自動車大手が債務や人件費の削減など抜本的な再建計画を来年3月末までに策定できるか注目される。再建計画を監視するオバマ次期米政権の責任は重大だ。

 金融安定化法に基づく公的資金の使い道を金融機関だけでなく自動車大手の支援にも拡大した点も気がかりで、実体経済の落ち込みが鮮明となる中、他産業でも救済要請が広がる可能性が出てきた。企業支援の歯止めをどこで設けるかが今後の課題となる。

 [東京 20日 ロイター]

 
 

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