In the Early Morningtide

  モーニングタイドの黎明

by Rei Nakazawa
Translated by YONEMURA "Pao" Kaoru


 完全な完璧さというものは存在しない。ことマジックの世界においてはなおのことだ。セラは彼女の世界でそれを作ろうと試みたが、失敗に終わった。ウルザの、ファイレクシアの軍勢に対する究極の防御を作ろうという試みも、ファイレクシアの指導者ヨーグモスに蹴散らされた。ローウィンの次元は平和でのどかではあるが、危機や問題はやはり存在する。モーニングタイドでは、ローウィンの基本的な自然とともに、危機や問題に関する情報を提供していくことになる。御伽話のような世界に、ハッピーエンドだけがあるわけではないということは忘れられがちである。

 モーニングタイドの小説は、この夜のない世界の影の部分を描くことで、このコンセプトを証明している。エルフの中でも卓越した狩人であったライズには、2つの大きな問題があった。多くの同胞を殺した大異変の原因とされていただけでも充分に大きな問題だが、それにもまして、角が折れてしまったことで醜い存在になってしまっていたのだ。この2つのことから、彼は彼の所属する社会から二重に非難されていた。彼の技術や名声は知っていたので、他のエルフたちは彼をその社会の残酷な掟に従わせることに全力を尽くした。彼に彼自身の肌にこだわる余裕がなければ、彼はオーロラと手を結んでいただろう。オーロラとは何か? 空に輝く美しい光だとほとんどの人は知っている。最大の祝い事を特徴づけるとしてオーロラを用いるキスキン以外には、それ以上のこだわりはないものである。しかし、数人の賢い指導者はオーロラに対する危機感をもっているようであり、ライズもまた同様に危機感を持っているのだ。

 彼が神秘的なツリーフォークのコルフェノールと協力してそぞろ歩きのロシーンという巨人を探している間、彼の同僚は彼ら自身の問題に対処していた。キスキンの勇士ブリジッドが救済を求め、炎族のアシュリングが正解を求め、神秘的なエルフのマラレンがフェアリーの女王を探している間にも、オーロラの日は近づいてくる。彼らはオーロラの日までにそれぞれの使命を果たさなければならないと感じていた。そうしなければどうなるか、それは判らない。わかるのは、色とりどりの光が空を舞う時であろう。

 ローウィン・セットで描かれたときから世界全体が変化したわけではない(喜ばしいことに、その住人の多くは今のままでいたいと思っているのだ)。そして、公正に扱うには記事一つではとても足りないほど奥の深い話なのだ。過去数ヶ月を見ても判るとおり、この世界を作るにあたっては多くの考えや情報が組み込まれている。実際のところ、私でさえもローウィンのコラムを書く時に書ききれなかったことの多さに驚いたほどだ。意志のある種族8つについて、今まで語られていなかったちょっとした話をここで書いておきたい。


 巨人は物理的にも精神的にも感情的にも巨大な存在である。彼らのあらゆる行動や感情は、表現方法は色によって異なるものの、世界を揺るがすほどのものであることに変わりはない。赤色の巨人は外向的な行動をとり、激怒や決意に基づいて世界を揺るがす一方、白色の巨人は熟慮や瞑想を行なう。また、巨人は収集癖を持つ。地下にある彼らの棲み家は何マイルにも及ぶものがあり、永遠と思えるほどの人生で集めたさまざまながらくたで一杯になっている。このがらくたの山の中には、ただのクズから、計り知れない価値と魔力を持つ宝物まであらゆるものが混じっている。また、巨人の棲み家には、古代のルーンを刻んだ神秘的な洞窟という形で、知識までも含まれている。その古代のルーンを読み解いた者はただ1人の巨人だけで、彼女はその知識によって狂気に陥ったという。

 ツリーフォークは、ローウィンに棲む種族の中で巨人と同様に長命な種族であり、それに伴った知識を持っている。彼らの寿命と、通常の樹としての生活とから、他の種族に比べても高齢であることや巨大であることに対する尊敬の念が強いことは理解できる。通常の樹が小さい植物に届く日光を遮って成長を阻むのと同様、ツリーフォークも、より高く大きく育つために太陽に近づくべく絶え間ない闘争を繰り広げている。《戦杖の樫》のイラストを見ると、ツリーフォークが木製の武器を持っているのが見て取れる。人間がそんなことをすれば気違い沙汰だが、ダグがツリーフォークに関する記事で書いたとおり、肉の生命体が皮や骨を自分の構成物だと思っているのとは違い、ツリーフォークは木が自分の構成物であるとは思っていない。倒れた木(や、ツリーフォーク!)から木を削りとり、武器や鎧として使うことは普通に行なわれている。樹木の中には傷ついても幹や樹皮が再生するものがある。ツリーフォークの中には、自分の身体を注意深く切り落とし、軍装を華やかに彩る戦士樫のようなものまでいるのだ!

 キスキンに関しては、彼らの持つ共感的な思考の糸に代表される『編む』という考え方がその文化全体を貫いている。しかしこの基本的な考え方は、他の面でも明白である。例えば、ラナマス、つまり主とタウンズフォーク、あるいは監督と労働者といったような不平等な関係という考え方は存在する。キスキンは、この種の関係は両方のグループが相手の存在を重要だと理解しているときにのみ存在しうると信じている。言い換えると、彼らはそれぞれの義務によって相手方と編みあわされているのだと。《収穫祭の編み上げ》は、キスキンの人生のありかたのもう一つの重要な側面を示している。通常の収穫祭の踊りにおいては、複雑な踊りが大勢の群衆によってなされる。o踊り手が信じられないほどの速度でお互いに手を取り合い、あるいは集まり、離れて(これも『編む』に例えられる)、完璧にして複雑な全体像を描いている。これはただ思考の糸の能力を誇示しているだけではなく、この踊りを通して相互の繋がりを強める魔法儀式なのである。

 メロウには、群を先導する騎兵、河を旅する旅人を導くシグのような案内者、河から飛び跳ねて地上の獲物を打ち抜くランドスパナー、闇回廊と呼ばれる地下水脈の神秘を調査することに特化した深海踏みといったような、様々な役割が存在する。ボガートの巣と同じように、メロウの群れもそれぞれに異なった性質、縄張り、役割を持つ。銀エラと呼ばれる群れはエルフと商業的な付き合いを保っており、石ころ川と呼ばれる群れはキスキンがしばしば住み着いている低地の縄張りに執着している。メンバーのほとんどが深海踏みである、墨深みという群れは滅多に水面にあらわれない。

 短命で悪戯好きなフェアリーは、ローウィンに常に存在し、常にトラブルを起こす存在である。寿命は短いが、だからこそやりたいことを何でもできるという気分になっている。しかし、始めたことをやりとげる前に寿命が尽きることもしばしばである。また、フェアリーが誰にでもちょっかいをかけてくるのは、いわゆる「リング」のせいでもある。リングとは、石やキノコ、苔などによって大地に描かれている輪であり、ローウィンではどこにでも見かけられるが、その魔力の強大さに気付くものはほとんどいない。それらのリングを用いてフェアリーの群れは彼らの棲み家であるエレンドラ谷など好きな場所に転移するのだ。そして、リングに干渉したものは、手痛い代価を支払うはめになる。

 ローウィンの炎族に関するフレイバー・テキストでは、彼らが従おうと考えている物理的、また魔術的な光の道である「炎の道」について触れられていることがある。それらは、多くの場合炎族の身体の色を反映した、それぞれ異なった色の炎で示されており、世界を周り、自分の内面を知り、そして深い瞑想をすることによって次のステージに進むことができる。最初のステージは赤い炎であり、これは炎族の物理的な感覚と関連しており、旅と新しい経験によって到達することができる。その次は黄色の炎で、強い感情によって到達できる。白い炎は魔術的な経験と、しばしば他の炎族との関係によって得られる、さらなる感情上の成長によって到達できる。この難しいステージには、魂炊きと呼ばれる者たちだけが到達できるが、第4ステージには到達できていない。青い炎のステージが何によるものか、誰も確信は持てていない。そこに近づいたものは例外なく自身の内炎に灼きつくされてしまっているのだ。このステージに到達し、生き残ることができたなら、伝説的な存在になれるだろう。

 向こう見ずなボガートは、当然ながらローウィンに影響を及ぼしている。彼らの精神の働きについて知りたければ、《火腹の変わり身》のフレイバー・テキストを読むといいだろう。そこで引用されている麦汁婆の発言は、普通のボガートが世界をどのように見、どのように話すかについての極々標準的なものである。手と足は、彼女らの周りにある世界と最も直接的に関り合う方法であり、しばしば痛みという形による警告を受ける手段である。感情は肝臓から、分析的思考は耳から、その他も同じように身体の部分ごとに別々に認識している。全ての感覚を受け入れたいと思う場合、その感覚をそれぞれ直接的な形で受け入れられるように分割しなければならない。

 最後に、エルフがある。ローウィンのエルフは、マジックのプレイヤーが知っている他のエルフとは社会や考え方の面、その他様々な面で独特である。例えば、他のエルフと違って長命ではなく、平均寿命は3〜40年しかない。その間老化することがないこと、美に関する執着という2つの理由から、攻撃的で近視眼的な社会が作られている。カードを見ても判るとおり、ローウィンのエルフには特別な職業が存在する。称賛者とは、その存在がどれほど美しいか(すなわちどれほど重要か)を決める判定者である。彼らは決定に客観的な雰囲気を帯びさせるために、人前では必ず仮面をつけている。選別者とは、最低の眼腐りを破壊する責任を持つ者である。大使とは、滅多に会うことができないが森で生きるために必要なツリーフォークと交渉を行なう、エルフの代表者である。傷刃とは、エルフの社会における暗殺者であり、相手を殺すのではなく不具にすることを専門としている。エルフの社会においては、不具と死の間にはそれほどの差はないのであるが。

 エルフを最後にしたのは、今回取り上げるプレビュー・カードがエルフだからである。彼は伝説のクリーチャーであり、ローウィンの小説には既に登場してきている。ライズは今までもこれからも物語の中心にいる存在ので、彼のカードが存在するのは当然だと言えよう。

 追放されたとはいえ、ライズはやはりローウィンのエルフであり、カードに描かれている彼は彼の種族の一般的なものを表している。まず、彼は3マナで3/2のクリーチャーである。その時点で、彼の色のクリーチャーらしい有利さがある。だが伝説のエルフである以上はより有利であるべきであり、彼の持っているライフを得る能力は、このブロックだけでなく史上に存在した種々のエルフを探すカードやエルフ・トークンを出すカードと組み合わせることにより、十二分な有利さを得ることができる。1回攻撃するだけで大量のライフを得ることができ、陣営を整えるまでの余裕が手に入るのだ。往々にして、攻撃する時にだけ働く能力というのは何度も使えないものである。しかし、彼はそのデメリットすら跳ね返すのだ! 彼の憎悪は彼自身の本質にまで及び、少々のエルフを犠牲にすることで黒の再生能力を使い、何度も攻撃できるようになった。名前、能力、フレイバー・テキスト、全てを一体として彼の性格と背景にある物語が詰め込まれていると言えるだろう。

 現実世界では、何も永遠に残るものはない。生命はいずれ死に還り、太陽もいずれ沈んでしまう。これはローウィンでも同じことだろうか? それとも、空の輝きは永遠に失われることはないのだろうか? これは今後の展開に関する話になる。現在のところは、この世界の暖かさを充分に満喫してもらいたい。警戒は忘れずに、だが。

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