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社説:アフガン支援 「民生」の実効性確保を

 新テロ対策特措法の期限切れに伴い、一時中断をはさみながらもアフガニスタン攻撃開始直後の01年12月から続いていたインド洋での海上自衛隊による給油活動が、終了した。

 給油は、米同時多発テロに対するアフガンでの「不朽の自由作戦」の一環で、テロリストや武器、麻薬などの海上移動を阻止する活動に従事する各国艦船への支援として開始された。しかし、日本の提供燃料が米軍のイラクでの作戦に転用されたとの疑惑が指摘されたこともある。給油は、03年度には月平均14回を数えたが、昨年11月は8回、12月は7回とピーク時の半分になっていた。

 鳩山政権は発足当初から、給油活動を延長しない方針だった。給油の需要は数年前に比べて減少しているとはいえ、経費は年間約80億円で安価な対テロ支援策と言われてきた。給油活動は国際的に評価され、日本が「テロとの戦い」に一定の積極的な役割を果たしてきたことも事実だろう。防衛省内には海自の撤収によって各国とのテロ情報共有が難しくなるとの懸念もある。政府は、8年間にわたる給油活動を検証し、評価を含めて国会に報告すべきだ。

 鳩山政権は民生支援に軸足を移し、5年間で最大50億ドル(約4500億円)の支援を決め、鳩山由紀夫首相がオバマ米大統領に表明している。自公政権下でも民主化支援や治安改善、経済基盤整備、人材育成などの民生支援を実施してきた。その額は02年以降で20億ドルだから、鳩山政権の支援額はけた外れに大きい。

 拠出資金は、反政府勢力タリバン元兵士の社会復帰に向けた職業訓練や、治安能力向上のための警察官8万人の給与半額負担継続、国の自立的発展を目指す農業、教育、医療支援などに投入される計画だ。

 しかし、問題もある。アフガンの治安は国内全域で悪化している。武装勢力に対抗するのが先決で、現在の治安状況では民生支援に限界があるとの見方が強い。本格的支援を実施するには要員の派遣が必要だが、治安問題がネックとなっている。

 また、支援額は事業を積み上げた数字ではなく給油中止の代償として決まった側面が強いうえ、アフガンには年間10億ドルもの資金を受け入れる能力はないとされる。ドイツの非政府組織はアフガン・カルザイ政権をソマリアに次ぐ世界第2の汚職政権と認定している。血税が汚職に消えるようでは日本国民の理解は得られない。

 厳しい財政事情の下での多額支援である。鳩山政権は、米国など関係国と十分協議を重ねたうえで、実効ある民生支援となる内容と額、態勢を探るとともに、支援の到達点などを定期的に国会に報告するなど透明性を確保すべきである。

毎日新聞 2010年1月16日 2時30分

 

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