ニンテンドーDS
『悪魔城ドラキュラ ギャラリーオブラビリンス』
オープニングムービー メイキング

 監督・演出      水野貴信

 モデリング      株式会社アニマ
                  大石直人

 美術            鈴木理恵

 アニメーション  水野貴信
                  Fabric Animation

 エフェクト      塩見信隆

 撮影            鈴木理恵
                  水野貴信

 制作進行        佐竹加央林

 コーディネイト  高橋和也
               (IMAGICA Imageworks)

 監修            水崎淳平

■「WiーFi」対応(ショップモード・協力プレイモード)     ■ジャンル:2D探索型横スクロールアクション
■対応機種:ニンテンドーDS                   ■メーカー希望小売価格:4,980円(税込5,229円)

 『悪魔城ドラキュラ ギャラリーオブラビリンス』公式サイトでオープニングムービーを視聴できます。


■3DCGをセルアニメに極限まで近付ける

 『悪魔城ドラキュラ ギャラリーオブラビリンス』のオープニングムービーを制作するにあたり、「セルアニメに限りなく近付けて欲しい」というクライアントの強い要望がありました。そこで、「だったらセルでやればいいじゃない。」と言われるものを作ろうと、あえて3Dで挑戦し、3Dの表現の幅を広げることができればという意気込みで、このプロジェクトに取り組みました。
 一般的な方法で作られた3Dのシーンを、ただ単にトゥーンシェーダーでレンダリングしただけでは、どうしても違和感が出てしまいます。弊社では以前からこの問題に取り組み、様々な手法を生み出してきましたが、今作品ではもう一歩踏み込んだ、実験的な工夫を取り入れる方向で進めていくことに決定しました。
 まずは違和感の原因の洗い出しから。いくつかあがったものをまとめると、「3D特有のヌルヌルした動き」「正確すぎるパース」「無機質な絵」の3点に絞られ、これら違和感の原因を減らすために、今作品で初めて試みた手法を中心に、メイキングをご紹介いたします。
                                                       (水野)


  


■モデリング 〜セルアニメに最適なモデル〜

 セルアニメの特徴の一つである線画。Lightwave標準の輪郭線を使って必要な部分にラインが入るよう意識しながらモデリングします。リアル系3Dと違い、特にこのラインが重要になってくるので、レイアウトに読み込んで何度もレンダリング確認しながら理想のラインを作り上げます。
 セルアニメではさまざまな角度の顔が魅力的に描かれます。3Dモデルでこれを実現するため、カメラアングルによってモーフで顔を変形させるなどの仕込を入れます。 必要な場合にはカット専用のモーフを用意します。




  変形後のモデルを別アングルから見るとこんなことに・・・       Click!→


■質感設定 〜必要な素材の出力〜

 Lightwaveではレンダリング結果のRGB画像ではなく、コンポジットする為の素材を出力するという考え方で質感設定をします。
 ライン、カラー、シャドー、マスクなど必要な素材を出力後、Aftereffectsでコンポジットし、最終的な絵を作っていきます。他に必要な素材が出てきたら再びLightwaveに戻り、設定を追加し、出力するというのを繰り返し、納得いくものができるまでこの段階で詰めて行きます。
 ベースとなるコンポジションが決定したら、ロケーションごとに違う色設定を用意します。



      ライン            カラー           シャドー           ジオメトリ          アルファ


■3Dアニメーション 〜整理された動き〜

 セルアニメは絵の情報量が整理されているので動きも整理したものにします。それに加え、多めに入れたボーンの関節外し技や拡大縮小技で必要以上に変形させ、誇張した動きを加えます。人の手で描くように1コマ1コマに注意を払って動きを付けるのが重要なポイントです。
 広角レンズ使用時にアップのキャラクターの顔が歪んでしまい、レイアウトが不可能な場合などは大胆に嘘をついてしまいます。嘘パースです。
 体の動きが決定したら、髪、衣服を揺らし、カメラアングルに合った顔のモーフを適用します。




■コマ打ち 〜動きにメリハリを付ける〜


 どんなにセルアニメ的な動きを作っても、やはり3Dであることは分かってしまいます。3Dで作った動きはフレームレートが一定であるため、遅い動きのときにヌルヌルした感じが出てしまうので、セルアニメのコマ打ちの様に、Aftereffectsのタイムリマップを使って動きにメリハリをつけます。
 通常の動きは2コマ打ち、速いときはフルフレーム、遅いときやタメを入れたいときは3コマ打ち、と1カットの中でも動きのスピードによって変化を加えます。何度も再生しながら、少しでも違和感を減らして行きます。




■セル修正 〜レタッチで作画感を出す〜


 Lightwaveで出力した各カットごとの素材を、質感設定で作成した、ベースとなるAftereffectsコンポジションの素材と置き換え、微調整後、セルとしてレンダリングします。
 モデリングや質感設定などでいろいろと工夫を凝らしても、コンピュータで自動的に作られた絵には、どうしても思い通りにならない部分が出てしまいます。セルを1コマずつチェックし、一定の太さで無機質なラインや、汚いシャドーの境界線など、気になる部分をAftereffectsのペイントを使って修正していきます。




 このセル修正では、エラー的な部分を直すだけでなく、表情を豊かにしたり、動きの速いコマにブレを追加するなど、更なるクオリティアップを目指します。
 根気のいる作業ですが、人の手が加わることで、より作画感を出すことができる重要なパートなので、時間の許す限り手を入れていきます。

 大変な作業ですが、実際手を動かしてみると無心になれて意外と楽しいです。



■今後の課題

 今作品はオープニングムービーであるため、アクション中心でキャラクターがしゃべることがなく、3DCGで最も馴染ませるのが難しい「口パク」の研究ができませんでした。プレスコは比較的馴染ませやすいですが、アフレコでも馴染む「口パク」を見いだせたらと思います。
 また尺が短いため、少人数で同じ意識でできたのですが、映画やOVAのような長尺作品用にシステム化することが今後の課題です。 
                                                                                                 (テキスト、構成:水野貴信)