ダイナマイトサッカーの紹介    レビュー記事風 サカゲー馬鹿一代トップへ

はじめに

 サッカーゲームと言えば、今や「ウイイレ」シリーズの一人勝ち状態である。発売されれば軒並みミリオンは確実だというから、サッカーゲームとしてだけでなく、大ヒット作が少ない近年のコンシューマーゲーム業界にとっても特別な作品だと言えるだろう。

 筆者も、全ての作品というわけではないが、ウイイレはシリーズ初期の頃からよくプレイしてきた。
多彩な操作によって展開されるサッカーらしいプレイの数々。今や実際のサッカー中継と見まがうばかりのリアルなグラフィック。選手やチームのデータ充実度や演出面も素晴らしい。これらは作を重ねるごとに着実にレベルアップしている。さすがサッカーゲームNo.1を自負するだけのことはある。

 しかし、ウイイレをプレイしながら、常々心にひっかかることがある。
 それは「私がやりたいサッカーゲームは、コレではない」ということである。
 ウイイレが味わせてくれるものは、私がサッカーゲームに求めるものとは明らかに違うのだ。

 考えてみると、ウイイレのプレイ感覚は、サッカーを「見ている」感覚にとても近い。上からピッチを見下ろし、選手達を駒と見立て、指令を出し、その動きを楽しむような感覚とでも言おうか。ウイイレは、観客の視点における極上のサッカーシミュレーターであろう。
 しかし、シミュレーターというアプローチは、サッカーの楽しみ方の一面を捉えたものに過ぎないのではないだろうか。私がプレイしたいのは、こうした観客の視点ではなく、実際にピッチに降りてサッカーを「している」感覚、ボールを「蹴る」感覚を味わせてくれるサッカーゲームである。こんなゲームはないのだろうか?

 この私の問いに対する答えとなるサッカーゲームは、果たして確かに存在した。
 今回紹介する「ダイナマイトサッカー」シリーズ(以下「Dサカ」)である。

 Dサカは、ウイイレと同じくサッカーを題材にしたアクションゲームでありながら、ウイイレとは全く異なるコンセプト(あるいは「思想」と表現してもよいかもしれない)を有している。見た目のリアルさではなく、実際にサッカーを「している」ようなプレイ感覚のリアルさを重視したうえで、アクションゲームとしての楽しさをとことん追求している。少し言い方を変えれば、シミュレーターではなく、純粋なアクションゲームとして勝負している、それがこのゲームだ。

 しかも、本シリーズを開発したのが、かつてスーパーファミコンで一時代を築いた「フォーメーションサッカー」並びに「Jリーグエキサイトステージ」シリーズを手がけた天野亮司氏(現:エーマックス株式会社)だというから、その面白さは約束されたも同然だろう。

 それでは、前置きはここまでにして、Dサカをもう少し具体的に紹介していこう。

360度自由にボールが蹴れる

 Dサカの最も大きな特徴であり、他のサッカーゲームと根本的に異なるのは、その自由度の高い操作性である。そして、その中核となるのが、ボールを蹴る方向をコントローラーのアナログスティックで360度好きな方向に指定できる「マニュアルキック」(注:造語)である。Dサカでは、このマニュアルキックによりほとんど全てのプレイを展開していく。

 ウイイレを始めとした一般的なサッカーゲームでは、パスボタン、シュートボタン、クロスボタンなど、プレイの目的によって分類された操作体系が基本となっている。ボタンをただ適当に押していれば自動的にパスがつながり、ゴール前に行けばシュートを打ってくれる。こうした操作体系では、ボールを蹴る方向は自動的に調整され、微妙な方向を指定することはできず、パスやシュートの方向を「狙う」という感覚は薄い。ウイイレに「スルーパスボタン」なんて操作が存在するのはその象徴だと言える。
 これに対して、Dサカでは、パスも、シュートも、クロスも、すべて自分で「狙って」蹴る。当然狙いが狂えばパスは通らないし、シュートも外れる。同じパスを出すにしても、受け手の足元に出すのか、右側に出すのか、左側に出すのか、あるいは前方のスペースに出すのか、全ては自分の指先次第である。マニュアルキックは、自分の好きな方向に自由にボールを蹴るという、単純ではあるがサッカーの本質を突いた操作方法であり、ゲーム内にサッカー本来の創造性をもたらしてくれる。

 マニュアルキックの操作方法をもう少し詳しく説明すると、○×△□の各ボタンに、ロングキック、ショートキック、ロブ、チップキック等、蹴る球の弾道や飛距離が異なるキック動作が割り振られており、360度好きな方向に蹴ることができる。これらの各キックは、強弱(飛距離、スピード)を、ボタンを押す長さやタイミングで微妙に蹴り分けることができるうえ、左右にカーブもかけられる。こうした多彩なキックを、局面に応じて自らの手で使い分けることにより、自分だけのプレイを自由に展開することができるのだ。

 かつての「フォーメーションサッカー」や「Jリーグエキサイトステージ」も、このマニュアルキックを基本操作としていたのだが、十字キーという入力デバイスの制約のため、基本的には縦横斜めの8方向しか蹴れず、あとはカーブで調整するほかなかった。これが、プレイステーションのアナログスティックにより360度自由な方向指定が可能となり、真のマニュアルキックが実現した。この違いは決定的である。
 プレイして最初のうちは、あの独特な触感のアナログスティックで操作するのは違和感があると思うが、指になじんでくれば、自分の思い通りにボールを蹴り分けることができるようになるはずだ。アナログスティックはまさにサッカーゲームのために存在するのではないかと思えてくるほどだ。

自由に選手を動かせる

 選手の動きもとても軽快である。動きが変に調整されることはなく、アナログスティックを動かすとおりキビキビ動いてくれる。

 Dサカには、一般的なサッカーゲームで見られる、操作対象の選手を示す「カーソル」がない。自分が動かすことのできる操作対象の選手は、ボールキープ時を除いて常にボールに近い「1人ないし2人」であるという法則があり、操作対象の「1人ないし2人」は、リアルタイムでどんどん切り替わっていく。最初のうちは、カーソルがないので自分がどの選手を動かしているのか分からず戸惑うかもしれないが、慣れれば全く違和感なく選手を動かすことができるようになる。むしろ、カーソルがあるサッカーゲームで、カーソル付きの選手を探したり、目的の選手にカチカチとカーソルを切り替える手間は大変なストレスであると感じるようになる。また、某ゲームのように、目の前のスルーパスをボーっと突っ立って見過ごすなんて事態はあり得ない。

 選手の動きと言えば、「Jリーグエキサイトステージ」から継承した、7×10マスに選手を好きなように配置できるオリジナルフォーメーション設定機能と、3種類のフォーメーションを自由に切り替えられるリアルタイムフォーメーションチェンジ機能も特筆すべきだろう。これらを駆使することにより、サイドアタックや2列目の飛び出し、守備固め、オフサイドトラップなど、その時々の操作対象以外の選手も含めた組織的・戦術的な動きや、オリジナルティあふれるゲーム展開が可能になる。フォーメーションの組み合わせの数はそれこそ天文学的数字になるのだから、その奥深さは底知れない。フォーメーションの工夫により、自分だけの展開をいくらでも作り出せるのだ。

 また、他のサッカーゲームでは自分で操作できないことが多いキーパーも、ゲーム開始時に「マニュアルキーパー」を選択することにより自分で操作することができる。最後の砦、止めるか決められるか。読みと反射神経の勝負は、サッカーゲームの醍醐味の一つであろう。

快適なプレイ感覚

 Dサカでは、これまで書いてきた自由度の高い操作性のほか、操作のレスポンスの良さ、ダイレクトな操作感でもって、いかに気持ちよくプレイできるかを重視している。これも、他のサッカーゲームとは一線を画す大きな特徴である。

 少しプレイしてみればわかることだが、Dサカでは、キックボタンを押してから、画面上の選手が実際にボールを蹴るまでのタイムラグがとても小さい。例えば、クロスにダイレクトに合わせる場面で、ジャストのタイミングでボタンを押せば、画面上の選手もほぼ同じタイミングで動作してくれる。他のサッカーゲームでよくあるのが、クロスに合わせようとするけれど、ボタンを押したタイミングから遅れて選手が動くので、うまく合わせられなかったり、ついボタンを連打してしまうというケースだ。Dサカでは、こうした操作と動作のタイムラグによる余計なストレスはほとんどないと言ってよい。

 また、キックの強弱の蹴り分けの操作も、このゲームが持つダイレクトな操作感を感じさせてくれる一例である。
 前述したように、Dサカでは、各キックの強弱や飛距離をボタンを押す長さやタイミングで蹴り分けることができるのだが、具体的には、ボタンを素早く叩けば速くて長い球(強い球)、長く押せば短くて緩い球(弱い球)を蹴ることができるという仕組みになっている。
 一般的なサッカーゲームに慣れているユーザーは、これは逆の方が適当ではないかと思うかもしれないが、Dサカにおけるボタンを押す長さというのは、実際にボールを蹴るときに足を振る速さをそのまま操作に持ち込んでいると解釈することができる。例えば、シュートや速いパスなど、強い球を蹴るときには、「パン」とボタンを素早く叩き、隣の味方にパスを預けたり緩いボールを蹴るようなときは、ゆっくり長めにボタンを押せば、そのように蹴ってくれる。これが実に感覚的である。いったんこれに慣れてしまうと、蹴るときに飛距離ゲージが出るようなDサカと逆の操作を持つサッカーゲームとは、操作性が天と地ほどの違いに思えてくる。

 さらに、少し細かい話になるが、Dサカでは、選手がボールを蹴るときの足が届く範囲(当たり判定)が少し広めにとってあり、選手がボールから少し離れた位置からでも、足の届く(当たり判定のある)一定の範囲内なら、わざわざボールキープ状態にして蹴る方向に向き直さなくても、好きな方向に、いろいろなタイミングで、ダイレクトにボールを蹴ることができる(分かりにくい説明ご勘弁を。実際にプレイすればすぐわかります)。特に、ショートパスをダイレクトにつないでいったり、フリーボールをダイレクトに蹴ったりするのがこの上なく気持ちいい。

 こうした、よく練り込まれた数々の工夫によって、「ボールを蹴る」というサッカーの基本的な動作自体がとても快適で、純粋に楽しい。
 実際にピッチでボールを蹴っている、そんな感じがするのだ。

おわりに

 これまで書いてきたように、Dサカは、自由度が高く快適な操作性によって、まるでピッチでボールを蹴っているかのような感覚を味わせてくれる。まさに、サッカーを「している」感覚だ。冒頭で書いた、私がサッカーゲームに求めるものはまさにコレである。

 Dサカは、これまでに「64」「98」「2000」「2002」「2004ファイナル」の5作品がリリースされている。「2000」辺りまでは、選手やボールのスピードのバランス、細かい動き、視点の高さなど、総合的なゲームバランスが良くない面があり、完成度は今一歩と言わざるを得ず、正直一部のコアなファン以外にはお勧めしにくい感があったが、続く「2002」では、多くの点で改良が施された結果、ゲームバランスの面から見ても極めて完成度の高い作品に仕上がった。
 そして、最新作「2004ファイナル」では、わずかに改悪されたと感じる点もあるものの、数々の改良や微調整が行われた結果、完成度はさらに高まり、シリーズ最高と言って良い出来である。コアなファンでなくとも、わりとすんなり楽しめるゲームになっているのではないかと思う。アクションゲームとして純粋に楽しいから、やればやるほど上達し、ハマっていくこと請け合いである。私など、もう他のサッカーゲームはプレイする気も起きないほどだ。これはもう掛け値なしの「サッカーゲームの傑作」であると思う。

 公式サイトを覗いてみればすぐ気付くことだが、ゲーム画面は確かに地味である(PS1用ということもあるが)。しかし、その中身には、アクションゲームの快楽、そしてサッカーの楽しさが凝縮されている。ゲームの楽しさの本質は、見た目ではない。Dサカはそのことを改めて認識させてくれる。

 また、最新作「2004ファイナル」は、発売当時、各ゲーム雑誌において、紹介記事はおろか、発売スケジュールにすら掲載されなかった。このため、一般コンシューマの知名度は驚くほど低い。しかも、Dサカシリーズを開発した天野氏は、「2004ファイナル」が、文字通りDサカの「FINAL」=最終作であるとコメントしている。

こんな名作をこのまま埋もれさせるのは、余りにも惜しい。
一人でも多くの人がこの楽しさを味わってほしいと切に願う。
 


Text by  haya@サカゲー馬鹿一代