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社説:論調観測ギョーザと死刑 にじみ出た「中国」観とは

 中国をめぐる二つのできごとが紙面をにぎわせた。ギョーザ中毒事件で、中国警察当局は先月26日、中国人容疑者の逮捕を発表した。数日後、中国政府は、麻薬密輸罪での日本人の死刑執行を日本政府に通告し、今月4人の刑が執行された。

 ギョーザ事件の“一応の”解決から間髪おかずの死刑通告について「日本側が反対しづらいタイミングを狙ったとの見方も」(31日朝日)と、関連性を示唆する記事もあった。

 ギョーザ事件は28日社説で各紙が取り上げた。その論調には、中国をどう見るのかの距離感が反映されたようだ。

 毎日は、逮捕まで2年以上かかった背景に、有毒なメラミンが粉ミルクに混入した問題が中国内で同時期に起き、その責任をめぐる指導部の権力闘争があった可能性を指摘した。

 日経、読売もメラミン問題に触れたが、中国がそれを機に食への取り組みを強化したとの文脈で紹介しており、視点は異なった。朝日は、容疑者が臨時工員だった点に焦点を当て、中国の経済成長のゆがみが事件に影を落としていると指摘した。

 産経は、中国側の責任を強調するに当たり、東シナ海ガス田開発問題に言及した。あえてギョーザ事件と結びつけるのは、独特な取り上げ方と言える。

 ちなみに、週刊新潮、文春両誌はそろって容疑者の「替え玉」「スケープゴート」説を紹介した。一般紙も逮捕をめぐる謎を指摘する。

 「死刑問題」は、ギョーザ事件以上に中国への信頼性や好悪が浮き彫りになった。

 東京は2日社説で「中国異質論を助長する」との見出しを掲げ批判した。法治や人権、自由などの価値観が他国と異なるため摩擦を起こすと説く。10日社説でも再度、批判した。

 産経、読売は3日社説で、司法手続きの面から疑問や懸念を投げかけた。読売が「日本国民の対中感情に微妙な影響を与える」と抑えたトーンなのに対し、産経は、グーグルやチベット問題も引き合いに「一党独裁体制の劇的転換しかないだろう」と結論づけた。

 毎日は、1人目執行後の7日社説で取り上げた。執行を残念としながら、同じ死刑存置国の日本に対する国際社会の目も教訓としたいとの内容だ。ほぼ中国批判一辺倒の他社とは若干、トーンが異なる。一方、朝日は10日までに取り上げていない。

 司法の話であり、政治がテーマではない。だが、産経の中国観の突出ぶりが目立った。【論説委員・伊藤正志】

毎日新聞 2010年4月11日 2時30分

 

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