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2010-06-29

89年と97年の消費税増税の影響

 97年は勿論のこと、89年も消費税3%の創設によってバブル景気真っ只中にも関わらず民間消費・住宅が少し落ち込んでいます。これから先、バブル景気のような好景気がそうそう来ないことを考えれば、消費税増税が行われる際には必ずその反動で景気が悪くなることでしょう。そこに97年のように大きなショックが加われれば未曾有の不況に陥ってしまいます。与党は4年後の増税を目指しているようですが、それまでにデフレ脱却のための集中的対応を行っておかなければ97年の再来となるでしょう。

 私は増税の必要性自体は否定しません。ただやるべきことをやった上での増税でなければなりません。90年代のイタリアやスウェーデンは増税に踏み切って一応成功してはいるのですが、それは通貨切り下げや金融緩和、歳出削減もセットで行われたからのことです。増税が第一に来るのでは景気は回復せず、総税収は増えないでしょう。参院選で最も争点になるべきは増税の必要性ではなくデフレ脱却の具体策であるべきです。しかし残念なことに、民主党も自民党も消費税という呪縛に絡めとられているようです。

 以下はグラフが続きます。


89年と97年の比較

  • 実質成長率
    • 1997年4月の消費税5%引き上げ前は駆け込み需要で民間消費・住宅が大きく伸びるが、引き上げ後はマイナスに落ち込み、97年Q3には成長率もマイナス。後で見るように97年Q3はアジア通貨危機や金融不況の影響がまだ無かった頃。
    • 89年4月の消費税創設時も97年ほどではないが民間消費・住宅が少し落ち込んでいる。ただ他が伸びていたため景気悪化には繋がらず。

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  • 消費者物価指数
    • どちらも消費税引き上げ後に価格の転嫁が行われている。増税前の96年度から97年度の物価上昇率のかさ上げ分は平均1.8%。88年度から89年度は+2.2%。(105−103)/103=1.94%、(103−100)/103=2.91%なので概ね適正に転嫁されている。ただ2004年4月から総額表示方式に変わったため、次に消費税を引き上げる際には価格転嫁がし難くなり、物価上昇率は89年、97年ほど上がらない可能性も。
  • 失業率、求人倍率、賃金、労働時間
    • 97年は反動不況の影響で同年9月頃から失業率がやや上昇し、求人倍率や所定外労働時間も低落傾向。そこに97年11月からの金融不況が追い討ちをかけ、翌年4月から失業率は大きく上昇していく。賃金が下がりだすのは少しラグがあって98年5月頃から。
    • 89年は消費税増税の影響は殆どない。バブル崩壊を迎えるまで失業率は一貫して下がり続け、求人倍率、賃金、労働時間は上昇を続けている。

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97年不況の最大の要因は消費税ではなく金融不況

  • 消費者態度指数および日銀短観
    • 97年Q3まではどの指標も左程悪化していない。金融不況が始まる97年Q4から急激に悪くなっている。

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  • 国際収支
    • アジア通貨危機の影響で98年Q1からアジア向けの経常収支が減っているが、全体額で見れば左程影響はない。
    • 96年までの円高が97年頃から円安に転じたため、経常収支は概ね好調だった。

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  • 日銀の対応
    • 95年9月から政策金利を0.5まで下げてそれなりの緩和は行っていたが、97年4月の消費税引き上げで消費の冷え込みから成長率が落ち込んでも特に動いた形跡はない。
    • 97年11月の危機においても約3兆円の日銀特融を行った程度で、ベースマネーは前年比10%しか増えていない。これを日本と同時期にバブル崩壊に遭っていたスウェーデンの対応と比べると如何に何もしてないかが分かる。(→スウェーデンの果断さと日本の愚鈍さ - DeLTA Function)。
    • そもそも何故バブル崩壊直後に何もしなかったのか!?政治の混乱を踏まえれば日銀だけのせいではないけれど…。

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番外

 1997年度の金融および経済の動向(要旨):日本銀行の太字で書かれた一文を引用しておきましょう。

以上の点を踏まえ、今後わが国経済が持続的な成長経路に復するうえでの課題を考えると、まず、喫緊のものとして、需要の減少によるデフレ・スパイラルを回避することが挙げられる。



1997〜98年の主な出来事

1997年
  • 4月1日:消費税を5%に引き上げ実施。
  • 7月2日:タイの通貨バーツが変動相場制へ移行。
  • 7月15日:韓国、起亜自動車が破綻。
  • 8月11日:IMF、日本等からタイへの国際金融支援決定。総額172億ドル。
  • 8月17日:インドネシアの通貨ルピアが変動相場制へ移行。
  • 8月17日:マレーシアの通貨リンギットが変動相場制へ移行。
  • 11月1日:IMF、日本等からインドネシアへの国際金融支援決定。総額390億ドル。3日:三洋証券が破綻。負債総額3,736億円。4日:群馬中央信用金庫が三洋証券に貸付けていた無担保コール資金約10億円がデフォルト。コール市場のデフォルトは戦後初。17日:北海道拓殖銀行が破綻。負債総額は3兆5,773億円(影響度Dまで含む。参照)。24日:山一證券が自主廃業を発表。負債総額3兆5,085億円。

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  • 12月3日:IMF、世銀、日本等から韓国への国際金融支援決定。総額580億ドル。

1998年
  • 7月13日:IMF、世銀等からロシアへの国際金融支援が決定。総額226億ドル。
  • 8月17日:ロシア政府、対外債務の90日間支払い停止を発表。ロシアの通貨ルーブルは暴落。
  • 10月23日:日本長期信用銀行が破綻。負債総額は11兆7,121億円(影響度Dまで含む)。
  • 12月13日:日本債券信用銀行が破綻。負債総額は4兆4,849億円(影響度Dまで含む)。

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