ローカルニュース

赤字脱却 道険し 新体制の若桜鉄道

2009年07月10日

 第三セクター・若桜鉄道(本社・鳥取県若桜町)は、沿線の八頭、若桜両町が線路などの鉄道施設を保有し、同社が運行を担う「上下分離(公有民営)方式」に4月から移行。機動的な経営を行うため、長年、若桜町長が兼務してきた社長に、同社専務だった原卓也氏が就任した。しかし、上下分離に移行する直前の2008年度決算は開業以来最悪の赤字。分離効果が表れる本年度決算で黒字転換を目指すが、乗客数の減少など経営環境の厳しさは変わっておらず、新社長には難しいかじ取りが求められている。

「上下分離方式」に移行した若桜鉄道。赤字脱却が至上命題となっている=2日、若桜町若桜の若桜鉄道若桜駅

 若桜鉄道が6月に発表した08年度決算は、1987年の開業以来最悪となる約5700万円の赤字。基金の取り崩しだけでは足らず、沿線2町が一般会計から計3千万円を補てんした。

 同鉄道によると、若桜駅のSL(蒸気機関車)を活用したイベントの開催や団体ツアーの誘客が功を奏し、一般利用客は10万7633人と前年比13%増。SL見学のための入場券やオリジナルグッズも売れ、運賃を除く収入は1021万4千円と前年より17・3%増えた。

 しかし、“SL効果”以上に、収益の柱である通勤通学客の落ち込みが大きかった。不況の影響で、高校前の一つ手前の駅で降りて徒歩で通う高校生が増えるなど、通勤通学客は前年より4万人余り少ない31万9968人。燃油高騰、導入から20年以上経過した車両の修繕・検査費なども加わり、赤字幅が膨らんだ。

 08年度については、沿線の若桜町と八頭町が赤字を補てんしたが、上下分離となった本年度以降は、2町とも補てんを行わない考え。基金も底をついており、若桜町の小林昌司町長は「赤字が出ても、繰り越しするなどして(自社で)頑張ってほしい」。平木誠八頭町長も「乗車運動などの努力はするが、上(列車の運行)については経営努力をしてもらうしかない」と同鉄道に自立を促す。

 原社長も鉄道が置かれた状況を十分に理解しており、「運賃収入を落とさず、それ以外の収入を増やして黒字化を目指す」と意気込む。沿線自治体の協力を得て積極的な乗車運動を行うほか、SLの一層の活用や格安のファミリー乗車券を発売して土日の観光利用を開拓するなど、乗客増に努めることにしている。

 ただ、人口減や少子化による通勤通学客の減少など、経営を取り巻く厳しい環境は変わっていない。上下分離方式に移行後も赤字が続くようだと、鉄道の存続そのものが危うくなる可能性もある。今後の状況次第では、他の鉄道にはない新たな魅力を創造して観光客を呼び込むなど、もう一歩踏み込んだ大胆な施策を打ち出す必要が出てきそうだ。



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