orenoimouto01.jpg2008年8月。コミケ直前の我々オタク界隈に、旋風を巻き起こしたライトノベルが電撃文庫から発売された。
『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』
伏見つかさ著 かんざきひろイラスト 電撃文庫(アスキー・メディアワークス)

注意

ここから先は本編のネタバレがあります。

※この先、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の内容に触れております。
先に小説を楽しんでから、このインタビューをお読みください。

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これといって特徴のない、平凡な男子高校生・高坂京介(17歳)。彼の妹・高坂桐乃(14歳)はティーン雑誌のモデルを飾るほどルックス抜群。しかも文武両道のギャル系中学生。冷え切っていた二人の関係だが、ひょんなことから京介は、桐乃から「人生相談」を持ちかけられる。その内容がとんでもないもので、京介は、桐乃が妹系の萌えアニメ・ゲームが大好きな「隠れオタク」である事を知ってしまう。
それまでお互いをほとんど無視していた高飛車なギャル系妹が堰(せき)を切ったようにオタク知識を生き生きと語り、悩み相談と称するオタク趣味のカミングアウトに巻き込まれて、慌てふためいて愚痴りながらも孤軍奮闘する兄のドタバタコメディが非常に面白いこの小説。
東京・秋葉原の情報に特化したニュースサイト「アキバBlog(秋葉原ブログ)」でも、その評判が何度も報道された。

「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」 かーずSP・アキバBlogが名指しで登場「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」 売り切れてる「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」 重版再入荷 初版よりもタクサン「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」 また売り切れ

このように2008年度下半期のライトノベル界に旋風を巻き起こした『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』作者の伏見つかさ先生に、作中にも名前が登場したニュースサイト管理人・かーずが突撃インタビューを敢行しました!
#以下、敬称略
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--まず、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』というタイトルが非常に長いんですが、内部的にはなんて呼ばれていたんですか?
伏見つかさ(以下、伏見):編集さんとの会話では『俺の妹』です。
三木一馬(伏見先生の担当編集者。以下、三木):「俺の妹だけどさ~、この前重版かかったよ」そこだけ聞いたら何しゃべってるんだっていう(笑)。
--(笑) まさに出ては品切れという感じでアキバBlogでも何度も取り上げられていて、大変売れていますよね。おめでとうございます。
伏見:ありがとうございます。桐乃と同じ理由で買い物をしている方が、たくさんいらっしゃったようですね(笑)。
三木:おかげさまで、最初の3日ぐらいで9割以上捌けまして、もちろん即重版がかかったんですがそれも足りなくて、一ヶ月経たないうちに初版の倍以上刷っていて絶好調で、大変うれしく思います。
小原一哲(伏見先生の担当編集者。以下、小原):しかしちょうどお盆の時期を挟んでしまったので重版が遅くなってしまい、本当に欲しいという時期にお届けできなくて申し訳なかったです。わかっていたらもっといっぱい刷ってたんですけど・・・・・・すみません。
--そんな凄い売れ行きの『俺の妹』ですが、読者の反応や周りの反響はどうだったのでしょうか?
伏見:前シリーズから読んでる人にとっては、「作風が違ったのでびっくりした」という感想が多かったですね。でも割と好意的な感想が多かったので、その点はすごく安心しました。
作家さんには、帯を書いてもらった五十嵐雄策先生に「読みましたよー」って飲み会でまず言われました。
かーず:五十嵐先生と言えば、『乃木坂春香の秘密』の春香さんが帯でコメントしてたことでも話題になりましたよね。
三木:最近、書店さんではシュリンク(ビニールで包装)されているんで、本の中身を読んで確認することができませんよね。電撃文庫の装丁は裏表紙に解説がないので、帯でもっともこの作品を体現させなきゃいけなかった。その問題とは別に、以前から伏見先生が「推薦文っていいんじゃないですか?」とおっしゃっていたものですから、「じゃあ思い切って同じ境遇のアニメキャラとかでどうよ」って流れで、ちょうどアニメも放映している乃木坂春香さんに推薦してもらうことが決まったんです。彼女が応援するヒロインってどんな性格で、どんな境遇だろう……と、わかっている人にはすぐにわかりますから。
かーず:春香さんと桐乃が秋葉原で出会うなんていうコラボレーションがファンとしては読みたいんですけど、電撃文庫MAGAZINEさんなどで共作する可能性は?
伏見:その話、五十嵐さんとはよくするんですよ。「桐乃書きたい書きたい」っておっしゃっていて(笑)。
三木:みなさまの応援とご要望があれば、そのうちやりたいですね。
■高坂桐乃の元ネタは『GTO』!? --桐乃には実在するモデルがいるのでしょうか。それとも他の作品で何か参考になるものはあったんでしょうか。
伏見:最初は普通の妹っぽいキャラクターでサンプルシーンを書いて提出したんです。それを読んだ三木さんに「藤沢とおる先生って知ってる? あの人が描く漫画に出てくるようなギャルを書いてくれ」と言われまして、その足で漫画喫茶に行って『GTO』を全部読みました。
かーず:えー! 桐乃の元ネタは『GTO』ですか!(笑)
伏見:はい、コギャル的な部分はそうです。で、そういうキャラ造形なのに、実はとんでもない趣味を持っていて……ということだったので。初めて『俺の妹~』について打ち合わせをしたときは、三木さんの妄言かと思ったんですよ。あー……まーたヘンなこと言いはじめたなあ……と。
(一同笑)
伏見:正直なところ、本気でそれを商業に載せるんですか? 誰が書くと思ってんですか? と、一番初めは、文句を言わずにはいられませんでした。それでも「面白そうな設定だな」とは強く感じたので、その設定でサンプルシーンを再度提出したんです。そうしたらそれが思いのほか編集さんに受けたみたいで「これを8月に出す」と……。
桐乃はそういった流れで作られたキャラですので、特定のモデルはいません。「GTO的なギャル」というオーダーを踏まえた上で、自分なりの『このお話に相応しいだろうキャライメージ』を作っていきました。
ちなみに、桐乃やアリス(前シリーズの主人公)など話のメインに近いキャラほど担当の三木さん、小原さんと三人で作り上げていくので、私の好みが入る余地は減ります。どんどんロリになっていきます。
小原:反対にサブキャラ、例えば地味子(麻奈実)は100%伏見さんのキャラクターです。
伏見:100%は言い過ぎだと思いますが……田村麻奈実をはじめ、サブキャラについては、たいてい私主導で作っています。(サブキャラの背丈等が大きめなのは、私の好みです)
麻奈実についてですが、柴村仁先生の書いてらっしゃる『ぜふぁがるど』の表紙に創作意欲を刺激されまして、かんざきひろさんのイラストを拝見するまでは、『ぜふぁがるど』のイメージで麻奈実を書いていました(性格は大分違いますが)。後はとにかく過剰にツンツンしている派手な桐乃とは正反対のキャラにしようと、地味でほんわかした感じにしました。ずっと桐乃と付き合っていると(読者が)疲れちゃうんじゃないかな、と思って癒し系にしたんです。
--122ページで桐乃が麻奈実のことをあまりよく思ってないという描写があるんですが、もともと桐乃は兄のことが好きで、それを取られた嫉妬心からではないかと推理したんですが。
伏見:最初は桐乃にもデレの部分をある程度書いてたんですけど、「桐乃はツンデレじゃない!」と言って編集さんがザンザン切り取るもので、その名残です。「この妹は兄貴のことを本当に好きじゃないんですか?」って訊いたら「ガチで嫌いです」みたいな返答が(笑)。
三木だって『GTO』ですから(笑)!
伏見:しかし作者的にはそれもちょっとどうだろうと思うわけです。ツンを増やすのはいいけれど、いくらなんでも好意ゼロはありえないだろうと。そんなヒロイン書きたくないんだよ、と。そういうわけで、編集さんには何も言わず、行間に色々と想像できる余地を残しました。「兄貴が本当に嫌い」という設定の桐乃ですが、作者本人は「これは嫉妬心、これは嫉妬心」と念じながら書いています。今後そのへんどうなるかは分からないので、読者のみなさんは、各々が思ったとおりに受け取っていただければと思います。
--そんな桐乃とのやりとりで、先生が気に入っているシーンはありますか?
伏見:2章で、妹に無理矢理妹ゲームを一緒にやらされるシーンですね。最初の打ち合わせの帰り道、電車の中で必死に考えたネタなのですが、ここを読み返してみると、「ちくしょう・・・・・・。やっぱり、やんなくちゃならねーのかよ・・・・・・コレ」と半泣きで書いていたのを思い出します(笑)。
--桐乃だけじゃなく、沙織や黒猫たちといったサブキャラも桐乃に負けないインパクトのあるキャラクターですよね。
伏見:沙織も黒猫も、以前書いた『オタクな女の子がヒロインの話』から設定を一部流用しています。黒猫は『オタクな女の子が猫と恋愛をする話』。沙織は『オタクな女の子が、好きな男の子へ一途なアプローチをする話』。両者とも元々ヒロインとして創ったキャラですので、イキイキと動いてくれたと思います。
かーず:確かにあの喫茶店での邪気眼云々の言い争いが非常に面白かったんですが、臨場感あふれるオタク会話は、元ネタや伏見先生のご経験があるのですか?
伏見:ほとんどフィーリングで書いてますね。ただ、飲み会などでオタク的な会話が出たときに覚えておいて、あとでアレンジして使ったりします。酔っぱらいって、たまに凄く面白いこと言うじゃないですか(笑)。あれ、貴重なネタの宝庫なんですよね。ちなみにオフ会のシーンの、変な名前の飲み物があったりとか、料理がちょっと高めだったりっていうのは、とあるメイド好きな作家さんたちとメイドバーに行ったときの話を元にしています。
--そんな個性豊かな『俺の妹』ヒロインズですが、もしも伏見先生がお付き合いするとしたら、誰が好みなんでしょうか?
伏見:自分の作品のなかでは付き合いたい人っていないんですよ(笑)。別の作家さんの作品だと『戦う司書シリーズ』のハミュッツとか、『乃木坂春香の秘密』の春香とか、『とある魔術の禁書目録』の御坂美琴などなどいっぱいいるんですけどね。『俺の妹』では、黒猫と沙織が好きです。書いていて楽しいので。
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桐乃のモデルは、藤沢とおる先生のヒロインから来ていた!
なんとも衝撃的なエピソードが語られたところで伏見先生インタビューはまだまだヒートアップ。次週はいよいよ、かーずSPとアキバBlogが文中で語られた裏側のエピソードや、先日発表さればかりの『俺の妹』二巻について迫っていきます!

『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』 伏見つかさ先生インタビュー(後編)

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取材・文:かーず(かーずSP)