赤塚不二夫インタビュー(1)
とりあえずジャブ!
- 山口:
- 今日はあこがれの赤塚先生にお会い出来て本当に幸せです。ありがとうございます。私の主宰している「TOKYO TRASH」について、ちょっとだけ説明させていただきますね。(しばし「TOKYO TRASH」の説明)
- 赤塚:
- よく勉強したなあ。それだけ、判ってるなんて。何でもいいですよ。何でも質問してく ださい。
- 山口:
- メールのアンケートでは、男の人は年齢を問わず「天才バカボン」が圧倒的に好きな人が多かったです。女の人は「ひみつのアッコちゃん」。で最初の質問は「テクマクマヤコン」って何ですか?ってことなんですけど...。
- 赤塚:
- あのね、意味ないの。
- 山口:
- えっ?
- 赤塚:
- ゴロがいいから、それでいこうっていうね。アニメーションやる時に作った呪文なんですよ。昔、僕が漫画書いていた時には、鏡って裏返しじゃない?見た時にね?だから何かになーれ、て言う時に逆に言うって発想だったの。でもテレビでやる時にはそれを言っても面白くないから、何か呪文を考えようってことでね。それでテクマクマヤコン。なんなんだろうね、テクマクマヤコン。だからわかんないよ自分でも。でも、覚えやすい!
- 山口:
- そうですね、覚えやすい!
- 赤塚:
- それでね、あの呪文をね、考えた時はね、いいかげんなんだよ。その場で考える訳。
- 山口:
- アドリブってやつですね。
- 赤塚:
- 漫画のアイデアなんて、本当に瞬間だからね。一生懸命、机の上に紙を置いてね、考えるんじゃないの。顔洗ったり、小便している時とか、酒飲んでいる時とかに、急にポンと思い出す。それがセンスってもの。
- 山口:
- ひらめきですね。
- 赤塚:
- そうですよ。あのね、必死になって2日も3日もかかって、アイデア考えるやつらはね、 ただの凡人。天才は違う。2時間あればアイデア出来る。
- 山口:
- なんか短距離って感じですね。瞬発力とか...。
- 赤塚:
- 俺はアイデア速いよ!
- 山口:
- 先生、それはやっぱりメモするんですか?
- 赤塚:
- もちろんシノプシスは書くの。でもパッと閃くと、たたた、っと。
- 山口:
- そういえば、先生は本の中で「ストーリーが書けない漫画家はだめ」って書いておられましたね。
- 赤塚:
- そう。自分でね、ストーリー作るより絵を描いていたいって人がいるの。例えば「あしたのジョー」のちばてつやは、自分でストーリー作れるけど、なにかをプラスさせたいという編集部の意向で原作が付いたんだ。もう一つのやり方は、同時にやっていた「巨人の星」の川崎のぼる。彼は、原作をどう絵にしていくのか夢中だった。絵を描くのが大好きなんだね。
- 山口:
- そうなんですか。
- 赤塚:
- ちばちゃんってのはね、自分なりに消化してね、書いた。そういう違いっていうのはあるんですよね。映画の監督だってそうじゃない?自分で脚本書けて、自分で出来る人ってのはすごいから。それと同じだ。
- 山口:
- 例えば、それが瞬発力があってアドリブだとすると、映画監督とも似てますが、音楽でいえば、ジャズだとか。そういう感じがしますね、つながるような気もしますね。
- 赤塚:
- おんなじだよ。
- 山口:
- そうすると、話が飛ぶんですけれど。先生は世界のトップレベルに居ると思うんですけど。
- 赤塚:
- 何?そんなとこまで行ってないって。そんなあ。何言ってんのお?
- 山口:
- そうすると、同じようなジャズで世界一、監督で世界一みたいな、あるレベルの人に会うと、初対面でもパシっときちゃうとか、なんか一緒にいて居心地いいなあって事ありますか?
- 赤塚:
- あのね、僕は同業者と付き合うのが苦手なの。同じ話になるからさ。だからジャズメンとかさ、映画の人とかいろんな人とおつきあいしている訳なんだけれども、ジャンルが違っていても、素敵な人はみんな素敵。
- 山口:
- そうですよね。私が興味があるのは、先生がタモリさんを始めとして、いろいろな人をプロデュースなさったじゃないですか?映画も作っておられますし?
- 赤塚:
- あのねえ、俺の映画って、俺の映画は大駄作だぞ!
- 山口:
- 「下落合焼きとりムービー」。
- 赤塚:
- ヒドイぞ、あれは。あれはね、飲み仲間が酒飲んでいて「おう、これだけいれば映画一本撮れるぞ」っ言って作ったんだから...。
- 山口:
- いいんですよ、その乗りが。カッコイイもの。
- 赤塚:
- 「おまえが台本書け」「おまえが監督」って。監督ね、山本晋也に朝の4時に電話したの。起してね。これから映画の話するぞっていったら、来たよ。あの人、どこだったかな、遠かったんだよ。で30分くらいかけて来たんだよ。
- 山口:
- ヒド〜イ!
- 赤塚:
- それから、君監督!ってね。仲間内の遊びというのはいろいろありますよ。だけどね、それをなんていうのかな?商業映画として作ったというのが、くっだらない!よく東映がやったよね。普通だったら8ミリ映画で終わりなんだよ。ところが、ちゃんとした映画で撮ったというのが、自分としてはくだらなく、恥ずかしい...。あれは映画として形をなしてない。何故かっていうと、みんな仲間なんだよ、あの出ている連中が。みんなに同じ時間を与えてね、芸をやらせた。だったら宴会じゃないですか?(笑い)
- 山口:
- 宴会映画。韻を踏んでいる。
- 赤塚:
- 映画見ればわかるよ。
- 山口:
- でも予算はどうなさったんですか?
- 赤塚:
- お金ですか?むこうが出してくれたの。
- 山口:
- そこ、そこですよ。それがプロデューサーですよ。
- 赤塚:
- 金はね、自分たちが出さなくても、出してくれる人がいるんだって。
- 山口:
- でも、今の時代だと、それは難しいですよ。
- 赤塚:
- もの好きがいるんだよ。あのね、買い被られているんだよ、俺。才能があると思われているんだよ。だから、赤塚さんが何かやるんだったら、金出すっていうバカがいるの。みんな失敗しているの。
- 山口:
- そんなあ〜。
- 赤塚:
- ほんとだって。
- 山口:
- ほんとだってって。
- 赤塚:
- 僕はね、漫画家でしょ。漫画描くしか能がないんだよ。それがね、テレビ作ったり、映画作ったり、写真集出したり。みんな大失敗しているの。だめ。だから、インターネットなんてのも、だめ。俺には向いてない。
- 山口:
- 嫌いなんですか?出来たものが。
- 赤塚:
- いままで、単行本として本を出版しているわけじゃない、自分の漫画ね。インターネットに載せたらという話は、面白いとは思うのね。出版というものは、本屋さんで売っているだけのものだけど、日本全国にね、250万から300万人の端末を持っている人がいてね、自分が見たいなと思ったら、ポッとオンにすれば、映る訳じゃない?そういうメディアっていうのは面白いなあと思うんだけど、自分がね、そういうのに明るくないから...。教えてくださいよ。
- 山口:
- はい。そりゃもう喜んで、お役に立つのであれば...。
- 赤塚:
- 例えば、自分の漫画を読んでもらいたい、見てもらいたい、と思って、ぱっと押せば出てくるんだ。しかも、動かすことも出来る。
- 山口:
- それに、先生、CD-ROMですよ。先生の沢山ある漫画を、デジタルデータにして保存すれば、孫子の代まで劣化することなく、保存出来るし、火事の時にも1枚持ち出せばオッケーだし。でも、そうはいうものの、漫画本の手触りとかインクの匂いとかも含めた実際の本は大切だし、そう思って大事にする人はいるので、デジタルな方とリアルな方と分かれていくとは思うんですよね、ファンも。
- 赤塚:
- そこでね、インターネットで漫画を読んでもらうのは新しいメディアだと思うよ。でもね、これは言える。例えば自分の本をね、みんなが勝手に見るとする。その料金をどうして徴収するか問題があると思わない?
- 山口:
- そうなんですよね。お金も新しいものを作らなければならない。
- 赤塚:
- でもね、みんなに読んでもらえたら、うれしいけどね、ほんとうはね。しかし、生意気だね、こいつ。理屈っぽいね。(ちょっとむっとする先生)
- 山口:
- ごめんなさい。私自身もよくわからないままに言ってます。どうしよう...。(笑い)
- 赤塚:
- ちゃんとオ×××してるの?男と会話して。
- 山口:
- そんな事聞かれても、あの...あるともないとも...。(笑い)
- 赤塚:
- あのね、だから新しいメディアってのは、これだと思うんですよ。僕らが今までやってきた、出版っていう、本を作って本屋さんで売るというのは終わりになったと思う。すごいよな、こんなもの。ガキどもがみんなやっているじゃない?それに世界中とね、交信出来るってことはすごい事ですよね。だからアメリカで僕の本を紹介することも出来る訳だ。
- 山口:
- 最近、日本語を勉強しているアメリカ人も増えてますよね。私なんて、勝手に外国人は日本語を読めないって思い込んでいる訳ですけど、実際に私の書いたもの日本語のまま読んでくれる人がいたりしますし。それから、漢字、平仮名、片仮名の中では、圧倒的に片仮名がカッコイイっていうんですよね。字の形が美しいって。
- 赤塚:
- 四角いからね。
- 山口:
- それで、自分の名前、スティーブならそれを「片仮名で書いてくれ」って言われたりします。そうした事を含めて、みんなが新しい事に対して、心を開いているかなあ、と思いますね。
- 赤塚:
- だから、アメリカからの情報を日本に居て勉強することも出来るしね。アメリカ人いっぱい来るよ、僕ん家にも。でもね、悪いけど、暗いのこういうのに。
- 山口:
- 先生、ページが出来たらお見せします。
- 赤塚:
- 次の時代のね、文明の利器だとは思う。それはね、俺だって漫画書き始めの頃に、これから漫画の時代だっていう、なんかイケルぞっていうのがあったの。それと同じだよ。今度のこれは、サイエンスなんだからね。あのね、僕は、例えば、乾電池があるじゃない?単三ってあるじゃない?わかるけど、それ以外のぺったんこのやつとかあるでしょ?あういうの、全然わからないんだよ。そういうものに、不得手なんだよ。だから昔の人間。
- 山口:
- 見ためは若いのに。
- 赤塚:
- 若くないよ、61だぞ。でもまだ、オ×××出来るぞ!
- 山口:
- 先生、どうしたらいいんですか?赤面っていうか...あのお...。
- 赤塚:
- でも君は生意気だから、イヤだ!
- 山口:
- すみません、ごめんなさい。
- 赤塚:
- いやいや、ふざけて言ってるんだから...。
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とりあえずジャブ!
私たち、先生の漫画で育ちました!
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