新薬の研究開発を通じて必要な薬を必要な患者さんのもとに

  • 手代木 功氏
  • 日本製薬工業協会 会長 手代木 功氏
  • 1982年、東京大学薬学部卒業後、塩野義製薬入社。経営企画部長、医薬研究開発本部長などを歴任した後、2008年4月に社長就任。2011年5月より、日本製薬工業協会会長を務める。

そもそも「製薬協」とは、どのような団体でしょうか。

手代木私どもは、革新的で有用性の高い医薬品を研究・開発する「研究開発志向型製薬企業」の団体で、現在69社の会員会社で構成されています。製薬の領域は非常に幅広く、新薬からジェネリック医薬品、漢方薬、薬局で売っているものまで多岐にわたりますが、新薬の研究開発を通じて、人々の健康向上に貢献することをめざす企業の集まりが製薬協です。

製薬業界において「研究開発志向型製薬企業」が担っている役割とは。

手代木医療の歴史を振り返ってみると、薬でコントロールできるようになった病気もずいぶん増えてきました。しかし、世界にはまだまだ有効な治療薬がない、あるいはあったとしても患者さんの満足に達していない領域がたくさんあります。そこで、遺伝子(ゲノム)研究などの最先端の科学を医薬品開発に結びつけ、必要な薬を必要な患者さんにお届けすることが我々の使命だと考えています。

治療満足度と薬剤貢献度

高齢化が進む日本では、がんや認知症、糖尿病などの新薬を求める声が高まっていますが、新しい薬はどのようなプロセスで創られるのでしょうか。

手代木まずは薬をどう創るかという研究から始まり、動物実験などでその薬効を検証します。そして、必要な試験を通過したものでヒトを対象とする臨床試験「治験」を実施し、安全性と有効性が確認されれば厚生労働省に承認申請を行います。ひとつの新薬が世に出る確率は約三万分の一。期間は9〜17年で、費用は数百億円から、なかには一千億円以上かかる場合もあります。

医療機関との連携と情報の共有・交換創薬・育薬のために

  • 町 亞聖氏
  • フリーアナウンサー 町 亞聖氏
  • 1995年、日本テレビにアナウンサーとして入社。2001年に報道局へ異動し、主に厚生労働省担当記者としてがん医療や難病問題などのテーマを取材。2011年6月にフリーへ転身。

長い研究開発期間を経て誕生する新薬ですが、その安全性はどのように確認されているのでしょうか。

手代木新薬の承認申請は、少なくとも数千例、多いもので1〜2万例のデータをもとに行いますが、安全性・有効性をさらに積み上げるために「製造販売後調査」が義務づけられています。発売後もデータを収集・分析して厚生労働省や臨床の最前線にいる先生方に提供、情報共有を常に行うことでその精度を高めています。

そういった意味では、大学や研究機関、医療機関などとの連携が重要になってくるのでは。

手代木おっしゃる通りです。研究者や医師の先生方、患者さんなどのご協力がないと薬づくりは成り立ちません。薬が世に出てからは、製薬企業だけではなく、医療機関や患者さんで薬を育てる「育薬」の考え方も重要になってきます。

一方で今日の薬は高度化し、専門性の高い知識が求められるそうですが。

手代木その対策として、医療機関に対するセミナーや患者さん向けの講演など、情報の共有・交換ができる場を積極的に創出しています。そういった活動も製薬協の大切な義務のひとつです。

  • くすりの研究開発とは- 長い年月をかけて創られ育てられる安全で効果の高い新薬

  • 1 基礎研究 2〜3年
  • 2 非臨床試験 3〜5年
  • 3 臨床試験(治験)3〜7年
  • 臨床試験(治験)フェーズ
  • 4 承認申請と審査 1〜2年
  • 5 承認と販売
  • 6 製造販売後調査・試験 第4相(フェーズ4)