2007道知事選 「候補」の本音
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2007/03/29(木) 朝刊 |
<3> 道新幹線 検証不在の札幌延伸 |
在来線の行方 不透明
二○○五年に工事が始まった北海道新幹線(新函館−新青森間)。終着駅となる新函館駅(仮称)ができる北斗市内の建設会社社長は最近、札幌市内の取引先からこんな言葉をかけられた。「新幹線でもうかってるんでしょ」。他の地域からは道南はそんな目で見られているのかと思った。だが「現実はぜんぜん違う」。
現在、道新幹線は北斗市と渡島管内木古内町とを結ぶ渡島当別トンネル(八・一キロ)の掘削が進み、新年度からは別のトンネル工事も始まる。しかし、建設路線の四割を占めるトンネルは、地元の業者では下請けにも入れないのが実態だ。現在、工事中のトンネルも東京や札幌などの大手ゼネコンが受注している。
今後、地元業者が受注できるのは、線路地盤の土盛り工事や、工事に伴う仮設道路の敷設などが中心となる。建設に伴う北海道側の投資額は二千七百億円と推計されているが、「道南地方に一割落ちれば良い方」(地元建設会社)という。
三月中旬の平日の昼下がり。函館発上磯行きのJR江差線(江差−五稜郭)の一両編成の車内には、十五人ほどの乗客がいた。江差線のうち木古内−五稜郭間は、一五年度に新幹線が開通すると、並行在来線として、JR北海道の経営から切り離される予定だ。その場合、全区間のバス転換が濃厚とみられている。
函館市から買い物帰りという北斗市の主婦佐藤あつ子さんは「バスでは実家に行くにも不便になる」と不安をのぞかせた。他の乗客もほとんどが鉄路が失われる可能性があることを知らず、「なくなると困る」と口をそろえた。
海老沢順三北斗市長は、木古内−五稜郭間に貨物列車が一日に上下五十本走ることから「線路自体が失われることはない。道やJRには路線の存続を強く求め続けたい」と、力を込める。ただ、道が中心となって江差線の扱いを決める道南地域並行在来線対策協議会は、○五年七月の初会合以来開かれていない。
こんな中、知事選の焦点は、既に新幹線の札幌延伸問題に移っている。札幌延伸となれば、函館線の函館−札幌間も並行在来線としてJRから原則分離されるが、分離後の姿は全く見えない。
道新幹線の並行在来線となるJR江差線。1日50本の貨物列車(左)とすれ違うため、鉄路存続の期待が強い=北斗市久根別駅所 |
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現職の高橋はるみ氏は告示日の二十二日、札幌市内で「東京で北海道新幹線の模型を見せてもらった。何としても札幌まで延ばさなければならない」と語った。
これに対して、無所属新人の荒井聡氏は「新幹線よりもまずは地域交通網の確保」を掲げ、共産党新人の宮内聡氏も地元負担の軽減と並行在来線の存続を訴える一方で、ともに札幌延伸には反対していない。
暗い話題の多い道内では、数少ない明るい話題とされる道新幹線。負の側面に関する論議と情報開示は置き去りのまま、北上を続けるのだろうか。(則本晃) |
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