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『ザ エルダースクロールズ V:スカイリム』ブログ SYMPHONY OF DESPAIR〜絶望交響曲
 国籍、年齢、職業すべて不詳という設定の自称・洋ゲー冒険家。週刊ファミ通において、ゲームクリエイター須田剛一氏と共に“洋ゲー発着便AIRPORT 51”を連載していたが、2011年4月をもって最終回を迎える。社名を出せば誰もが知ってる某大手海外ゲームデベロッパーの元社員という噂もあるが、本人曰く「オマエの過去は聞かない。だからオレの過去も聞くな」とのこと。座右の銘は「毒蛇は急がない」。Twitterでは<MASKDEUHBADASS>名義で小ネタ&コボレ情報も投下中。ADIOS GRINGO!!!!


Symphony of Despair Blog〜絶望交響曲〜
The Elder Scrolls V: SKYRIM冒険譚
M1:スカイリムにおける涅槃の歴史
2011/12/08
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▲帰ってきたぜおっかさん! 北の国からお送りします!

Symphony of Despair !!!!!!!!!!!!!

 遂に我々の前に全貌を現した究極の自由度を誇る今年度最強のRPG『The Elder Scrolls V: SKYRIM』(以下、『スカイリム』)。週刊ファミ通本誌のクロスレビューにおいては、洋ゲーで、しかもZ指定で40点満点獲得プラチナ殿堂入りという快挙を成し遂げ、海外では発売2日で350万本を売り上げるメガヒットを記録し、現在も更新中という“怪物”と呼ぶのに相応しいタイトルであることは周知の通り。そして世界観の大きさと歴史の重み、飽くなき没入感へのコダワリ、やってもやっても終わりが全く見えない脅威のゲームデザインなど、本作に関しては語るべきポイントが多すぎて困る。思えば前作『The Elder Scrolls IV: Oblivion』(以下、『オブリビオン』)から約5年が経過しているうえに、デベロッパーであるベセスダ・ソフトワークスは、その間にも超絶タイトルを幾つかドロップして我々のようなZ指定好きボンクラゲーマーを歓喜と涅槃の渦に叩き込んでくれた。まずはブログ第1回目ということで、そんな壮大な『エルダースクロールズ』シリーズの歴史の流れを大雑把ながら解説しつつ、筆者が最も推しておきたい『スカイリム』の裏テーマなどに言及しながら本稿を進めようと思う次第である。

 まずは、やっぱり『オブリビオン』だ。1994年にシリーズ第1作がリリースされた“エルダースクロールズ物語”の第4章にあたるタイトルであり、日本語版がコンシューマー向けにリリースされた初の作品でもある。  『オブリビオン』がリリースされたのは2006年(日本版は2007年)だったが、時代は次世代マシンへの移行が花盛りの真っ最中。そのマシンスペックの凄さを活かした美麗なグラフィックと広大にも程があるマップ構成、攻略順序を全く無視しても構わないという自由度の高さには、日本を含む世界中のゲーマーを魅了し、“史上最高のRPG“とまで言わしめたのは記憶に新しいところだろう。

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▲バイキングテイストに鼻息が争うな『スカイリム』のドラウグルと、爛れっぷりがなかなかキてた『オブリビオン』のゾンビ。ディテールの違いは一目瞭然。

 実際、筆者も『オブリビオン』に初めて触れた時の衝撃は忘れられない。同じオープンワールド、自由度の高さとはいっても、『GTA』シリーズとは当然ながら全く違う、純然たるファンタジーRPGの世界ながら、そこで描かれる物語はダーク極まりなく、絶望と死と拷問が渦巻く狂気の一面が垣間みれたところに少なからずショックを受けた。言うなれば、『GTA』シリーズが描くのは現代の狂気であり、現実の社会システムに対する痛烈なパロディだが、『オブリビオン』の場合は人間の暗黒史。ファンタジーというフィルターを通してはいるが、根底に流れるのは中世ヨーロッパで跋扈した悪魔崇拝主義や領土を奪い合う戦争の悲惨さであり、支配欲にかられた権力者による狂気の政治である。そして、どちらも欧米社会を語るには外せない要素といれるだろう。

 しかしながら、複雑な言語と物語が交錯する世界観もまた、海外RPGの王道であり、それ故に日本版未発売に終わったシリーズの過去作のプレイには勇気が必要なのも事実。筆者も『オブリビオン』のプレイで一気に世界観にハマり、日本版未発売の第3章『MORROWIND』のXBOX版に手を出したものの、あまりの複雑さに途中でプレイを断念してしまったという恥ずかしい思い出もあったりする。

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▲『Morrowind』と『スカイリム』のホーカー。クリーチャーっぽさが減って、完全にセイウチ風に。
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▲Vault 101のアイツだゼェ! グラフィックの密度を『オブリビオン』と並べてみるのもまた一興。!

 それはともかく、『オブリビオン』から『スカイリム』に到達するまでの間に、ベセスダはもう1つの超絶完成度を誇るRPGをドロップする。
 そう、『Fallout 3』である。
 筆者も連載ブログという形式の仕事を初めて請け負ったタイトルであり、その世界観の深さと没入感および異常なまでの作り込みに、ほとほと感心したもんである。核戦争後のワシントンという舞台設定と、『マッドマックス2』・ミーツ・FPS=ディストピアRPGという、ありそうで無かったゲームデザイン。ある意味SFであり、ファンタジーと共通する理念が見え隠れしながらも、銃火器がメインのスリリングな戦闘と、荒廃した大地のそこかしこで繰り広げられる業(カルマ)の深い物語には、完全にヤ・ラ・レ・タ……。
 システムも『オブリビオン』を継承しているために、通過しているプレイヤーならばスンナリ入れるシステムとなっており、改良点も多く加えられて遊び易さも格段に向上。それでも一定の敷居の高さは存在したが、それぐらい無ければ大人向けである意味も無い。RPGに対する固定観念が大きく変わったという意味でも、『Fallout 3』は重要すぎる存在だ。そして『オブリビオン』→『Fallout 3』を経ての『スカイリム』であることも忘れてはならない。

 ここからが『スカイリム』の登場である。『スカイリム』に至るまでの『エルダースクロールズ』シリーズの物語の流れに関しては、ここで追ってしまうとアッと言う間に文字数が尽きてしまうので、読者諸兄にネットでウィキでも検索でもしてもらうとして、この場では筆者が『スカイリム』をプレイして気づいた新しいファクターについて触れてみたい。
 『スカイリム』の舞台となるのは、タムリエル大陸の北方に位置する極寒の地・スカイリム。『オブリビオン』に登場した北方都市ブルーマでも、その存在を匂わせていたノルド戦士の国である。物語は前作から直接続いておらず、『オブリビオン』の時代から200年が経過した時間軸となっている。帝国の威信は弱体化が著しく、スカイリムの各地で反乱が発生。ノルド先住民族の独立闘争と帝国の残党が血で血を洗う戦いに明け暮れる最中に、突如として伝説の最強モンスターであるドラゴンが甦り、スカイリムの地を更なる混沌へと導いてゆくのだった。

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▲寒いとみんなヒゲを生やしたりするが、ドラウグル同様、ジャイアントもモジャモジャ。ところで「大きいことはいいことだ(©山本直純)」と「Big Man is Big Shit(デカい奴なんかデカい糞だ)(©カール・ゴッチ)」はどちらが正しいのか?

 今回の物語で最も重要な存在となるのが、このドラゴンなのだが、まず押さえてポイントがある。それは、今回の物語がノルウェーなどの北欧諸国に伝わる神話世界を強く意識していること。
 『オブリビオン』の時は、神話というより、H・P・ラヴクラフトの「クトゥルフ神話」のような架空の神話体系の影響が色濃かった印象があるが、『スカイリム』では純然たる北欧神話を基調とした厳格な世界観がベースになっていると思われるのだ。 北欧神話はノルウェーやアイスランド、デンマーク、スウェーデンなどの北欧諸国において、キリスト教文化圏が成立した13世紀より以前に、その起源があるとされる。神々の戦いや終末戦争ラグナロクの存在、王と英雄、悪魔と生け贄など、北欧神話は数多くのRPGに影響を与えているのだが、『スカイリム』からは、それらの頂点とも言うべき北欧神話へのコダワリを魅せている。これは大きな方向転換であると同時に、RPGへの原点回帰にも通じている。こういった思想は「さすが!」としか言いようがなく、日本人には絶対に作れないタイプのRPGであることも実感させられる。

 だがしかし、北欧神話は前フリにすぎない。『スカイリム』で最も重要なファクターとは、北欧神話と密接な関係にある音楽ジャンルに隠されている。
 それが“BLACK METAL”だ!! ハイル・サタン!!
 ブラックメタルとは、ヘビーメタルのサブジャンルの1つではあるが、その過激な思想と特徴的なルックスは明らかに異質。悪魔崇拝を公言し、キリスト教を否定して教会に放火したり、生け贄を捧げる目的で実際に殺人事件を犯したりという陰惨という言葉では済まされない狂気の側面を持つアンダーグラウンド・ミュージックである。代表的なバンドとしてはノルウェーのBURZUMやMAYHEMで、その過激にも程がある活動内容で世界的にも知名度が高く、ドキュメンタリー映画も公開されている。より詳しく知りたい人は、『ブラックメタルの血塗られた歴史』(メディア総合研究所・刊)を一読することをレコメンドしておこう。そんなブラックメタルの思想の根底には北欧神話が脈々と流れており、血塗られた世界観は『スカイリム』にも大きな影響を与えていると筆者は推察する。それを確信したのは、キャラメイキングにおいて、WAR PAINTと呼ばれる化粧の要素を発見した時だった。
 ブラックメタルのミュージシャン達は、“コープス・メイク"と呼ばれる特徴的なビジュアルメイクを施すのが基本中の基本となっているのだが、それが『スカイリム』でもWAR PAINTで再現できるのである! これはまさしく確信犯の仕事! さっそく筆者もコレクションしていたブラックメタルのCDを引っ張り出して、お気に入りのミュージシャンであり、連続放火殺人犯としてノルウェーの刑務所に現在収監されているBURZUMのボーカリスト、Varg Vikernesを彷彿とさせるキャラクターを作り上げた。ちなみに納得いく出来に到達するまで半日かかった……。もちろん種族は北欧神話に忠誠を捧げ、ノルド一択である。

 そしてこれより、筆者の分身となったキャラ名Vargを使用して、極寒の地スカイリムへ涅槃の旅に出る。その行く手には何が待ち構えているのか? 冒険は決して勇気と友情が試されるような甘っちょろい内容ではない。怨念と復讐、絶望と狂気が渦巻く涅槃への旅路である。果たしてそこで筆者は何を目撃し、経験し、そして死ぬのか? その結末を知るのは、タロスの神のみなのだった……。

次回更新:『我に力を与えよ……武器を携え荒野に死す』

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▲Varg近影。ちなみに実物のヴァーグ・ヴァイカーネスにも、ガントレットや棍棒を装備している姿のプロモ写真がある。逮捕後、檻の中でも活動を続けるも、小型シンセサイザーしか持ち込めなかったから(ブラックメタルなのに)アンビエントアルバムを出したってのは味のあるメタリックいい話。ちなみに今年もアルバムを出しているが、一時帰宅が認められるようになったこともあって、2009年の活動再開以降はちゃんとメタルアルバムに。つくづくいい話だなぁ〜。なお、完全釈放はまだ先。

スカイリム公式サイト

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