萬斎が語る“成田長親”
――皆からその椅子に座ってくれと言われるのがリーダー 【萬斎】　のぼうは戦いに行けないので、優秀な実務家とは言えないですが、戦略家や実務家のエキスパートがたくさんいるわけですから、その核になれればいいんです。リーダーとは器があるかどうか？そんな問いが今回テーマのひとつでもありますから。自分がリーダーになりたいのではなく、なってしまう人が真のリーダー。最近は、総理大臣の椅子に座りたいだけの人、（器が）合わないのにしがみつく人がいらっしゃいましたけど、そうではなく、みんなからその椅子に座っていてくれと言われるのがリーダーだと思います。とは言っても、官房長官のような正木丹波（佐藤浩市）がいないと何もできないんですけどね（笑）。

上地が語る“石田三成”
――我儘と無器用が許される。そして、責任を持てる人
【上地】　映画のなかでは三成はまだリーダーシップを発揮していないんです。作品が終わる頃に、リーダーとしてなにかひとつ得られるような人間を描きたい、のぼう様と対峙するラストシーンでちゃんと階段を登っていく姿を演じないと三成は成立しない、と思ったんです。また、三成は慈悲のある男でもあって、そういう人としての魅力があるからこそ大谷や仲間が慕ってくれる。でも、総大将としての力量はこの映画のなかではまだないんですよ。なので、三成のリーダーシップは分からないけれど、僕の理想のリーダー像は、わがままと無器用が許される人ですね。わがままも無器用もダメなことだけれど、それが抜きん出ていればその人の魅力になる。そして、責任を持てる人です。

上地は“のぼう様”？芯があってこそ、ボケられる 【萬斎】　上地さんがバラエティ番組で見せていたおバカキャラは演出だろうな、と思っていました。のぼうじゃないけれど、芯のある人なんだろうなと。実際に会ってみて、その通りの人でしたね。非常に頭のいい人、周りのことをよく読める人、だからこそあれだけボケられるんです。そして、さすが（高校時代に）松坂大輔さんのバディ、キャッチャーだった人だなとも。その堂々とした人としての大きさをラストシーンで見せてもらいました。

【上地】　萬斎さんはあまりテレビに出ない方なので、どういう人なのか、まったく想像できませんでした。

萬斎、上地の質問攻めに(笑) 【萬斎】　撮影後に上地くん、成宮寛貴くん、山田孝之くんと飲みに行ったんですが、狂言というものがどういうものか知りたいと、質問攻めに遭いました（笑）。その後、野外に能舞台のある、修善寺のあさば旅館まで、はるばる上地くんと成宮くんが観に来てくれて。その時、この人は興味を持った世界をとことん知ろうとする、探究心のある人だなと思いました。

【上地】　狂言の世界は、どんな稽古をしているのか？その歴史は？家柄は？家系図は？など疑問に思っていたことをグイグイ聞いていましたね（笑）。あの舞の所作にはどういう意味があるのか……とか、いろいろ聞いたんですが、話せば話すほど気さくで、何の壁も作らない人だなと。お兄ちゃんのような存在です。気品があって、でも偉そうにしていなくて、人として本当に素敵な人です。

（文：新谷里映／撮り下ろし写真：鈴木一なり）

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